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ITアーキテクトとは? 重要性や必要なスキル、類似ポジションとの違いや転職時に有利な資格などを解説

IT用語集

    企業がDXを進めるうえで近年重要視されるようになってきた「ITアーキテクト」。

    「アーキテクト」という言葉から、何となく「設計する人」という印象を受けますが、ITコンサルタントやITエンジニアとの違いを詳しく説明できる人は多くないのではないでしょうか?

    今回は、概要を掴みづらい「ITアーキテクト」について徹底解説。仕事内容から必要なスキル、有利な資格まで詳しく説明します。

    ITアーキテクトとは

    ITアーキテクトとは、企業に合ったIT戦略を練り、開発をリードする職業です。

    近年ではDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する企業が増えており、それぞれの企業に適したIT戦略の立案・遂行が求められています。企業規模や経営方針、既存のシステムとの親和性などを考慮しながら、現状の課題に沿ったシステムを設計するだけでなく、それを開発し、運用するまでの一連のプロセス構築も必要となります。

    システムを開発して終わり、ではなく5年後、10年後の理想的な姿を実現するための全体像を設計し、先導していくのがITアーキテクトの役割なのです。

    技術的な視点だけでなく、経営戦略を考慮したうえでシステムの運用基盤を設計するというビジネス視点も備えたITアーキテクトは、企業のDX推進に欠かせない存在として注目を集めています。

    ITコンサルタントやITエンジニアとの違い

    ITアーキテクトは、ITコンサルタントやITエンジニアと混同されることがありますが、業務上の役割が大きく異なります。

    一般的に、ITアーキテクトは「アーキテクト(建築家)」というその名の通り、システムの設計・構築を担当します。一方でITコンサルタントは企業とのやり取りが重要なミッションです。ITアーキテクトも企業と接点を持つシーンはありますが、どちらかというと社内および他社のITエンジニアとの接点が多いのが特徴と言えるでしょう。

    プロジェクトの流れで説明すると、ITコンサルタントが企業・クライアントにヒアリングを行い、そこで得た課題や意見をもとにITアーキテクトがシステム導入における全体設計を実施。ITエンジニアに指示を出してシステム開発を進めていくイメージです。しかし、プロジェクトによって役割分担は異なるためこれはあくまでも一例です。

    ITコンサルタントはビジネス的な視点、ITエンジニアは技術的な視点を強く持っていますが、ITコンサルタントはその両面の視点を持ち、ビジネスにおけるIT戦略を包括的に提案するのが主なミッションです。

    ITアーキテクトの3つの専門分野と必要な専門スキル

    ITアーキテクトの仕事内容は主に三つの分野に分かれています。ここではそれぞれの役割と必要なスキルについて解説します。

    アプリケーションアーキテクチャ

    アプリケーションアーキテクチャとは、システムアプリケーションの設計と構築にかかわる分野です。ビジネスにおけるニーズを実装するべく、プログラミング言語やUIの設定、データモデリングなどさまざまなコンポーネントの全体的な方向性を決定します。また、既存のシステムの設計パターンを踏襲するのか、新たに設計パターンを構築するのかなど、アーキテクチャ全体の方向性を決定する役割も担います。

    ・必要な専門スキル

    アプリケーションに必要な機能の実装に必要なモデリングスキルのほか、ユーザビリティーやデータに関する設計スキルが求められます。

    適切なアーキテクチャを選択できるかどうかはアプリケーションによる利点を最大化できるかに直結するため、非常に重要な要素です。例えば、将来的にアプリケーションを拡張することを考慮しマイクロサービスアーキテクチャを採用するのか、スピード重視でモノリシックアーキテクチャを採用するのかなど、ビジネス要件を理解したうえで適切なアーキテクチャを選択することが求められます。

    インテグレーションアーキテクチャ

    インテグレーションアーキテクチャとは、異なるシステムの連携や統合に関わる分野です。例えば部門ごとに異なるシステムを連携させたい場合や、M&Aなどによる企業の統廃合の際の情報システムの統合などがこれにあたります。それぞれのシステムの互換性やフレームワークなどの設計業務が主なミッションです。

    ・必要な専門スキル

    近年はクラウドサービスなど外部のシステムも含めた連携・統合も求められるため、幅広い領域における相互運用性を確保するための設計スキルが必要です。また情報システムの統合や移行に伴う情報漏洩やデータの消失などのリスクに対応するためのセキュリティー面の知識も要します。

    インフラストラクチャアーキテクチャ

    インフラストラクチャアーキテクチャとは、システムやアプリケーションの土台となるシステム設計に関わる分野です。具体的にはサーバー、ネットワーク、OS、ストレージなどの構築やそれらのセキュリティ面の設計がこれにあたります。

