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多様化が進まないのは組織の器が小さいから? “異能”を活かすチームビルディング【ソンムー×ばんくし/聴くエンジニアtype Vol.40】

働き方

エンジニアtypeが運営する音声コンテンツ『聴くエンジニアtype』の内容を書き起こし! さまざまな領域で活躍するエンジニアやCTO、テクノロジーに関わる人々へのインタビューを通じて、エンジニアとして成長していくための秘訣を探っていきます。
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チームや組織を強くするうえで大事な要素である「多様性」。一方で、こと日本に関しては「同調」が求められ、周囲に馴染まない”異能”は排除されやすいケースも見られる。

この二律背反を、株式会社ヘンリーでVPoEを務める松本雅幸(ソンムー)さんはどう考えるのだろうか?

今回の対談では、組織が多様性に向き合う時に大切にしたい考え方が見えてきた。

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【ゲスト】
株式会社ヘンリー VPoE
松木雅幸(ソンムー)さん(@songmu

大学で中国語と機械翻訳を学び、語学学校でのシステム担当兼営業、印刷系SIerでの金融系Webシステムや物流システムの開発、ソーシャルゲーム開発のリードエンジニア、エンジニア向けSaaSのプロダクトマネージャー、IoTや電力事業スタートアップのCTO、外資スタートアップのICなどを経て現職。 現在はヘンリーで電子カルテやレセプトコンピュータなど医療DXに関わるシステム開発に従事している

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【MC】
エムスリー株式会社 VPoE
河合俊典(ばんくし)さん(@vaaaaanquish

Sansan株式会社、Yahoo! JAPAN、エムスリー株式会社の機械学習エンジニア、チームリーダーの経験を経てCADDiにジョイン。AI LabにてTech Leadとしてチーム立ち上げ、マネジメント、MLOpsやチームの環境整備、プロダクト開発を行う。2023年5月よりエムスリー株式会社3代目VPoEに就任。業務の傍ら、趣味開発チームBolder’sの企画、運営、開発者としての参加や、XGBoostやLightGBMなど機械学習関連OSSのRust wrapperメンテナ等の活動を行っている

エンジニアリング組織を育てる真の多様性とは

ばんくし:前回「異能を排除する」という話が出てきましたが、これって実は日常的に起きていることですよね。例えば「ハッカーの呪いと共に生きる」の中にある「Brilliant Jerks」の話もそうですし、企業がカルチャーマッチで採用するケースも「カルチャーにマッチしない人を受け入れない」という意味ではこれに該当する気がします。

そもそも「異能の排除」はなぜ起きてしまうと思いますか? VPoEとしてソンムーさんが気をつけていることも聞きたいです。

ソンムー:会社として文化や哲学を持つことは大切ですし、そこに対してある程度共感できる人やシナジーを生み出す人を採用するのは当然の行動なのかなとは思うんです。ただ、それが差別になってしまわないように「こんな”人”は受け入れられない」ではなく「こんな”振る舞い”が受け入れられない」といった行動指針の部分に焦点をおくことが大事なのではないでしょうか。

僕は多様性って「器」だと思っているんです。企業が組織を強くしたり、ビジネスを成功に導いたりするためには、いろいろな人を受け入れることが必要ですから。

ただ、残念ながら受け入れられない人もいる。例えば、ものすごく優秀で、世界を変えるような技術を持っているエンジニアだけど、日本語も英語も学ぶ気がない……という人がいたときに、残念ながら今の段階ではその人を受け入れられないですよね。でも、その人とコミュニケーションをとれる人を採用したり、同時通訳の技術が進んだりして組織の器を広げることでその人を採用できるかもしれない。

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多様な人を受け入れるうえで、自分たち側の器が小さくて叶わないというケースはとても多いので、組織としてその器を広げていく努力をするというのが大切だと思います。

ばんくし:めちゃくちゃわかりやすいです。組織としての器を広げることができれば、受け入れられる人を増やせるということですね。

ソンムー:これまで地理的に採用が難しかった人をリモートワークという形で採用できるようになったのも、技術的な部分で器が広がったからですよね。器を広げていくというのは、組織としても大きなインセンティブになると思います。

ばんくし:「異能の排除」を避けるべく、VPoEとして組織の器を広げている、と。

ソンムー:そうですね。自責思考というとネガティブな言い方かもしれませんが、「相手ではなく自分たちが変わることで解決できないか」と考えることってすごく大事ですから。マネジメント側がそこを考慮しないと、組織が歪んでしまうような気がするし。

あと、個人的には「嫌いなものを作りたくない」という気持ちもあるんですよね。「嫌いなものがある」って、自分に負けた感があるんです。それを嫌うことで自分の可能性を潰しているというか、人生を楽しめる余地を減らしてしまっているというか……。

ばんくし:そういった振る舞いをソンムーさんが個人的にやっているだけでなくて、マネージャーとしてやっているというのがすごいことだと思います。

ソンムー:あくまで僕の信条ですけどね。もちろん、「好き」「嫌い」を明確にすることがエネルギーになる人もいると思うので、そこは人それぞれだとは思います。

ハッカー精神はずっと生き続ける

ばんくし:少し話は変わりますが、もしソンムーさんがかつて経験してきたようなハッカー時代に戻れるとしたら、戻りたいという気持ちはありますか?

ソンムー:戻りたいとは思わないですね。前回もお話ししましたが、かつてのハッカーには言葉遣いが悪いような人たちが一定数いたんですよ。そういうハッカーが少なくなってきたことで昔よりもエンジニア業界が良くなってきているのは事実なんですよね。

でも、ハッカーがいなくなったとしても「ハッカー精神」は残り続けていく気がするんです。

聴くエンジニアtype

イギリスなどで王様が亡くなったときに「The king is dead,long live the king!(王は死んだ。しかし王政はこれからも続く)」という宣言が使われることがあります。エンジニア界隈でもそれをもじったタイトルづけがされることがあります。例えば「Perl is dead,long live the perl!」といったような。

私が「ハッカーの呪いと共に生きる」の記事のサブタイトルに「The hacker is dead, long live the hacker!」と付けたのも、ハッカーはいなくなってもハッカー精神を持ったエンジニアは存在し続ける気がするし、存在し続けてほしいなと思っているからです。

例えばスポーツの世界でも「子ども達に夢を与えたいからプロになった」という人がいれば「お金が稼げるからプロになった」という人もいます。エンジニアの世界にも「コードを書くのが好きだからエンジニアになった」という人だけではなく「お金を稼ぎたいからエンジニアになる」という人もいて良いと思っています。

それに加えて「イノベーションを起こしたいから」というハッカー精神を持つ人もいてほしい。それこそが多様性だと思うんです。

次回は“レンタルEM”としてエンジニア採用をけん引する久松剛さんをお迎えし、お話を伺います。お楽しみに!

文/赤池沙希

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