Techトレンド Vol.976

ドイツで開催された世界最大規模の家電イベントIFA2019で「スマートキッチンの明日」を見てきた話【必読!Tech Blog Pick Up】

必読!Tech Blog Pick Up

注目企業のエンジニアは日々どのように仕事をしているのか? どんな開発体制・技術・思考を用いてサービスを開発しているのか? 各企業の現役エンジニアたちが自らの言葉で綴るTechブログから、必読ポストをエンジニアtype編集部が厳選してお届けします!

■今回は「未来の料理体験をいち早く届けるnote」からPick Up!
※元記事はこちら

今回は、クックパッドが提供するスマートキッチンサービス『OiCy』の情報やチームのこと、スマートキッチン業界の最前線についてまとめた『未来の料理体験をいち早く届けるnote』より、スマートキッチン事業部の住さんのポストをご紹介。2019年9月6日〜11日にドイツのベルリンで開催された、世界最大規模の家電見本市IFAの様子をまとめてくれています!

※以下2019年9月のポストです


みなさんこんにちは、クックパッドスマートキッチン事業部の住です。今年も9月6日〜11日にドイツのベルリンで開催された世界最大規模の家電見本市IFAに行ってきました!

世界最大規模の家電見本市IFA

IFA2019 日本語サイト

今年のIFAを一言で総括するならば、「コンセプトから実装へ」実現に向かうスマートキッチンという表現をしたいと思います。

昨年のIFAや今年1月のCESでは、「まだ製品レベルに達していないものの、できたら夢のようなコンセプトモデル」が多く、世の中に出た後どんな体験ができるのかといったサービスのイメージはつかめませんでした。一方今年のIFAは目新しいコンセプトは減っているものの、実際にスマートキッチン製品を世の中に発売するためのつくり込みや、実際に発売するスマートキッチン製品の発表をしているというケースが多く、各社本気でスマートキッチンを実現しようとしている事がより明確になってきました。

1.レシピとエコシステムのあたらしい関係

レシピサービスと家電メーカーの関係図

こちら以前スマートキッチンカオスマップの記事で紹介させていただいたレシピサービスと家電メーカーの関係図でIFA直前のものになります。今回のIFAの各ブース等で情報収集したところ……

レシピサービスと家電メーカーの関係図

IFA2019を経てこのような感じになりました。赤線の部分が今回新しく追加されたものになります。

明確に別れた自前プラットフォームかオープン戦略か

スマートキッチンのプラットフォームの構成要素として「家電機器」「レシピ」「食材EC」の3つが中心にくることが多いのですが、点線で囲った家電メーカーはある程度自前でプラットフォームをつくることを考えている家電メーカーになります。逆に、特に点線がなく外部サービスと繋がっているメーカーは、プラットフォームというより外部サービスと家電が連携する事を重視していることを示してます。IFAやCESにおいて見ている限りでは

・SamsungのFamily Hub
・B/S/HのHome Connect

が2大プラットフォームとなっており、ビジネスエコシステムも出来上がってきている感があります。

・LGのSmart ThinQ
・HaierのU++
・Whirlpool
・Miele

は複数の機器を作っている大きな家電メーカーとして各スマート機器を連携するプラットフォームをつくっているけれど、ビジネス的にはまだ明確な方針はなさそうという感じです。それ以外のメーカーは各機器を個別にサポートするシンプルなアプリを用意するにとどまり、「独自のプラットフォームを築くよりも、オープン化してユーザー利便性を確保しよう」という方向のようですが、背景としてはレシピ問題があると思われます。

スマートレシピベンチャーInnitの躍進

家電メーカーが持つスマートキッチンの大きな課題としては、「レシピやサービスを家電メーカー自身が作って維持し続けることが非常に困難」というものがあります。

調理機器が高度化してできる事が増え、細かい制御が可能になる反面、ユーザーが自分でパラメーターを調整することを強いられ、専門知識がある人でないと使いこなせなくなりがちなのです。それを解決するためには、どう使えばいいかが分かるレシピコンテンツを多く用意することなのですが、「そもそも機器メーカーにサービスを作るのが難しい」「仮にサービスを作っても、家電を使うためのレシピサービスは日常では使いにくい」などの理由でハイリスクローリターンになりがちです。

