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Cognition共同創設者・Walden Yanが明かす、Devinの一番好きな使い方とは?【Devin Meetup Tokyo 2025】

ITニュース

今、世界のソフトウエア開発の風景を塗り替えつつある、自律型AIソフトウエアエンジニア「Devin」。その開発の中心にいる人物が、日本のステージに立った。

Walden YanーーDevinの開発元であるCognition社の共同創設者であり、Devinの“頭脳”を設計してきた最高プロダクト責任者(CPO)だ。

その彼が、2025年7月26日に行われた、AIエージェントユーザー会(AIAU)主催のイベント「Devin Meetup Tokyo 2025」の基調講演に登壇。Devinの開発経緯と今後の展望、そして自身が実践するDevinの活用方法まで余すところなく語った。

300名以上が現地に駆けつけ、オンライン配信では1300人以上が申し込んだ大盛況の講演の内容を、一部抜粋してレポートする。

プロフィール画像

Cognition AI Co-founder / CPO
Walden Yan(@walden_yan

ハーバード大学在学時の2020年9月、第32回国際情報オリンピック(IOI)でゴールドメダルを獲得。23年11月にScott Wu、Steven Haoと共にAIスタートアップ「Cognition AI」を創業。24年3月、世界初の完全自律型AIソフトウェアエンジニア「Devin」をリリース

こんにちは、Waldenです。Cognitionの共同創業者の一人であり、現在は最高プロダクト責任者(CPO)を務めています。

日々の業務ではコードを書きながら、「皆さんのために最高のプロダクトをどう作り上げるか?」ということに向き合っています。

現在、私たちは二つのプロダクトを展開しています。一つはもちろんDevin、そしてもう一つがWindsurfです。このWindsurfをDevinと組み合わせていくことに、私たちは非常に大きな可能性を感じています。

Walden Yan イベント登壇時の様子

私はエンジニアリングが大好きで、12歳の頃からずっとコードを書いてきました。1日の大半をコードに費やす生活をずっと続けていて、それは今も変わっていません。Cognitionという会社が機能しているのは、ここにいるメンバー全員がコードを心から愛しているからだと思います。

今日は、私たちが今の場所にたどり着くまでの道のりを、少し皆さんにご紹介したいと思います。

創業の原点は「ジュニアエンジニアの軍隊がいたら」という夢

創業当初、私が毎朝起きて最初に考えていたのは、「もし自分の作業を手伝ってくれるジュニアエンジニアの軍隊がいたら、どれほど素晴らしいだろう」という、ある意味“夢のような”ビジョンでした。

もし彼らがコードを書くのを助けてくれたら──その可能性は無限に広がる、そう思ったんです。

Cognitionは23年11月に創業され、当時はCEOのScottの自宅アパートで作業をしながら、「できる限り最高のプロダクトを作ろう」と一心に取り組んでいました。

何が起こるのか、何が待っているのかまったく予想もつかない、そんな毎日。でも、すごくエキサイティングな時間でした。「とにかくクールなものを作りたい」という純粋な思いだけで突き進んでいたんです。

Cognition 創業当初の様子

そして24年3月、私たちはDevinをローンチしました。その反響は、私たちが想像していた以上のものでした。Xに投稿した動画は3,000万ビューを超え、多くの人がDevinの可能性と、これからの未来に興奮していたのです。

このようなインパクトを持つ製品を最初にリリースできたことを、私たちはとても誇りに思っています。それ以来、私たちはDevinの改良に多くの時間を費やしてきました。

そして24年12月、Devinを一般公開し、誰でも利用できるようにしました。まだそれほど昔のことではありませんが、その時のフィードバックも素晴らしいものでした。

Devinを使って日常的な雑務をこなす人が現れたり、スマホから操作する人がいたり……。朝食をとっている最中に届いたバグレポートをそのままDevinに渡して、作業を任せる、そんな使い方も見受けられました。

こうした活用の広がりは、多くの人にとって非常にワクワクする体験だったと思います。もちろん、私たちにとっても。

Windsurf買収、そしてDevinとの融合へ

そして25年7月、私たちは大きな一歩を踏み出しました。Windsurfを買収したのです。

Cognition’s acquisition of Windsurf cognition.ai
Cognition’s acquisition of Windsurf

