Vol.129

山田進太郎氏はなぜ「C2C」に注目したのか? フリマアプリ『メルカリ』で目指す世界市場開拓【連載:NEOジェネ!】

世間をアッと言わせるユニークなアイデアと技術力で勝負しているニュージェネレーションを応援するこの連載。今回紹介するのは、誰でも簡単に出品できるフリマアプリ『メルカリ』。開発は元ウノウ株式会社の山田進太郎氏が代表取締役を務める注目のベンチャー企業コウゾウだ。常に世界進出を目指す山田氏の新たな展望とは?

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株式会社コウゾウ
(左)代表取締役社長 山田 進太郎氏
(右)エンジニア 大庭 慎一郎氏

早稲田大学生時代に『楽オク』の立ち上げに参加。ウノウ株式会社を設立し、ソーシャルゲーム制作会社のZyngaへバイアウトするなど、エンジニア、経営者として輝かしい経歴を持つ山田進太郎氏。

Zyngaのウノウ買収後、Zynga Japanでジェネラルマネージャーとして活躍していた山田氏は2012年1月16日に同社を退職。半年の世界一周旅行という充電期間を経た、2013年2月1日、新たに代表取締役社長として株式会社コウゾウを立ち上げた。

その後、5カ月間の準備期間を経て、7月2日にアンドロイド用フリマアプリ『メルカリ』をリリース。7月23日には、同アプリのiOS版もリリースした。

『メルカリ』は、誰でも簡単にフリマ感覚で自分の持っている物を出品したり、ショッピングを楽しむことができるC2Cサービス。『ヤフオク!』に代表される既存のWeb系オークションサービスとの違いは、山田氏が「3分で出品できてしまう」と謳う手軽さにある。

出品者側は、商品をスマホで撮影して写真をアップ。自動で出てくる項目にしたがってジャンルやサイズ、金額などを指定するだけで出品ができる。写真のフィルターを選んだり、文字を入れたりといった加工も可能だ。

購入者側も、ネットオークションでありがちな煩雑な出品者とのやり取りが一切不要。クレジットカード、コンビニ、銀行ATMでの支払いに対応しているので、Amazon.comなどのネットショッピングサービスを使用する感覚で商品を購入できる。

支払ったお金は一度事務局が預かるシステムを採用。売り手と買い手が相互に評価をした時点で支払われる。このように、仲介が入ることで詐欺や未配達などのトラブルを防ぎ、安心感のあるショッピングが可能となっている。

アイデアの出発点:市場さえあれば、追従者でも構わない

「久しぶりにベンチャー企業の空気を感じることができて、今はとても楽しんでいる」と語る山田氏

ソーシャルゲームの『まちつく!』や写真共有サービス『フォト蔵』、現『ぴあ映画生活』などを手掛けた山田氏が、次なる一手としてスマホによるフリマサービスを選んだのはなぜだろうか?

「もともと『楽オク』や『Fujisan.co.jp』でeコマースの経験はありましたし、トランザクションが発生するサービスが好きなんです。あと、今度サービスを作るなら、プラットフォーマーをやりたいという思いもありました。こうした思いを実現できそうなのが、スマホを使ったフリマサービスだったんです。ここ1、2年でフリマアプリが複数リリースされ、いくつかは一定のユーザー数を獲得するのに成功していましたし、確実に市場があると思っていました」(山田氏)

2012年12月にエンジニアtypeが行ったインタビューの際にも、「すでに市場がある領域でサービスを提供することが、ベンチャー企業が失敗しないコツ」と語っていた山田氏。

とはいえ、『毎日フリマ』や『Fril』など先行するフリマアプリがある以上、後追いとなる感は否めない。

「確かに現在の『メルカリ』は、追従者としてシェアの獲得を目指す立場です。ただ、フリマアプリ自体がまだまだ発展途上のサービス。シェアを奪うというより、今までのオークションサービスとは異なるフリマアプリの展開を通して、C2Cサービス市場の伸びしろを開拓するという感覚が近いですね。スマホやタブレットの進歩と普及もあり、誰でも簡単にできるフリマアプリを提供できれば、C2C市場が伸びる可能性は非常に高いと考えています」(山田氏)

開発のポイント:HTML5をやめてネイティブに。UIのウソがUXを高める

市場拡大のタイミングを狙い、満を持してリリースされた『メルカリ』。その技術的なポイントとは何か。

「最初は主にHTML5で開発していたんですが、動作が遅く、操作性も悪いなど、パフォーマンスが悪かったので止めました。HTML5で作れば変更がサーバ側だけでできるし、何かあってもすぐに修正できるので開発側にとっては便利なのですが、ユーザーからするとそれは関係なくて、重いだけで使いたくなくなります。サクサク動くことを最優先して、フルネイティブで再開発を始めました。それが、今年の4月くらいです」(山田氏)

そのころ、iOSアプリの開発ができる人材を探していた山田氏が声を掛けたのが、エンジニアの大庭慎一郎氏だった。

本業としてのiOSアプリ開発は今回が初めてとのことだが、友人と開発したiOSアプリ『Drift Writer』などの実績を山田氏が高く評価し、参画に至ったという。

そんな大庭氏がアプリの評価を高めるために行った工夫は、「システムでウソをつく」ことだった。

「デザイナーと打ち合わせを重ね、最適なUI、UXを探りました」(大庭氏)