Innitはアメリカのベンチャー企業ですが、現在彼らは「オーブンに特化した体験」をつくり込んでおり、各家電メーカーがサービスを作る苦労をせず、にユーザーの満足度を維持することができます。

レシピサービスと家電メーカーの関係図

同様のベンチャーとしてはSideChefもありますが、Innitの方がパートナー戦略としては先行しているようで、今回のIFAの多くのブースでInnitと接続している各家電メーカーのスマートオーブンのデモを見ることができました。

どんなレシピも取り込めるWhisk Extension

WhiskはサムスンのベンチャーファンドSamsung Nextの投資先で、メーカーのレシピ問題を解決する面白いアプローチだと思い、取り上げます。

WhiskはGoogle Chromeの拡張機能をリリースしており、ユーザーがレシピサイトを訪問してWhiskボタンを押すと、Whiskはそのレシピの内容を解析をして取り込みます。

今はまだ解析できるのは材料欄だけのようですが、サムスンの冷蔵庫は「冷蔵庫内にある食材から作れるレシピを提案し、もし食材がないものがあればそのままECで発注する」という体験をつくっています。ユーザーとしてはメーカーの都合で用意されたレシピより、「自分がいつも使っているレシピ」が作れるかが分かった方が幸せなわけなので、ユーザーにとっては良い体験となると思います。(著作権的には……自分が使うだけならいいのかな?)

2.進化の見えたオーブンのトレンド

僕の好きなスマートキッチン家電の一つにJune Ovenというオーブンがありまして、最近ローストビーフやステーキは必ずこれ、またはこれに類した機器で焼いています。というのも、こういった機器でないと毎回完璧なミディアムレアには焼けないので、正直フライパンで焼くとかはしたくないというのが最近の僕の心情です。

温度プローブで加速するPrecise Cookingの普及

温度プローブ

なんで僕がフライパンでは焼けないかというと、プローブの存在が大きいです。この針のようなものがプローブで、オーブンで焼くときに肉に刺しておくことで肉の中心温度を測ることができるものです。僕の好みのミディアムレアは肉の中心温度が55℃になったら加熱を止め、あとは肉を休ませつつ落ち着かせるのが最高の焼き加減なのですが、フライパンではもはやこの焼き加減にはなりません。

このようにセンサーやIoTの力を借りて正確に調理をすることをPrecise Cookingと呼んでいるのですが、今回大小問わずほぼ全てのメーカーで温度プローブ付きオーブンを発表しており、これから世界中で普及していくものになると思います。

温度プローブと連動するIHクッキングヒーター

またオーブン以外でもAEGが温度プローブと連動するIHクッキングヒーターを出しており、肉の内部だけでなく鍋にセットすることによって、揚げ油の温度維持や、スープの温め直しをする際に沸騰する前に自動で止める、低温調理のための一定温度キープといった、より多様な用途で温度のセンシングと火のコントロールという新しい進化を見ることができます。

スチームオーブンで低温調理

今回のIFAで、スチーム機能が付いているオーブンがこぞってサポートしたのが低温調理です。ドイツの家電量販店に行ってみて思ったのですが、低温調理専用のコーナーができており、Anova的な低温調理用の加熱機器や真空パックにするためのシーラーなどが集められているほど市民権を得てきているようです。

スチームオーブン

そこでスチームオーブンで低温調理をしてしまおうとのことですが、真空パックをした食材を放り込んでスチームするだけという感じになっており、非常に簡単に作ることができるようになっています。従来のように生の食材から低温調理することもできますし、真空パックされた物を買ってきて、低温調理で美味しく仕上げることもできるので、電子レンジ調理よりもおいしく様々な料理が出来るようになるということも考えてるようです。

