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ブラウザゲームの衰退、新規事業の躍進…激動の10年を振り返って分かった理想のエンジニア像【DeNA元CEO守安功】

NEW!  #働き方

変化への対応力を養うヒントがここに

「10年プロダクト」の生生流転

移り変わりの激しいIT・Web業界において、プロダクトやサービス、そしてエンジニア個人が「生き続ける」のに必要なものは何か。否応なく起こるさまざまな変化への対応力はどう養ったらいいのか。「10年以上続くプロダクト/サービス」が歩んできた歴史から答えを探る

Web業界のトップランナーとして走り続けるDeNAを、CEOとして約10年間率いてきた守安功さん。SEとして1999年にDeNAに入社し、ソーシャルゲームサービス『モバゲータウン(現:Mobage)』を成功へと導いた立役者でもある。

同社創業者の南場智子さんの後任として2011年にCEOに就任してからの約10年間は、ガラケーからスマホへのシフトチェンジや、事業の撤退など、DeNAにとって変革を迫られるできごとが相次いだ。しかし同社では、それらを乗り越え、エンタメ、ヘルスケア、オートモーティブなど多彩な領域で新規事業を生み出しながら、進化の歩みを止めていない。

そこで今回はCEOを退任したばかりの守安さんに、DeNAの激動の10年を振り返ってもらいながら、インターネット業界の激しい変化に対応できる組織風土やこれからの時代に求められるエンジニア像に迫った。

DeNA守安功氏

株式会社ディー・エヌ・エー 取締役 守安 功さん

1998年、東京大学大学院(工学系研究科航空宇宙工学)修了。同年、日本オラクル入社。99年、SEとしてDeNAに入社。『モバオク』『ポケットアフィリエイト』『モバゲータウン』を立ち上げ。2011年、代表取締役社長就任。21年4月より現職

10年間で最大の変化は、プラットフォームのシフトチェンジ

――DeNA創業者の南場智子さんからCEOを引き継がれて約10年。この10年でDeNAとして最も変化を感じられたのはどのタイミングでしたか?

変化はいくつかありましたが、大きな変化でいうとガラケーからスマホへのシフトです。僕が南場からCEOを引き継いだ2011年は、ソーシャルゲームプラットフォーム『Mobage』の全盛期。『怪盗ロワイヤル』などのヒットゲームもあり、ソーシャルプラットフォームの運営では国内1、2位を走っていました。

ガラケーからスマホへ変わるタイミングで、海外展開にも挑戦しました。2009年頃から全リソースをゲーム事業に集中させて、アメリカや中国の会社も買収するなど、かなり攻めていたんです。海外でもソーシャルゲームのプラットフォームでトップになれたら、とんでもなく大きな成長が見込めますから。

DeNA守安功氏

ところが、ブラウザゲームは衰退して、世の中の主流はアプリに。ゲームデベロッパーはApp StoreやGoogle Playに直接登録するようになってしまい、われわれがやっていたゲームプラットフォームのレイヤーがスマホでは不要になってしまったのです。

そうなると当社もプラットフォームに頼らず、自分たちでアプリのゲームをつくらないと生き残れない。とはいえゲームだけでは従来の事業規模を維持できません。それまでは調子よくゲーム事業に集中していましたが、新しい事業をつくっていかないと会社として発展できない状況になり、大きな方針転換をしたのが2013年頃です。

――ブラウザゲームに変わる、新しい事業をつくる必要性に迫られたと。

はい。ヘルスケア事業やオートモーティブ事業、2014年にはキュレーション事業にも参入しました。特にキュレーション事業は成長が著しく、「これは良い事業になる」と思った矢先に、騒動※が起きて……。(※キュレーションメディアの記事の正確性が問題視され、DeNAは運営する全キュレーションサイトを閉鎖した)

DeNA守安功氏

あの時は、会社としても大変な状況に陥りましたし、DeNA単独としてのメディア事業自体もなくなってしまった。新規事業をつくらないといけない状況なのに、また振り出しに戻ってしまった感じで、会社としては一番苦しかった時期ですね。社員もつらかったと思いますから、私もトップとしてこの状況を打破すべく奮闘していました。

「何でもアリ」のミッションが、変化を恐れない文化を醸成した

――そうしたつらい時期がありながらも、新サービスを次々に生み出してこられたのは、なぜだと思いますか。

理由は二つあって、一つは会社のミッションによるもの。僕が社長になって掲げたミッションが「Delight and Impact the World」。世の中に喜びを届けよう、大きなインパクトを与えよう、という意味です。(※2021年4月に「一人ひとりに 想像を超えるDelightを」に刷新)

よく言われるんですよ、「それって何も言ってないに等しいじゃん」って(笑)。たしかにそうなのですが、インターネットって、どんな産業でも使うものなので、ある意味何でもアリ。あえて事業の領域や内容を規定してしまうミッションをつくらなかったからこそ、事業の幅を広げてこられたと思っています。

