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「斜に構えるな」ヨビノリたくみ・ソフトバンク・DeNA・GMOの若きリーダーが悩める学生エンジニアに語る、今やるべきこと

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「やっておいた方がいいこと」を数えれば、無限に出てくる。だが、何かを成し遂げるには人生はあまりに短い。SNSに溢れる情報と焦燥感の中で、私たちは何を信じ、何に時間を投じるべきか。

激動のAI時代、飲み込まれまいと抗う学生エンジニアたちを前に、国内のAI活用を牽引するソフトバンク、DeNA、GMOインターネットグループの若きリーダーたちが集結。「実際に社会に出て、怒涛の開発現場で何を感じているのか」、リアルな例も出しながら、AI時代の生存戦略を熱く語り合った。

パネリストには、教育系YouTuberのヨビノリたくみさんも登壇。先日もSNS上で「理系大学生で知らない者はいない。この10年の学力向上は彼のおかげ」と評され、その圧倒的な影響力が改めて話題となったばかりだ。

技術の進化を日々肌で感じる彼らは、今「AI時代の働き方」をどう捉えているのか。そして、この激流の中で「エンジニアが身に付けるべきもの」「やっておくべきこと」とは。悩める次世代へ贈る、イベントの模様を届けよう。

※本記事は、東大生を中心とした27卒・28卒のエンジニア学生145名が参加した、日本最大級の大学生向けAIキャリアフェス「AIチャレンジャーズフェス2025」の取材記事です。第二部・パネルディスカッション「AI時代を生き抜く力」より一部抜粋、編集して紹介しています。

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ヨビノリたくみさん(@Yobinori

教育系YouTuber 東京大学大学院卒業。YouTubeチャンネル『予備校のノリで学ぶ「大学の数学・物理」』を運営。圧倒的にわかりやすい解説で、学生から社会人まで幅広い支持を集める

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木口 佳南さん(@KananK_AI

ソフトバンク株式会社 2025年新卒入社。学生時代からAIエンジニアとして活動し、インターンや業務委託を6社掛け持ちしながら国際学会での研究発表を行うなど、AIを「仕事のパートナー」として使いこなす。現在はソフトバンクにて、AI関連の経営戦略企画やプロジェクト推進を手掛けている

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島岡 秀知さん

株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA) エンジニア / AI活用推進 2022年新卒入社。エンジニアとして開発に携わる傍ら、生成AIを用いた業務効率化や新規事業へのAI導入をリード

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内野 皓太さん

GMOインターネットグループ株式会社 2023年新卒入社。AI活用推進/AI関連事業立ち上げなど、グループ全体のAI関連プロジェクトに広く参画

Q. AIがビジネスに浸透した今、働き方や学び方はどう変わった?

ヨビノリたくみ:教育の現場で「人に教える」という本質的な部分は実はそれほど変わっていませんが、授業の準備は劇的に楽になりました。例えばノーベル賞。発表直後は英語の記事しかないし、世界中に一次情報が散らばっている。

これらを一気に集めて正確に翻訳し、自分の中に落とし込む作業において、AIはもう手放せません。ハルシネーション(嘘)にさえ気をつければ、専門外の膨大な情報も即座に血肉にできる。緊急性が高いインプットの現場では、最強の武器になりますね。

AIで仕事の生産性があがったことを語るヨビノリたくみさん

木口(ソフトバンク):私は昨年まで大学生だった身ですが、もともと生成AIが普及する前からコードを書く仕事をしてきました。その経験も踏まえて痛感するのは、「自分でコードを書く力」よりも、むしろ「読める力」の重要性です。

AIが出力したコードが一体どのような処理を行っており、どこを修正すればより効率化されるのか。それを自分で読み取り、修正していく能力がますます必要になっていることを感じます。「最初から最後まで、すべて自分一人で1から書かなければならない」と思っていた時期もありましたが、AIの登場によって、エンジニアに求められるスキルの捉え方は明確に変わりました。

島岡(DeNA):エンジニアは今、最も働き方が変わっている職種ですよね。以前は、ある機能をリリースする際、1〜2日で設計を行い、実装に1週間かけ、最後に動作確認やQA(品質保証)を行うのが一般的でした。しかし、その作業が大幅に短縮されました。その分、今は「設計」により慎重に思考を割くようになっています。

また、個人だけでなくチームとしても、一人当たりのタスクの「並列化」や「多様化」が進みました。私自身、開発の傍らAIを使ってInstagramの広告クリエイティブを作ったり、リサーチをまとめたりと、5〜6個のタスクを同時に走らせています。エンジニアでありながらPMやマーケターの役割も兼ねる。こうした多様な仕事を並列化できるようになったのは、AIがもたらした非常に良い変化です。