自動洗浄で手間削減へ

さてさて、そんなオーブンですが世界共通の話題として「後片付けが面倒」という問題があります。しかもサボると焦げつくんですよね……
ということで、今回各社出してきた機能が自動洗浄です。

自動洗浄

いくつかパターンがありまして
・キッチン埋め込み式で上下水道を配管しジャバジャバ洗う(写真)
・スチームの蒸気で洗浄し、洗浄したものはドレンに落ちる
・同じくスチームで洗浄するのであとは自分でさっと拭いてね

というだいたい3つのパターンに分かれるのですが、上2つはほとんどノーメンテナンスでオーブンを使えると謳っており、“オーブン面倒問題”をスマートに解決してくれるのではないかと思います。

3.その他おもしろかったもの

ワイヤレス充電Ki

ワイヤレス充電

Qiというワイヤレス充電を聞いたことある方も多いと思いますが、そこと同じ団体がキッチン機器向けのワイヤレス給電システムKiを発表しました。主に東南アジアなどの、キッチンが狭い家を想定しているそうで、「これからスマート化された家電が増えていくのに置く場所がない」「1回収納しちゃうと再度出してコンセントを刺すのが面倒」といった課題を解決するのがこちらになります。

仕組みはとてもシンプルで、IHクッキングヒーターのような小さい箱をキッチンカウンターの裏に取り付け、家電側にはコイルを置くことによって電熱が必要な容量まで給電することができます。

人間とロボットが協調して料理を作るデモ Samsung

調理のロボット

今まで調理のロボットというと、「人間は完全に何もしなくいい」といった、人間を代替する自動化という表現がなされていましたが、Samsungはちょっと違うアプローチでコンセプトを出してきました。人間が「ちょっと予定とは別の味にしたいんだけど」と言うと戸棚から別の調味料を持ってきたり、ロボットが切った後「ちょっと鍋に入れるの手伝ってくれない?」と人間にお願いをしてきたりと、人と機械がコラボレーションして一緒に料理を楽しむというデモになっています。

以前我々もスマートキッチンレベルというものを定義していて、最もレベルが高いのは完全自動化ではなく人と機器がコラボレートする世界と言ってきたので、感慨深い物がありました。

マルチメディア化するキッチン家電

オーブンについている液晶画面

写真はオーブンについている液晶画面で冷蔵庫内のカメラの映像を見て「冷蔵庫まで行かなくても中身がわかるんだぜ、すごいだろ」って言ってるデモなんですけど、個人的には「これがしたくて50万する冷蔵庫とオーブンを買う人はどんだけ広いキッチンなんだろう……」と思います。

さて、いろんな家電に液晶を付けちゃえというのもスマートキッチンの兆候なのですが、今回IFAでよく見るのが「動画が見れます」だったのが驚き。オーブン、冷蔵庫はもちろんレンジフードまでも液晶が付いており、そこで動画(Youtubeや映画)を見ることができ、中にはAKGがOnkyoの高品質なスピーカーまで付け出すという流れは、果たしてユーザーに受け入れられるのでしょうか。生暖かく見守りたいと思いました。

レンジフードモニタ。首にわるそう。
レンジフードモニタ。首にわるそう。

おわりに、日本のスマートキッチンはどうなる?

ということで、他にも紹介したいモノはいっぱいあるのですが、ひとまずここまでにしたいと思います。

いつも思うことですが、海外に比較して日本は2年程度遅れているんじゃないかと感じます。理由は海外のほうが家電メーカーがアグレッシブで、日本の家電メーカーはチャレンジしたくても「完璧な物」を出す事を求められてなかなか表に出せない……といった背景があるのかなと感じます。

一方で世界中が「スマートキッチンによって手軽に簡単に、より美味しい物を人間ができるようにしたい」と動いているのはもはや不可逆であると思うので、日本でも皆様がスマートキッチンのメリットを享受できるよう、我々も活動していきたいと思います。

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