※本記事は、2026年1月に開催された世界経済フォーラム(ダボス会議)でのセッション内容、およびNVIDIAが公開した公式ブログ「‘Largest Infrastructure Buildout in Human History’: Jensen Huang on AI’s ‘Five-Layer Cake’ at Davos」をもとに構成しています。
NVIDIAフアン氏が断言「最大の経済効果はアプリ層で生まれる」AIを構成する5層にみるエンジニアの勝負所
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2026年1月、スイス・ダボスで開催された世界経済フォーラム(WEF)年次総会。超満員のメインステージに登壇したNVIDIAの創業者兼CEO、ジェンスン・フアン氏は、AIがもたらす変革を「人類史上最大のインフラ構築」と表現した。
BlackRockのラリー・フィンクCEOとの対談の中で語られたのは、AIを単なるツールではなく、社会を支える「5層のスタック」として捉える新たな視点。この変革は、現場でコードを書くエンジニアの価値をどう変えていくのだろうか。
目次
AIを構成する「5層のケーキ」
あなたの主戦場はどこか?
フアン氏は、AIビジネスの構造を「5層のケーキ」に例えて説明した。これは、今後のテクノロジー投資とエンジニアの需要がどこに生まれるかを示すロードマップと捉えることもできそうだ。
第1層:エネルギー(発電・冷却・電力インフラ)
第2層:チップとコンピューティング(GPU、次世代ハードウェア)
第3層:クラウド・データセンター(運用の自動化、スケーラビリティ)
第4層:AIモデル(基盤モデルの開発・微調整)
第5層:アプリケーション層(金融、医療、製造への統合)
ファン氏「プラットフォームの移行によってエネルギーや建設から高度な製造、クラウド運用、アプリケーション開発に至るまで、経済全体で雇用が創出される」
フアン氏は、「最終的には最上位のアプリケーション層で最大の経済効果が生まれる」と断言。モデルを開発するだけでなく、それをいかに各産業の深い課題(ドメイン)と結びつけるか。そこに2026年以降のエンジニアの勝機があると言えるだろう。
「タイピスト」から「目的の遂行者」への転換
対談の中で、フアン氏が聴衆を笑わせつつも深い示唆を与えたエピソードがある。それは、自分たちが仕事をしている姿は「傍目には、おそらく二人ともタイピストと思われるだろう」という一言だ。
キーボードを叩くという「作業(タスク)」だけを見れば、CEOもプログラマーもタイピストに見えるかもしれない。しかし、AIがタイピング(コード生成や書類作成)を自動化しても、彼らの仕事はなくならない。なぜなら、タイピングは「目的」ではないからだ。
放射線科医が増え続けている理由
フアン氏はその証拠として、放射線科医の例を挙げた。「AIが画像を解析すれば医師は不要になる」という予測に反し、現在、放射線科医の数は増えている。
AIがスキャン画像を高速に解析してくれるようになったことで、医師は「患者と過ごす時間」や「他の臨床医との連携」といった、医療の本質的な目的に時間を割けるようになった。生産性が上がったことで病院全体の業績が向上し、結果としてさらなる採用を生んでいる。
看護師不足を救うのは「カルテ作成」の自動化
フアン氏は、この傾向は看護分野でも顕著であると指摘。「米国における500万人規模の看護師不足」に言及し、その大きな原因の一つとして、看護師が勤務時間の約半分を「カルテ作成や記録」という事務作業に費やしているという現実をあげた。
「今ではAIを活用して患者のカルテ作成や診察記録の書き起こしを行うことができます」と語るフアン氏。Abridge社などの具体的なパートナーシップを例に挙げ、AIによって事務負担が軽減されれば、看護師は本来の目的である「患者のケア」に集中できるようになるという。
「病院の生産性が向上すれば、結果として看護師の採用数も増加します。AIは生産性を高めることで、むしろ現場の人材需要を後押ししているのです」
作業をAIに任せ、人間が「本来の目的」に立ち返ることで、その職種の価値が再定義され、雇用が活性化していく――。このポジティブなサイクルは、医療現場だけでなく、あらゆる技術現場に共通する未来図と言えるだろう。
これはエンジニアにもそのまま当てはまる。コードを書くスピードがAIによって加速した時、エンジニアの「本当の目的」は何になるのか。フアン氏は、「あなたの仕事の目的は何ですか?」という問いを、すべての技術者に投げかけている。
2026年、AIネイティブ企業が経済を牽引する
フアン氏によれば、2025年はベンチャーキャピタルによる投資が過去最高を記録し、その資金の大半となる1,000億ドル以上の資金が「AIネイティブ企業」へと流れ込んだ。
これらの企業は、単にAIを導入するのではなく、AIを前提としたビジネスモデルを構築している。特に注目すべきは以下の2点だと語った。
1.フィジカルAIとロボティクス:ソフトウェアの中だけに閉じていたAIが、製造業やロボティクスと融合し、物理世界を動かし始めている。
2.アクセシビリティの向上:AIは「歴史上、最も使いやすいソフトウェア」であり、プログラミング言語の制約を超えて誰もが扱えるツールになりつつある。
AIリテラシーは「次世代のリーダーシップ」
「AIが仕事を奪う」という議論に対し、フアン氏は一貫して否定的だ。むしろ、AIを導き、管理し、ガードレールを作り、評価するスキルは、「リーダーシップや人材管理」に近いものになると語った。
エンジニアにとって、AIは単なるライブラリの一つではなく、共に働く「高度な部下」のような存在になる。2026年、私たちは「いかに書くか」といった技能を磨くだけでなく、「AIというインフラを使って何を成し遂げるか」という目的意識が問われている。
人類史上最大のインフラ構築が加速する今、傍観者でいることは最大のリスクかもしれません。ジェンスン・フアン氏が描く「5層のケーキ」のどこに自分の旗を立てるのか。エンジニアとしての「目的」を再定義するタイミングが来ているようです。
文/エンジニアtype編集部
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