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レバレジーズに学ぶ 職種を超えたコラボレーションの秘訣【連載:コラボlab】

働き方

    異業種、異職種の人が集まる混成チームをうまく舵取りしている、さまざまな分野のリーダーを取材してその極意を見出し、コラボレーションの本質に迫る本連載。

    第四回となる今回は、ユーザビリティやデータ分析に強みを持ち、オールインハウスをモットーに事業を展開するレバレジーズ株式会社の代表取締役である岩槻知秀氏と、マーケティング担当の阪上晃幸氏に話を聞いた。

    自社でオウンドメディアを運営し、コンバージョン率の向上をはじめ媒体価値向上のための施策を繰り返す同社では、マーケターやディレクター、エンジニア、デザイナーなど異職種で構成されているプロジェクトチームをうまく回していくことが必要不可欠。

    異職種が集まるチームをどのようにうまく回しているのか探ったところ、どうやら人材の活用に秘密があるようだ。

    そこで、様々な職種の人材職種コラボレーションを実現するための極意を聞いた。

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    レバレジーズ株式会社 代表取締役
    岩槻知秀氏

    (いわつき ともひで)1980年生まれ、大阪府出身。早稲田大学社会学部入学後、大学1年時からIT企業にて経験を積む。2005年大学卒業と同時にレバレジーズを創業し、現在に至る。「最も付加価値が高く、競争優位性の高い企業になる」というビジョンのもと、設立12年目にして200億円規模の売上を実現。「働くモチベーション」の上がる取り組みを行った企業を表彰する「グッド・アクション2016」を受賞。

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    レバレジーズ株式会社 システムマーケティング担当
    阪上晃幸氏

    (さかうえ てるゆき)1986年生まれ、兵庫県出身。一橋大学大学院経済学研究科において修士課程を修了し、レバレジーズに入社。複数のメディアの立ち上げに関わり、RやPythonを用いたデータ分析・効率化を通じてオウンドメディアの売上を1年で2倍にする。

    職種を超えたコラボレーションのための制度

    代表の岩槻氏はこう語る。

    「うちの社員は一見、おとなしそうに見えるけれど、実は内に情熱を秘めた人材が多いんです。そもそも当社が設立してから『信頼』『知性』『情熱』を採用要件にしています。この点、急激に伸びているベンチャー企業だと、『情熱』の比重が高い会社も少なくないと思いますが、当社ではそれと同じレベルで『信頼』と『知性』を重要だと言い続けているので結果的に、その3つを高いレベルでバランスよく備えている人材が中心となってきました」(岩槻氏)

    そして「信頼」「知性」「情熱」がバランスよく備わっている人材には以下のような特徴があると続けた。

    「まず、面会した印象や志向性によって識別します。私たちは求める人材は内に秘めたるものを持ち、向上心の高い人が多いですね。特にエンジニアの場合、もともと論理的な思考の力が備わっている方が多い一方、全面に『情熱』を出してくる方は少ないので、そこをしっかりと掘り下げて時間をかけて話をします」(岩槻氏)

    しかし、その一方で、エンジニア採用にあたっては、コミュニケーションを少し苦手とする人が多いことも特徴だと課題もにじませた。

    「チーム運営での失敗事例として、私が作っていたデータ集計自動化システムとほぼ同じものをエンジニアが独自に開発に着手してしまったケースがありました。自由にやれる領域が多いのは魅力のひとつではありますが、会社としては限られたリソースにおいて最大の成果を出す必要がありますので、それからは定期的に『何をやっているか』や『これから何をやろうとしているのか』を確認しながら作業を進めるようにしています」(阪上氏)

    また、チームメンバーであるデザイナーとの間で問題が発生したこともあったという。

    「デザイナーにおいて、デザイン面でのこだわりが強く出てしまい、あまりクリエイティビティの必要ではない領域に時間をかけてしまったんです。今は、最初の段階で求めるクリエイティブレベルを含めた意図を丁寧に説明した上で依頼するように心掛けています」(阪上氏)

    「そういった失敗を受けて、当社ではチームのメンバーが日頃から職種や今の仕事を超えたコミュニケーションを取れるような施策をいくつか行っています。たとえば、社内イベントとして七夕祭りやハロウィンパーティーを開催したり、最近では社員同士の飲み会の費用を会社で負担する『飲みニケーション』という制度も始めました。ちょっと時代錯誤もありそうなアナログな手段かなとも思いましたが、畑の違う人同士の交流の場として好評です。社員が500人いるのでコストもかかっていますが、これにより、今後社内コミュニケーションがどのように変化していくかが楽しみです」(岩槻氏)

