【DJ KOOに相談】スキルの陳腐化が怖い…「100回の会議より1回のB’z。最新テクノロジーに触れちゃえDO DANCE!!」
日々進化していくテクノロジー。せっかく習得した知識やスキルがあっという間に「使えないもの」になってしまうエンジニアの世界。
先々を考えると、何を強みに仕事をしていけばいいのか、自分のスキルはいつか通用しなくなってしまうのか……悩みは尽きない。
そこでエンジニアtype編集部は、「進化するテクノロジーをどう追うのか」問題を、少し違う角度から探るべく、ダンス&ボーカルグループ『TRF』のリーダー、DJ KOOさんの秘密基地「DJ KOOスタジオ」を訪問。
『EZ DO DANCE』をはじめ、数々のヒット曲を世に出してきたKOOさんが身を置く音楽の世界もまた、流行がめまぐるしく移り変わる世界。
DJが使うガジェットも、音楽制作で使用するツールも、テクノロジーによって著しく進化し、かつてはDJの腕が問われた部分も「機械が代わりにやってくれるようになった」という。
そんな中で40年以上DJとして活動し、50代以降ますます活躍の幅を広げるKOOさん。どのようにしてテクノロジーの進化と付き合ってきたのだろうか。時代や環境が変わっても「スキルを陳腐化させない」ヒントについて聞いた。
スキルよりも、「フツフツとした思い」の方が大事なんじゃない?
実は、DJというのはテクノロジーの進化によって結構な影響を受けます。
分かりやすいところだと、DJ機材は常に新しくなっていきます。でも、やっぱり好きだからいじっていて楽しいし、そうするうちに使い方を覚えますね。
特に見習いの頃は掃除をしながら「これは何だろう」「これはエフェクターのボタンなんだな」と覚えていきました。
たとえ仕事がなくても、今でも毎日このスタジオに来てDJをしています。もう、歯磨きと一緒。それだけDJは、僕にとっての日常なんですね。
一方、そうやって長い時間を掛けて習得したスキルをテクノロジーが一瞬にして補ってしまうこともあります。
例えば、昔はレコードでテンポを合わせるスキルが曲をつなぐ際のポイントでしたが、今はボタン一つでテンポが合わせられます。従来のスキルは不要になってしまいました。
では、そういう中で自分のスキルをどう発揮していくか。考えていくと、結局は気持ちの部分に行き着く気がします。
僕は料理はしないけど、料理の世界も音楽の世界と同じで、すごく進化していますよね。便利な調理器具が登場し、スキルを生かす場面がなくなっていることもあるんだと思います。
でも、プロの料理人とは何だろうかと考えると、それはきっと「おいしいものを食べてもらって、喜ぶ顔が見たい」といった気持ちがあり、それをかなえるだけの経験値がある人のことですよね。
もちろんスキルは大切ですけど、それ以上にそういった思いを自分の中でフツフツとさせることが重要な気がします。
行き詰まったらB’zのライブへGO!!
10代とか20代の頃って、何か刺激を受けると「こうなりたい」「かっこいい!」って素直に響くじゃないですか。だから夢とか憧れをバーンって持てる。
ところが40代、50代になってくると、もう現実が見えちゃう。「これはできるな」「これはちょっと大変そうだな」と想像ができちゃうわけです。
じゃあ若い時の気持ちを枯らさないためにどうするか。それはやっぱり「100回の会議より1回のB’z」です。つまり「本物に触れる」ということ。
会議しながらあーだこーだやっていると、自分の主張と相手の意見を合わせてまとめる作業になっちゃったりするじゃないですか。それよりも、実際に自分がお客さんになることですよ。
演劇でもスポーツでもなんでもいいから、会場で実際に体験をする。そこで受ける刺激から形にしていく。そういう意識を持つことは重要だと思います。
エンジニアの方は特にそうですよね。最先端の技術に直接触れることで「これを使ってみたい」「どう使えるかな」と、発想がポーンと出てくるのではないでしょうか。
今は物や情報がすぐ手に入りますから、新しい技術の使い方自体はすぐに分かると思います。
でも、やっぱり自分が実際に触れてみて、「これを使うと、こういう楽しみ方ができるんだな」と体験する方がワクワクしますよね。だからその技術を学ぼうと思える。
僕は最近、『Dolby Atmos』という立体オーディオを体験しました。新しいシステムの空間オーディオで、サラウンドシステムのような感じなんですけど、部屋の中で音が移動するんです。
もう、すごく刺激を受けました。昔の曲を聴いた時の蘇り方が違う。「この感じをTRF30周年のライブで届けられたらいいな」と新しいアイデアを得ることができました。
人と直接会って、刺激を受けてスキルアップDO DANCE!!
クリエーターはこういった体験を通して、「自分ならどうするか」を考えることが大切だと思います。
エンジニアの皆さんもクリエーターですから、クリエーティブ脳を刺激すればワクワクがフツフツと生まれるはず。
人と会うのもそうですよ。特にその道のプロに頼ることは大切です。
エンターテインメントは音楽だけでなく、映像や照明、配信環境など、さまざまなものが合わさってできています。
だから僕はセッションやプロジェクトを通じて得たプロとのつながりから最新情報を聞き、自分をアップデートするように心掛けていて。
その際、今はオンラインで打ち合わせができるけど、直接会うことも忘れてはいけないなと思います。ちょっと話したり、インスタ用の写真を一緒に撮ったりするだけでも刺激がありますから。
エイベックスで会議をするときも、楽しいんですよ。
「もしかしたら誰かと会えるかも」ってワクワクするし、久しぶりに会うスタッフさんと再会することで「まだここで頑張っているんだ」とお互いにモチベーションが上がったりもします。
仕事のやりとりもLINEで済むけど、その言葉の先にある伝えたいことや「何を思って書いたんだろう」は、直接会って言葉で伝え合えた方がちゃんと理解できます。
そうやって画面越しだったものを、その先にいるリアルな人につなげていく意識が必要な気がしますね。そうやって刺激を得ることが、スキルアップに結びつくような気がします。
取材・文/天野夏海 撮影/桑原美樹 企画・編集/栗原千明(編集部)
書籍紹介
『あと10歳若くなる! DJ KOO流 心・体・脳の整え方』(PHP研究所)
医師の理想とKOOさんらしさの絶妙な“落とし所“が満載! バラエティーで大活躍・還暦超えアーティストDJ KOOの元気の秘訣とは? 仕事、メンタル、食事、睡眠、人生、人間関係……全部に効く54の「小さなルーティン」を紹介
>>詳細はこちら
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