売り手市場が続くエンジニアだけれど、希望の企業の内定を得られるかどうかは別の話。そこでこの連載では、転職者・採用担当者双方の視点から“理想の転職”を成功させる極意を探る
「君は何芸人?」ZOZOテクCTOが最終面接で必ず聞く質問とは? 機械学習エンジニア・採用担当に聞く“妥協しない転職”を成功させるコツ
日本最大級のファッション通販サイトとして常時83万点以上の商品を扱っている『ZOZOTOWN』。日々新しい機能を実装し、より使いやすく、より楽しいサイトにすべく、ブラッシュアップを繰り返している。そんなZOZOの技術開発を担っているのが、ZOZOテクノロジーズだ。
連載初回となる今回は、ZOZOテクノロジーズに2019年11月に入社した機械学習エンジニアの児玉悠さんと、その採用を担当したCTOの今村雅幸さんに話を伺った。
(1)実績の見えにくい機械学習エンジニアの経験を「目に見える成果」でアピールしてくれた
(2)仕事のモチベーションが自分ではなく、サービスやユーザーに向いていた
(3)“意外な一面”を面接で語ってくれて、「もっと彼のことが知りたい」と興味が湧いた
自分のスキルを生かす余地があるか? “過渡期”の企業を求め、ZOZOテクノロジーズへ
児玉:前職(メルカリ)に不満があったわけではないのですが、2年ほど担当していたプロジェクトを無事リリースしてひと段落したタイミングで、他の会社でも働いてみたいと思うようになったんです。それで自分の機械学習エンジニアとしての経験を生かせそうな企業を探し始めました。
児玉:この転職では「自分がその会社でアウトプットを出せそうか」「データや機械学習を活用する余地が残されているか」を特に注視していました。なので、まだ機械学習関連の組織が過渡期と言えそうな、自社プロダクトを持つメガベンチャーやスタートアップを中心に見ていました。
児玉:もともと『ZOZOTOWN』のヘビーユーザーで、プロダクト自体が好きだったというのもあります。それと同時に、「検索しても欲しいアイテムが上に出てこない」などの課題を以前からいちユーザーとして感じていて。その辺りに、自分の持っているレコメンドやパーソナライズといった機械学習のスキルで貢献できそうだと思ったんです。
それから、今のチームもまだできて半年ほどで、メンバーも3人しかいなかったので、自分がチームづくりに携われることや、将来的にマネジメント経験を積める可能性にも魅力を感じました。
児玉:職務経歴書を書く時は今まで経験したプロジェクトごとに、自分の担当領域、使用技術、それによってどういったアウトプットが出たかを明確に示しました。特に仕事においてはアウトプットの部分が一番大事だと思うので、そこは分かりやすく、定量的に書くようにしていましたね。
ちなみに僕の場合はあくまでも仕事で出した成果が大事だと思っていたので、選考前のポートフォリオ整理に力を入れたりはしませんでした。
「ZOZOの選考基準はスキル50%、人間性50%」人柄・カルチャーマッチを重視
今村:まず、彼の配属されたMLOpsチームは機械学習に特化したSREチームで、彼が入社する半年前にできたばかりでした。
ZOZOでは2年前から機械学習やディープラーニングの開発基盤を整え、ようやく「データを使って売り上げを伸ばすこと」に本腰を入れようとしていたんです。MLOpsはそうした今後のZOZOを支えるチームとして強化していきたいというところで、人材の募集をしていました。
だから求めていたのは、雰囲気だけで機械学習をやっている人ではなく「目に見える成果」を残している人。具体的には本番環境のデータを使って機械学習のプログラムを実装したことがある人、世の中にリリースされているプロダクトについてKPIの改善や売り上げアップの経験がある人を探していましたね。
今村:またもう一つ重要視していたのは人柄、つまりカルチャーマッチです。ZOZOの選考基準はスキル50%、人間性50%で、他の企業に比べてもここをかなり重視していると思います。
ZOZOにはプロダクト愛があって、「ファッションの領域に技術で貢献したい」「自分の技術を世の中に生かしたい」という考えを持つ人がたくさんいます。いくらスキルが高くても、「技術を高めていきたい」「すごいコードを書いてやるぜ」といったように、矢印が自分だけに向いている人はZOZOの文化には合いません。
だから面接では「なぜエンジニアという職業を選んだのか」とか「何をモチベーションとしているのか」についてかなり聞いていましたね。
今村:そうですね。面接で「仕事のモチベーションは何か」といった質問をした際に、彼は「自分の作ったものが世の中にリリースされて、いろんな人に使ってもらえること」だと回答していました。
彼のようにある程度経験もあって、“イケてる会社”にいた人たちの中には、ベクトルが自分自身に向きがちな人も多いんです。だからこそサービスやユーザーにモチベーションが向いている、と話してもらえたのはかなり大きかったですね。
児玉:僕は小さい頃から研究者になりたいと思っていたんですが、大学院で研究を続けていた時に「この研究内容を社会に出せるのは一体いつになるんだろう」と疑問に感じたんですよね。アカデミックに閉じた世界だと社会にアウトプットするのに時間がかかるじゃないですか。
それで、「これをやり続けて本当に社会の役に立つのか?」という葛藤があって。その時に「もっと社会にインパクトを出せる仕事をしたい」と思い直したのが大きかったと思います。