Cognitionでは、週末を返上して取り組むような出来事が日々起こっていますが、その中でも間違いなく記憶に残る出来事の一つです。

この買収は、わずか3日間で話がまとまり、契約書への署名までたどり着きました。まさに目まぐるしいスピード感で進みましたが、本当にクールな経験でした。

私たちは、DevinとWindsurfの組み合わせが、これからの未来に向けて非常に強力な布陣になると確信しています。

Cognition Windsurf 買収時の様子

写真(左):Jeff Wang 写真(右):Scott Wu

ちなみにDevinをローンチして以降、私たちは「日本からの愛」を強く感じています。実際に日本に来て、ユーザーの皆さんと直接お会いする中で、本当に素晴らしい時間を過ごしているからです。

Devinはここ日本でも非常に多くの方々に使っていただいており、実は米国以外では最大のDevin市場、さらにはAI市場かもしれないと感じています。

Devinでの実演:Webサイトを丸ごと構築

実は今回のプレゼンのために、Devinを使ったちょっとしたデモを用意してきました。「Devin Meetup Tokyo 2025」に関するWebサイトの構築をお願いしたんです。

イベント時のデモの様子

私はまず、connpassのイベントリンクをDevinに渡して、「ここにある情報をもとに、英語と日本語に対応したWebサイトを作ってください」と依頼しました。

動画では少し早送りしていますが、Devinがコードを書き、Webサイトをテストしながら作業を進めていく様子が確認できます。もちろん、私自身はDevinが作業している間、特に何かをする必要はありません。

Devinは、最終的に「このボタンを押せば本物のWebサイトになりますよ」というUIを提示し、そこから本当にWebサイトを立ち上げてくれました。しかも、生成されたサイトには英語・日本語の切り替え機能まで付いていました。

このサイトは完全にゼロから、スクラッチで作ったものですが、Devinは既存のコードを活用しつつ、新たなアプリケーションを構築する支援も得意です。

SlackにDevinを追加。寝る前にタスクを依頼する

続いては、個人的に気に入っているDevinの使い方をご紹介します。

私たちのSlackのチームチャンネルにDevinを招待し、そこから直接タスクを依頼しているんです。「Devin、アイデアがあるんだけど。これをやってくれない?」といった感じですね。

それこそ、昨日の夜もDevinに一つタスクを任せたので、紹介しましょう。

日本で多くの人と会う中で、「DeepWikiを日本語対応してほしい」という声をたくさんもらったので、それをどうにかしようと。ただ、そのとき私は時差ボケで眠かったので、そのタスクをDevinに渡してから寝ることにしました。Devinは一晩かけて、その作業に取り組んでくれましたよ(笑)

では、Devinがどんな風に実装したのか一緒に見てみましょう。

この指示が、私がDevinに与えたものですね。「日本語化を構築してほしい」と書いてます。するとDevinが実行プランを踏まえていくつかの質問をしてきたので、私がいくつかフィードバックを与えました。

Devinによる実装の様子

実際にコードを実行しているのが見て取れますね。テストも実施して、コードを編集してくれています。

最終的には、こうしてプルリクエストを渡してくれました。実際にテストできるので、ローカルでこのコードを動かしてみましょう。……。うん、しっかり翻訳できていますね。

Devinによる実装の様子

もちろん、見た目については、もう少し整えることができそうです。実際、ここはWindsurfを使ってクリーンアップし、さらに品質を高めるに最適な箇所だと思います。

ちなみに、私はこのコードには直接手を加えていません。私が眠っている間に、Devinが自律的に作業を進めてくれました。

この機能は、おそらく正式に実装することになるでしょうね。アメリカに戻ってからマージすることになると思います。

Devin × Windsurfで、Devinの軍団を指揮する司令官になれる

さて、最後にもう一つ取り上げたいテーマがあります。

「DevinとWindsurfが連携したとき、未来はどうなるか?」です。

DevinとWindsurfの組み合わせがもたらす未来とは

例えば、私がパソコンで作業をしていて、ふとアイデアが浮かんだとしましょう。そのアイデアをDevinに渡せば、すぐに開発に取りかかってくれます。そしてさらに、別のタスクを別のDevinに、またその次のタスクをさらに別のDevinに渡していくこともできる。このように“Devinの軍隊”を使えば、自分の仕事をどんどん進めることができるようになります。

ただし、彼らがコードを書き上げたあとには、それをテストしたり、レビューしたりする必要があります。

そこでWindsurfの登場です。もしWindsurfの中で、Devinが書いたコードを引き出して、自分でビルドしてテストできるようになれば、さらに他のDevinのコードも次々に取り込んで確認することができる。これは実に有効なアプローチだと言えます。

