サカモト@エンジニアキャリア論さん(@sakamoto_582)
外資テック企業で働くソフトウエアエンジニア。エンジニアがテック企業トップに行くためのキャリア論をTwitterなどで発信中
「受託開発の仕事をこれからも続けていくべき?」
「外資テック企業に転職したいけど、英語ができないから無理?」
「自分のキャリアはこのままでいいのだろうか……?」
そんな悩めるエンジニアたちから寄せられる相談に応じ、Twitterで情報発信を続ける「サカモト@エンジニアキャリア論」(@sakamoto_582)さん(以下、サカモトさん)。
サカモト@エンジニアキャリア論さん(@sakamoto_582)
外資テック企業で働くソフトウエアエンジニア。エンジニアがテック企業トップに行くためのキャリア論をTwitterなどで発信中
外資テック企業の日本支社でフルスタックエンジニアとして働くかたわら、平日の夜や土日を使い、現役エンジニアやエンジニアになりたい学生たちからの相談に無料で応じ続けている。
「無料キャリア相談を本格的に開始したきっかけは、『経験年数15年フロントエンドエンジニアの年収が396万円』というツイートを目にしたことでした。
もともと日本のエンジニアの給与が海外と比較しても低い現状に問題意識を持っていましたが、これは何とかしなければいけないと思ったんです」(サカモトさん)
この1年で、DMやオンラインで相談に応じた人数は150人以上。「思いがけず多くの人から連絡をもらうようになった」と話すサカモトさんに、エンジニアがキャリアの不満・不安を解消し、悩みから抜け出すための方法について聞いた。
ーーサカモトさんの元には、エンジニアたちからどんな相談が寄せられていますか?
SIerやSESなどクライアント向けにITサービスを提供するような企業で働いている方から「これからのキャリアをどうするべきか」という相談を受けることが多いです。
例えば、「今の会社の開発スタイルが古くて不安」だという相談もあれば、「長時間労働で疲弊している」という声も寄せられます。
Web系企業で働くエンジニアからすると意外かもしれませんが、老舗・中小規模のSIerやSESだと、ブラック企業ってまだまだあるんですよ。
以前、僕が相談に応じた方の中で「残業時間だけで月に百何十時間も働いている」とおっしゃっていた方がいたので驚きました。
ーーブラックな環境にいてキャリアに悩んでいるエンジニアに対しては、どんな提案をしているんですか?
各自の状況にもよりますし、本人が何を望むか次第なんですが、相談者の方が「技術的にも働く環境的にももっとまともな会社に行きたい」ということであれば、まずは転職したい企業を具体的にイメージするところから始めてくださいとお伝えします。
そして、そこに向かうためのロードマップをつくり、この相談が終わった後のネクストアクションを具体的に決める。
話はしたけど次にやることが分からないまま、相談者の方がモヤモヤして終わらないようにするのが僕なりのポリシーです。
あとは、超有名企業じゃなくても、世の中には技術的にまともな会社はたくさん存在していますから、そういう企業をどうやって転職活動で見極めるかもお話ししますね。
ーーそれは簡単に見極められるものですか?
ええ。技術的にまともな会社は、技術力を持ったエンジニアを採用していくために、選考フローの中で必ずフィルタリングを行っていますから、選考フローを見るだけで幾分か分かります。
例えば、現場のエンジニアが面接の場に出てきて候補者の技術力をしっかり確かめるとか、コーディングテストで足切りされるようになっているとか、そういう仕組みがある会社です。
選考の対策を面倒に感じる人もいるかもしれませんが、そういう企業の面接を実際にいくつか受けてみると、得られるものは多いはず。
各社の面接で自分がつまづいたところや、うまく答えられなかったところが分かると、年収アップ、キャリアアップをかなえるために今の自分に足りていないことが見えてくると思います。
ーーキャリア相談に訪れるエンジニアの方は、サカモトさんと話すことで、「こういう企業に行きたい」「将来どうなりたい」というビジョンをすぐに見つけられるのでしょうか?
ぱっと出てくる人は少ないですね。なぜなら、ほとんどの人は、いろいろな制約の中でどうなりたいかを考えようとするので。
ーー制約ですか?
