キャリア Vol.902

「エンジニアは既存の概念をぶっ壊す武器を持っている」メガサービスを手掛ける企業が技術者に求めるものとは【ドワンゴ 夏野剛×ZOZOテクノロジーズ 今村雅幸×池澤あやか】

大規模サービスを手掛ける企業が今、喉から手が出るほど欲しいエンジニアとは、どんな人材だろうか。メガサービスの運営や改善に追われる現場では、今何が起こっているのだろう。

2019年6月30日(日)、2020年4月に開校するIT専門校「バンタンテックフォードアカデミー」の開校記念イベントとして、「デジタル変革時代のトップリーダーが本音を語る~IT戦略とテック人材~」と題した講演が開催された。

タレント兼エンジニアの池澤あやかさんをモデレーターに、株式会社ドワンゴ代表取締役社長・夏野剛さん、株式会社ZOZOテクノロジーズ 執行役員VPoE・今村雅幸さんが登壇。今、メガサービスを手掛ける企業で求められているエンジニア像とは?講演内容の一部を紹介しよう。

タレント兼エンジニア
池澤あやかさん(@ikeay):写真左

1991年生まれ。東京都出身。第6回東宝シンデレラオーディション審査員特別賞受賞。情報番組をはじめとするTV番組への出演やメディア媒体への寄稿を行う一方、フリーランスのソフトウェアアエンジニアとしてアプリケーションの開発に携わる
株式会社ドワンゴ代表取締役社長 / 慶應義塾大学 政策・メディア研究科 特別招聘教授
夏野剛さん(@tnatsu):写真中央

1988年早稲田大学政治経済学部卒。99年世界初の携帯電話を利用したインターネットビジネスモデル「iモード」サービスを立ち上げる。2001年、ビジネスウィーク誌にて世界のeビジネスリーダー25人の一人に選出される。05年ドコモ執行役員、08年退社。現在は慶應大学の特別招聘教授として教鞭をとる傍ら、トランスコスモス、セガサミーホールディングス、グリー等複数企業の取締役を兼任。19年2月ドワンゴ代表取締役に就任。内閣官房クールジャパン官民連携プラットフォームアドバイザリーボードメンバー、経産省・IPA 未踏IT人材発掘・育成事業統括プロジェクトマネージャー、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会参与(マスコット選考検討会議委員、チケッティングに関する有識者会議委員、入賞メダルデザインコンペティション審査会メンバー)等、経産省や内閣府で各種委員も務める
株式会社ZOZOテクノロジーズ 執行役員 VPoE 開発部 部長
今村雅幸さん(@kyuns):写真右

株式会社ヤフーにエンジニアとして新卒入社後、『Yahoo! FASHION』や『X BRAND』などの新規サービス開発やレコメンデーションの特許などを取得。2009年に独立し取締役CTOとしてVASILYを創業。17年にVASILYを現・株式会社ZOZO(旧・スタートトゥデイ)へ売却後、現・株式会社ZOZOテクノロジーズ(旧・スタートトゥデイテクノロジーズ)発足と同時に同社執行役員に就任。現在はVPoEとしてエンジニア採用や教育など幅広くエンジニアリング組織のマネジメントを行っている

既存のサービスをアップデートする“リノベーションエンジニア”が欲しい!

池澤:夏野さんは『ニコニコ動画』、今村さんは『ZOZOTOWN』と、お二人ともメガサービスを手掛けていらっしゃいます。現在、主に取り組んでいるのはどんなことでしょうか?

夏野:システムが大規模になってしまったので、2年がかりで改修に取り組もうと考えているんです。ランキングの仕組みを見直したり『AbemaTV』と連携したりと、機能やUIを大きく変更しようとしています。

今村:あれだけのサービスを2年で改修できるなら、かなり早いと思いますよ。

夏野:ゼロから新しいシステムをつくり直して、そちらに全部移管してしまいたい!という衝動に駆られます(笑)

今村:『ZOZOTOWN』も長く続いているWebサービスなのでよく分かります(笑)。ゼロからつくるより、改修の方が難しいですよね。高いスキルや現状を把握する能力が必要で、莫大なコストがかかります。

夏野:そこが難しいところですよね。建築工事に置き換えると、ゼロからシステムをつくる、いわゆる“新築”を手掛けるエンジニアと、改善や改修を行って既存のサービスをより大きく飛躍させる“リノベーション”が得意なエンジニアって、根本的に違うんですよ。

ゼロイチができるエンジニアだけでなく、現状をきちんと把握し既存のサービスをアップデートできる“リノベーションエンジニア”が切実に欲しい!(笑)

