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IoTベンチャーのエンジニア社長が証言! 10万人のライバルと競うことなくNo.1の人材になる方法

ITニュース

    ※この記事は2017年12月に作成された記事を、内容を変えずにタイトルのみ変更して転載しています。また岩佐氏は2018年4月にCerevoを退社し、現在はShiftall社のCEOに就任しています。


    Facebook社CEOのマーク・ザッカーバーグをはじめ、IT業界にはプログラミングスキルを武器に、20代で起業した経営者が多数います。プログラミングを学んだら、ゆくゆくは起業し、社長になりたい!と夢見ている方は多いのではないでしょうか。

    とはいえ事業を立ち上げライバルと競い、会社を存続させるためには「どの業界なら、自分はナンバー1になれるのか」をしっかり見極めなくてはいけない・・・だからこそあと一歩が踏み出せない、という人も少なくないでしょう。

    コネクテッド・ハードウェア/IoT(Internet of things)を手掛ける株式会社Cerevoの代表、岩佐琢磨さんは「人と争うことが苦手」と言います。小さな頃から「自分はナンバー1になんてなれない」と思っていたそう。

    しかし立ち上げたCerevoが急先鋒の家電メーカーへと成長しています。その裏には、どのような戦い方があるのでしょうか。

    岩佐さんが考える「大勢のライバルと競うことなく、ナンバー1になる方法」に迫ります。

    岩佐さん

    <プロフィール> 岩佐 琢磨(いわさ たくま)
    1978年生まれ、立命館大学大学院理工学研究科修了。2003年からパナソニックにてネット接続型家電の商品企画に従事。2008年より、ネットワーク接続型家電の開発・販売を行なう株式会社Cerevo(セレボ)を立ち上げ、代表取締役に就任。世界初となるインターネットライブ配信機能付きデジタルカメラ『CEREVO CAM live!』や、PCレスのライブ配信機器『LiveShell』シリーズなどを開発し世界50カ国以上で販売。2016年にはフル可動式ドミネーターを発売するなどその業務範囲を広げている。

    「真っ向から勝負しても、勝ち目なんて無い」あえてハード業界で起業した理由

    ――Cerevoが創業した2008年には、ハードウェアベンチャーはごく少数だったはずです。あえてハードウェアの分野で起業したことに、先見の明を感じます。

    確かに2008年当時、本当にハードウェアベンチャーは少なかったですね。うちくらいオープンに事業を展開している企業は、3社くらいしか無かったんじゃないですか。

    CerevoのデスクにはPCと工具がずらり。コネクテッドハードウェア(IoT)を製造する同社のオフィスならではの光景です。

    CerevoのデスクにはPCと工具がずらり。コネクテッドハードウェア(IoT)を製造する同社のオフィスならではの光景です。

    ――Cerevoは創業当初からストリーミングに着目していましたよね。

    ええ、ストリーミングには早い段階から取り組んでいました。当時、うちの社内にストリーミングに詳しい人が居たわけではないんですけどね。

    僕はこれから波が来そうな分野にアンテナを立て、いち早く仕掛けていくのが得意なんですよ。

    ――いま流行っている分野とは、あえて別のところに目を向けるのですね。

    僕は他の人がやらないことをやりたがるタイプの人間でして。おまけに、人と競うのが本当に苦手で・・・(笑)

    ――だからこそ、ハード分野でメーカーを立ち上げたのでしょうか。

    2008年頃、既にソフトウェアベンチャーは山のように存在していて、これから市場に参入するためにはよほどの後ろ盾が無いと厳しいという状態でした。例えば、僕がMicrosoftの創業者であるというような。

    僕にはビル・ゲイツのような知名度も実績も無いです。そんな状態で無数のライバルと真っ向から勝負しても、勝ち目が無いですよね。

    一方で、当時ハードウェアベンチャーは3社しか無かったわけです。つまり、3分の1の確率でNo.1のハードウェアベンチャーになれる。なら「俺にも可能性、あるんじゃない?」って思えるじゃないですか(笑)

    だから、ハード業界で起業しようと決めました。

    「この商品は失敗だったかもしれない・・・」1度つまずいた製品が2年後に息を吹き返す

    ――Cerevoで発表した製品の中には、正直「もっと売れると思ってたんだけどなあ・・・」というような、うまくいかなかったものもありますか?

