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孫正義に未来を宣言した20代の野心。「No.1」を譲らない木口佳南を突き動かす原動力

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「私はソフトバンクの未来をこう導きます」

入社前、ソフトバンクグループ代表の孫 正義さんを前にそう宣言した一人の学生がいた。彼女は、今まさにソフトバンクのAI戦略の最前線で仕事をしている。

同社で働く木口佳南さんは、2025年の新卒入社。学生時代からAIに通じてきた、AIネイティブ世代の象徴とも言える。

多くの企業が生成AI活用を模索する中、木口さんもまたその旗振り役の一人として、ソフトバンクという巨大組織の変革を内側から突き動かしている。入社1年目という枠に捉われず、経営の視座から「AI時代」の具現化に挑む木口さん。現在地と、彼女を突き動かす原動力の正体に迫った。

ソフトバンクの木口佳南さん。ネイビーのジャケットとブルーのブラウスを着用し、カメラに向かって微笑んでいる。背景の白い壁には、ソフトバンクのロゴがはっきりと表示されている

ソフトバンク株式会社
木口佳南さん(@KananK_AI

ソフトバンク株式会社 2025年新卒入社。学生時代からAIを専攻としながらエンジニアとして活動し、インターンや業務委託を6社掛け持ち。同時に、医療AIの研究論文を執筆し、国際学会で発表を行うなど、AIを「仕事のパートナー」として使いこなす。現在はソフトバンクにて、AI関連の経営戦略企画やプロジェクト推進を手掛けている
■note https://note.com/kanank

孫正義さんへの「宣言」が確かな自信に

ソフトバンクで木口さんが携わっているプロジェクトの一つに、「次世代社会インフラ企業」という同社の長期ビジョンの実現に欠かせない、全社的にAIを普及させる活動がある。

「まずは自分たちがAIの価値を理解している必要があるという考えの下、私たちは『日本一生成AIを使いこなす会社』を目指しています。

そこでソフトバンクの社長である宮川(潤一)からの号令で行われたのが、『AIエージェント祭り』。全社員が自らの業務に合わせて100個のAIエージェントを構築し、実業務で活用することを義務付けたプロジェクトでした」

2万人規模の巨大組織において、全社員に100個ものアウトプットを課す。この徹底した実行力こそがソフトバンクの真骨頂だが、現場を推進する立場から見れば、それは決して容易な道のりではなかったはずだ。

「このプロジェクトは『必達』が絶対とされていたので、現場にはそれ相応のプレッシャーがありました。部署ごとに作成数がカウントされる徹底ぶりで、ある種の強制力を持って進められた側面もあります。

ですが、それには明確な狙いがあったんです。AIに不慣れな層も含めた数万人の社員が、まずは『一回触れてみる』こと。理屈抜きで『数を打つ』経験を積むことで、初めてAIの使いどころを肌感覚で理解できるようになるからです」

木口さんは、社内外でAIのスペシャリストとしてフロントラインに立ち、抽象的なAIの概念を具体的な業務へと翻訳し続けた。そして「数の勝負」は見事に結実し、ほぼ全社員が100個のエージェントを作成するという驚異的な目標を達成。このプロセスが、着実に組織の文化を塗り替えていった。

「圧倒的な量をこなしたことで、これまでAIを遠い存在だと感じていた社員たちが、自ら活用の是非を判断できる土壌が整った。組織のOSが書き換わる大きな出来事だったと感じています」

ソフトバンクの木口佳南さんが、インタビュー中に笑顔でAI戦略やAIエージェントの取り組みについて語っている様子

そのほか、社内活用に留まらず、社外への展開を見据えたAI関連のプロジェクト推進や戦略企画に携わり、経営陣に向けた提言を行うなど、入社から1年足らずで目覚ましい活躍を見せる木口さん。就職活動時は引く手あまただったことは想像に難くないが、ソフトバンクを選んだ背景には揺るぎない野望があった。

「学生時代からAI領域で活動してきたので、社会人になったら『AIの恩恵を全ての人が享受できる社会』を実現したいと考えていました。起業も薦められましたが、私の目指す社会は、自分一人や数人の力だけで実現できるものではないと思うんです。

そんな中、ソフトバンクはあらゆる事業領域を持ち、AIを掛け合わせて新しい世界を作り上げていこうとしていました。ここなら、世の中に大きな影響を与えられると確信したんです」

ソフトバンク入社の約1年前、木口さんは孫 正義さんが校長を務めるソフトバンクアカデミアに15期生として入学。在校中には孫さんをはじめとする経営陣の前で、同期を代表してピッチを行っている。この経験は、今も木口さんの成長の支えになっているようだ。

「ピッチのテーマは完全にフリー。何を話そうか迷いましたが、すでに内定者だったので、入社前の今だからこそ語れるテーマにしたいと思い、『私が考える2030年のソフトバンク』に決めました。『私は未来のソフトバンクの軸となる事業をこんな風に作っていきます』という経営への参画について宣言したんです。

孫さんははっきりとした評価をされる方なので、良い評価が得られなければそこまでだと思っていました。ですがピッチが終わった後、満面の笑みでポジティブな言葉をかけてくださったんです。あの経験は、私にとってかけがえのないものになりました」

ソフトバンクアカデミアにて孫正義さんを前に「2030年のソフトバンク」を宣言した当時を振り返る木口佳南さん

No.1を目指す理由は、それ以外受け付けないから

幼い頃から芸術に親しんできた木口さんは、硬筆・毛筆の全国大会で度々1位を獲得したほか、絵画の国際コンクールでも最高技術賞を受賞するなど多彩な才能を発揮。大学では、ビジネスコンテストでも多数の優勝を重ねる他、アルツハイマー病のAI解析に関する論文が国際学会誌に掲載され、学長賞及び優秀論文賞に輝いた。

