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ミクシィCTO村瀬龍馬が「私、失敗しないので」を地で行くワケ―モンストの“大量詫び石”にも振り回されなかったメンタル術

#働き方

2013年にリリースされたミクシィのスマホゲーム『モンスターストライク』(以下モンスト)。現在の利用者数は5400万人を超え、今なお増え続けている超メガヒット作品だ。

モンストの躍進、失敗、挑戦、その全てを見守り続けてきたのが、現ミクシィCTO、村瀬龍馬さん。

初期からのユーザーの中には、人気過ぎるが故に何度もサーバーが落ちて、オーブ(いわゆる「詫び石」)を大量にもらった人も多いはず。さらに村瀬さんはモンスト関連以外にも、サービス開発中にミスをして対応に追われる、一度ミクシィを辞めるも出戻りで再出発する……など、はたから見ると「失敗なのでは……?」と思うような経験を重ねてきた。

しかし本人に話を聞くと「キャリアの中で、一度も失敗したことはない」と、くしゃっとした笑顔を見せた。

その理由を聞くと村瀬さん流の「壁との向き合い方」が見えてきた。

株式会社ミクシィ 取締役CTO 村瀬龍馬さん
株式会社ミクシィ 取締役CTO 村瀬龍馬さん
ゲームの専門学校に半年在籍した後、2005年に株式会社イー・マーキュリー(現:株式会社ミクシィ)に入社。SNS『mixi』の開発に携わる。09年に一度退職し、ゲーム会社のエンジニアや役員を経験。13年にミクシィに復帰し、『モンスターストライク』の開発、XFLAG開発本部本部長、18年より執行役員CTOを務める。19年6月、同社取締役CTOに就任

「失敗だ」と、わざわざ自分を傷つけたってしょうがない

――村瀬さんは、たくさん挑戦をなさっているので、その分失敗もいろいろ経験してきていると思うのですが、なぜ「失敗はない」と言い切れるんですか?

失敗を「後悔すること」と定義するとしたら、起こったことをうじうじ悔やんだところで、解決策も見つからないし、次につながらないと思うんですよね。

過去を悔やんでいる間に、どんどん次の打ち手を考えた方がいいじゃないですか。

株式会社ミクシィ 取締役CTO 村瀬龍馬さん
「“失敗経験”を聞かれても本当にないんですよね……僕、昔のこと全然覚えてないし」(村瀬さん)

もちろんエンジニアとして心苦しい体験はいっぱいありますよ。

2013年に『モンスト』をリリースした時は、毎月100万人ずつユーザーが増えていって。サーバーに負荷が掛かり過ぎて落ちる、なんてこともしょっちゅう。

その時は、昼も夜も緊急対応の連続で、負荷対策ばかりやっていました。

もちろん繰り返しシステム障害が起きるという事態は、企業としては大失敗です。ユーザーにとてつもない迷惑をかけていますから。

でも、ユーザーがエンジニアに求めているのは、僕らからの謝罪や反省ではなく、システムを早く直すことですよね。だからあの時の状況を考えると、僕個人が「失敗した!」と悔やんでいる暇なんてなかったわけです。

株式会社ミクシィ 取締役CTO 村瀬龍馬さん

とはいえ当時は、僕の代わりに、モンスト公式YouTubeに出演している社員がユーザーにものすごい謝っていて申し訳なかったですし、チームメンバーにも大迷惑を掛けました。

周囲にこれだけ迷惑を掛けるのだから、ちゃんと対策を取ってサーバー、インフラを強化しなければならない、と心に誓った出来事でしたね。

――なるほど。それでもやはり、失敗ではないと。

そうですね。技術的な問題なら、仕組みをつくってシステム化してしまえば、だいたい解決するんですよ。サーバー障害なら、負荷に耐えられるようにすればいいわけですから。

そういった対策をシステムに落とし込めるスキルを身に付けられれば、それは失敗ではなくなります。

――すごく前向きな考え方ですね。

そもそも、僕が仕事に限らず、後悔しない性格ということも大きいです(笑)。何でもすぐ忘れちゃうし。

それに、起こったことに執着して、自分で自分のことを責めて、わざわざ傷つくようなことをしなくてもよくないですか?

起業家の世界と違って、いちエンジニアである限りは、誰かが借金を負っちゃうとか命を落とすほどの事態には、ほとんどなりません。だから、「失敗してしまった」と、そこまで自分のことを責めなくても大丈夫だと思います。

そう考えたら、後悔したって誰のためにもならない、って気持ちが軽くなりませんか?

事実と感情を切り分けて「超客観的な自分」をつくろう

――失敗しても後悔しないし悩まないって、ちょっとうらやましいです。

「失敗だと思わない」とはいっても、良くないことを起こしたときに「反省しなくていい」ということではありません。問題が起きたら、対策を考えることは必要不可欠です。

――具体的に、どう対策を練っているんですか?

