いい転職は“最高の退職”から
エンジニアのための円満退職塾辞めた企業のプロジェクトに副業で参画したり、再入社したり……。退職した企業とつながり続けることがスタンダードとなった今、キャリアの選択肢を狭めないために重要なのは、会社と“良い関係”のまま辞めること。エンジニアがいい退職・いい転職をかなえる方法を伝授する円満退職塾、ここに開講!
いい転職は“最高の退職”から
エンジニアのための円満退職塾辞めた企業のプロジェクトに副業で参画したり、再入社したり……。退職した企業とつながり続けることがスタンダードとなった今、キャリアの選択肢を狭めないために重要なのは、会社と“良い関係”のまま辞めること。エンジニアがいい退職・いい転職をかなえる方法を伝授する円満退職塾、ここに開講!
2022年11月から12月にかけてお届けしてきた特集・円満退職塾。
転職のプロ、出戻り転職経験者、数々のエンジニアを採用して送り出してきたCTOなどへの取材から、エンジニアが「円満退職」を実現する方法について探ってきた。
また、本特集の最後となるこの記事では、実際にあったエンジニアの「退職トラブル」をアンケート調査から紹介。よく起こりがちな退職トラブルを事例に、特集内容を振り返ってみたい。
エンジニア経験者にアンケート調査を行った結果、最も多かったのは業務の引継ぎに関するトラブルだった。
アンケートには次のようなコメントが寄せられた。
・前職は人間関係が悪かったので引継ぎを書面で済ませた結果、退職後も何回か電話が掛かってきた。全て無視したが、トラブルが複数あったようで心中穏やかではなかった
・引継ぎ用の資料が分かりにくかったらしく、辞めてからもちょくちょく電話が来てしまい、その都度対応しないといけなかった
チームで働くことの多いエンジニア。プロジェクトの途中で退職したり、システムの保守・運用が属人化していたりと、丁寧な引き継ぎが欠かせない仕事の一つだ。
自身も6回の転職経験を持ち、転職情報メディア『転職アンテナ』を立ち上げたmotoさんも、インタビューではエンジニアの引き継ぎの重要性を解説した。
「どうせ辞めるから」と軽く考えてしまう人もいますが、引き継ぎで手を抜くのは最悪です。辞めると決めてからの振る舞いは大切にしましょう。
在職中に高い成果を出していた人であっても、退職間際の“手抜き”によってこれまでの信頼の残高が失われてしまうことは少なくありません。
もし同業に転職した場合、業界内で「あの人は仕事を投げ出して辞めた」という悪評が立つ可能性もゼロではないので、自分のためにもきちんとしておくことが大切です。
引用:https://type.jp/et/feature/21155/
続いて多く寄せられたのが、プロジェクトの途中で退職者が出たことによるトラブルだ。
・プロジェクトが退職日までに終わらなかった
・同僚がかなりの量の仕事を残して退職。どれが急ぎのタスクなのかも分からないまま、残されたメンバーで全て片付けることになった
・1年を越えるシステム導入の本稼働日に、中核メンバーが退職代行を使って辞めた
納期やローンチのスケジュールが決まっているケースが大半である開発プロジェクト。当初予定していた人員が欠けてしまうことで、開発に遅れが出てしまうことも。
企業や同僚との関係性を重視するのであれば、退職のタイミングにも配慮したいところだ。
エンジニアの場合は、プロジェクトのスケジュールに大きく影響します。辞め際をきちんとするためにも、事業計画やプロジェクトの状況を考慮し、退職までのスケジュールを組んだ上で報告するのがおすすめです。
(中略)
もちろん、転職をする時期や転職先の事情によって退職のタイミングがどうしても合わないこともあると思いますが、在職している以上は、できるだけ現職の事情を考慮して行動する方が、辞める際のストレスはお互いに少なくなると思います。
引用:https://type.jp/et/feature/21155/
また、創業期のイタンジにエンジニア職で入社し、メルカリへの転職を経て2018年に執行役員としてイタンジに再入社した永嶋章弘さんも、次のように話す。
「ここまではプロジェクトを進めてから辞める」と会社側に提示できるような条件を持っておくと良いかもしれません。
あとは、在職中から意識しておきたいのが、自分が辞めても業務が回る体制をつくっておくこと。