AIによる開発現場の変化を語る島岡さん

内野(GMO):私はエンジニアではありませんが、「AI熊谷正寿」のデータ作成など、AIがなければ存在しなかった仕事に従事しました。AIの進化もあり、自分一人では到底手を出せなかった仕事が、数多く形になっています。

グループ全体を見渡しても、これまでエンジニアに頼むしかなかった作業を、非エンジニアが自ら自動化するなど、「自ら作る人」が急増しています。

例えば、ちょっとした開発であればエンジニアの手を借りずとも完結できるようになります。イベント用のタイマーや抽選機能も、自分たちでクリエイティブに作ろうと楽しむ中で、「これも自動化できるのではないか」「もっとスピーディーにやれるはずだ」という発想が次々に生まれています。

さらにそこから、「そもそもこの手作業、本当に必要だっけ?」と業務の本質的な見直しにまで議論が広がることもあります。30年続くような組織では、どうしても「これが風習だから」と固執しがちですが、AIを楽しんでいる人たちがその仕組みごと変えていこうとする。これは非常にポジティブな変化だと考えています。

Q. AI時代、どのような能力を持つ人の「市場価値」が高まると思いますか。

AI時代の市場価値を語る木口さん

木口(ソフトバンク):私の周りでもよく議論になりますが、やはり何かに特化した「強いスキル」を持っていないと、今後は厳しいと感じています。いわゆる「何でも屋」になりすぎてしまうと、中途半端な部分はすべてAIに取って代わられてしまうからです。

一方で、「この設計はこの人が圧倒的に強い」という一芸があれば、自然と仕事は集まります。その強い個人の力がAIと掛け合わさることで、さらにアウトプットの精度が上がる好循環が生まれる。まずは器用貧乏を脱し、一点突破のスキルを持つべきだと私自身も強く意識しています。

ヨビノリたくみ:私も特化した人材が強いという点には同意です。ただ、「AIができないことは何か」と探しすぎてしまうのは良くないなと思っています。

歴史を振り返れば、新しい発明があるたびに仕事がなくなる不安は生まれてきましたが、結局は形を変えて生き残るものです。「人間にしかできないこと」を消去法で探すよりも、自分が一番のめり込めるものに特化していく。

僕自身、お笑いやYouTube、勉強といった好きなものにハマっていたら、たまたま時代のニーズと合致しました。熱中していれば、後からチャンスは巡ってくるものです。

島岡(DeNA):企業の活動は利益の追求ですので、事業を作る要素はシンプルに三つです。一つ目は、ドメインエキスパートとして「正しい課題」を見つけること。 二つ目は、形にする(作る)こと。 そして三つ目は、届ける(売る)ことです。

この三つが揃えば利益は上がります。エンジニアだからといって、作ることだけにこだわらず、例えば「特定のSNSに異常に詳しい」といったドメイン知識を武器にする。自分の強みを他の領域へ広げていく姿勢が、結果として価値を高めるはずです。

内野(GMO):私はゼネラリスト寄りなので、「AIに淘汰される恐怖」を一番リアルに感じているかもしれません。その中で重要だと思うのは、「人を巻き込み、適切に指示(リクエスト)を出す力」です。

AI時代の市場価値を語る内野さん

内野(GMO):これはAIを使う際も同じです。例えば、AIに「渋谷でラーメン屋を探して」と頼むにしても、ただ丸投げするのではなく、こちらの期待値を正確に伝え、出てきた回答をレビューし、必要に応じて修正を依頼する。このプロセスを通じて、自分の意図を言語化する力が鍛えられます。AI相手に指示出しの練習をしておくことは、対人間の仕事においても必ず活きてくるはずです。

島岡(DeNA):結局、AIをうまく使えている人は、AIがない時代でも仕事ができる人なんですよね。誰かにタスクを適切に渡すというコミュニケーションの本質は変わらないからです。

内野さんが挙げたラーメン屋の例で言えば、仕事ができる人はリサーチの前に「予算は?」「こってり系?」「並べる?」といった前提条件(コンテキスト)をまず整理します。プロンプトエンジニアリングも、本質は、人に適切に仕事を依頼する技術と同じ。このコミュニケーションの要さえ掴んでいれば、AI時代でも怖くないと思います。

Q.AIによって学習も開発も高速化している今、もし皆さんが今、大学生だったら、何に時間を使いますか?