まずは自分自身で「事実」に向き合うようにしています。自分の身に起こっていることを事実ベースで書き出すんです。

事象で言えば、サーバーが落ちた、バッチを当てても追いつかない、いつまでに解決しないといけない……そんなふうに、とにかく淡々と。

株式会社ミクシィ 取締役CTO 村瀬龍馬さん

それと同時に自分が感じていること、つまり感情面についても事実を書き出します。眠い、つらい、悲しい、いつ終わるんだろう……とかって。

「眠い」ならいったん作業を止めて、眠ってしまった方がいいし、「悲しい」なら「今自分は悲しいと思っているぞ」と感情をラベリングして、ちゃんと受け入れてから作業に戻った方がいい。

――自分の感情面も、ないがしろにしないわけですね。

人間ですからね……。気持ちを無視して仕事を進めても、どこかに歪みが出ますから。

今でも作業していて「思うように進まないなぁ」ということがあれば、いったん手を止めて感情を整理します。「これは感情だから、ちょっと置いておこう」って判断をしています。

――今起きている事象と自分の気持ちを書き出した後は?

自分が「今この瞬間からできること」を書き出します。これが対策に当たりますね。

この時も「事実」を意識していて、今の自分に実現可能なことを挙げていきます。

いくら良い対策を思いついても、自分のスキルじゃできないこととか、実現不可能なことを挙げているなら、それは妄想ですから。後になって理想と現実のギャップに苦しむことになります。

――あるあるですね……。

それもちゃんと自分を客観視しないとできないことですからね。

何かトラブルが起きたときはもちろんですが、僕は今でも週に2時間くらいは「自分と向き合う時間」を定期的に取るようにしています。

事実をちゃんと認識するために、自分の中に「もう一つの超客観的な人格」をつくって、淡々と自分のことを振り返るんです。

株式会社ミクシィ 取締役CTO 村瀬龍馬さん
――とはいえ緊急事態に、「冷静な自分」でいられる気がしないです……。

僕は習慣的に「超客観的な自分」をつくっていますけど、それができない場合は第三者と話しながら事実を振り返るといいと思いますよ。現状を整理して、何をすべきか一緒に判断してもらうんです。

同僚でも上司でも、友だちでもいい。自分を含め、トラブルの真っ只中にいて慌てふためいている人ではなく、冷静に現状を見つめられる人と話すんです。

仰る通り、自分が冷静じゃないときに、ダメなことをダメって判断したり、今やっていることは間違っていないと決めたり、何かを「決断する」ことって本当に難しい。それなら、自分じゃない誰かに決めてもらうのもアリだと思います。

――そう聞くと、ハードルが一気に低くなりますね。

ええ。もしゆっくり相談ができなくても、チームのチャットで自分の気持ちを淡々と書き連ねて実況中継していくだけでもいいと思います。

――村瀬さんは、トラブルが起きたり、しんどいことが起きたときには、昔からそういう対処法をしてきたんですか?

もともとはそうじゃなかったんですよ。だけど10代の頃から、何かしんどいことがあったときにはどう対処すればいいかって考えて、実践することは続けていましたね。

逃げたり迷ったりもしたし、大人になる過程で心理学やコーチングの本を読み漁って試行錯誤しました。その結果、事実と感情を切り分けて、淡々と箇条書きしていくという今のスタイルに辿り着いたんです。

株式会社ミクシィ 取締役CTO 村瀬龍馬さん
――メンバーに対して、村瀬さんが「第三者」の役割をすることもあるんですか?

ありますよ。でもメンバーからは「事実と感情を切り分けるなんて、村瀬さんの性格だからできるんでしょ」と言われることもよくあります。

でも僕としては、そういう時こそチャンスだなって思っていて。その方が「じゃあ君は、今何が引っかかっているの?」とか「何がなくなればできる?」と話を進めやすいですからね。

「鋼のメンタル」なわけじゃない。
振り回されずに働く術を知っているだけ

――今回のお話で「事実と感情を切り離して考える」ことの重要性が分かりました。

壁にぶつかったときに、解決するための対策や手段を見つけることは大事です。だけど自分の感情も無視しない方がいい。人間ですからね。事実と感情、どちらとも向き合うことが重要だと思います。

そうしていれば、技術的な対処法も学べるし、自分が嫌だなと思うことや思考、行動のパターンが分かってきて、仕事のスケジュールやクオリティーをコントロールしやすくなりますから。

――村瀬さんのような対処法を身に付けられたら、何があってもめげない「鋼のメンタル」を手に入れられますか?
株式会社ミクシィ 取締役CTO 村瀬龍馬さん

まあ、「鉄のメンタル」が手に入ったらいいんですけどね(笑)。残念ながら僕も「鉄のメンタル」を持っているわけじゃないので。メンタルに振り回されず、淡々と目の前にあるタスクを行動に移せるスキル、くらいの感覚です。

でもそうすれば、コードを書いているときに「なんで自分はこんなに書くのが遅いんだろう」って落ち込んだり、「眠いしなんかもう仕事面倒くさいな」って思ったりしてタスクが進まない事態を防げる。

少しずつそれができるようになれば「なんであの時、あれができなかったんだろう」って悔やむこともなくなるし、なりたい理想の自分と現実とのギャップに苦しんで無駄に落ち込むこともなくなります。

そうしたら、もうちょっと毎日ハッピーに働けるんじゃないかと思うんですよね。

取材・文/石川香苗子 撮影/桑原美樹

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