株式会社ROKAI
代表取締役
原田大介さん
30歳を目前に未経験でIT業界に飛び込み、システム開発会社でSEを経てPMへ。多彩なプロジェクトをけん引した後、2019年に独立。エンジニアが安心してキャリアを構築できる会社を目指してROKAIを設立。現在はプレイングマネージャーとして、会社経営とPMを兼任
【PR】 働き方
バックグラウンドの違うメンバーが集まり、一つのゴールを目指すシステム開発において、旗ふり役となるプロジェクトマネージャー(以下、PM)の果たす役割は大きい。
ただ、システムが複雑化し、専門性の高いエンジニアが集まって進行するプロジェクトが増えた現在では、PM一人の力でプロジェクトの難局を乗り越えることは至難の業だ。プロジェクトメンバーをうまくまとめられず、求心力を失ってプロジェクトを迷走させてしまうPMも少なくないだろう。
システム開発会社で17年働いた後に独立し、今でも現場でPMを務めるプレイングマネージャーとして会社を経営する株式会社ROKAIの代表・原田大介さんは、いざというときにメンバーが助けたくなる「好かれるPM」には、先を見通すリスクマネジメント力が備わっていると言う。
では、障壁にぶつかったときにメンバーをうまく巻き込むことができないPM、いわば「嫌われるPM」には、どんな特徴があるのだろうか。
株式会社ROKAI
代表取締役
原田大介さん
30歳を目前に未経験でIT業界に飛び込み、システム開発会社でSEを経てPMへ。多彩なプロジェクトをけん引した後、2019年に独立。エンジニアが安心してキャリアを構築できる会社を目指してROKAIを設立。現在はプレイングマネージャーとして、会社経営とPMを兼任
「一言でいうならば、問題が発生したときにメンバーに責任転嫁するPMですね」(原田さん)
当然ながら、メンバーは悪意があって失敗しているわけではない。それはひとえにプロジェクトのコントロールミスであり、PMに責任がある。その上で、自分のコントロールミスをメンバーのミスにすり替えているだけだと、原田さんは指摘する。
「あくまでも任せたのは自分。どういう成果物が出てくるのかを見据えないままに丸投げしているから、上がってきた結果が期待と違い、驚いてしまうのです。進捗をしっかりとトラッキングしていれば、フォローすべき適切なタイミングで対応できたはず。
起こりそうなリスクを予見しておき、A案、B案、C案を準備しておく。予算の問題だったり、メンバーの体調面の問題だったりと、うまくいかない原因なんて数えきれないほど想定できます。
例えば、途中で予算不足になる可能性を感じたら、『もしかしたら不足するかもしれません』とあらかじめクライアントの耳に入れておく。そうすれば、いざ予算不足が確定したときにもステークホルダーが動きやすく、開発メンバーにも『心配しなくても大丈夫』と安心させることができます。要は、リスクに対する『想像力』をいかに働かせることができるかです」(原田さん)
想像力の重要性を説いた上で原田さんは「PMの役割は正しい場所にゴールポストを設定すること」だと言葉を続ける。
「PMである以上、プロジェクトを何かしらの成果へと導かなくてはなりません。そのためには、各メンバーに対してプロジェクト内における役割や目指すべき成果を明確に伝える必要があります」(原田さん)
正しい場所にプロジェクトのゴールを設置するためには、クライアントとのベクトル共有が欠かせない。仮に、依頼内容がクライアントの成し遂げたい本当の目的とずれている場合には、「設定すべきゴールはここではないか」と提案していくこともPMの重要な役割だと、原田さんは考えている。
「メンバーの素養を見抜いて仕事を振る。それぞれの仕事の進捗を把握する。プロジェクトの進行によって発生する可能性のあるリスクを予測し、あらかじめ手を打っておく。信頼されるPMはこの三つができています」(原田さん)
信頼されるPMの三つの素養が分かっても、誰もが簡単にできることではない。原田さん自身は、どのようにPMとして成長してきたのだろうか。
「私は様々なプロジェクトに関わる中で、多くの優秀なエンジニアが辞めていくのを見てきました。上司は何年も変わっていないのに、下のレイヤーを担うメンバーはどんどん辞めていく……。
レイヤーが下がれば下がるほど、上からの指示に振り回されることが多く、疲弊してしまうんです。PMと現場の技術職では、疲れ度合いが違う。そんな現場を数多く経験したことで、上からの要望を技術者に丸投げしてしまうことが疲弊の原因だとわかり、自分自身の対応を変えました」(原田さん)
以前は、プロジェクトに問題が発生すると、「なぜできないんだ」とメンバーを問い詰めてしまうこともあったという。しかし原田さん自身の視点が変わったことで、「なぜできないのか」ではなく、「何が妨げになっているのか」と聞き方を変えて接するようになった。
「聞き方は似ていても、『なぜ』と『何が』では追求すべき点が違います。なぜできないのか、と聞いてしまえば、そのメンバーは自分の能力やポテンシャルの低さを責められていると感じるものです。しかし、何が妨げになっているかと聞くことで、どうやって妨げになっている原因を取り除くか、という視点に変わります」(原田さん)
また、問題となっている原因をPMがきちんと特定できるようになるために、マネジメントスキルだけではなく、エンジニアリングにおける技術的な知識のアップデートも欠かすことはできない。
「現在ではテクノロジーが進化し、エンジニア一人一人の専門性も高い。全ての技術をPMが把握することは難しいかもしれません。しかし、『専門家に任せているから、私は知らない』というスタンスを取るならば、PMは存在する意味がない。
技術を深く理解することは専門家に任せるとしても、ベースとしての知識は常にアップデートしておかなければなりません。全く知識がなければ、下のメンバーが何に困っているのかも理解できませんから」(原田さん)
お客さまやステークホルダーの評価を得たいなら、プラスアルファの付加価値をつければいい。一方で、PMとしてメンバーからの信頼を得るためには、メンバーとの日常的なコミュニケーションが何よりも重要だと、原田さんは語る。
「メンバーと密にコミュニケーションを取っていけば、相手の考えを無意識に推察する癖がついてきます。地道に続けていくことで、表情の変化やちょっとした言葉からメンバーの感情や状態がくみ取れるようになります。こういう状態のときはどのように伝えるべきかなど、本人の性格も踏まえた上で、アプローチ方法を探ることもできますね」(原田さん)
「好かれるPM」とは、相手の立場に立って考え、行動できる人。PMとして下した決定に責任を持ち、プロジェクトを完成に導ける存在だ。最後に原田さんへ、メンバーのモチベーションを保つにはどうすればよいか質問を投げかけてみた。
「PM自ら積極的にメンバーに声を掛け、どんなことに悩んでいるのか聞くことも一つの手です。一言『いつもありがとう』と声を掛けるだけでも、相手のモチベーションは変わる。プロジェクトのために働いてくれるメンバーに気を配り、感謝を伝えることが大事です。最初からプロジェクトをうまくマネジメントできるPMはいません。私自身、多くのプロジェクトに関わり、失敗することから多くを学んできましたから。
もっともらしく話していますが私自身も、まだまだ完璧なPMとは思っていません。より『好かれるPM』になれるよう、日々精進していくつもりです」(原田さん)
プロジェクトマネジメントを専門に手掛ける企業の代表として、そして一人のPMとして、原田さん自身もまだ成長を続けている。
文/宮﨑まきこ 写真/竹井俊晴 編集/今中康達(編集部)
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