現代社会において、ITは生活やビジネスのあらゆる場面に浸透している。スマートフォンやSNS、オンラインショッピング、クラウドサービスといった仕組みが人々の日常や企業活動を支える基盤となって久しく、近年ではAI技術の進歩から目が離せない。
こうした変化の中心にあるのが「IT企業」である。エンジニアtype読者も、多くがIT企業で働くエンジニア、もしくはIT企業と密接な関係を持つ人々だろう。
IT企業は、単にシステムを開発・提供するだけでなく、産業全体の構造や社会のあり方を変革する役割を担っている。そのため、IT企業がどのような存在であるのかを理解することは、現代のビジネスを考えるうえで不可欠と言えるだろう。
今回は、日本におけるインターネット接続サービスのパイオニアとして知られ、ネットワークインフラからクラウド、セキュリティーまで幅広い事業を展開するインターネットイニシアティブ(IIJ)で多くのエンジニアの採用に携わってきた人事担当者が「IT企業」について詳しく説明。実際にIT企業で人材採用に携わる立場から、IT企業とはどのような存在か、その意義や役割について解説していく。
【執筆】株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ)
日本における商用インターネット接続サービスを初めて提供した企業であり、国内インターネットの発展を牽引してきたパイオニアである。1992年の設立以来、ネットワークインフラ事業を中核に、クラウドサービス、セキュリティーソリューション、モバイルサービス、システムインテグレーションなど幅広い領域で事業を展開している。
■企業HP:https://www.iij.ad.jp/
■X:@IIJ_PR
■Facebook:https://www.facebook.com/IIJPR/
■YouTube:https://www.youtube.com/IIJPR
IT企業とは
IT企業とは、Information Technology(情報技術)を用いたサービスを行う企業の総称です。
総務省の日本標準産業分類では、「情報通信業」は通信業、放送業、情報サービス業、インターネット附随サービス業、映像・音声・文字情報制作業の五つのカテゴリーに分けられます。いわゆるIT企業が属するのは、このうち通信業、情報サービス業、インターネット附随サービス業の三つに該当し、現在日本国内に5,000社以上の企業が存在しています。
IT企業の市場規模は国内だけでもとても大きく、最近街中でも「~をクラウド化」や「AIで~」などの法人向け広告を目にする機会も増えてきたように、各産業においてIT関連に対する支出は年々増えてきており、どの産業においてもIT技術というものは欠かせない存在です。
そんなIT業界は、技術の変化と進化がとても速い業界です。したがって、現在のスキルに満足せず、常に最新の技術トレンドに合わせて学び続けることが求められます。
IT企業の種類
IT企業は、提供するサービス領域によって大きく分けて五つに分類されます。
通信
通信サービスを提供する企業は、固定回線や携帯電話回線を含む幅広いインフラの運営と管理を行っています。現代社会において不可欠なインフラとなっているインターネット接続の提供も担っています。ただ接続を確保するだけでなく、新たな通信技術の開発や通信インフラの安定的な運用もその重要な役割の一つです。
ハードウエア
ハードウエア製品を開発・販売する企業です。コンピューターを構成する電子回路や周辺機器、例えばサーバやストレージなどの開発・販売を行っています。昨今話題となっている半導体技術を活用した機器開発を行う企業もあります。
ソフトウエア
ソフトウエア製品、例えばOS(オペレーティングシステム)やアプリケーションの企画・開発と販売・サポートを行う企業です。ソフトウエアの機能をネットワーク経由で利用するようなサービス(SaaS)を提供している企業もあります。
ネットビジネス
インターネットを通じてサービスや商品を提供している企業です。オンラインショッピングやSNS、オンラインゲームなど多種多様なサービスが存在し、消費者としては最も身近な存在です。ユーザーから直接課金するだけでなく、企業広告を掲載しその広告料で収益を上げている企業もあります。
システムインテグレーション(SI)
企業の情報システムの構築(SI)を行う企業は、SIerと呼ばれます。企業におけるシステム立案から導入・保守までを提供し、その過程で独自のソフトウエア開発を行うケースもあります。基本的に企業からの受託業務なので各社事業内容は似ていますが、顧客からの信頼・技術力が企業の重要な力となります。
IT企業の仕事内容
IT企業の社員はみんなPCに向かってコードを書いている、とイメージされる方もいらっしゃるかもしれませんが、それだけではありません。
前項で記載した通り、そもそも企業によって行う事業が異なるように、エンジニアにもさまざまな仕事や活躍のフィールドがあります。この場で全てを解説することは難しいですが、一般的な仕事内容についてご紹介したいと思います。
※あくまでも数多存在するエンジニアの分類の考え方の一つとしてご覧ください!