    めちゃめちゃいっぱいありますよ!しかも剛速球で大きく仕掛けた時に限って、派手にコケたりするんです(笑)

    ――それはつらい(笑)

    とはいえ失敗しても、ものによっては2年くらい経ってから盛り返し、利益を生み出してくれることもあります。

    最近ではライブ配信機能搭載HDビデオスイッチャーのLiveWedgeがそのパターンでした。

    LiveWedgeは国内での販売開始直後は、それほど盛り上がらなかったんですよ。ユーザーからやや辛めの評価が届いたりもして。「この商品は失敗だったかもしれない・・・」と1度は諦めそうになるほど出だしではつまずきました。

    ところが海外で販売を開始したら、想像以上に好評で。海外展開の成功のおかげで、最終的には意外と良い収益を生み出してくれました。

    ――LiveWedgeが海外で受け入れられた理由は何だったのでしょうか?

    僕らの商品が際立って性能が良かったということもないし、売り方がめちゃくちゃ良かったというわけでも無い。単に僕らの製品が、時代にマッチしたということでしょうね。

    やはりライブ配信は、誰の目から見ても明らかに盛り上がっています。特に2012年頃からの急速な発展は、本当にすごい。これだけ盛り上がってくれば、プロレベルの機材を求める層も当然増える、という結果だと思います。

    Ustreamの消滅に「ショックは無い」現在のストリーミング市場をどう見ているのか

    出典:IBM ライブ・イベント・ストリーミング・サービス- IBMクラウド・ビデオ – Japan

    ――LiveWedgeをはじめ、CerevoはUstream対応機器を多数手掛けるメーカーというイメージがありました。2017年、UstreamはIBMに買収され、ブランド消滅に至りました。岩佐さんにとって、Ustreamの消滅はどういう出来事でしたか?

    「まあ、しょうがないかな」って感じです。Ustreamが苦しい状態にあることは前から知っていたので、いつかはこうなる日が来るとも薄々感じていました。

    別にショックは無いですね。うちの会社について言えば、ストリーミング機材の販売にUstream消滅で受けたダメージは皆無です。そもそもCerevoはUstreamのみとタッグを組んで、事業を展開している会社では無いですしね。

    ここ4年ほどの間にYouTube Liveの機能が一般ユーザーに開放された他、Facebook LiveやPeriscopeといったサービスも登場しました。LINE LIVEやサイバーエージェントのFRESH!も人気があります。

    Ustreamという巨人が潰されてしまうくらい、他のライブ配信プラットフォームが盛り上がってきたということで、それは良いことです。うちの製品はいろいろなサービスで使うことができるので。

    「何かで1番になるなんて俺には無理だ・・・」人と競うことが出来なかった幼少期

    ――岩佐さんは、子どもの頃から人と競うのが苦手でしたか?

    苦手でしたね。よく「1番になるなんて俺には無理だ・・・」と思ってましたよ。

    小学4年生までは一般的な、いわゆる流行りのコンテンツを普通に消費する、特徴のない子どもでした。

    ――少々、意外です。物心ついたときから、ずっとPCなどのデバイスなどに触れていたというわけではないのですね。岩佐さんに転機が訪れたのは、いつのことでしたか?

    小学4年生で転校したことが、転機になりました。

    転校先の学校で仲良くなった友達がいて、その子の家にはPCがあったのでそれで遊ばせてもらえました。周りは皆、ファミコンに夢中だった時代です。僕とその友達はPCゲームに夢中になりました。

    「他の子が知らない何かを、自分たちは知っている」という優越感もあったんでしょうね。「趣味も話題も合わない変な奴」という見られ方をすることもあったんですけど「いやいや、俺らの方が楽しいことやってるし」という気持ちが強くて。小学5年生から6年生になる頃には、周囲と話が合わないこと自体も楽しめるようになりました。

    ――中学生、高校生の時はどうでしたか?

    中高でも同じようなクラスタ(集団)にいました。ずっとPCをやってましたね。PCゲームだけでなく、草の根通信という個人が運営するBBSのようなものでも遊んでました。

    ――PCのスキルを伸ばす上で、ご両親から受けた影響はありますか?

