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UAEでは世界初のAI大学が!? 中東の「知られざるAI大国」の人材育成

働き方

    本連載では、海外AIトレンドマーケターとして活動している“AI姉さん”ことチェルシーさんが、AI先進国・中国をはじめとする諸外国のAIビジネスや、技術者情報、エンジニアの仕事に役立つAI活用のヒントをお届けします!

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    海外AIトレンドマーケター | AI姉さん
    國本知里・チェルシー (@chelsea_ainee)

    大手外資ソフトウェアSAPに新卒入社後、買収したクラウド事業の新規営業。外資マーケティングプラットフォームでアジア事業開発を経て、現在急成長AIスタートアップにて事業開発マネジャー。「AI姉さん」としてTwitterでの海外AI事情やトレンド発信、講演、執筆等を行っている

    皆さんこんにちは。AI姉さんことチェルシーです。

    本日は「世界のAI人材育成・キャリア」に関する連載の第3回目です。

    これまで、第1回目はAI先進国である中国のAI人材育成について、 第2回目は小国ながら開発ではなくAI“活用”大国を目指す、フィンランド・シンガポールのAI人材育成動向について解説しました。

    皆さんの中では、AI研究者・開発者の先進国といえばどのようなイメージですか?

    Element AIの調査結果では、機械学習分野で影響力の高いAI研究者の数が最も多かった国は、米国、中国、英国、オーストラリア、カナダだと発表されていました。

    上記5カ国はAI先進国として非常に有名ですが、実は今、中東のAI技術も非常に注目されています。そこで今回は、知られざる中東のAI情報と、その人材育成の裏側を本日はご紹介します。

    隠れたAI大国! 大手による買収も多いイスラエル

    まずは「ITイノベーション国家」とも言われるイスラエル。イスラエルは、実は隠れたAI大国なのです。

    例えば皆さんが使っているiPhoneの顔認証システム『Face ID』。これはAppleが2013年に360億円で買収したイスラエルの3Dセンシング企業、PrimeSenseが持っている技術を活用しています。

    また、Appleは2015年にはカメラモジュール技術のLinX、2017年にはAI顔認証技術のRealFaceを買収しましたが、どちらもイスラエルの企業です。私たちが使っているiPhoneのFace IDは、イスラエルの技術に支えられているのです。

    イスラエルはいわば中東スタートアップの聖地。人口1人あたりのベンチャー投資額は世界1位で、国民1人あたりのエンジニア数も世界トップだと言われています。

    その背景にあるのは、プログラミング教育です。イスラエルでは1980年からコンピューターサイエンスが高校で科目として導入され、1990年代には全高校が導入しました。

    またイスラエルでは、高校卒業後に男女ともにIDF(イスラエル国防軍)への兵役義務があります。イスラエルの8200部隊と呼ばれる諜報部隊組織は、サイバーセキュリティーのスーパーエリート集団。米国のハーバード大に匹敵する教育機関とも言われ、除隊後にはハッキングスキルなどを生かしたキャリアを歩むことが可能に。ここからサイバーセキュリティーの専門家やスタートアップが次々と生まれています。

    将来のエリートになるために、プログラミングを小学生から学ぶ人も多く、そうした背景がイスラエルのイノベーションを生んでいるのです。

    元々強いサイバーセキュリティー分野に限らず、AI・データ分析・画像認証領域で次々とエリートが起業をしては、Appleのような大手に買収されている企業が多い国。それがイスラエルなのです。

    イスラエルのAIスタートアップのインタビューや毎月の資金調達の状況などは、StartupHub.aiにも掲載されています。StartupHub.aiは投資家やスタートアップを探せるイスラエルAI関連のハブになっているので、どんなAIスタートアップが生まれているのかといった参考に、チェックしておくことをお勧めします。

    イスラエル

    startuphub.ai

    世界初のAI大臣・AI専門大学に取り組むUAE

    中東でもう一つ注目すべき国はUAE(アラブ首長国連邦)です。中国と同じく国策にAI分野への熱を入れています。

    UAE政府は2017年10月に、「AIのためのUAE戦略」を発表しました。UAEをさまざまな領域で、AI投資の最初のフィールドにすると宣言しています。

    それから、UAEでは2017年にAI担当大臣を世界で初めて任命しました。

    任命されたのは当時27歳だったオマール・アル・オラマ氏。彼は任命された後、官僚100名をオックスフォード大学に留学させ、AI教育を受けさせました。また、若手向けAI学習キャンプを開催し、6500名以上が参加。そのうち60%は女性でした。

    AI発展においては欧米の大学や企業とパートナーシップを組み、AI技術を国政に活用しようと、かなり急速に変革を進めています。

    さらにUAEはAIのハブ国家になるべく、2019年10月、AIに特化した大学設立を発表しました。なんと学費は無料、全員に全額給付奨学金、毎月の手当、健康保険、住居付きという超好条件です。

    このムハンマド・ビン・ザーイド人工知能大学(MBZUAI)は、世界初の大学院レベルのAI専門大学で、2020年9月から修士課程・博士課程の授業も開始する予定です。

    https://mbzuai.ac.ae/

    https://mbzuai.ac.ae/

    またUAEでは、国策としてAI活用を推進しており、実験場としてもオープンです。

    例えば最先端テクノロジーの祭典SXSW 2019のスタートアップピッチでAI部門の優勝者になった、ドバイ発のDerqは、UAEを拠点の一つに置いています。

    Derqは自動車の追突事故を予防するAIを開発をしている、MITのスピンオフ企業。UAEは2030年までに交通機関の25%を自動化する目標を立てているので、実験の場として最適なのです。

    このように、UAEでは国策としてAI大臣の設置やAI専門大学の開校を進め、中国に負けじとAI人材育成を行い、実験場を広げています。AI領域では今後非常に注目すべき国だといえるでしょう。

    人材育成には政府の推進、パートナーシップが欠かせない

    イスラエルはエンジニアやスタートアップが育ちやすい環境を国がつくっており、UAEも中国に負けないほどのAI人材戦略を実行しています。以前ご紹介したように、中国でもAI推進を加速させているのは政府です。

    一方で、一部の国ではあらゆる国とパートナーシップを組んでAI推進しているトレンドもあります。例えば、インドは、ドイツ、ロシア、シンガポール、カナダ、UAE、中国などとAIに関するパートナーシップを組んで成長しています。

    では、日本ではどんなAI人材戦略が進んでいるのでしょうか。また、エンジニアとして今後どのようにAIに関するキャリアを築いていくべきなのでしょうか。次回は日本のAI人材育成の環境について解説していきます。

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