DeNA守安功氏

現在手掛けているゲームやエンタメ、ヘルスケアなどは全然違うジャンルに思えるかもしれませんが、DeNAの強みであるインターネットやAIの技術力を活かしているベースは共通。いろいろな事業があるからこそシナジーも生まれると考えています。

そしてもう一つは、高い目標設定です。今の延長上にある達成目標だとどうしてもこぢんまりしてしまい、非連続の成長が生まれにくいと思うんですよね。無理かもしれないけど高い目標を掲げて、それを追っていくスタイルが僕は好きですし、創業者の南場もそのタイプなので。自然とそういうメンバーが集まっているとも感じています。

――新しい事業の立ち上げは社員主導の提案も多いと思いますが、アイデアや意見を誰でも発信しやすい雰囲気はどのように醸成しているのでしょうか?

社員の日々の行動や判断の拠り所とする、共有の価値観『DeNA Quality』がメンバー間で徹底されていることが大きいと思います。具体的には「『こと』に向かう」「全力コミット」「発言責任、傾聴責任」「多様性を尊重し、活かし合う」「みちのりを楽しもう」の5項目です。

例えば「発言責任、傾聴責任」なら、会議にどんな役職の人がいても、自分の意見をきちんと言う。その発言にちゃんと責任を持てるのであれば、それで会議の結論が変わってもいいんです。おかげで、正しいであろう意思決定をみんなでしていこうという文化が醸成されているのだと思います。

普段の会話でも「それって、発言責任を体現していないのでは?」なんて使われ方もするので、この考え方は社員に染みこんでいますね。

守備範囲の広いエンジニアが重宝される時代

――守安さんはSEとしてDeNAに入社されていますが、この変化の激しい業界に「対応できるエンジニア」って、どんな人だと思いますか?

おっしゃる通り、インターネット業界はテクノロジーの進化スピードが驚異的です。だから変化に対応するために何かするというより、成長するためには変化せざるを得ない。逆にいうと、変化を楽しめる人じゃないと、この業界は難しいかもしれないですね。

――この業界で働いているということは、すでに「変化に対応しているエンジニア」といえるかもしれないですね。その上で、エンジニアがさらに磨くべきスキルや求められる資質があれば教えていただきたいです。

この10年、インターネット業界の事業規模が拡大し、エンジニアの分業が進んでいます。その結果、例えばインフラのアーキテクチャも、クライアントもバックエンドも理解して自分で設計もして……と1人ですべてが分かるエンジニアが減っています。

でも新しいサービスを始める時って、全体を理解して、1人で何でもできる人が必要不可欠。規模の大きなサービスでも、専門の人材を束ねてマネジメントするには全領域を分かってないと難しいですし。全体が分かるエンジニアはこれからも重宝されると思います。

DeNA守安功氏
――では「全体が分かるエンジニア」になるには、どうすればいいでしょう?

例えば趣味で何か一つサービスを作って外部に公開してみるとか、やり方はいくらでもあるはず。すべての分野のスペシャリストになる必要はありませんが、全体をある程度知ることが重要です。

「自分はクライアントエンジニアだから、そこだけ知っていればいいや」ではなく、「サーバーサイドもインフラも分かるけれど、強みはクライアントエンジニア」くらいの守備範囲の持ち方がいいのではないでしょうか。

――なるほど。

そもそもエンジニアは、つぶしがきくし、守備範囲を広げやすい職業です。初心者が30歳からエンジニアを目指すのは難易度が高いけれど、エンジニアから事業責任者や経営者には比較的なりやすい。そうやって守備範囲を広げていくことも大事ではないでしょうか。

――守安さんも「エンジニア出身の経営者」ですよね。DeNA退社後は、何をされるのでしょうか?

実は何をするか決めていなくて、2カ月くらい沖縄の離島でのんびりしたいなぁなんて思っています。

一度ゼロリセットして、自分が本当にやりたいことを考えてみたいんです。その結果、やっぱり今の延長線上をやりたくなる可能性もありますし、全然違う業界へ行くかもしれないし、あるいは仕事はもうしないかもしれません(笑)

――今後のご活躍も、大変楽しみです。最後に、エンジニアの読者にメッセージをお願いします。

繰り返しになりますが、エンジニアが守備範囲を広げて「エンジニア×●●」という武器を持つことは重要です。

もし数人規模のスタートアップであれば、経営者が自分でコードを書いて、ものを作った方が合理的ですよね。そういう働き方を目指すエンジニアがもっと増えてもいいのでは。エンジニアの中には口下手でコミュニケーションが得意じゃない人もいますが、もっと自己主張していろんなところに出ないともったいないと思いますよ。

DeNA守安功氏

取材・文/古屋 江美子 撮影/桑原美樹

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