ヨビノリたくみ:僕の性格もあるのですが、何かを見て感動したとき、どうしても自分が「作る側」になりたいと思ってしまうんです。

例えば今なら、「生成AIってすごいな」と感動したら、その仕組みを突き詰め、自分でも作ろうとするはず。 その性質が一番極端に出ているのが、実はお笑いです。多くの人はM-1を見て満足すると思うのですが、僕はどうしても自分でやりたくなってしまう。

だから毎年、決勝の翌日には理系ネタのパロディをYouTubeに上げています。去年なら、真空ジェシカさんの「言うとしたら僕」というつかみを拝借して、黒板に書いた等号を見せながら「言うとしたら等号」という置換積分のネタをやりました。

AI時代何に時間を使うか ヨビノリたくみさん

ヨビノリたくみ:結局、見てるとやりたくなっちゃうんです。もし僕が今大学生だったら、間違いなくAIを使って何かを自分で作っているでしょうね。今は「利用」のスピードが速い時代ですが、あえて作る側の発想で動くことに時間を注ぎたいです。

木口(ソフトバンク):私は卒業してまだ1年ほどなので、「大学時代に戻りたい」という感覚はあまりないのですが、逆にAI時代の大学生を過ごした身として、後悔のない時間の使い方ができたと思っています。

当時はインターンや業務委託を6社ほど掛け持ちしながら、卒論を国際学会へ出し、さらに農業インターンなど一見バラバラな活動を常に同時並行でやりまくっていました。
(『いつ寝てたんですか?』の問いに)……ちゃんと寝てましたよ、今はもっと寝てますけど(笑)

なぜそこまで詰め込んだかというと、社会人になるとどうしても1日8時間は会社に拘束され、AIが持つ多様な可能性に触れる機会が限られてしまうからです。私が6社も掛け持ちできたのは、AIを仕事のパートナーにしてスピードを上げたから。 学生時代に働きまくって「自分はこれがいけそうだ」という領域をあちこち探った経験は、今のキャリアに直結しています。何をやればいいか分からない人ほど、AIを駆使してあえて複数のことに同時にチャレンジしてみてほしい。その方が絶対に面白いですから。

AI時代どう時間を使うか 木口さん

内野(GMO):おじさんみたいなことを言うか、今日からできることを言うかなんですけど……(笑)

先におじさんみたいなことを処理しておくと、自分が「好きだ」と思うものには、とにかく後悔のないように本気で打ち込んでほしいです。僕らの世代はコロナ禍で大学生活が制限され、やりたくてもできないことが多くありました。今、目の前にある「やりたいこと」に全力で取り組む経験こそが、結果として皆さんの人間的な魅力を一番育ててくれるはずです。

もう一つ、実践的なアドバイスとしては、「AIを使い倒して、小さな失敗を積み重ねる」ことです。例えば、サークルの飲み会を盛り上げるアプリを作って仲間に共有してみる。失敗しても誰にも怒られない今の環境で、低いコストで試行錯誤を繰り返すんです。そうすることで、自分の意図を相手に分かりやすく伝える力が養われます。

いきなり社会に出て部下への指示で失敗し、落ち込む必要はありません。まずはAIという「人間じゃないもの」を相手に、人間に試したいことの練習をたくさんしておく。もし僕が今学生だったら、間違いなくAIを「最高の練習台」として使い倒していますね。

島岡(DeNA):「やっておいた方がいいこと」を数え始めると、おそらく無限に出てきてしまいますよね。私自身、3年前までは大学生だったので、当時は会計や英語、人間力など、何かに突き動かされるような焦燥感の中にいました。

ですが今思うのは、「いつか必要になるだろう」という動機で学んでいることは、実はあまり身につかないということです。エンジニアの世界でも「Rustが流行っているからやらなきゃ」といった焦りを感じがちですが、それは使うあてもないのに詳しくなろうとする「事典主義的」な学習に過ぎません。

今はAIによって学習効率が劇的に上がっています。だからこそ、まずは「何かを作ってみる」「これをやってみる」と先に決めてしまい、「必要に迫られたから学ぶ」という順序に変える。その方が圧倒的にコスパ良く、生きたスキルが身につくと確信しています。

AI時代何に時間を使うか 島岡さん

島岡(DeNA):また、もう一つ伝えたいのが、自分なりの「幸せの閾値(いきち)」を見つけてほしいということです。

SNSにはキラキラした生活や流行の勉強法など、あらゆるプレッシャーが溢れています。でも、一度自分で高いホテルに泊まったり、美味しいものを食べたりして、「意外と自分はこれに幸せを感じないな」という境界線が分かってくれば、余計なものを勇気を持って捨てられるようになります。

