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早期退職は動くべきチャンスか? 迷える40代に澤円が説く、キャリアを「手段と目的」で分ける思考法

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澤円の「モヤモヤ言語化ラボ」

元・日本マイクロソフト業務執行役員であり、“プレゼンの神”こと、澤円さんが、エンジニア読者のモヤモヤや気になるニュースを、分かりやすく“言語化”。「どう考えたらいいか分からない」を「そう考えればいいのか」に変える、頭と心の整理の場です。あなたが前に進むためのヒントを一緒に見つけていきましょう。

皆さんこんにちは、澤です。

今回の相談は、早期退職制度にまつわるお話。

興味のある方、多い気がします!

相談内容

近年、早期退職募集が話題になった会社に在籍しています。

名の知れた大企業ではあるものの、会社の経営状況や方針から、以前から同僚とも「うちでもそろそろ早期退職募集があるんじゃないか」と話していた矢先でした。実際に募集がされ、大企業だから安心というのはもう通用しない時代なんだな……と実感が湧きました。

私は現在40代です。このまま会社にいたほうがいいのか、思い切って外に出るべきなのか、考えるほどに判断が難しいです。

いくら大手企業にいたからといって、40代以上で転職したら“即戦力”としての成果が求められる印象がありますし、自分のスキルが今の市場でどれくらい通用するのかも正直自信がありません。

40代の自分は“今動くべき”なのか、“まだ待つべき”なのか、どのように判断すればよいでしょうか?
動くタイミングの見極め方を教えてほしいです。

日本は、アメリカ企業のように「メール一通でレイオフ!」みたいなアバンギャルドなアクションがない分、早期退職プログラムのような「自分で選んでもらう」というタイプの施策が、いろんな企業で行われていますね。

急に状況が変わることがない分、考える時間を持ち過ぎてしまう、というジレンマもありそうです。

人間、選択肢が多すぎてかつ期限が設けられていないと、なかなか判断できないというのはよくある話ですよね。

今回の相談も「今なのかどうなのか……」という、「時間があるからこその悩み」と言えそうです。

今回の記事では「手段と目的」という観点で話を進めていきましょう。

早期退職募集は非情なのか?

さて、この早期退職プログラムというものは、企業側からすると「経営健全化のための手段」です。

企業活動を続けていくためには、収支のバランスが取れていることが必須条件になります。

端的にいえば「利益と費用(=P/L)」のバランスを適切に保つことは、経営者の仕事になるわけです。

収支バランスを健全にすることによって、株主からの理解を得て、市場から資金を調達し、適切な営業活動を通じて売上を上げていく。

費用をいい感じにコントロールして利益率を上げる。

時には思い切った投資を行なって、自分たちの売上全体の総量を増やす。

これが経営というもののあり方です。

経営の様子を示した写真

経営のプロセスにおいて、費用の中でも大きな比重を持つことになりやすい人件費を抑える手段として、早期退職プログラムというものが存在しているわけです。

早期退職させることは、経営という観点では目的にはなりません。

あくまでこれは、経営の健全化を実現するための手段です。

ただ、どうしても人が絡む施策なので、社員にとってもインパクトのあることですし、報道もセンセーショナルになりやすい側面はあります。

しかし、経営というものを客観視すれば、「人数と売り上げが合ってないことを是正する」のは、極めて合理的な判断です。

「退職を促す」という労働者側の観点だけで見れば、非情なものに映るかもしれません。

ただ、企業経営という観点で見たら、早期退職プログラムというものを、ことさらに特別なアクション……ともすれば悪意を伴う行為……と定義するのは、ちょっと違うのではないかと思います。