エンジニアはチームで働く仕事なので「今プロジェクトから抜けられたら、同僚にシワ寄せがいく」と言われてしまったら、退職交渉をするときにも自分の希望を通しづらいですよね。
開発業務が属人化しないよう、常日頃から整備しておくといいのかなと思います。
引用:https://type.jp/et/feature/21415/
次に多かったのは、情報の取り扱いに関する退職トラブル。
前職での開発実績や保有スキルを買われて、同業界内で転職することが多いエンジニア。事業領域が近い企業に転職する場合、前職の情報を意図せずか意図してか、持ち出してしまうことも……。
エンジニア経験者から寄せられたコメントには、憤りの声が多数見られた。
・先輩が管理しているUSBメモリーにすべての設計資料が保存されていたらしく、その先輩の退職と共に資料がすっぽり無くなった。情報がないので、納品物の保守ができなくなった
・社内のエキスパートが作成したデータベースクライアントツールを持ち出して退職していく人がいた
多くの会社では、従業員に対して秘密保持義務(※)を課している。
つまりは、前職の開発体制について口外することも、使われてた技術を公にすることもNGで、ドキュメントの持ち出しなどもってのほか。motoさんも「勝手に情報漏洩をすることは絶対にやめておきましょう」と強調した。
会社員には秘密保持義務や守秘義務がありますから、前職で扱っていた情報を持ち出すのはルール違反です。絶対にやめましょう。
特に競合他社に転職した場合、入社後に内部情報をいろいろ聞かれることもあると思いますが、むやみに話さないこと。
法律やモラルに反したことをしないのは社会人として基本中の基本です。
引用:https://type.jp/et/feature/21155/
※秘密保持義務:会社の営業上の営業秘密やノウハウなどを承諾なく使用・開示してはならない義務
最後に、エンジニア経験者が「この辞め方はすばらしかった」と感じた事例を紹介したい。
・同僚が退職前に関係者に送ったあいさつメールで、なぜ退職を決断をしたのか、自分の言葉で書かれていた。会社そのものや誰かを批判するわけではなく、その人にとっての理想と、現状とのギャップをうそ偽りなく書いていたことに誠実さを感じた
IT業界内で転職する場合には、いつ、どこで前職の同僚と関わることになるか分からない。
これまでともに働いてきた仲間への配慮として、将来のビジネスパートナーとなり得る相手への売り込みとして、退職時にネガティブな印象を残さないにこしたことはない。
在籍していた企業の悪口を言ってしまう人も少なくないが、motoさんは次のように指摘した。
辞めると決めた途端に「うちの会社は社長がイケてない」とか「年収も低いしサービスもクソだ」みたいな悪口を言う人を目にしたことがありますが、遠目に見ていて、それがポジティブに働いた事例を見たことがありません。
本人は会社の悪口を言うことで、会社の評価を下げて自分を正当化しているのかもしれませんが、下がるのはその人自身の評価です。悪口を言いたくなる気持ちも分かりますが、退職後にマイナスの評価を残すことに意味はありません。
それに、同僚はこれからもその会社で働くので、そこへの気遣いも大切です。自分が働いている会社の社長がたとえイケていなくても、その会社を志望して入社したのは自分自身ですからね。周りの人のことも考えて行動することが重要です。
引用:https://type.jp/et/feature/21155/
エムスリーの執行役員 CTO/VPoPである山崎聡さんと、レクター 代表取締役の広木大地さんも、退職時の言動に関する注意点を挙げている。
大前提として、退職時は大なり小なり不満があるものです。それを言いたくなる気持ちは分かりますし、改善点があるなら組織としてはぜひ教えてほしい。
ただし、一時的な感情に振り回されないよう気を付けたほうがいいとは思います。
退職してもIT業界にいる以上、働く場所が変わるだけです。先々でまた同じ会社で働いたりすることはよくある話。
退職時に感情的になってしまったことが、巡り巡って将来に影響する可能性は十分あります。信頼関係が重要ですから、わざわざそれを壊すような辞め方をする必要はないと思いますね。
引用:https://type.jp/et/feature/21443/
