「プロジェクトの途中でトラブルがよく起こる」「自分の説明が伝わっていない気がする」そんな“技術以外”の課題の背景にあるのは、ひょっとして「コミュニケーション」の問題かもしれない。プレゼンの神・澤円が自身の経験やノウハウをもとに、仕事がスムーズに進むコミュニケーションのヒントを伝授!
Xは無料の「伝える力トレーニングジム」? 澤円が教える、140字で磨く言語化力
株式会社圓窓 代表取締役
澤 円(@madoka510)
立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、日本マイクロソフトに転職、2020年8月に退職し、現在に至る。プレゼンテーションに関する講演多数。武蔵野大学専任教員。数多くのベンチャー企業の顧問を務める。 著書:『外資系エリートのシンプルな伝え方』(中経出版)/『伝説マネジャーの 世界No.1プレゼン術』(ダイヤモンド社)/『未来を創るプレゼン 最高の「表現力」と「伝え方」』(プレジデント社)/『「疑う」から始める。これからの時代を生き抜く思考・行動の源泉』(アスコム社)/『「やめる」という選択』(日経BP社) Voicyチャンネル:澤円の深夜の福音ラジオ オンラインサロン:自分コンテンツ化 プロジェクトルーム
皆さんこんにちは、澤です。
これを読んでいるあなたは、Xのアカウントを持っていますか?
持っている方は、投稿(ポスト)もしていますか?
それとも「見る専」ですか?
Xの前身であるTwitterは、もともと140文字という制約の中で表現力を競う、実に魅力的なステージでした。
その後2017年に、280文字へ拡張され、さらにX Premiumのユーザーは2023年以降、段階的に文字数が増やされ、今では25,000文字までの長文投稿が可能になりました。
ボクは、Premiumユーザーですが、あえて今も140文字以内の投稿にこだわっています。長文投稿も可能ですが、長文だと途中で表示が切れてしまうし、何より制限のある中で考え抜く面白さがあるからです。
140文字って、昔なつかし原稿用紙の約三分の一の分量なので、決して多くはありません。
その中で、自分の考えをまとめて表現するのは、脳トレとしても魅力的だと思っています。
「制限」の中で工夫する姿勢こそ、ものづくりの本質
この「制限の中で工夫する」という姿勢は、エンジニアとも縁が深い「デザイン」の世界において、極めて重要なことです。
というのも、あらゆるデザインには必ず何らかの制限があるものだからです。時間、予算、資源、技術的制約……それらの制限の中でプロダクトやサービスを作ることこそが、ものづくりだからです。
制限の中で生まれた魅力的なプロダクトの例としてボクがよく引き合いに出すのが、ポルシェのストーリーです。
ポルシェの最初のスポーツカー356は、実はあのフォルクスワーゲン・ビートルがルーツなんです。
戦後、資源も資金も不足する中、創業者フェルディナンド・ポルシェが手がけたビートルをベースに、「もっと自分がワクワクするクルマをつくりたい」と思ったのが始まり。
彼は軽くて走って曲がるクルマを、とことん突き詰めた。制限だらけの状況だったからこそ、無駄を削ぎ落とした美しさと、シンプルな強さが宿ったんでしょうね。
誰かに求められたからじゃない。
「自分が本当に欲しいものをつくる」という、エンジニアとしてのピュアな衝動。それが、ポルシェというブランドの原点だったわけです。
デザインは制約の中で生まれるのですが、そのデザインを生み出すために必要だったのは、フェルディナンド・ポルシェさんの熱い情熱だったとか、なかなか感動的ですよね。
140文字は、俳句にも通じる“表現の稽古場”
さて、Xの投稿に話を戻しましょうか。
ボクはXの投稿を「制限のある中で表現する、脳のトレーニング」と位置付けています。
140文字で何かしら意味あることを書くのは、それなりに頭を使います。
冗長にならず、かつ端的すぎず、でも一つの投稿で何かを伝えるのは、けっこう高度な知的ゲームだと思います。
これって、俳句や川柳の世界にも通じるものがあると解釈しています。
俳句も川柳も「五・七・五」の制約の中で作らなくてはなりません。
また、文字数だけではなく、何を題材にするのか、俳句であれば季語をどのように定義するのかなど、考えることはとても多岐にわたります。
それそのものが一つの芸術として成立するとか、日本語のすばらしさが感じられますよね。
俳句や川柳を作る中でもっとも大事なことは「観察」だと思っています。
俳句なら、季節にまつわる森羅万象をじっくりと観察し、その中から言葉を生み出す。
川柳は、世間の出来事について興味のアンテナを向けて、17文字にまとめるストーリーを抽出する。
いずれも、Xの投稿に通じる頭脳ゲームだと考えています。
「話が分かりやすいエンジニア」は重宝される
こうやって「観察→言語化」を意識的にするようになると、エンジニアにもいいことがたくさん起こります。
一番の効果は「話が分かりやすい人」になれることです。
話が分かりやすいエンジニアは業種業態にかかわらず、引っ張りだこです。
ボクは人材系の仕事にも深く携わっており、エンジニアの求人・採用などの情報を毎日存分に浴びています。
そこでも強く感じるのですが、「特定の領域の技術力が高い」よりも「様々なテクノロジーに関して分かりやすく話せる」「世の中の課題の解決方法について、理解しやすくまとめる」という能力があるエンジニアの方が、希少性も高く、結果的には好条件で採用される可能性が高くなるということです。
よく「1024 は誰にとってもキリのいい数字ではない」なんてたとえ話をします。
ITエンジニアの多くは、1024をキリのいい数字と認識すると思います。(例外もいますけど)
でも、一般の方々からすれば、割と中途半端な数字です。
「1024は自分にとってはキリがいいけれど、多くの人は1000の方がしっくりくる」ことを意識してコミュニケーションできる人は、より多くの人とのコミュニケーションがスムーズにできるようになります。
Xは「ただで遊べる最高の稽古場」
そのような表現を身に着けるためにも、Xは実にいい稽古場だと思います。
Xは「日々炎上ショーが繰り広げられる、修羅の世界」と感じる人もいるかもしれません。
でも、炎上ってあるルールを理解していれば、そうそう起きないものだと思っています。
いかに、炎上のメカニズムに関する情報を記します。(これもXで教えてもらったものです)
・でかい主語で
・あいまいなロジックで
・雑にぶん殴る
これやると燃えます。
例として
・女性は
・理系脳じゃないから
・エンジニアには向いてない
こういうやつです。
実に可燃性高そうですよねw
でも裏を返せば、他人を主語にして乱暴に語らなければ、そうそう燃えません。
時たま誰にでも突っかかる変なのがわきますけど、ブロックしちゃえばいいだけですからね。
ぜひともXというただで遊べる稽古場で、表現力を磨きましょう!
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