ITエンジニア
ITエンジニアとは、情報技術の技術者たちの総称を指す言葉です。ITが利用される現場によって役割分担が異なりますが、一つの例として次のような分類があります。
・WEBエンジニア
プログラミング言語を用いてWebサイトやWebアプリケーションを開発するエンジニアです。ユーザーがWebサイト上で目にするような部分の設計・構築。一方で、ユーザーからは直接見えにくい部分であるOSやサーバ、データベースの情報を管理するシステム開発を行うこともあります。
・フロントエンジニア
Webエンジニアの中でも、ユーザーが直接操作する部分を得意とするエンジニアをフロントエンジニアと呼ぶことがあります。HTMLやCSSを用いてユーザーインタフェース(UI)をデザインしたり、JavaScriptを用いてサーバサイドと連携したりと求められる技術・知識もさまざまです。
・アプリケーションエンジニア
ITシステムの中で使用するソフトウエア、アプリケーションなどのシステム設計からプログラミング、動作テストなどを主に担うエンジニアです。例えば、企業が利用する業務アプリケーションの開発に関わります。
・インフラエンジニア
システムを動かすために欠かせないサーバを整備するエンジニアです。ハードウエアや仮想化、OSなどの知識を駆使し、サービスが安定的に動く環境の構築・運用を支えます。インフラの技術・知識はもちろん必要ですが、関連するネットワークやセキュリティーなども切り離せない領域です。
・ネットワークエンジニア
システムが稼働するサーバをつなぐネットワークを担当します。多数の機器にたくさんの通信が流れるため、非常に高性能なの通信機器を扱います。また、企業のオフィスに引き込まれたネットワークの管理をする場合もあります。この場合、社内で働くスタッフが安全にネットワークを利用できるように、さまざまなセキュリティー対策を検討することになります。
・セキュリティーエンジニア
サイバーセキュリティーは全てのITエンジニアが意識する者ですが、特にセキュリティーに特化したエンジニアもいます。サイバー攻撃を未然に防ぐためのセキュリティーホールの調査や、通信を適切に監視するシステムの構築など、ネットワークやシステムを外部のサイバー攻撃から守るエンジニアです。
プロジェクトマネジャー
これまでご紹介していたエンジニアの領域別の違いではなく、開発プロジェクトに対するマネジメントや職位を表すものです。
プロジェクトマネジャーは開発プロジェクトのスケジュールや予算などの管理を行い、ともにプロジェクトを進めるメンバーへの指示出しや、調整も行います。プログラミングスキルなどの技術力よりも調整力が求められるような場面もあります。
IT営業
営業というと、プロダクトを売っていくイメージがあるかと思いますが、IT営業はそれだけにとどまりません。近年企業が抱えるさまざまな課題やITで叶えていきたいニーズを発見し、適切なソリューションの企画・提案を行うことも重要な仕事の一つです。
IT企業によって扱う商材も異なり、例えば対象システムがインフラ関係であれば、一つの拠点だけでなく、全社で扱う基盤となるので、影響範囲も広範囲です。そのため、「では、明日から使いましょう!」となるケースは極めて少なく、数年後のリプレイスのために何年もかけてアプローチをし続けることもあります。IT営業は顧客と長期的に関わり続ける必要があり、信頼関係の構築がとても大切です。
コーポレート
IT企業にももちろん広報・経営企画・財務・経理・人事・法務・情報システムといった、一般的なコーポレート機能があります。私(筆者)もコーポレート職でIIJに入社し、人事として働いています。
IT企業といってもさまざまな仕事があり、エンジニア以外でも活躍できるフィールドがあることを感じていただけましたでしょうか?
