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AI時代を生き抜くSIerの条件とは? CTCが金融領域で挑む「AI駆動開発」のリアル

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生成AIをはじめとするAI技術の進化は、企業の業務プロセスやシステム開発のあり方を急速に変えつつある。そのスピード感は「AIが人間の仕事を奪う」「従来の開発は不要になる」といった言説を加速させ、一部では「SIer不要論」すらささやかれているほどだ。

しかし、AIを活用したサービスが次々と登場する一方で、それを実際のビジネスや社会インフラの現場に落とし込み、運用・品質・セキュリティーを確保しながら継続的に活かしていくことは、決して容易ではない。「AIを導入すること」と「AIを社会実装すること」の間には、大きなギャップが存在する。

「AIを社会に実装していく旗振り役として、SIerの存在意義はむしろ高まっている」

そう語るのは、伊藤忠テクノソリューションズ(以下、CTC)金融システム技術本部でリードスペシャリストを務める大友勝明さんだ。AI時代にSIerが果たすべき役割とそのために必要な変革について、大友さんに聞いた。

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伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
金融システム技術本部 リードスペシャリスト
大友勝明さん

2013年、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)入社。大小様々な案件でアーキテクトやPMを歴任する。直近では、決済代行会社のレガシーな基幹システムをクラウドネイティブにリアーキテクトする案件をPMとして推進。その後の運用体制の構築まで手掛けたほか、系統金融機関のクラウドネイティブへの移行方針策定にアーキテクトとして参画している

AIで何でもできる時代に、なぜSIerが必要なのか

ーーここ数年、AIの進化によって「SIerはもういらないのでは」といった声や、将来性を不安視する声も聞かれます。大友さんは、こうした「SIer不要論」をどのように感じていますか?

「AIで何でもできる」というインパクトが先行していますが、私はその風潮に疑問を持っています。AIはあくまで「一つの技術」に過ぎませんからね。

だからこそ、AIの利活用とSIerというビジネスモデルの是非を、同一視することはできません。事業会社であれSIerであれ、各々の立場でAIをどう活用するかという個別の問題です。

確かにAIの普及によって、さまざまなプロダクト開発がもの凄い速度で進んでいます。しかし、AIという技術を安全に社会実装し、普及させていくことの速度は、プロダクトの開発速度とは別物です。

私たちは、その「社会実装」を担う旗振り役であり、そこにこそSIerの存在意義があります。新しい技術をクライアントニーズに合わせて実装する。この領域において、SIerは業界をリードできる大きなチャンスを握っていると考えています。

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 金融システム技術本部 リードスペシャリスト 大友勝明さん インタビューに答える様子

ーー「開発速度」と「社会実装の速度」は別物である、と。

AIがインパクトの大きい技術であるのは間違いありません。電気やインターネットのように、社会に変革をもたらす技術であることに疑いの余地はないです。

ただ、こうした技術というのは、発明されてから実際に普及するまでに長い時間がかかる。AIも同様に、社会に普及するには相応の時間が必要になると思います。そこで求められる「環境整備」の部分を推進していく立場にいるのが、まさにSIerです。

ーーその「環境整備」という点で、SIerはどのような価値を発揮できるとお考えですか?

個々の技術が開発されただけで、それが自動的に価値を生むわけではありません。クラウドが登場した時もそうでしたが、大切なのは「新しい技術の可能性を、いかにビジネスの現場で使える形にできるか」です。

例えば、AIの判断根拠をどう担保するか、セキュリティーや個人情報保護といったコンプライアンスをどうクリアするか。さらに言えば、AIという新しいコンポーネントを、既存の複雑なシステム全体とどう連携させ、安定稼働させるかという「全体最適」の視点が不可欠です。

こうした「システム全体を安全に統合し、ガバナンスを効かせる価値」は、AI時代になっても決して失われません。むしろ、AIという強力な技術が登場したからこそ、その統合の難易度は上がっている。

この領域まで事業会社だけで完結させるのは現実的に困難であり、私たちSIerが専門性を発揮すべき部分だと考えています。

「読み取り力」と「対人スキル」が問われる時代へ

ーーAIの進化や開発スピードは凄まじいものがあります。重厚長大なシステム構築を得意としてきた従来のSIerのスピード感で、果たしてその「橋渡し」が務まるのでしょうか?

おっしゃる通り、これまで通りのスタイルでは厳しいと思います。ですので「開発プロセス」から根本的に見直す必要があります。

AIがもたらす最大の変革は、やはり「開発速度」です。SIerが従来得意としてきたウォーターフォール型の開発プロセスは、設計やコーディングをしながら人間が時間をかけて理解を深めていく形でした。しかし、AIによる自動生成が前提となると、この速度感では通用しません。

今後は、アジャイル的な開発サイクルを採用することが必須になるでしょう。まだ最適解にはいたっておりませんが、開発サイクルのスピードアップに伴う、開発プロセスの見直しは避けて通れません。

私が在籍するインフラ部署を例に取ると、IaC(Infrastructure as Code)のコード生成が主流になりますが、これはアプリケーション開発も同じです。

