メルカリ
AI Strategy
ハヤカワ五味さん(@hayakawagomi)
18 歳で起業後、ランジェリーブランド『feast』、フェムテック事業『ILLUMINATE』など、多数の事業を展開。2022年3月にはユーグレナグループにグループインし、はたらく女性向けの新規事業開発に取り組む。24年4月に退職後、生成AI関連の推進担当としてメルカリにジョイン。生成AIの利活用に関してSNSでも積極的に発信している
生成AIの進化の波が押し寄せる中、「うちも導入しよう」と旗を掲げたはいいものの、実際に現場で使われず形骸化してしまうーーそんな課題に直面しているリーダーは少なくないだろう。既存の組織の在り方にフィットしなかったり、目的があいまいだったりと、AI活用が“スローガン止まり”になってしまうケースも多そうだ。
そんな中、「AI-Native Company」への組織変革を目指すメルカリに、ハヤカワ五味さんが生成AI推進担当としてジョインして1年強。先日Xでこんなポストをしているのを見かけた。
「生成AI×組織開発」について、直近でかなり具体的に考えをまとめているのでどこかで話したいなーと思っています。機会ください! https://t.co/spP0JUixfR
— ハヤカワ五味|生成AI×組織開発 (@hayakawagomi) September 8, 2025
全社を挙げてAI活用に取り組もうというタイミングから、その最前線を走ってきたハヤカワさん。話を聞くと、日本を代表するテック企業であるメルカリですら一筋縄ではいかない生成AI推進の実情が見えてきた。
ハヤカワさんが直面した壁と、具体的な取り組み、そして実体験に基づくアドバイスを詳しく聞いていこう。
メルカリ
AI Strategy
ハヤカワ五味さん(@hayakawagomi)
18 歳で起業後、ランジェリーブランド『feast』、フェムテック事業『ILLUMINATE』など、多数の事業を展開。2022年3月にはユーグレナグループにグループインし、はたらく女性向けの新規事業開発に取り組む。24年4月に退職後、生成AI関連の推進担当としてメルカリにジョイン。生成AIの利活用に関してSNSでも積極的に発信している
ーー今年9月に「『生成AI×組織開発』についてどこかで話したい」とXに投稿されていましたよね。具体的にはどんなことを発信したいと思っていたのですか?
メルカリの生成AI推進担当になってからの約1年間で直面した課題や取り組んできたこと、そこから得た気付きをまとめたかったんです。私と同じように企業の生成AI推進を担当する人たちの参考になればな、って。
ーー生成AI推進に取り組む企業はどんどん増えていますが、課題を抱えている組織も多いですよね。具体的にはどんな点が課題になりやすいのでしょうか。
一つは、生成AI推進に関しては「技術的な側面」だけが語られやすいこと。生成AIを組織に導入していくプロセスでは、組織開発やHRの観点が重要です。でも、世間ではその点についての議論が深まっていない印象がありますね。
もう一つの課題は、生成AI推進担当者の成果が評価されにくいことです。
先ほど組織開発の側面が重要と話しましたが、より具体的に言えば、「現状の組織をどのように目指す姿へと変革していくか」が問われます。そのためには「チェンジマネジメント」のような手法が必要で、実践するにはコミュニケーション力や調整力などのソフトスキルが欠かせません。
ですが、これがなかなか評価されづらい。というか、そもそも評価できる人がいない会社も多いんじゃないかと思います。
なので、たとえ成果が出ても推進担当の功績ではなく、技術やツールの進化といった環境要因によるものと見なされがちな面もあります。具体的には、「ChatGPTの最新モデルが登場して便利になったから、社内に浸透したんでしょ」といった話になりやすいんです。もちろん、モデルの進化によって実用に耐えるようになったという側面もありますが、そこに至るまでの社内のルール整備や基礎知識があってこそだと思っています。
ーーせっかく担当者を置いたのに、本人にとっても会社にとっても残念な結果ですね……。
生成AI活用は一般的な新規事業に比べると、ROI(投資利益率)に反映されるまで時間がかかります。というか、個人的にはむしろポジティブに反映されることはなく、生成AI導入に失敗し「退場するかしないか」でしか測れないのではないかと思います。
なんなら、生成AIに投資することで一時的に業績が停滞する可能性もあるので、そもそも経営の視点が短期的な場合には評価されづらいのかもしれませんね。
ただし長期的に見れば、生成AIへの対応が遅れた企業が競争力を失っていくことは間違いありません。その点を経営層にどう理解してもらうかで苦労している担当者は多いと思います。
メルカリはCEO(山田 進太郎さん)が、AI活用を進める過程において「一時的な停滞は許容する」という趣旨のメッセージを発信しているので、その点で経営層の後押しが心強いです。
ーーではハヤカワさん自身は、生成AI推進担当者としてかなり仕事が進めやすかったのでは?
それが、そんなことはなかったですね。「(ROIが合わないので)生成AI推進チームを解散させたほうがいいのでは」という話が出たこともあるほど、苦戦した時期もありました。
「メルカリは大企業だし、社員のITリテラシーも高そうだからやりやすかったでしょう?」とよく言われますし、以前よりツールの整備やデータの集約は進んでいたので、技術環境として進めやすかったのは確かです。その一方で、一人一人が生成AIを使おうとする機運を盛り上げたり、カルチャーとして定着させたりすることについては、入社前に予想していた以上に難しかったですね。
だからこそ、同じように苦戦している生成AI推進担当の方たちに、私の経験や知見をシェアしたいと思ったんです。
ーーメルカリでもAI推進は一筋縄ではいかなかったようですが、どのような取り組みをしてきたのでしょうか?
2024年7月に入社して、まず注力したのが「モメンタムの形成」です。社内の人たちに生成AIやLLMの価値を理解してもらい、生成AI推進に対する熱量や共感を高めていく取り組みに力を入れました。
施策を進める中で、直面した壁は三つ。「技術理解」「組織」「人」の壁です。
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取材・文/塚田有香 編集/秋元 祐香里(編集部)
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