    あるプロジェクトでは、エンジニア5名、デザイナー5名、マーケター6名と職種を横断したチームが構成されているという。

    円滑なチーム運営の為には、コミュニケーションを取りやすい基盤作りがなにより必要だと語る岩槻氏。それでは、実際の開発の現場ではどのようなやり取りが行われているのだろうか。

    異職種との共通認識がスムーズなチーム運営の秘訣

    「WEB開発を手掛ける当社では、なによりユーザビリティを大事に考えているため、PDCAを回しながらの変更が多く、短期での改善にも耐えうるチームの運営が必要なんです。だからメンバー同士が開発中にコミュニケーションをとりやすくするため、作業する場所を物理的に近くにしています」(岩槻氏)

    また、同社ではチームのメンバー同士がよりお互いの仕事をより理解し合えるようにするため、他の職種の業務についても知識を付けることも重要だと考えている。

    「当社のマーケターやディレクターはエンジニアの情報共有や座学の場である『ヒカ☆ラボ』に参加しています。エンジニアがマーケティングもできるようになったり、逆にマーケッターは自前でソースプログラムを使えるようになるなど、自分の専門分野以外の知識を身に付けることも推進しているんです」(岩槻氏)

    データサイエンティスト界隈で人気のある本としては、『StanとRでベイズ統計モデリング』がある。

    データサイエンティスト界隈で人気のある本としては、『StanとRでベイズ統計モデリング』がある。

    また、阪上氏は、新しい技術情報の収集をするため、機械学習系、データマイニング系の勉強会やデータ分析者が集うミートアップにも参加している。

    「データ分析の世界では、勉強した分だけ出来る分析の幅が広がる上に、日々新しい手法が登場するため、情報のインプットが重要だと考えています。その点ミートアップの参加者の中には大手企業のエンジニア兼分析者もいるので、その人たちからデータ分析✕テクノロジーに関するホットな技術情報を得て、その情報をプロジェクト内にシェアするようにしています。実際に、データの可視化を簡単に行えるダッシュボードツール『re:dash』が導入されるに至ったケースなどもありました」(阪上氏)

    コラボの秘訣はメンバーのモチベーション

    阪上氏によると、オウンドメディアのデータマイニングを行なっている現在のプロジェクトでは、特にディレクターやデザイナー、エンジニアとのコラボレーションが重要になるという。

    「具体的には、まずはデータアナリストがアクセスログから『コンバージョンしてくれるユーザー』と『コンバージョンしてくれないユーザー』の差を発見します。その結果から、コンバージョンする可能性を高める特徴を同じチーム内にいるディレクターに伝え、実現可能な施策にまで落とし込んでもらい、実行してもらうというフローの繰り返しでプロジェクトを回しています」(阪上氏)

    上記のフローを繰り返す中で問題となるのは、施策の内容によってエンジニアやデザイナーにとっては、モチベーションの維持がなかなか難しくなることだと、阪上氏は続ける。

    「例えば分析結果から施策に落とし込む際、デザイナーにはコンサバティブなデザインでのページを制作することが求められるケースが多々あるんです。そんなときには、例えば『エンジニアにとって最新技術の導入余地がないか?』、『デザイナーがクリエーティビティを発揮できる領域はないか?』をできる限り模索するようにしています。そうすることで、メンバーのモチベーションを維持しながら施策を実行できるようになるんです」(阪上氏)

    また、チーム全体のモチベーションを向上させる取り組みの一つとして、サイト制作の結果として生み出された売上や過去の仕事でコンバージョンが増えた施策などを積極的に共有することも意識しているそうだ。

    そして最後に、異種なメンバーのいるプロジェクトを運営する上で同社が実際に行っている重要な施策をまとめてもらった。

    ■マーケターが考えるアイデアやオウンドメディアの戦略など情報共有する場を設けて、メンバー全員が同じベクトルに向くように舵をとる

    ■適宜、Slackなどを使ってそのWEBサイトの成果に関わることをシェアし、バリューにつながる取り組みは何か伝える

    ■オウンドメディアを運営する上で重要なデータ分析の事例や検証結果を共有し、エンジニアやデザイナーがバリューを発揮できるような仕事を新たに生み出す

    今回紹介したレバレジーズの例を参考に、Webシステムを開発するチーム構成の中で働くエンジニアは、どのように心構え、どのような働き方をするか、考えてみてはいかがだろうか?

    取材・文・撮影/田中千晶

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