シャープとしても、研究開発技術を元に新製品を生む流れを加速したいと考えていて、私たち研究部門からの提案に期待されてもいました。しかし、事業部門の判断はやはり「スケールメリットが期待できそうにない」というものでした。
それはもちろん分かるけれど、こんなにユニークな技術なのに、世の中に出せずに終わるなんてもったいない。シャープという枠を外れてでも世の中に届ける価値がある、絶対に面白いと思ってもらえるはずだという思いがありました。(シャープ西橋氏)
シャープ、日立製作所、デンソーなど大手メーカーのエンジニアたちの新たな挑戦とは?【メーカー特集】
誰もが知る大手メーカーではどのような技術者たちが働いているのか。目の前の課題に対して、いかにして向き合っているのか。知っているようで知らない大手メーカーの舞台裏に迫ったインタビュー記事を特集でご紹介します。
業界を牽引するメーカーで活躍する技術者たちのリアルな姿から、自身のキャリアに生かせるヒントがきっと見つかるはずです。
「研究開発の成果を世に送り出したい」 シャープの技術者たちが“死の谷”を越えたクラウドファンディングMakuakeプロジェクト
液晶技術研究の副産物として、マイナス24℃から28℃まで保つ温度帯を自在に変えられる独自の蓄熱技術を開発したシャープ。しかし、その実用化のアイデアは市場規模と適社性を理由に事業部門には受け入れられずにいました。
そこで光明になったのが、クラウドファンディング。埼玉県幸手市の石井酒造と組み、マイナス2℃をキープする保冷パックと日本酒をセットにした『冬単衣』をMakuakeで販売したところ、達成率1800%超えの大成功を収める結果となったのです。プロジェクトメンバーたちのインタビューをお届けします。
世界で認められた半導体エンジニアが「雌伏10年」を経てAIのトップランナーに【日立製作所/矢野和男氏】
日立製作所の矢野和男氏は、いまや、AIやビッグデータ分野のトップランナーの1人。2014年に上梓した『データの見えざる手』(草思社)では、「幸福」や「運」といった人間の感覚や営みと、データとの意外な関係を明らかにして世に衝撃を与えました。そんな矢野氏に「なぜAIやビッグデータというテーマを選んだのか」と聞いたところ、返ってきたのは意外な答えでした。
「電気工学や情報工学などを専攻したエンジニアなら、電気やコンピュータといった特定ドメインにこだわる傾向があるかもしれません。しかし、物理は特定のドメインとだけ結び付いているわけではない。抽象度が高く、データを扱う機会も多い。だから、ドメインに対するこだわりも、さほどありません。物理という学問は、AIやビッグデータと親和性が高いのではないかと思います」
はんだ付け技術のエキスパートから統計解析、そしてデータサイエンスの伝道師へ【デンソー/吉野 睦氏】
試行錯誤を繰り返しながらモノづくりにおける統計解析手法の高度化に取り組んできたデンソーの吉野睦氏は、もはやデータサイエンスの伝道師のような存在です。しかし、彼が本格的にデータと付き合い始めたのはキャリアの後半になってから。どのようにして、データサイエンスへの道を切り拓いてきたのか聞きました。
「私が入社した時期には“メカ屋”がたくさんいましたが、ある時期からメカオンリーでは仕事ができなくなりました。そこで、エレクトロニクスやソフトウエアなどを学んで、エンジニアとしての幅を広げ、自分の価値を高めていった。私のようなキャリアシフトを経験したエンジニアは、デンソーでは決して珍しくありません」
構成/エンジニアtype編集部
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