キャリア Vol.36

[特集:76世代の今 4/4] 「エンジニアはサービス業」を実践するドリコム開発部長が明かす、雇いたくなるエンジニアの見分け方

グリーの佐藤氏が、Androidの出現によるビジネス環境の変化を感じ、グリーに転職したというのは前述の通り。同氏はいかにして、一歩先のビジネス動向を先読みしているのか。

「オープン化の流れは、OSやシステムを開発し提供する側というより、利用する側のニーズに応じて変化してきたと思います。そういう意味で、ユーザーの要望に、常にアンテナを張っておくことは、ビジネス動向の先読みにもつながるでしょう。

常にユーザーの行動や、その奥にある考えに対して敏感でいなければ、時代に置いていかれることになりかねません」

佐藤氏は過去の経験、および今、『GREE Platform』のグローバル展開の業務を行う中で、こうしたユーザーオリエンテッドな視点で、変化に対応しようという動きは、国や地域を問わず世界標準とも言える傾向だと話す。

「サービスにせよコンテンツにせよ、ユーザーが今まさに欲しいという時にぴったりのタイミングで提供しないと意味がないということを痛感しています。そのためには、自分の専門領域だけに固執していてはダメ。

社内・社外を含め、サービスを実現するために必要な技術や手法がどこにあるかを常に把握しておくのはもちろん、どれをどんなタイミングで組み合わせれば、望むスピード、品質、コストで実現できるかまで考えなくてはいけません」

では、具体的にはどうすべきか。佐藤氏は、「自分を取り巻く環境を俯瞰して見直すことが必要だ」と説く。

「今、自分が使っている技術はどのサービスのために必要なのか、このサービスのミッションは何で、自社のビジネスモデルにどうかかわっているのか――という具合に、技術を起点にサービスやビジネスモデル、会社組織を”ヨコ串”で見直してみましょう。そうすることで、そもそも自分に必要とされるスキルも見えてくるはずです」

成功体験がなければ「企画もできる技術屋」でやっていくのは難しい

一方、エンジニアが他社や他業界のサービスといった「外の世界」に興味を持つことの重要性を強調するのは、自社採用やメンバー教育にも携わっているというドリコムの西野氏だ。

エンジニア採用の場では面接の際、「あなたの面白いと思うサービスはなんですか?」という質問を投げかけるという。

「Web業界は変化の早い業界ですから、常に世の中の面白いサービスをキャッチアップし、それのどこがどう面白いのか、分析するクセを付けておかないと、いざ仕事で新しいアイデアなり切り口がほしいという時に何も出てこない。

真似やパクリという話ではなく、どこかにより良いものがあれば、その面白いところをどうやって自分の取り組みに活かせるのかという方向で考えておくことが、どのエンジニアにも必要だと感じているんです」

「エンジニアは今やサービス業」と断言する西野氏。確かに、「サービスを作る人=サービス業」だと考えれば、常日ごろから情報にアクセスし、自身の引き出しを増やすべく努力するのは、当たり前だといえる。

「あともう一点。つまるところWebエンジニアが最もやりがいを感じるのは、ユーザーに喜んでもらえた時です。『自分の作ったモノに対して喜んでもらい、うれしかった』という成功体験がなければ、そもそも仕事を続けること自体が難しい。だからまずは、成功体験を重ねることが、消えないエンジニアになるためには必要だと思いますね」

それまで技術で食っていたエンジニアが、すぐにヒット企画を連発できる可能性は低い。ならばまずは、企画が評価される楽しさを感じられる環境に身を置くことを考えてみるのも良いだろう。

Webはまだ発展途上。これからは「他業種コラボ」にチャンスが

最後、取材に答えてもらった三人に、今後もWebエンジニアとして生き残っていくための秘けつについて、アドバイスをもらった。

「SaaSやPaaSなど、一昔前に比べ、今はアイデアと技術、あとほんの少しのやる気さえあれば、すぐにサービスを公開できる仕組みが整っています。はてなの場合、もともと受託開発をしておらず、サービスありきで事業展開してきたためか、『モノ(サービス)を作りたい』という志向性の人が多く、仕事とは別で自分のサービスを作って運用している人がけっこういますね」(大西氏)

かくいう大西氏もその一人。現在の業務はマネジメントがメインだとはいえ、自分で書いたコードやサービスなどはGitHub上に公開している

「最先端の技術を駆使するということよりも、むしろ実際に自分でサービスを運用してみることが大事だと思うんです。最近は学習コストも下がってきていますし、『どうやって企画力を身に付ければ良いか分からない…』なんて悩む前に、まずは何か自分で作って公開してはどうでしょう」(大西氏)

グリーの佐藤氏は、自社の事業全体を見渡すことができる、キャパシティの広さを身に付けるべきだと勧める。

「自社がどの分野で収益を上げているか、さらにPDCAサイクルの分析もエンジニア自身が手掛けるべきだとわたしは思います。企画力と技術力との2つに分けるのではなくて、これからのエンジニアには自社の事業やサービスがどんなプロセスを経て世に送り出され、収益を上げているのかまでを把握しておくことも必要なのです」(佐藤氏)

佐藤氏の意見でほかの二人と異なっているのは、「企画力」の重要性に対するとらえ方だ。

「これからのエンジニアに企画力が必要なことは間違いありません。ただ、物事の順序を無視して、ただ『企画力を鍛えろ!』というのは投げやり過ぎる。PDCAサイクルに即して言えば、Plan(計画=企画)を立てる前には、まずCheck(評価)やAct(改善)――

つまり、綿密なユーザーの行動分析が必要です。企画を立てたいなら、まずは現状の分析から取り組むこと。わたしはそれが大事だと思います」(佐藤氏)

ドリコム西野氏からのアドバイスは、「他業界に目を向けろ」というもの。ただ、面白い視点を学ぶだけではなく、「協働」すべきだと力説する。

「ユーザーニーズに応えているという点では、家電メーカーや自動車メーカーといったコンシューマー向け業界は、非常に高いレベルにあります。例えば有名デザイナーを起用した新製品開発など、メーカーでは当たり前のことが、Web業界ではまだまだ浸透していません。良くも悪くも、Web業界は自前で何とかなっちゃうし、コストが掛からないから何とかしてしまう」(西野氏)

そこにWeb業界、ひいてはWebエンジニアのチャンスが潜んでいると西野氏は見る。

もっと他業界で活躍するディレクターやデザイナーと、コラボレーションすることが、新しい価値を生み出すと思います。コラボレーション力は企画力にもつながります。世界トップクラスのエンジニアとクリエイターがドリームチームを作って一つのプロジェクトを手掛けるとか。考えるだけでワクワクしませんか? エンジニアなら、それができるんですよ!」(西野氏)

取材・文/白谷輝英、浦野孝嗣、桜井 祐(編集部) 撮影/赤松洋太、桜井 祐(編集部)

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