IT企業の働き方
IT企業では比較的柔軟な働き方が叶えられる傾向にあると思います。もちろん、各社によって異なりますが、一例としてIIJでの働き方をご紹介します。
柔軟性を持った勤務制度
時差出勤や時短勤務のほか、部門によってはフレックス勤務を導入しています。
リモートワーク
利用率の定めを設けていますが、出社と合わせてメリハリのつけた働き方が可能です。
服装
TPOに合わせてという前提はあるものの、自由な服装で働く社員が多いです。私自身も面接対応時のジャケットや靴は会社に置いておき、毎日スニーカー(夏はサンダル)で出社しています。
資格取得/セミナー受講支援制度
エンジニア関係の資格はとても多いですが、受講料だけでなく参考書だけでも高額となる場合があると思います。IIJでは対象となる資格について、取得のために購入した書籍代やセミナー参加費、資格受験料及び更新手続き料を会社が一部負担する制度です。そのほか、任意で受ける外部セミナー受講料を会社負担とする実績もあります。
健康経営
社員の健康と働きやすさを支えるため、安心・安全な労働環境の整備とワークライフバランスの向上に積極的に取り組んでいます。ストレスチェックの実施に加え、メンタルヘルス支援や柔軟な働き方の推進など、さまざまな社内施策を行っています。
IT企業の動向と将来性
IT技術の進化の速さを例える言葉として、犬の成長の速さになぞらえて以前はドッグイヤー(dog year)と表現されることもありました。しかし、近年のAI技術の進化から、その速度はさらに加速し、もはや“ドッグどころではない”と感じています。IIJでも農業IoTの取り組みを行っているように、今までインターネットにつながることが考えられなかったアナログな分野も、今後はデジタルへと変化していくことが考えられます。
最近は、IT企業のTOB(株式公開買い付け)関連のニュースを目にすることが多いと感じている方もいるかと思います。背景はさまざまですが、こうした動きによって企業間のシナジー効果が生まれ、新たな価値創出につながっていくのではないでしょうか。まだまだIT企業の将来は明るいと考えています。
IT企業への就職・転職
採用担当者として、就職・転職を考える上で大切なことは「企業と自分の共通点を見つける」ことだと考えています。
新卒で就職活動を行っている方々は、多様な選択肢の中から何かしらのきっかけでIT企業へ興味を持ってくださっているのでしょう。また、転職活動をしている方は、以前もIT企業で働いていた方、またはIT関連のお仕事に携わっていた方が多いと思います。
今までの経験やご自身の価値観を見つめ直し、各社の特徴と見比べることで、ご自身のパフォーマンスを最大限に発揮できる企業を選択できるのではないでしょうか。
まとめ
IT企業がバラエティーに富んだ環境だという事がお分かりいただけましたでしょうか? IT技術に関連した事業を行っているという共通点は同じでも、事業内容・仕事内容・働き方・雰囲気など特色はさまざま。そこがIT業界の魅力です。
読者の皆さんにピッタリなIT企業との出会いがあることを願っております。
IIJについて(人事担当者より)
IIJはインターネット事業から始まった企業ですが、ITに関する事業を網羅的に展開しており、キャリアパスも多様です。そして何より、プロフェッショナルな人材がとても多く在籍しており、特定の領域を深めていくキャリアも十分に可能です。
IIJで働く中で、私が一番好きなポイントは、積極果敢に挑戦する風土です。転職後、自分自身の自主性が高まったと感じることが多く、このような風土が自然と自分の成長を促してくれていると思います。どこかで皆さんとお会いできることを楽しみにしております!