はい。例えば、Googleで働いてみたいと心の中で思っても、いやいや自分のレベルでは到底無理だとか、英語ができないから採用されないだろうとか、決めてしまうんですよね。
でも、その制約って実際は自分で変えられるものであることも多いはず。
例えば、英語は勉強すれば誰でもある程度できるようになるし、技術力だってそうです。Googleで働くエンジニアに求められる技術力のレベルを調べて、そこに向かって努力さえできれば目標に到達できる可能性は十分ある。
長期戦になるかもしれないし、努力も必要だから実際に続けられる人は少ないかもしれないけれど、それだってそこに向かう過程で今よりステップアップできることは間違いない。
なのに、自分で勝手に制約を設けて「今できること」の範囲で行きたい企業を考える人って多いんです。
かつて僕自身もそうだったので、「できない理由」を並べ立てなくなる気持ちは痛いほど分かるんですけど、それはすごくもったいない。
だから、エンジニアの皆さんには「いったんすべての制約を外して、行きたい企業ややりたいことを自由に考えてみましょう」とお伝えしたいですね。
ーーサカモトさんが、自分の制約を取り払うことができたのは、何かきっかけがあったんですか?
はい。僕自身も日系企業で働いていた時は、自分が外資テックに行くのは無理だろうって思っていた時期もあったんです。
でも、知人のソフトウエアエンジニアが、子育て中にも関わらず勉強して、GAFAに転職したんですよ。それを見てはっとして。
僕より時間的制約がある中で勉強してスキルアップして行きたかった企業に転職できた人がいるんだから、自分だって限界を決めずにやればできるかもしれないって思えたんです。
そこで行動を起こした結果、自分としてはより満足のいくキャリアを描けるようになりました。
ーーそもそも、現状のキャリアに対する不満や、将来のキャリアへの不安も、自分の中で制約をもうけているから生じるのかもしれませんね。
そうだと思います。例えば、「将来的にマネジメントを極めようか、一介のエンジニアとして技術を極めてやっていこうか、悩んでいます」という相談がよくあります。
多くの場合、「一介のエンジニアでやっていきたいけど、マネジメント側にいかないと年収が上がらないから、マネジメント側にいくしかないですよね?」って相談者の方は思っているんですよ。
でも、本心ではエンジニアでい続けたいなら、そのまま年収を上げることはできないのか? と考えて、調べてみる。
すると、「外資テックに転職すれば両方の希望がかなう」ということや、日系企業であっても「この会社ならエンジニアのまま給料を上げていけるのか」ということが分かってくると思います。
さらに、そうはいっても英語力が……、技術力が……っていう制約が出てくるなら、じゃあ2年後なり3年後なりに希望の会社に転職できるように、今日からできることは何かを考えて、やれることから始めればいいんです。
目標に向かって行動を起こすだけで、だいぶ現状の不満もやわらぐし、将来の不安も解消されていくはずですよ。
ーーなるほど。目標を立ててロードマップを引いて歩き出すわけですね。
はい。
あとは、行きたい企業の面接を受けて落とされるのは嫌だから、「しっかり準備が整ったら面接を受けよう」というエンジニアの方も多いのですが、自分が目指すべき先を具体的にイメージするためにも、今は力不足でもいいから行きたい企業の面接はすぐに受けてみた方がいいです。
仮に2年後に入社しようと思ったら、半年に1回面接を受けていけば4回も面接できるわけじゃないですか。たとえ1回目、2回目とあっさり落とされたとしても、これはかなり有意義な経験ですよね。
大学入試だって、いきなり第一志望の試験から受ける人はほとんどいないじゃないですか。たいていの人は志望校の過去問を何度も解いたり、模擬試験を受けたりしてから本番に臨みます。
転職の面接も、そういうふうに考えていいと僕は思います。面接を受けて落ちたとしても、その時にちょっと凹むくらいで(笑)、得られるものの方が多いはず。
中途採用だと何度も面接を受けられることがほとんどだと思いますから、行きたい企業があるのであれば、諦めずにトライしてみましょう。
ーー確かに、何度挑戦したっていいはずなのに、一回落ちて「自分にはやっぱり無理」とあきらめてしまう人も多そうですね。
そうなんです。でも、それもやっぱり自分で勝手に決めた制約ですから、取り払ってしまえばいいんです。
どうせ無理、きっとできない……そんな言葉が頭に浮かんだときは「本当にそうなんだっけ?」と自分に問い掛けてみる。
そこから、「こうすればできるかも」「いつまでならできるかも」と考えるクセ付けができると、現状の問題も解決できるし、きっとこれからも満足のいくキャリアを歩めるようになると思いますよ。
取材・文/栗原千明(編集部)
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