「何をするか」と同じくらい、「何をやめるか」を決めることは重要です。その判断基準を持つために、学生のうちに色々な体験をして、自分の「幸せの物差し」を手に入れておいてください。

Q.では最後に一人ずつ、明日からやってほしいと思っていることと、学生の皆様に一言ずつお願いします。

木口さん(ソフトバンク):明日からやってほしいこととして、超具体的な話をします。……タイピングは、早ければ早いほどいい。これは間違いありません。AIの出力がこれだけ速くなった今、人間側の入力が遅いと一生追いつけないからです。「音声入力でいいのでは?」という声もありますが、現実のオフィスで周囲に人がいる中、常に声を出して指示を出すのは難しい。結局はキーボードを叩く速さが、AIから答えを引き出す速度に直結します。今のうちに極限まで高めておいて損はありません。

それともう一つ。今ここにいる就活中の皆さんに伝えたいのは、あえて「就職」という道を選ぶ面白さです。私自身、入社直前まで起業や独立を勧められましたが、実際に会社に入って分かったことがあります。日本の伝統的な大企業が必死に変わろうとしている過程は、ものすごいカオスなんです。これはベンチャーとはまた質の違う、非常に刺激的な環境です。

AIという武器を持って、あえて変革期にある組織へ飛び込み、仕組みそのものを変えていく。そんな挑戦をする皆さんと、いつか一緒に働けることを楽しみにしています。

ヨビノリたくみ:僕からの一言メッセージは、「斜に構えない」ということです。かつてインターネットが出てきた時も、「あんなもの……」と冷笑していた人はどんどん置いていかれました。YouTubeも同じです。「YouTubeなんて……」と言わずに始めた人たちが、今の地位を築いています。新しいものにいち早く飛びついて、先行して損をした人なんていないわけです。

4人のパネルディスカッションの様子

ヨビノリたくみ:僕自身、TikTokやInstagramができた時は「よく分からないけれど、とりあえず登録しよう」と何も考えずに始めました。新しいサービスに「あんなの流行るの?」「ダサくない?」と批判するのは簡単ですが、そこで斜に構えずに飛び込んだ人だけが、今は大きな成功を収めています。

これから先、新しい技術に対して「嫌だな」「怪しいな」と嫌悪感を感じる瞬間が何度もやってくるはずです。そんな時こそ、まずはやってみる。それが、この激動の時代を生き抜くために最も大切な姿勢だと思っています。

内野(GMO):今、これだけAIが騒がれている時代だからこそ、私は「この人と仲良くなりたい」「この人と一緒にチームで仕事がしたい」と思ってもらえるような人間であることが、何より大事だと思っています。

無理に自分を偽るのではなく、自分の良いところを素直に周りに伝えられる。私自身も日々反省しながらですが、そんな人間でありたいと願っています。

そのためには、島岡さんの話にもあった「自分は何を大事にしたいか」という価値観が重要になります。その人独自のセンスや価値観こそが周囲との違いになり、その人の魅力に繋がるからです。

「あの店主に会いたいから、またあのお店に行こう」と思われるような、そんな「理想の店の店主」のような人格を目指したい。もし少しでも共感していただけたら、「あんなことを言っている奴がいたな」と、心の片隅に留めておいてもらえると嬉しいです。

AI時代だから大事したいことを語る内野さん

島岡(DeNA):最後に私からお伝えしたいのは、OpenAIのサム・アルトマンがブログに書いていた「賢い人と働けることは、最高の福利厚生である」という言葉です。

自分には見えていない世界を見せてくれる賢い人と働くこと。それはお金や名誉を超えた、何よりの幸せだという話です。

AI時代、誰でもそれっぽいアウトプットが出せるようになった今だからこそ、自分はどんな人といるのが一番幸せなのかを、ぜひ多くの体験を通じて見つけてください。人生の3分の1以上を捧げる仕事において、隣に誰がいるかは環境そのものです。自分の力を最大限に引き出してくれる人と働くこと。それこそが真の福利厚生なのだと、慎重に選んでほしいと思います。

もう一つ、私が大切にしている言葉があります。「人生は何もしないでいるには長すぎるし、何かを成し遂げるには短すぎる」という言葉です。

やりたいことも興味も尽きませんが、何かを成し遂げるには人生はあまりに短い。だからこそ、自分の幸せの閾値を知り、「何を捨て、何を突き詰めれば自分の才能が開花するのか」を若いうちに見極めるといいと思います。ぜひ、これからの時代を一緒に作っていきましょう。

AIチャレンジャーズフェス登壇者が学生にエールを送る様子

撮影/桑原美樹 編集/玉城智子(編集部)

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