「小銭が大嫌い」「ネットでファッションを楽しみたい」
新たなサービスは”身の回りの改善点”から生まれた

池澤:今はIT人材が枯渇していると言われていますが、とはいえプログラミングだけできればいいというわけではないですよね。これから先エンジニアには、どんな考え方が必要だと思いますか。

夏野:まずは自分の身の回りにある改善したい課題について、「どんなシステムがあればいいのか」を考えることじゃないでしょうか。「もっと簡単に英語が勉強できるツールをつくれないかな」とか「趣味のラジコンがもっと簡単にできるようになるアプリってないかな」とか。

それをプログラミングでどう解決すればいいのか、そのためにはどんな技術や言語が必要なのか。そうやって考えていくと、「この場合はPythonだな」など、今学ぶべき技術が分かってくるわけです。

池澤:そう思います。プログラミングってひと言で言っても、とても広いですよね。ゲームプログラミングもあれば、サーバーサイドプログラミングもあるし、フロントエンドプログラミングもある。つくりたいソリューションありきで、やりたい技術を掘り下げていった方がいいと思います。

今村:プログラミングは、手段の一つですからね。「何をしたいか」がないと、ただ言語を勉強しただけで何もつくりたいものがない、ということになりかねません。技術を使って何がしたいかを明確に持つことが大事で、それがあるとプログラミングがもっと楽しくなると思います。

そもそも『ZOZOTOWN』も、当時インターネット上で買えないブランドをECで買えるようにしたのが始まりですしね。

池澤:ファッションコーディネートアプリ『IQON』はどういった経緯で開発されたんですか?

今村:当時、洋服に関するコンテンツは雑誌がメインで、インターネット上にはほとんどなかったんです。世の中に売っている商品の画像を組み合わせて、インターネット上で好きなようにコーディネートをつくったり閲覧できたりしたら、よりファッションを楽しめるだろうと思ったんです。

夏野:僕が『おサイフケータイ』をつくったのだって、「小銭が大嫌いだから」という理由です。触ると汚いし、じゃらじゃらするし、失くすし、いちいち面倒くさい。

池澤:私自身も、タレント活動の傍らスマートロックを開発しているtsumugというハードウェアスタートアップにエンジニアとして携わっているんですけど、参加している理由は、「物理鍵」が本当に嫌だからで。失くすし、落とすし、セキュリティーも弱い。身の回りで自分が気になる改善点を見つけて、そこから始めれば自然にユーザーとしての視点も身につきますよね。

エンジニアは「既存のやり方や概念をぶっ壊す武器」を持っている

池澤:最後に改めて、今必要とされているのはどのようなエンジニアでしょうか。

夏野:経営に興味がある人ですね。日本は2020年以降、人口減少が加速していきます。エンジニアが底上げをしていかないと、日本自体が滅びてしまう。私自身、もっとITの力を使って効率よく経営できるようにならないと、と思いますね。

今村:そうですね、非効率的なものを効率化する技術は身につけておいた方がいいと思います。

自分がもしこれから新しく何かをつくるとしたら、どこの業界により大きな課題が眠っているか、必死になって考えます。先ほどの話にもありましたが、身の回りの身近な課題に対して、「技術を駆使してどうすれば解決できるのだろう?」と考える癖をつけてほしいなと思います。

池澤:これからの時代、エンジニアにはどんな可能性があると思いますか?

夏野:プログラミングさえできれば、「あ、このアプリが欲しい!」と思った時に、個人ですぐ開発できるところに、大きな可能性があると思っています。

だって今はバックエンドも、機械学習も、サーバーを持たなくたって格安の『高火力コンピューティングシステム』を使えるんです。

今村:とても恵まれている時代ですよね。

夏野:例えば、ある学生が音声認識を使って、英語のスピーチをトランプ大統領の声に合成するっていう技術を開発したんですけど、そのサンプルデータって、YouTubeで取ってきているんですよ。

今村:昔に比べたらいろいろなAPIが増えてますもんね。僕たちの扱うファッションの分野では、まだまだ IT化が進んでいない部分が多くあります。変革を起こせる余地が多い分野は可能性を感じますよね。

池澤:『ZOZOSUIT』なんてまさにそうですよね。そういう時、大変なのはどういうことですか。

今村:既存のやり方が当たり前になっている世界に新しい手段を持ち込み、理解してもらうのは大変なことです。僕たちが取り組んでいる洋服へのアプローチを1から説明し、納得してもらうのは難しいところだなと日々感じています。特に海外だと文化の違いもあって、より難易度は上がります。

夏野:エンジニアは、まだ変革の及んでいない業界に乗り込んで、「既存のやり方や概念をぶっ壊せる武器」を持っています。ぜひそれを自覚して、皆さんには頑張って欲しいですね。

取材・文/石川 香苗子  画像提供/バンタン

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