    ・必要な専門スキル

    インフラストラクチャアーキテクチャはソフトウェア、ハードウェア、ネットワークが複雑に絡み合うため、インフラ領域における幅広い知識やスキルが求められます。また企業規模や経営戦略、経営資源に応じて設計をおこなう必要があるため、他の分野以上に企業経営における理解も必要です。またセキュリティーに関する専門的な知識も要します。

    ITアーキテクトに必要な共通スキル

    ITアーキテクトは、経済産業省等が推進するITスキル標準(ITSS)で定められたIT職種の一つです。ここではITSSで挙げられている、ITアーキテクトに必要な共通スキルについて紹介します。

    必要スキル 詳細
    アーキテクチャ設計 要件(制約)の分析と定義、アーキテクチャ設計指針の定義、ITアーキテクチャ設計、アーキテクチャおよび技術的視点から実現可能性評価、技術上の課題の定義と代替案の分析、プラットフォーム及び要素技術の評価
    設計技法 モデリング技法の理解、データモデリング技法の理解と適用、プロセスモデリング技法の理解と適用、パフォーマンスモデリング技法の理解と適用、アプリケーション設計技法の理解と適用、インフラストラクチャ設計技法の理解と適用
    標準化と再利用 開発標準の定義、基本原則に基づくIT標準の定義、既存資産の再利用、再利用技法の理解と適用、再利用資産の開発と適用、再利用資産管理プロセスの理解
    コンサルティング技法の活用 コンサルティング技法の選択と活用、分析ツールとモデルの理解と活用
    知的資産管理(knowledge Management)活用 知的資産の管理と活用
    テクノロジ IT業界動向の把握、関連技術(IT)動向の把握、関連技術(IT)標準の理解と適用
    インダストリ(ビジネス) 関連業界動向の把握、関連業界アプリケーションの把握、関連業界(ビジネス)標準の理解と適用
    プロジェクトマネジメント プロジェクト統合マネジメント、プロジェクト・スコープ・マネジメント、プロジェクト・タイム・マネジメント、プロジェクト・コスト・マネジメント、プロジェクト品質マネジメント、プロジェクト人的資源マネジメント、プロジェクト・コミュニケーション・マネジメント、プロジェクト・リスク・マネジメント、プロジェクト調達マネジメント
    リーダーシップ リーダーシップ
    コミュニケーション 2Wayコミュニケーション、情報伝達、情報の整理・分析・検索
    ネゴシエーション ネゴシエーション

    出典:独立行政法人情報処理推進機構  ITスキル標準(ITSS) ITアーキテクト 3部スキル編

    ITアーキテクトの働き方

    ITアーキテクトの働き方は、携わる案件の種類によって大きく変わります。基本的には自社で働くことが多いですが、クライアント先に常駐するパターンもあります。

    案件の難易度や納期に応じて忙しさに波がありますが、業務のフェーズが上流にあたる点や、量よりも質が重視される点から、メリハリのある働き方がしやすいといえるでしょう。

    ITアーキテクトの魅力

    ここではITアーキテクトの魅力を説明します。

    影響力や達成感が大きい

    先ほども述べたとおり、ITアーキテクトには長期的な目線でIT戦略を練り、実行していくことが求められます。実現するには幅広い知見が必要なのはもちろん、プロジェクト遂行時には大きな壁にぶつかることもあるでしょう。しかし、試行錯誤の結果、自分が設計したシステムが予定通り稼働し、かつそれがクライアント企業の課題解決にも寄与できた時のやりがいが大きいのは言うまでもありません。

    将来性が高い

    先述したとおり、近年あらゆる業界においてDX化が進んでおり、ITと企業経営は切っても切り離せない関係です。こうした状況下でITアーキテクトのニーズは今後も高まっていくことが予想されており、非常に将来性の高い職種といえます。

    また後述しますが、ITアーキテクトのキャリアパスは豊富にあるため、ITアーキテクトとしての知識やスキル、経験は将来的に自身のキャリアを後押しすることにもつながるでしょう。

    高年収を狙える

    ITアーキテクトの年収に関する公式なデータはありませんが、2024年8月現在転職サイトtypeに掲載されている「ITアーキテクト」の求人を見てみると、最大の想定年収が1800万円に設定されていました。国税庁「令和4年分 民間給与実態統計調査」 によると、日本人の年収の平均値は458万円ですので、ITアーキテクトの給与は非常に高いといえます。成果が収入に直結する仕事がしたい人にぴったりの仕事です。

    ITアーキテクトの大変な点

    ITアーキテクトには、その重要性の高さゆえの大変さがあります。具体的に解説します。

    責任が大きい

    先ほど「ITアーキテクトの魅力」として影響力や達成感が大きい点を挙げましたが、裏を返すとその分責任や負担が大きい職種ともいえます。特にプロジェクトの成否が事業継続に大きな影響を与える場合、ITアーキテクトが負う責任はかなり大きく、人によっては困難に感じる人もいるでしょう。