WindsurfとDevinを組み合わせれば、あなたは「Devinの軍団を指揮する司令官」になれるのです。

Devinの使い方には本当にたくさんのバリエーションがある

それからもう一つ。「Devinの使い方には本当にたくさんのバリエーションがある」ことも付け加えておきます。

私自身はSlackから使うのが一番好きなんですが、他にもTeams、GitHub、Datadog、Jiraといったさまざまなツールを通じてDevinにタスクを渡すことができます。さらに、GitHubのような場所でそのコードを直接レビューすることもできますし、Windsurfも新たにそうした作業を行える場になっています。

WindsurfではDevinにタスクを振ってコードを書かせ、それをレビューする。もしかしたら、それを行う最適な場所になるかもしれません。

ちなみに私たちはDevinをセキュアに、そして大企業でも安心して使えるようにするために多大な努力を注いでいます。そして、Windsurfもそうでした。エンタープライズのニーズに応えられる最高のプロダクトを作る。その実現に向けて、多くの人たちが関わり、日々努力を続けているのです。

私からの話はここまでです。皆さんからたくさんの質問があると思うので、喜んでお答えしましょう。

質疑応答

ーーDevinの開発チームでは、Devin自体がどの程度開発に関与しているのでしょうか?

実際にお見せしますね……。

Cognition内におけるDevinのコミット率

うん、めちゃくちゃ開発にコミットしてくれているようです(笑)

ーーDevinが大量にコードを生成するようになると、人間によるコードレビューがボトルネックになるのでは? 運用面で有効な対策はありますか?

ポイントは二つあります。

1つ目は、「最初に自分が何を求めているか」をできるだけ具体的に伝えること。そうすれば、あとは「どう実行されたか」を確認するだけで済みます。レビュー時も、コードを読む前から「このコードはこう動くはずだ」という理解があると、チェックがずっとスムーズになります。

2つ目は、AIがコードレビュー自体をもっと簡単にしてくれるという点です。実際、Devinを使ってPRレビューをしている人は多いです。「このコード見て」とか「ログ確認して」「このバグ直して」など、一言指示するだけで、かなりの作業をこなせるようになっています。

Devin 101: Automatic PR Reviews with the Devin API cognition.ai
Devin 101: Automatic PR Reviews with the Devin API

ーーAIが人間にとって理解しづらいコードを大量に生み出してしまい、技術的負債が逆に増えてしまうのでは?どう対処すべきですか?

これはとても重要な問いですね。

これからのエンジニアはコードを書く時間が減る分、アーキテクチャを考えることにより多くの時間を割くことが大切になります。コードそのものではなく、それをどう整理し、構造的に管理していくかを人間が考えることが、これまで以上に重要になっていくと思います。

ーーDevinの顧客にマイクロソフトの名前がありましたが、彼らは具体的にDevinをどのように使っているのですか?

マイクロソフトを含め、多くの大企業がコードのマイグレーションにDevinを使っています。

例えば、あるバージョンから別のバージョンへ、あるいは特定のフレームワークから別のものへ移行する、といった作業ですね。こうした作業は退屈で工数も大きい。だからこそDevinにその手間の多くを任せる。プロンプト設計に時間をかけることで、移行の作業全体が効率化されます。

またマイクロソフトは、社内システムや製品開発の現場でもDevinを活用してくれています。

ーー競技プログラミングで培った経験は、プロダクト開発にどう活きていると感じますか?

競技プログラミングは、毎回違う課題がどんどん出てくる世界です。この「解決し続ける」という姿勢や思考回路は、AIの世界にも通じているんですよね。

毎日のように新しい技術や問題が現れる今の環境で、柔軟に考え、すばやく動くという競技プログラミング的な姿勢は、すごく役に立っています。

ーーCognition社の採用では、やはり競技プログラミング経験者が重視されているのですか?

競技プログラミング出身者もいますが、それに限定しているわけではありません。実際、いろんなバックグラウンドを持った人がCognitionにはいます。それぞれが得意なことを持ち寄って、多様な課題に取り組んでいます。

私たちが重視しているのは、「新しい問題を楽しみながら解決しようとする姿勢」と、「その実行を任せられる責任感」です。プログラミングスキルだけでなく、「柔軟性」や「主体性」、そして「やり抜く力」が何よりも大切だと考えています。

文・編集/今中康達(編集部)


イベント詳細

Devin Meetup Tokyo 2025
主催:AIエージェントユーザー会(AIAU)
共催:株式会社メルカリ

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