児玉:最終面接で「もし自分が『アメトーーク!』に出るとしたら、何芸人の回に出て、どういう話をしますか」って聞かれたのが印象に残ってます。
今村:実はそれ、新卒でも中途でも、最終面接で必ず聞く質問なんです(笑)。要は、熱量を持って人前で話せるほどの経験があるかとか、人としての面白さといった、パーソナリティーがよく分かるんですよ。
児玉:僕、大学受験の時に二浪しているんです。だから「浪人時代の闇が深い芸人」と答えました(笑)。当時いろいろつらい思いをしたおかげで、これから大変なことに遭遇しても、「大したことない」って乗り越えられる、といった話をしましたね。
今村:それで「え? 闇深いの?」って。意外性を感じたんですよ(笑)。つらい思いをした過去があるということで、ハングリーさも見えるし。
弊社に受かる人に大体共通してるのが意外性なんですよね。最近同じMLOpsチームに入った人は、「自作ラーメン芸人」って言ってましたよ(笑)
今村:つまりアメリカとかでいう「ビアテスト」に近い感覚なんですよね。一緒にビールが飲める人か、自分が興味を持てる対象どうか。これは一緒に働く仲間としては大事なことだと思っていて、それが僕らの場合はたまたまこういう表現になったわけです。
今村:Web系企業の中では、離職率はかなり低いと思います。これはやはり人間性を大事にしているからこそだし、今までZOZOが伸びてきたのはこうした社員のおかげ。守らないといけないですよね。
だから採用の際にもう一つ、「その人の人生にプラスになる経験が提供できるか」という点も意識しています。いくらスキルが申し分なくても、本人のキャリアの志向性とZOZOが求めていることが万が一ズレていると、その人にとってマイナスになってしまう。そうならないように、「採用してもちゃんと責任が取れるか」といったことは常に考えています。
社員全員“プラスの感情”で、仕事も組織も前進するのがZOZO流
児玉:検索結果のパーソナライズプロジェクトに関わっています。Web版では最近(2020年2月)リリースされたのですが、ユーザー属性や過去の行動履歴をもとに検索結果を表示させる「おすすめ順」というタブを、サイト内に新しく設置するっていうのをやっていて。
僕はその中でパーソナライズのロジックを載せている基盤回りのデータエンジニアリングや、一般的なSRE業務を全般的に担当していました。
大規模なプロジェクトだったので、検索チームやレコメンドチーム、分析チーム、バックエンドチームなど、関係部署の人たちと細かい仕様やスケジュールを調整する必要があったんです。それに加えて自分たちも手を動かしながら実装するというのはかなり大変でした。
今村:このプロジェクトはそもそも「既存の検索エンジンを新しいものに乗せ換える」ところから始めなきゃいけなくて。そこからさらに、パーソナライズの要素を組み込むというプロセスが必要でした。転職間もないのに、超えるべきハードルが2段も3段もあるプロジェクトを部署横断でリードしてくれたのはさすがだと思いましたね。
児玉:実際やってみて、いろんな人と協力しながら大きいプロジェクトを進めていくというのは、大変でしたが思っていたよりも好きな仕事なのかなと感じました。ただ入社して3カ月くらいは組織のことも分からないし、SREをメインで仕事をするのも初めてだったので、正直つらいことも多かったです(笑)
でも隔週で行われるリーダーとの1on1と、チーム全体のKPT会(ケプト会)で、2週間の振り返りや課題、次のアクションについて整理することができたおかげで、4カ月目くらいからは慣れていきましたね。
児玉:やっぱり入社前からやりたかったレコメンドやパーソナライズのプロジェクトに携われていることがすごく大きいですね。
あともう一つ、組織が過渡期だとお話しましたよね。それで僕も度々、組織やチームについての改善案を提案しているんです。会社全体に「より良い組織にしよう」という空気感があるので、改善案を出したらみんなすぐに聞いてくれますし、改善の方向に議論してもらえる点はやりがいを感じます。
児玉:引き続きいろんな立場・役割の人と協力しながら、プロジェクトを進めるスキルを身に付けていきたいと思っています。最近は社会的にもDX (デジタルトランスフォーメーション) の流れが来ていますが、そうした時代の中でコミュニケーション力や折衝力はエンジニアにとっても重要なスキルになってくるのではないかと思います。
今村:児玉のようにヒューマンスキルを磨きたいと考えるエンジニアには、うちは向いているかもしれないですね。プロジェクトの規模もありますし、個人に与えられる裁量も大きいので、いろんな人と利害関係を調整しながら仕事を進める機会が多い。それにZOZOはみんな良い人なのでプラスの感情で手伝ってくれるんですよ。だから、やりやすさはあるんじゃないかな。
また、プロダクトの規模が大きいので、多くのユーザーにインパクトを与える仕事ができるのも面白いところだと思います。自分のつくったものを年間800万人のユーザーに使ってもらえて、何億円単位の変化を起こせる。それはZOZOで働く大きな魅力だと思いますよ。
取材・文/石川香苗子 撮影/赤松洋太 編集/河西ことみ(編集部)
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