    仕事の難易度が高い

    ITアーキテクトはクライアント企業の経営課題を理解し、システムの全体像を設計するだけでなく、開発現場をリードしなければなりません。時にはクライアントとエンジニアの間で板挟みになるケースもあり、それぞれと折衝するスキルが必要となります。

    また、クライアント企業の課題解決には新しい技術を含め幅広い分野の知識を駆使することが求められます。これらのことから、ITアーキテクトは非常に高度な職種であり、負担も大きいといえます。

    ITアーキテクトに有利な資格

    ITアーキテクトとして働く上で資格は必要ありません。しかし、資格を取得しておくことで知識やスキルを証明する際に役立ちます。また、未経験からITアーキテクトを目指す人にとっては指標にもなるでしょう。ここでは、ITアーキテクトにおすすめの資格について詳しく解説します。

    システムアーキテクト試験

    システムアーキテクト試験は、独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)が運営する国家資格で、ITアーキテクトに関する資格のなかでもっともメジャーな資格といえるでしょう。情報処理技術者試験においてレベル4に該当する難易度の高い試験です。

    システムアーキテクト試験は上流工程である要件定義から開発・運用・保守まで出題範囲が幅広く、システム開発の全体を把握していることが求められます。取得することでキャリアアップや市場価値向上に役立つことは間違いありません。

    プロジェクトマネージャ試験

    プロジェクトマネージャ試験も独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)が運営する国家資格であり、情報処理技術者試験においてレベル4に該当する難易度の高い試験です。

    試験内容はシステム開発においてプロジェクトマネジメント業務を担っている人を対象にしており、予算・スケジュール・品質管理などに関する知識の理解が求められます。Tアーキテクトにはプロジェクトマネジメントの知識が必要となることが多いため、取得しておいて損はないでしょう。

    ITアーキテクトのキャリアパス

    システム開発における上流工程の知識はもちろん、IT戦略の立案や企業経営に関する知見も備えたITアーキテクトには、さまざまなキャリアパスがあります。ITアーキテクトの代表的なキャリアパスの例を紹介します。

    ITコンサルタント

    ITコンサルタントは、クライアント企業の経営課題をITで解決する職種です。ITコンサルタントはITアーキテクトの上流にあたる職種であり、非常に親和性が高いため、ITアーキテクトのキャリアパスとしては王道といえるでしょう。

    技術視点を持ったITコンサルタントは非常に重宝されるため、転職の際は大きなアドバンテージとなります。一方でITコンサルタントになるとITアーキテクトよりも顧客折衝が多くなるため、丁寧にヒアリングを行って課題点を把握したり、非技術者に対してわかりやすく情報を伝えるスキルが求められます。また、これまで以上に経営視点も必要となります。

    プロジェクトマネジャー

    プロジェクトマネジャーもITアーキテクトと非常に親和性が高い職種です。ITアーキテクトはビジネスとシステム上の要求事項を満たすために全体設計を行うのがメイン業務であるのに対し、プロジェクトマネジャーはシステム上の要求事項を満たすためにプロジェクトを管理するのがメインの業務となります。そのため、プロジェクトマネジャーはよりエンジニアに近いポジションで働きたい人に適しているといえるでしょう。

    CTO・CIO

    企業の最高技術責任者であるCTO(Chief Technology Officer)、最高情報責任者であるCIO(Chief Information Officer)もITアーキテクトと親和性の高い職種です。ITアーキテクトには、企業規模や経営方針に合ったIT戦略を立案する能力が求められるため、この部分を突き詰めればCTOやCIOなど自社のIT戦略を決定するポジションで活躍することも可能です。

    CTOやCIOは、その名の通り自社の技術・情報部門における最高責任者となるため、エンジニアの採用や教育などITアーキテクト以上に幅広い業務を担います。また企業規模によってはプレイングマネジャーとなることもあるため、事前に業務領域を確認することが大切です。

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    まとめ:ITアーキテクトはDX時代に欠かせないキーパーソン

    企業の競争力を高めるうえで、今や切っても切り離せない「DX」。ITアーキテクトは企業のDX化をリードする重要な役割を担っており、これからの時代になくてはならない存在です。

    ITアーキテクトは、技術的・ビジネス的な視点、そして人間力を兼ねそろえていることが必要であり、非常にレベルの高い職業であることはいうまでもありません。そのぶん高い報酬ややりがいも期待できるため、大きな達成感を味わいたい方におすすめの職種といえるでしょう。

    今後は各業界でますますDX化が進むことが予想されており、ITアーキテクトの重要性や需要も拡大していくことは間違いありません。これを機にITアーキテクトのキャリアを検討してみてはいかがでしょうか?

    文/赤池沙希

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