その後を決める、いいスタートダッシュ
エンジニア転職「運命の入社1カ月」転職後1カ月は「先輩に教わる、業務に慣れる」だけの時期? その後の仕事、キャリアを充実させるカギは、実はこの時期の“受け身姿勢じゃない”過ごし方にあるかもしれない。そこで各企業のトッププレーヤーやEMたちへの取材を通して「入社1カ月の過ごし方」を徹底調査。“その後”を左右する、いいスタートダッシュの切り方とは?
その後を決める、いいスタートダッシュ
エンジニア転職「運命の入社1カ月」転職後1カ月は「先輩に教わる、業務に慣れる」だけの時期? その後の仕事、キャリアを充実させるカギは、実はこの時期の“受け身姿勢じゃない”過ごし方にあるかもしれない。そこで各企業のトッププレーヤーやEMたちへの取材を通して「入社1カ月の過ごし方」を徹底調査。“その後”を左右する、いいスタートダッシュの切り方とは?
中途入社者の「運命の入社1カ月」を考える、Web業界3社による座談会。前半の記事では、ヤフー、サイボウズ、Sansanの開発チームの組織づくりをリードする3人に、エンジニアの転職者向けにアドバイスをもらった。
>>【焦るな危険】組織開発のプロに聞く、転職直後のエンジニアが即戦力になるためのポイント【ヤフー×サイボウズ×Sansan座談会】
記事後編では、中途エンジニアの受け入れ体制に着目。特に、開発現場で新人の立ち上げ、育成を担うマネジャーに求められる能力と、持つべき意識について聞いた。
――新しいメンバーがいち早くチームに馴染んで活躍できるように、皆さんの企業ではどのような環境・仕組みづくりを行っていますか?
ヤフー 中尾:ヤフーでは新メンバーを受け入れるにあたって「留意すべきポイント」をまとめたハンドブックが整備されており、全社で共有されています。
OJTの担当者をアサインする、定例会で自己紹介する時間を設ける、上司との1on1だけでなくチームを超えた「斜め1on1」を行うなどの具体的な受け入れ方法や、実際にやってみて転職者にどんな変化があったかを「社員の声」として紹介しています。
最近ではリモートワークが進んだ関係で、なかなか雑談できない、周囲もいつ新しい人が入ったか分からないという声もあって、社内広報チームが今月入社した人の記事を作って紹介するなど、さまざまな方法で馴染んでもらう工夫が行われています。
サイボウズ 北地:開発本部の業務や技術を理解してもらうため、動画コンテンツを用意しています。サイボウズには、研修や技術解説の動画がたくさんあって、それを集約していつでも見てもらえるように整備しているんです。メンターと一緒にどのコンテンツを見たらいいか相談してもらっています。
また、お互いに人となりが分かると仕事がしやすくなるので、業務に関わるさまざまな人とコミュニケーションが取れるような場も用意しています。メンターを通じて雑談会を設定してもらい、社内のさまざまな人とカジュアルなコミュニケーションを図れるようにしていますね。
Sansan 大西:会社全体でいえば、「強みを生かし、結集する」というSansanのバリューにひもづいて行っている活動があります。
社内では「強マッチ」と呼んでいますが、ストレングスファインダーとエニアグラムを活用して、自分自身の強みを客観視し、周囲にも知ってもらう場を用意。全員がお互いにどういう強みを持っているのかを見える化して、業務に生かしているんですよ。
――実際にオンボーディングを目的とした「初めての仕事」では、どのように業務をアサインし、どのようなかたちでサポートしているのでしょうか。
ヤフー 中尾:短期で結果がでて、かつ可能なら関係者が多い案件にアサインできるのがいいと思います。
一通りの仕事を回して、どこがうまくいった、どこでつまずいたかを振り返ることができますし、新しい環境に入って不安もある中で、一つ何かをやりきったことで自信もつくはずですから。
もちろん最初はお互いによく知らない中で関係者の調整を行うことになりますから、そこは周囲がうまくサポートしてあげる必要はあると思います。
Sansan 大西:小さな成功体験を、繰り返し積んでいってもらうことが大切だと考えています。いきなり大きいタスクを任せても手が止まってしまうと思うので、最初は画面の文言修正などを任せることが多いです。
私が開発部長を務めるクラウド請求書受領サービス「Bill One」のチームでは、週に数回のペースでサービスアップデートを行っているので、例えば月曜に配属されて対応したものが、水曜にリリースされることもあります。本当に小さな成功体験を数日の単位で積んでいってもらえるようにしていますね。
これには、開発の全体像を知ってもらうという狙いもあります。私たちはGitHubを使ってブランチを作り、コード修正して動作確認して、プルリクエストを出して……と、短いサイクルでどんどん開発を回しているので、そのスピード感を体験してもらっています。
サイボウズ 北地:チームごとにさまざまですが、開発現場では主にスクラムで開発を進めており、1週間スプリントでバックログを消化していくことが多いです。
モブプロで業務をこなしながらリリース可能なものに作り上げ、毎週チームで振り返りを行い次のスプリントに生かしています。その繰り返しが成功体験として積み重なっているように思います。
QAエンジニアの例では、全体の回帰試験を徐々にこなしていってもらうことで、製品の理解、知識を深めてもらうなど、基本的には実際にチームメンバーと一緒に動いてもらいながら学んでもらっていますね。
――新人を受け入れる側のマネジャーには、どのような能力が求められると思いますか?