勢いはソフトバンクへの入社後も弱まることなく、新卒研修で行われた生成AIに関連したピッチコンテストでも1位を獲得。つい「優秀」という言葉を使いたくなるが、木口さんはそれを謙虚に、しかしはっきりと否定する。

「目立つ評価をいただく度に、『何でもうまくやれていいね』と言われることもあったのですが、決して要領が良かったり器用だったりする方ではないんです。ただ評価されるだけじゃなくて、誰よりも努力をして評価を勝ち取ることに価値があると思っているので、これまでも努力を止めたことはありません」

学生時代の勉強を「死に物狂いで勉強した」と振り返る木口さん。そんな木口さんをもってしても、最も苦労しているのは「今」だという。

「学生時代と今とでは、当然求められるアウトプットのクオリティーが段違いですし、影響範囲もぐんと広がります。何といっても、伴う責任がとても重い。それが毎日、終わることなく続きます。仕事で成果を出しつつも、自分自身のスキルも高めていくために必死です。

ソフトバンクには手を挙げることを尊重する文化があるので、自分の成果に納得できなかった業務は『次もやらせてほしい』と上司に伝えるようにしています。レベルアップの機会は一つでも多く掴みたいので。

実際、その挑戦を重ねてきた結果、アウトプットのスピードと質が向上し、難易度と影響度が非常に大きな業務を任せてもらえるようになってきました。そういった挑戦を受け入れてくれる会社に本当に感謝しています」

ソフトバンクでの挑戦と、圧倒的なNo.1へのこだわりについて身振り手振りを交えて語る木口佳南さん

なぜそれほどまでに努力を重ねられるのか。問うと、木口さんはあっけらかんとして「No.1になりたいから」と答えた。

「学生時代から、何でも1位になりたいと思うタイプでした。だから努力するし、その結果1位になれたら嬉しい。でも、周囲からは『どうしてそんなに1位にこだわるの?』と聞かれることも多くて。

その都度私なりの理屈を説明してきたのですが、なんとなくしっくりくる答えが見つけられずにいたんです」

そんな中、木口さんはとあるジャーナリストの話を聞く機会があった。孫さんの書籍を担当したというジャーナリストから、探し求めてきた「答え」を得たと語る。

「孫さんも『No.1』という言葉をよくお使いになるので、やはり『なぜNo.1に固執するのか』と聞かれたことがあるそうで。そんな時、孫さんは『No.1以外は生理的に受け付けないから』と答えたと、そのジャーナリストの方から伺ったんです。

それを聞いた瞬間『これだ!』と思いました。言葉で理由が説明できなくても、私自身がNo.1にこだわっているという事実だけで十分なんだと思えて、心が楽になりました。

こんな私のこだわりも認めてくれるグループに違いないと感じたことも、ソフトバンクに入社した理由の一つです」

軸足は「運命の会社」に置き続けたい

No.1を気兼ねなく目指せる組織は、木口さんにとって最も自分らしく働ける環境だ。充実した日々を送る中、周囲の力を借りることの大切さも同時に実感してきた。

将来の展望を語る木口佳南さん。専門性に加え、財務や司法の知識を習得し、技術を経営と社会実装の視点から盤石にするという彼女の「運命の会社」に対する深い忠誠心と長期的なキャリアビジョンを象徴している

「一つのプロジェクトを動かすだけでもものすごく多くの人が関わっているので、『自分一人じゃ何もできない』ということを痛いほど感じてきました。

私のチームの方は厳しくも優しい素敵な方ばかりで、環境にも恵まれています。本当にこの会社に入って良かったし、この1年間で『やっぱりここが運命の会社だった』という気持ちが確かなものになりました」

「No.1を目指す」というこだわりを維持したまま、「一人でできることの限界」を冷静に見極めている木口さん個としての突破力に、周囲との協調という武器が加わったとき、彼女が描く2030年のビジョンはより確かな現実味を帯びていく。

「ソフトバンクは『情報革命で人々を幸せに』というビジョンのもと、その事業体を時代に合わせて柔軟に変化させてきました。会社の未来を予測するのは難しいですが、だからこそ、その時代に求められるものをしっかり形にできる人でありたいと考えています。

私の専門領域はAIで、学生時代はずっとエンジニアをしていましたが、私がAIを専攻していた大学時代と比較すると、AIは進化し、万人のものへと広がってきています。こうした中、私はいま財務分野の知識をインプットしたり、司法試験の勉強を進めたりしているところです。技術を社会に実装するには、資本のロジックと社会のルールの両面を理解する必要があるからです。

『木口が関わるプロジェクトなら、技術的にも法的にも、そして経営的にも盤石だ』。そう思っていただける存在になりたい。大好きなソフトバンクが、100年後も情報革命の旗手であり続けるために、私は自分の視座を上げ、全方位から会社を支える力を身に付けていきたいんです」

AIという武器は、彼女にとってはすでに「前提」に過ぎない。技術をどう経営のレイヤーに落とし込み、いかにして新たなルールを社会に実装するか。その視線は、一社員の枠を遥かに超え、経営の核心を見据えている。

「『3年くらいで辞めるんじゃないか』なんて言われることもありますが、全然そんなつもりはありません。

今も複業をしていますし、新しいことに挑戦する機会はあるかもしれませんが、あくまでも軸足はソフトバンクです。ソフトバンクの未来を作っていけるような存在になることが、今の私の揺るぎない目標ですから」

取材・文/一本麻衣 撮影/赤松洋太 編集/秋元 祐香里(編集部)

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