先々で辞めた会社の人たちとどういう関わり方をするかは分かりません。下の人もどんどん成長しますから、もしかしたら将来は自分の上司になるかもしれない。
だからこそ、目の前の人をあなどったり悪く扱ったりしない方がいい。退職に限りませんが、後々にしこりが残るようなことをするのは単純に得がないなと思います。
引用:https://type.jp/et/feature/21443/
また、退職時には上司や同僚から「転職する理由」を聞かれることも多いだろう。
つい現職のデメリットが口をついて出そうになるが、ポジティブで納得感のある理由を語ることが、円満な退職につながるとイタンジの永嶋さんは語る。
(退職を引き止められなかったのは)誰の目から見ても、僕が選んだ転職先が「納得感のある選択」であることが明らかだったからだと思います。
「本人の目指すキャリアの方向性」にとってプラスになる、と納得感が持てれば、部下のためを考えている上司であればあるほど退職をむやみに止められないはずです。
そういう意味では、部下思いの上司に僕が恵まれた面もあると思います。
また、僕がキャリア選択をする上で重要視しているのは、中長期的に見て、自分のスキルや職能をステップアップしていけるかどうか。
イタンジからメルカリへの転職ではプロジェクトマネジメントのスキルが身に付きましたし、イタンジに戻ることで執行役員というキャリアアップにつながりました。
どちらも僕のキャリアの軸にぴったり合うものだったので、みんな僕の選択を心から応援して、背中を押してくれたんだと思います。
引用:https://type.jp/et/feature/21415/
退職すれば企業や同僚との関係が「そこで終わり」になるとは限らない。めぐりめぐってどこかで同じプロジェクトに参画することになったり、古巣の企業に再入社したりすることもめずらしくなくなった。
だからこそ、いい転職をかなえるためには円満な退職からかなえたい。
人材の流動化が高まる中、転職は誰にとっても当然の選択肢となった。特にエンジニアの場合、経験を生かして転職し、複数社で経験を積むのはメジャーなキャリアアップの方法だ。
転職が増えるということは、退職も増えるということ。プロジェクトによってさまざまな企業と関わるエンジニアは、過去の在籍企業や元同僚とつながる機会も多い。だからこそ「たつ鳥跡を濁さず」に会社を去りたいもの。
そこで今回は、自身も6回の転職経験を持ち、転職情報メディア『転職アンテナ』を立ち上げたmotoさんに、エンジニアが退職時にやってはいけないことを聞いた。
現職との退職交渉は、エンジニアが転職前に乗り越えなければならない壁の一つ。
退職の意志をいつ・誰に・どのように伝えるかを間違えてしまうと、しつこい引き止めにあってしまったり、交渉がもつれてしまったり、せっかく築いてきた円満な関係が転職間際に崩れかねない。
そこで紹介したいのが、現在、「テクノロジーで不動産取引をなめらかにする」をミッションに、さまざまな不動産テックサービスを展開するIT企業イタンジで執行役員を務める永嶋章弘さんの退職・転職事例だ。
永嶋さんは創業期のイタンジにエンジニア職で入社し、メルカリへの転職を経て、2018年に再びイタンジに入社。執行役員として、同社の経営に携わっている。
一度辞めた会社への再入社でポジションアップを実現した永嶋さんは、どのように退職交渉を進めたのだろうか。退職を引き止められた際の回避法とあわせて聞いた。
「またこの人と一緒に働きたい」――。前職の仲間にそう思ってもらえる退職をかなえるためには、在籍期間中にチームに貢献していることは大前提だが、退職が決まってからの過ごし方も重要だ。
そこで、エムスリー株式会社 執行役員 CTO/VPoP山崎聡さんと、株式会社レクター広木大地さんにインタビュー。
エムスリー卒業生とも親交が深い山崎さんと、ミクシィ(現:株式会社MIXI)時代には開発部門を率い、現在は多数の企業の技術組織アドバイザリーを手掛けている広木さんに、エンジニアが円満に会社を辞めるために意識したい「退職確定後のスタンス」を聞いた。
【アンケート概要】
●調査方法:エンジニアとして勤務経験を持つ方へのWebアンケート(クラウドワークス)
●調査期間:2022年12月1日~2022年12月15日
●有効回答者数:27名
NEW!
NEW!
タグ