安全安心リモート社会:
ロボットと遠隔操作技術を融合させて誰でもリモートワークができるような社会の実現を目指す
エネルギー・環境ソリューション:
水素をはじめとする脱炭素化の取り組みを推進する
近未来モビリティ:
新しいモビリティでヒトとモノの動きに革命をもたらす
商都からテック都市へ。万博を控える大阪・関西で広がる「オープンイノベーション」の波とは【Hack Osaka 2022レポート】
2025年に開催が予定されている日本国際博覧会(以下、「大阪・関西万博」)。国内外の最新テクノロジー、技術革新事例が多数発表されるこの一大イベントに期待を寄せているエンジニアも多いはずだ。
この万博開催の地となるのが商都・大阪。この商業の街が今、万博開催に後押しされ、「テクノロジーの聖地」へと生まれ変わろうとしている。
2022年2月10日、大阪で開催された国際イノベーション会議『Hack Osaka 2022』には、大阪に拠点を構える国内スタートアップや大企業のみならず、世界中から伸び盛りのテックカンパニーの経営者、技術者たちが集結。オープンイノベーションの取り組み事例や次世代テクノロジーについて各社が紹介した。
その中からこの記事では、川崎重工業株式会社、南海電気鉄道株式会社、公益社団法人2025年日本国際博覧会協会など、大阪・関西を代表する企業が現在注力している領域やそこで活用される技術についてピッチ形式でプレゼンした内容を一部ピックアップしてお届けしたい。
川崎重工業:モビリティ分野に注力「物流革命起こす」
総合重工メーカーの川崎重工業からは、企画本部イノベーション部の吉澤宏大さんがスピーカーとして登壇。
吉澤さんは、目指すべき将来像を定めた同社の『グループビジョン2030』の中から注力する領域を紹介し、社会課題の解決に向けた取り組みについて語った。
「われわれが注力する領域は、『安全安心リモート社会』『エネルギー・環境ソリューション』『近未来モビリティ』の三つ。これらの領域でさまざまな実証実験を進めています」(吉澤さん)
各領域の目標は次の通りだ。
現代の社会課題を解決するためには、「オープンイノベーションが欠かせない」と吉澤さん。社内でイノベーションマインドを醸成していくために、働き掛けを行っているという。
「社員一人一人にイノベーションマインドを根付かせるため、『ビジネスアイデアチャレンジ』という社内公募の制度を新設しました。これは、誰でも、新規事業の立案・提案ができる制度です。
そして、この制度を活用した社員のアイデアから、さまざまな新規事業が生まれています。その中の一つが、3輪型電動ビークル『noslisu(ノスリス)』です。
『安全・快適・気軽な移動体験をすべての人へ』をコンセプトに、当社のモビリティ開発力を活かした新しい移動のカタチを提案しました。
特徴的な前二輪構造により、高い安定性と自然な操縦性を実現し、幅広い年齢の方が安心して乗ることができるモビリティです」(吉澤さん)
社会的ニーズやビジネスモデルなどを従来にはない新たな視点で検証し、またクラウドファンディングを活用した限定販売を行うなどユニークな取り組みのなかで生まれたのがこの『noslisu』だ。
また、無人VTOL機『K-RACER』の開発、実証実験も進んでいる。
『K-RACER』の実用化によって同社が目指すのは「空の物流革命」だ。
『K-RACER』の機体に荷物を吊り下げ、山小屋に物資を搬送したり、配送ロボットを乗せた『K-RACER』が自動飛行し、移動先に到着するとロボットが自動離脱して荷物を届ける実証実験などを進めている。
「『K-RACER』の実用化には、法整備なども含め行政との連携が欠かせません。技術革新の可能性をさらに広げていくため、今後さらに力を入れていきたいと思います」(吉澤さん)
南海電気鉄道:テニス、音楽、感情共有…鉄道事業にとどまらない新規事業に続々挑戦
鉄道・不動産・流通・レジャー・サービスなど多角的に事業を展開する南海電気鉄道からは、イノベーション創造室新規事業部の冨重真帆さんが登壇した。
冨重さんは、「人が集まる場所を創り、そこへ人を送り届ける」という従来からのビジネスモデルについて紹介し、今後のイノベーション方針を明かした。