ヤフー中尾:転職者の受け入れに限った話ではありませんが、コミュニケーションを取る上で、相手をよく観察することが大切だと思います。メンバーの中には、自分から不安や悩みを相談できないという人もいますから、意識して相手の様子を見る必要がありますね。
もう一つは、「自分の当たり前は相手の当たり前ではない」ことを意識すること。言わなくても分かるだろうと思って口に出さないと、コミュニケーションエラーが起こることも。
特に違う企業から来ていて文化も違うでしょうし、実感値としては「少しおせっかいかな?」と思うくらいがうまくいくような気がします。
具体的な1on1のやり方やマネジメントのポイントについては、会社として研修やセミナーも多数行っていますし、ラーニングのための資料もそろえています。
また、私の部内では管理者同士がよもやま話をする会も開催しており、悩みを聞いてもらったり、うまくいった事例を共有したりしています。
サイボウズ 北地:サイボウズの開発本部はフラットな組織で、いわゆる管理職がいないので、メンターや受け入れ担当に求められる能力になりますが、やはり「傾聴する能力」は重要だと思います。
メンターが、一人一人の自律した行動を促すサポートをできるようになるといいですね。
Sansan 大西:やはり大前提として、人に興味を持つこと。それがなければ何も進まないと考えています。
この1年くらい、Sansanにはかなり多くの人が新たに入ってきたので、入社1年目の社員にも受け入れ担当をやってもらうこともあります。するとメンターも社歴が浅いので、分からないことも多いんですよね。
すると自然と「誰か分かる人に、一緒に聞きに行こう」となりますから、そうやって「質問するのが当たり前」という文化、環境がつくられているのはいいことだなと感じています。
――最後に、メンバーがいち早く成果をあげるために、マネジャー側が意識すべきだと思うことをご紹介ください。
Sansan 大西:マネジャーといっても一つの役割にすぎないので、立場や経験に関係なくフラットに人の成長に向き合っていってほしいと考えています。
ヤフー 中尾:新メンバーが「受け入れてもらえている」と感じるような、フラットな雰囲気をつくることが何よりも大切です。例えば毎朝30分話をするとか、テーマを決めて雑談をする場を設けるとか、積極的に時間を取ってほしいと思っています。
特に今はリモート下で、対面よりはコミュニケーションのハードルも上がっていますし、面接だけでは分からないことも多い。オンボーディングの時期に改めて、本人がどんな人なのかや得意なこと、やりたいことなど、目線を合わせられるといいのではないでしょうか。
サイボウズ 北地:コミュニケーションが大事だとよく言われますが、その大前提として、皆さん仰るように「相手に対して興味を持つ」ことが一番のポイントになってくると思います。
相手に興味を持てればよく話を聞くようになるし、よく話を聞いて相手のことがより理解できると、何が必要かも分かってくる。そのように一緒に次のアクションを考えられるようになると、メンバーも着実に成長して、成果につながってくるのではないかと思いますね。
取材・文/瀬戸友子
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