従来はエンジニアが「ゼロから作る」ことが仕事でした。しかし今後は、AIが生成したコードを「正しく読み解き、精査する」ことが仕事の中心へとシフトしていきます。

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 金融システム技術本部 リードスペシャリスト 大友勝明さん インタビューに答える様子

ーー開発プロセスの変革と同時に、エンジニア個人の「役割」も変わっていきそうですね。

AIが生成したものが、本当に意図した内容と合致しているかを判断する「精査」の部分こそ、エンジニアの新たな腕の見せ所になります。

例えばIaCのコード生成でも、事前に頭の中にメンタルモデル(完成形)が明確に描けているなら、AIは非常に効率的なツールです。ですが、要件や仕様への十分な理解が追いついていない場合、AIが生成したものが意図通りかを判断できず、確認と修正に多大なコストがかかる。この負担は、実は非常に大きい。

些細なコード出力であればいいですが、ビジネスで運用する大規模な構成となると、そうはいきません。だからこそ、今まで以上に要件定義や設計に関する「深い理解力」、いわば「読み取り力」が重要になると痛感しています。

ーーその「読み取り力」を養うためには、どうすればいいのでしょうか?

まずはAIという技術を用いて、改めて「根本的に何が実現できるのか」を考えるべきです。どのツールを使うかといった方法論に終始するのではなく、AIの力でビジネスをどう変化させられるのかを思考する必要があるでしょう。

その上で、私はAI時代だからこそ「対人スキル」が重要になると思っています。なぜなら、自然言語を使ってAIに指示をしていくというのは、技術との向き合い方が、より「人間対人間」のコミュニケーションに近づいていくということだからです。

SIerのプロジェクト現場では、日々、お客様や多様なプロジェクトメンバーと折衝・交渉し、合意形成を取りながらシステムを組み上げていきます。そうした、一見「泥臭い」対人経験こそが、AIの意図を正確に読み取り、的確な指示を与える力に直結する。

AI時代にシステム全体を組み上げる上で、これほど大切なスキルはないのではないでしょうか。

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 金融システム技術本部 リードスペシャリスト 大友勝明さん インタビューに答える様子

CTCが目指す「AI駆動開発」の先にあるもの

ーー大友さんが所属する金融システム技術本部では、現在どのような変革を進めているのでしょうか?

全社的な「AI駆動開発」ガイドラインの下、いかに「安全に実装・運用するか」というSIerならではのノウハウ蓄積と基盤整備を本格化させている状況です。金融機関のお客様を預かる立場として、ここは最重要課題ですね。

例えば、Copilotの活用一つとっても、単なるユースケース共有に留まりません。優れたプロンプトやベストプラクティスをGit上で資産としてバージョン管理し、フィードバックを受け付けて更新する。これを組織的なナレッジとして標準化しようとしています。

また、「IaC自動生成の統制」にも深く踏み込んでいます。AIが生成したAWS CDKなどのコードが、金融機関に求められる厳格なセキュリティポリシーやアーキテクチャーに準拠しているかを、どう精査して担保するか。そのプロセス自体を検討・構築しています。

その他、RAG(Retrieval-Augmented Generation)やAIエージェントを安全に活用するため、Difyのようなプラットフォームを部署内に提供し、業務改善を促進する仕組みも準備しています。

ーーAIの活用基盤そのものを、金融の高いセキュリティー要件に合わせて設計・提供していると。

CTCはマルチベンダーなので「何でもあり」ですから、特定のベンダーの縛りがなく、パブリッククラウドもオンプレミスも、常に最適な技術を組み合わせてチャレンジできる強みがあります。

ただご想像の通り、日本は世界的に見ても品質やリスク管理に非常に厳しい市場です。その中でも、金融領域はセキュリティー要件が厳しく、一つの変更を加えるにも、幾重もの承認プロセスや厳格なテスト、コンプライアンス・チェックが求められる。

言ってしまえば、AIを適用するのが最も難しい分野の一つです。だからこそ、ここで新しい開発モデルを築ければ、他の業種にも展開できる大きな可能性があります。

AIをどう社会に根づかせるか。その「ラストワンマイル」を担うのが、私たちSIerの役割だと思っています。AIは人間の仕事を奪う存在ではなく、人とAIが協働することで新しい価値を生み出す時代に入った。その橋渡しをするのが、私たちの使命です。

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 金融システム技術本部 リードスペシャリスト 大友勝明さん インタビューに答える様子

ーーAI時代に必要なスキルを身に付けるという意味でも、魅力的な環境が広がっている印象を受けました。

これからのエンジニアリングの本質は「対話」になっていくと思います。自然言語でAIに指示を出すプロンプトエンジニアリングは、突き詰めれば「人間対人間」のコミュニケーションと非常に似ているからです。

SIerの現場で行われている、お客様や多様なステークホルダーとの折衝、チームでの合意形成といった「泥臭い」経験をすることで、AIを使いこなすための基礎体力が養われていきます。

「AIで何でもできる」と言われる時代に、最も難易度の高い金融領域で、技術の社会実装という「現実」に挑む。決して楽な道のりではありませんが、その泥臭い挑戦を楽しめる方にとって、CTCの金融事業部は最適なフィールドだと思います。

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撮影/竹井俊晴 取材・文/今中康達(編集部)

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