    父はネットワーク通信関係のエンジニアとして定年まで勤め上げた人物なんですけど、家ではあまりそういった話はしなかったです。PCの具体的なスキルについては、親からの影響は受けていないと思います。

    ただ、PCを買い与えてくれたことにはすごく感謝しています。

    僕がPCを買ってもらったのは中学1年の時だったのですが、当時はまだ高価だったんですよ。でも「PCは教育用途でもあるから」と買ってくれて。父がエンジニアだった分、他の家庭よりはPCへの理解があったのかもしれないです。実際には買ってもらったPCで、ひたすらゲームばかりやっていたんですけどね(笑)

    ――ゲームは市販のものですか?エンジニアには、子どもの頃からゲームを自作していたという方も多いですが。

    市販です。自作では市販のゲームほどには高度なものはなかなか作れないので、どうしてもつまらないんです。

    よくこういったインタビューでエンジニアは「子どもの頃にゲームを自作した」というような話をするじゃないですか。僕は「そうは言ってもほとんどは市販のゲームで遊んでいたに違いない」と思うんです(笑)。

    それぐらい、自ら何かを作っていくようなタイプではなかったですね。

    テクノロジーを身につけるため、大切なのは「勉強」ではない?

    ――最先端のハードやITトレンドにキャッチアップするには技術の知識も必要です。いまは大変お忙しいかと思うのですが、勉強時間はどう確保してますか?

    勉強という勉強はしないです。人にもあまり聞きません。

    ――勉強するのではなく、興味を持ったことにはまず1度トライしてみるということでしょうか。

    そうです。実戦を通じて学ぶことが多いです。

    ――テクノロジーやプログラミングは専門性が高い分「まずはやってみる」ことのハードルが高めです。1度しっかり勉強してからでないと、企画も開発も出来ないのではないかと及び腰になる人は多いかと思うのですが。わたしのように(笑)

    それって「カリスマナンパ師の元で、しっかりナンパの手法を身につけてからナンパしに行こう」という発想ですよね(笑)

    ――近いかもしれません(笑)

    もちろん、それはそれでありだとは思いますよ。

    ただ僕個人はカリスマナンパ師にナンパを学ぶよりは、何はともあれ渋谷の駅前に立ち、ナンパしてみるという方が好きですね。

    最初のうちは絶対に失敗するでしょうし酷い目にも遭うでしょうが、その経験を通じて自分なりのナンパのノウハウが身につくかもしれないですし、そのノウハウがあればカリスマナンパ師を上回るナンパのプロになれるかもしれないじゃないですか。

    ――とにかく打席に立つということが大切なんですね!

    そうです!

    優秀な人とは「吸収力」がある人

    ――Cerevoのエンジニア採用基準を教えてください。

    ハードウェアエンジニアは、経験重視で採用しています。というのもハードウェア設計の回路周りに関する詳細などは、企業に入らないと学べないことが非常に多いんですよ。

    ソフトウェアエンジニアは、自分で開発したアプリケーションを公開した経験などを見てます。

    ――岩佐さんが考える「優秀な人」とはどういった人でしょうか?

    「吸収力」がある人ですね。

    「明日、この世からWEBアプリケーションが消滅する。VRがWEBに取って代わるのだ」と言われても「あ、そうなんだ。じゃあVRアプリの開発者になろう。WEBアプリもVRアプリも、アプリなことには変わりないし」というくらい市場の変化に柔軟に対応し、常に新しい技術を身につけていく力がある。そういう人って、どこでも伸びると思うんですよ。

    今後、世の中の技術の移り変わりはどんどん早くなっていきます。いま主流とされている技術もどんどん陳腐化し、中には廃れるものもあるでしょうね。

    もしいま自分が使っているプログラミング言語やフレームワークの開発が止まったり、廃れてしまったとしても「もう駄目だ」となるのではなく、また別の言語を身につけていく能力が大切。それを僕は吸収力と呼んでいます。

    これからプログラミングを始めるなら、ニッチな分野を1つ極めるべき

    ――これからプログラミングを始めようとしている20代・30代の方にアドバイスをお願いします。

    とにかく、他の人とは違うことをやりましょう!

    「俺は10万人に1人のレベルで頭が良い!」という自信があるなら、わざわざニッチな分野をやらなくても構わないです。

    でも「俺、そこまで頭良くないしなあ・・・」という人がほとんどですよね。それなら「この分野、めちゃめちゃニッチだけど俺は得意だ!」というものを1つでも良いから見つけ、極めたほうがいいです。

    プログラミングだと言語自体はメジャーだけど作るサービスがニッチというのも素晴らしいですし、マイナーな言語を学び、その分野のエキスパートになるというのも素晴らしいです。

    どこで勝負すれば頭がいいヤツらに勝てるか、を常に考え、そしてたくさんバッターボックスに立ちましょう。

    ――岩佐さん、ありがとうございました!

    ※2017年12月時点での取材インタビューです。
    ※こちらの記事は、『TECH::NOTE』コンテンツから転載をしております。
    >>元記事はこちら

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