南海電気鉄道は、鉄道事業の利益率向上を目指す取り組みに加え、「成功するか分からないけれど挑戦するべき」と判断した新規事業にも積極的に取り組んでいるという。
鉄道事業の利益率向上施策としては、専用の改札機にカードやスマートフォンをかざす「Visaのタッチ決済乗車」の実証実験が駅改札では日本初の取り組みとして注目を集めている。
また新規事業の領域では、テニスコートの検索・予約システム『テニスグ!』や、バンドメンバー募集・音楽仲間を探すことができるマッチングサイト『Every Buddy』、感情共有プラットフォームサービス『EMOSHARE』、傘のシェアリングサービス『チョイカサ』の運営を開始した。
>>https://startup-nankai.com/program/
「鉄道事業の領域にとどまらないオープンイノベーションに取り組むには、行政や他社との協力が欠かせません。今後も有望な技術力を持つスタートアップ各社などと連携し、地域の暮らしを豊かにするようなサービスを展開していきたいと思います」(冨重さん)
続けて冨重さんは、スタートアップとのオープンイノベーション事例を二つ具体的に紹介した。
一つ目は、AIカフェロボット『root C』の開発などを手掛けるNew Innovations社との協業事例だ。同社が開発した需要予測AI搭載の無人カフェロボットを駅やオフィスビルなどに設置。オフィスビル『なんばスカイオ』では、既に実用化も始まっている。
二つ目は、婦人科特化型オンライン診察プラットフォーム『sumaluna』を運営するネクイノ社とのコラボレーション事例。同社が提供する『sumaluna』アプリを活用し、南海なんば駅や泉ケ丘駅、商業施設等で生理用ナプキンを無料提供するサービスの実証実験を開始しようとしている。
鉄道会社が長い歴史の中で蓄積してきた経験やデータ、ビジネスノウハウと、スタートアップが持つ技術力を掛け合わせ「今後も、地域の暮らしにイノベーションを起こしていきたい」と冨重さんは語った。
2025年日本国際博覧会協会:空飛ぶクルマなど、最新テクノロジーのデモを開催「進歩を目にして」
2025年日本国際博覧会協会からの登壇者は、同協会の経営企画室に所属している坂本りっかさん。坂本さんは、2025年4月から184日間にわたって開催される「大阪・関西万博」の概要について紹介した。
「大阪・関西万博のテーマは、『いのち輝く未来社会のデザイン』です。会場は大阪湾沿岸部の人工島で、会場面積は155ヘクタール。甲子園球場40個分の広さです」(坂本さん)
建築家の藤本壮介さんが手掛けるデザインを元に、「世界につながる海と空に囲まれた万博」会場を新たに建設する計画だ。
会場の中心部に造られる大屋根は、高さ12m、幅30mのまま輪を描くように架けられ、一周約2km(直径約600m)のスケールで会場に一体感をもたらす。
現在、大阪・関西万博への参加を表明しているのは、78カ国、6国際機関。「世界中の国や企業が考える未来社会像や社会課題のソリューションを見ることができる」と坂本さんは言う。
今回の万博において、政府を挙げた注力領域となっているのが、「モビリティー」「エネルギー・環境」「デジタル」「健康・医療」「観光・食・文化」「科学技術」などの分野だ。
「モビリティー分野では、空飛ぶクルマの飛行など実用化にはまだ至っていない次世代のテクノロジーも披露されます。ぜひ、たくさんの人に万博にお越しいただいて、人類の進歩を目にしていただけたら」(坂本さん)
今回紹介した『Hack Osaka 2022』のセッション内容からも分かるように、今、大阪の地では大企業とスタートアップ、大学などの教育期間、行政が垣根を超えてコラボレーションすることによるオープンイノベーションが活発化している。
さらに、次回の万博開催が近づくにつれ、大阪・関西に拠点を構えるテクノロジー企業はますます活気づき、世界各地から優秀な技術者が集まる都市へと生まれ変わっていくかもしれない。「商都・大阪」から「テクノロジー都市・大阪」へ。この街が今後遂げていく進化から、目が離せない。
取材・文/小田切 淳
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