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グリー、はてな、ドリコム…現場を束ねるエンジニア三人が教える、変化適応の技術【特集:76世代の今 3/4】

スキル

    特集:76世代の今

    1/4:家入一真×内藤裕紀が対談!76世代企業の逆転成功パターンに見る、10年後も生き残る企業の条件
    2/4:技術力とは「企画を実現できる力」。企画がなければ高い技術を持っていても意味がない
    3/4:グリー、はてな、ドリコム…現場を束ねるエンジニア三人が教える、変化適応の技術
    4/4: 「エンジニアはサービス業」を実践するドリコム開発部長が明かす、雇いたくなるエンジニアの見分け方

    特集前編の[家入氏×内藤氏:76世代社長対談]において、今後エンジニアに求められると声高に主張されていた「企画力とそれを実現する技術力」。また、それに伴い、「『技術力』というものの定義が変わってきているのではないか?」という議論が盛り上がった

    エンジニアをエンジニアたらしめる「技術力」自体のとらえ方が変わってきている今、Webサービスの第一線で奮闘するエンジニアたちは、どのような取り組みを通し、変化に適応しているのか。

    「76世代企業」の代表格である、グリー、はてな、ドリコム。それぞれの企業で、技術者というスペシャリティーを活かしつつ、開発のみにとどまらない働き方を実践する、3名のエンジニアに話を聞いた。

    Androidの登場でソフトウエア販売モデルの終焉を痛感した

    これまでエンジニアには、一貫して”高い技術力”が求められてきた。技術力とはつまり、どれだけ専門的な”コア技術”を有しているかであり、それは深ければ深いほど評価の対象になった。

    「でも、ソフトウエアの世界はどんどんオープンソース化してきており、今後はコア技術の知財化より、いかに技術をサービスに変えてユーザが欲するサービスに転換していくかの視点に立つことが重要――。Androidの出現で痛感しました」

    そう話すのは、グリーで同社発のグローバルなゲームプラットフォームである『GREE Platform』向け開発キット『GREE SDK』の開発を担当する佐藤大介氏だ。

    「わたしは主に通信技術のコア開発と知財化、それを元にした通信キャリア向けのシステムやアプリを開発してきました。携帯電話用の組込みOSなどがいい例ですが、これまではコア技術を元にRFPに基づいたソフトウエアを開発して販売すれば、それで食べていくことができた。

    しかし、オープンソースソフトウエアの流れの中で、コア技術としてのソフトウエアを売るというビジネスモデルが崩壊してきたと感じました」

    必要なツールやメソッドさえ分かってしまえば、後はそれを組み合わせて使うだけという流れが当たり前になってきていることは、多くのエンジニアが感じているところだ。

    加えて、これまでのような「2~3年かけてじっくり開発する」というスパンでは、リリース時点ですでにユーザーのニーズがかけ離れてしまっているリスクも出てきた。

    「ソーシャルアプリの世界では、ソフトウエアはあくまでツールで、売るのは緻密なユーザ動向の分析に基づいた企画(=アプリ)と、それをタイミングを逸せずいかにスピーディーに実現するかが肝心です。このビジネスモデルであれば、技術を使える強みを発揮しつつ、ソフトウエアが売れないことを危惧する必要もありません。当然、その分、分析者・企画者としての役割も求められますが(笑)」

    企画は「できること」ではなく、「すべきこと」を軸に考えるべき

    どうやら、エンジニアに企画能力が求められるのは、もはや変えることのできない時代の要請らしい。

    企画を立てることに苦手意識を持つ人もいるかもしれないが、エンジニアだからこその強みもあると話すのは、はてなで『はてなブログ』(2011年から8月から開発スタート、11月ベータ版リリース)のチーフエンジニアを務める大西康裕氏だ。

    『考えながら走れること』です。ユーザーに受けるサービスを考えながら、手を動かしてそのサービスを実装することができる。旬の技術やネタがあれば、すぐさま組み込むことができますし、ユーザーからのフィードバックで評判がイマイチなら、取り下げることもできるのは、エンジニアゆえの大きなメリットですよね」

    また、開発部長として、ドリコム開発部隊を統括する西野誠氏は、エンジニア出身のマネジャーだから可能なチームマネジメント法についてこう語る。

    「一般的に、エンジニアの方が職人肌で、プライドが高い。彼らの意欲や熱意をうまく仕事のモチベーションへと結び付けるためには、彼らの視点に立って物事を考えられるマネジャーを据えるのが一番の近道でしょう」

    ドリコムでは、一つのプロジェクトにつき、ディレクター以下複数のエンジニア、デザイナーなど約20人のチームがアサインされ、プロジェクトにとりかかる前には十分な議論がなされる。

    「その際、エンジニアには『意見があれば、たとえデザインに関することでも発言してほしい』と話します。それはエンジニアとしての役割を離れろということではなく、自分たちが技術やスキルを使うことによって、どんなサービスが実現できるのか、どんなサービスを実現すべきなのかという本質的なところをもっと視野を広げて見て、体験してほしいからなんです」

    チーム内で熟議を尽くすことにより、エンジニアもデザイナーも、企画を自身の技術やスキルで「できること」ベースで考えていたスタイルだったのが、「すべきこと」ベースへとシフトしていくという。

    「エンジニアの気持ちを察しながら、彼らの意見を導き出すことで、技術を起点にした新しいアイデアが生まれることもしばしば。このように、技術のバックグラウンドを活かしつつ、技術者と技術者ではないメンバーの混成チームをうまく誘導していくプロジェクト管理業務も、これからのWebサービスの分野で、エンジニアに求められる新たな役割の一つだと思いますね」

    「機敏な判断と行動」こそ、シンプルにして最も勇気がいる変化適応術

    現在は、それぞれディレクターやマネジャーとしてエンジニアを率いる立場の3人。いかにして取り巻く環境の変化を敏感にとらえ、うまくキャッチアップして適応してきたのか。

    はてなの大西氏は、『はてなブログ』のディレクター兼チーフエンジニアを任された時、あえて既存のフレームワークを使わないことを最初に決めた。

    「はてなの財産とも言える『はてなフレームワーク』ですが、『誰でも抵抗感なく使えるシンプルなブログ』という、はてなブログのコンセプトを起点に考え、それまでのフレームワークを利用しないことを決断しました

    技術オリエンテッドな視点に立てば、せっかくある既存のフレームワークを使わないという選択は、意味不明に映るかもしれない。

    「でも、『はてなブログ』がターゲットとするユーザー層を考えたとき、キーワードを自動抽出してリンクを自動生成するような独自機能よりも、負荷の軽減やレスポンスの向上、表示される画面のまま書き込みが可能なUIといった、『必要十分』な使い勝手を追求するべきだと判断したのです」

    ユーザーオリエンテッドな視点で現状を見直せば、改良すべき点はいくつも発見できるはずだ。ただ、発見したからといって、改善を本当に実行に移せるとは限らない。

    変化適応のための、最もオーソドックスな方法ともいえる「機敏な判断と行動」こそ、実は最も勇気のいる方法なのだろう。

    (4/4に続く)

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