「画面を下に引っ張ると1秒程で新着の商品が読み込まれるのですが、実際の処理としては1秒もかからずできるんです。わざと時間をかけて画面を切り替えることで、ユーザーがロードを実感できるよう、UXを工夫しました。

ほかにも、画像をタッチするとドラッグできたり、ロゴをタッチすると初期画面に戻ったり、ユーザーができるかな? と思うようなことはすべてできるようになっています」(大庭氏)

ユーザーの需要に見合わない技術は、それがいかに最新で高度なものでも、アプリの評価には直接つながらない。

快適さを実現するための発想力が、ユーザーの評価を重視する『メルカリ』の開発に活かされている。

リソースは有限。だから「譲り合うサービス」が求められる

今回、山田氏がC2Cサービスにこだわったのは、C2C市場に拡大の可能性を感じたこと以外にも理由がある。

「世界的に経済活動が活発化していますが、一方で日本は企業の誘致のための法人税を取りづらいし、優秀な個人を呼び寄せるために所得税も下げていく傾向にあります。そうなると、消費税を増加させるしかない。B2Cサービスでは消費税が掛かるため出費が増える一方、C2Cは消費税が掛からないじゃないですか。となれば、C2Cを選択する人が増えるのは自然なことです」(山田氏)

さまざまな世界を巡り、世界経済の実情を目にしてきた山田氏だからこそのグローバルな視点だ。

加えて、C2Cサービスは、活発な経済活動によるリソース不足という別の問題を解決する一助にもなり得るという。

「限られたリソースを無駄なく活用するには、いらなくなったものは捨てるのではなく、誰かに譲るという発想が大事になってくる。その発想を社会で現実的に機能させるシステムがC2Cサービスであると考え、開発を進めることにしました」(山田氏)

衣類だけでなく、家電からハンドメイドまで幅広いジャンルの商品が出品されている

既存のオークションサービスは、「儲ける」感覚で出品するユーザーが多い。一方、『メルカリ』はフリマと同じように自分で金額を設定することで、いらなくなったものを「譲る」という感覚で出品できるサービスになっている。

「リソースの逼迫により、個人間での譲り合いが重要になる時代が来るはずです。そんな時代にマッチしたサービスを、日本から世界に発信したい。スマホやタブレットの普及で、世界中で一般の人がネットを活用する時代だからこそ、日本が世界をリードできる可能性が実は大きいんです。ガラケー時代からモバイルサービスを開発し続けてきた日本には、優れたサービスを生み出す土壌があると思います」(山田氏)

前回の弊誌インタビューで「タイムマシン経営の時代は終わった」と語っていた山田氏。その言葉を実現するべく、また、リソース不足の問題解決と日本の技術力の得意分野を活かせるサービスとして誕生したのが『メルカリ』だった。

メガベンチャーを目指すなら、まずは堅実な組織づくりから

今後はこのサービスを武器に、世界展開を目指すと山田氏は話す。

「まずは先進国を中心に展開していきます。日本でKPI(重要業績達成指標)を高めた後は、洗練されたサービスを一気にアメリカで展開したい。その次はEU、アジア。でも、今はリリースから間もないですから、まずは日本で成功させることに集中しています。時差を付けて少しずつ広げていくつもりです」(山田氏)

前回のインタビューで、世界展開のためには、「メガベンチャーを作ることを念頭に置いた組織づくりが必要」と語っていた山田氏。新会社であるコウゾウも、このメガベンチャー構想の延長線上にあるのであれば、今やっている“下準備”はどんなものか?

シェアオフィスを使うコウゾウのスペースは左半分。ここから世界への挑戦が始まる

「会社としてきちんと運営していきたいため、社会保険を整えたり、ワークフローを整えたり、上場基準で仕組みを作っています。良いエンジニアにはきちんとした対価を受け取ってほしいのですが、そこはベンチャーなので『給与は若干抑え目でもいい』という人には多めにストックオプションを付与しています。最終的に、その方がリターンも圧倒的に大きくなるようにしていきたいと思ってます。会社という組織で活動するのが、結果的に良いサービスを作るのに一番早いんです」(山田氏)

優秀な人材とともにユーザーが満足するアプリを開発し、世界を目指す。それを可能にするために必要とする、山田氏にとって「優秀なエンジニア」とは、どのようなエンジニアなのか。

「今はコンポーネントなども整っていてあまり理解していなくてもプログラミングができる時代です。その中でも、仕組みの本質を理解しているエンジニアが良いエンジニアではないでしょうか。『なぜアプリが落ちるのか?』、『 メモリがどう使われてるのか?』などというレベルまで理解していないと、問題解決もできない。コウゾウのエンジニアは皆それができる、信頼できるメンバーです」(山田氏)

世界規模のメガベンチャーを目指す山田氏のビジョンは変わっていない。事実、「良い人材が常に正しい方向に進むように導くのが僕の役目」という言葉はどちらの取材でも聞くことができた。ブレない軸を持つリーダーの下、大きな一歩を踏み出したコウゾウが世界をリードする日が待ち遠しい。

取材・構成/桜井祐(東京ピストル) 文/長瀬光弘(東京ピストル) 撮影/竹井俊晴

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