プログラムに乗るのも手段、乗らないのも手段

ただ、当事者としては非常に大きなイベントであることは間違いありませんし、「自分はそのプログラムに乗るかどうか」は、とても重要なキャリア上の判断になります。

ここでも、「手段と目的」の観点が大事だと思います。

社員にとって早期退職プログラムは、キャリアの目的にはなり得ません。

あくまでこれは、自分の今後のキャリアをデザインしていく上での手段です。

そのプログラムに乗るのも手段、乗らないのも手段です。

どちらの手段が自分にとって幸せなのかを考えることが、極めて大事です。

早期退職の様子

早期退職プログラムは、大抵の場合ちょっと退職金が上乗せになったりします。

その金額に魅力を感じてしまい、「退職金を得ること」を目的にプログラムに乗ってしまう人を何人も見たことがあります。

一時的に現金が入り、他の悩みが解決される場合もあるので、全部を否定する気はありませんが、ここはエンジニアtypeさんのサイトですから、キャリア全体で考えてみたいと思います。

一時的に得られるお金と、今後のキャリアのバランスを、よく考えてみる必要があると思います。

その退職金だけで、今後の人生は安泰なのか、それとももう少しお金を得る必要があるのか。

あるいは、貯蓄は十分にあるから、一度はやってみたかったこと(起業や別業種へのチャレンジ)をする機会と捉えるのか。この辺りのキャリアデザインを、徹底的にする必要があります。

その時に最も大事なことは「自分に対して嘘をつかない」ということです。

プログラムに乗るのも手段、乗らないのも手段

キャリアについて考えるとき、驚くほど多くの人が自分中心に考えていません。

一番多いのは家族のことですね。確かにお子さんがいる家などでは、独立するまでの様々な費用について考えなくてはならないでしょう。

しかし、それが本当に自分に正直な判断なのかは、一度ゆっくりと考えてみてほしいなと思います。

家族のために、自分の人生は全て犠牲にしなくちゃいけないものなのか。

その判断で、絶対に後悔しないのか。

家族との写真

家族のためなら、どんな犠牲を払っても一切後悔しませんよ、というタイプの人も何人も知っているので、これは個人差があると思います。

その判断を、正直に自分ができるかどうか。ここがポイントです。

そして、その判断をするときにこれまた顔を出すのが「他人の目」というやつです。

別の言い方をするなら、世間体ですね。

「早期退職して『リストラされた』って思われたらどうしよう」
「同僚から『ずっと会社にかじり付いてる』って思われるのは嫌だな」
「来月の同窓会で、『お前まだサラリーマンしてるの?』とか言われちゃうかな」

これ、他人軸の思考ですよね。

気持ちは分かります。

でも、これを思考の中心に置くのはお勧めしません。

まずやることは、自分と会話すること

自分のキャリアは自分で決める。

動くタイミングも動かない判断も、自分で決める。

この原理原則に則って思考し行動することが、何より大事です。

まずやることは、自分と会話すること。

本当に自分のやりたいことを、荒唐無稽なアイディアも含めて考えることを自分に許すこと。

世界一周に出かけようでもいいし、自分の好きな音楽だけかけるバーをオープンするでもいいし、自分のアイディアをもとに起業するでもいい。

まず、自分は何をしたいのか、あるいは何をしたくないのか。

それを自分と会話してください。

答えは外側にはありません。

外側には「早期退職プログラム」という手段が転がっていますが、それは「あなたにとっての最終的な答え」ではないのです。

一度、有給休暇をとって、一日静かな場所で自分と向き合ってみてはいかがですか?


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株式会社圓窓 代表取締役
澤 円(@madoka510)

立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、日本マイクロソフトに転職、2020年8月に退職し、現在に至る。プレゼンテーションに関する講演多数。武蔵野大学専任教員。数多くのベンチャー企業の顧問を務める。 著書:『外資系エリートのシンプルな伝え方』(中経出版)/『伝説マネジャーの 世界No.1プレゼン術』(ダイヤモンド社)/『未来を創るプレゼン 最高の「表現力」と「伝え方」』(プレジデント社)/『「疑う」から始める。これからの時代を生き抜く思考・行動の源泉』(アスコム社)/『「やめる」という選択』(日経BP社) Voicyチャンネル:澤円の深夜の福音ラジオ オンラインサロン:自分コンテンツ化 プロジェクトルーム

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