その後を決める、いいスタートダッシュ
エンジニア転職「運命の入社1カ月」転職後1カ月は「先輩に教わる、業務に慣れる」だけの時期? その後の仕事、キャリアを充実させるカギは、実はこの時期の“受け身姿勢じゃない”過ごし方にあるかもしれない。そこで各企業のトッププレーヤーやEMたちへの取材を通して「入社1カ月の過ごし方」を徹底調査。“その後”を左右する、いいスタートダッシュの切り方とは?
その後を決める、いいスタートダッシュ
エンジニア転職「運命の入社1カ月」転職後1カ月は「先輩に教わる、業務に慣れる」だけの時期? その後の仕事、キャリアを充実させるカギは、実はこの時期の“受け身姿勢じゃない”過ごし方にあるかもしれない。そこで各企業のトッププレーヤーやEMたちへの取材を通して「入社1カ月の過ごし方」を徹底調査。“その後”を左右する、いいスタートダッシュの切り方とは?
即戦力としての活躍が期待される中途エンジニア。
転職したばかりの若手エンジニアの中には、新しい環境ではやく力を発揮したいと焦りを感じている人も多いだろう。そこで今回は、中途エンジニアの採用を活発に行うWeb系大手3社の組織開発者を集めて座談会を実施。
話を聞いたのは、ヤフーのシステム統括本部でリーダーを務める中尾真紀さん、サイボウズのオンボーディングチームで組織デザインを担当する北地敏隆さん、Sansanでクラウド請求書受領サービス「Bill One」のエンジニアチームを率いる大西真央さん。
各社で開発チームの組織づくりをリードする3人が語る、転職後にいち早く即戦力になるためのポイントとは?
——まず、各社がどのように中途エンジニアの受け入れをしているか、オンボーディングの体制と皆さんの役割を教えてください。
ヤフー 中尾:ヤフーでは、初日に人事部から基本的なオリエンテーションを、その後、1週間程度の技術研修を行うことが多いですね。それらを終えたら各チームでのOJTに入ります。
私自身は社内情報システムの戦略部門に所属していて、普段は現場のチームリーダーとして中途社員の受け入れに関わっています。
サイボウズ 北地:私は今、サイボウズの開発本部で、組織運営チームとオンボーディングチームという二つのチームに所属しています。新卒・中途ともに新メンバーに対する受け入れの仕組みを整備、提供するのが、オンボーディングチームの役割です。
そんな中で、キャリア入社のメンバーに向けたオンボーディングプログラムについては、大きく三つのステップに分かれています。
第一に、入社時の全社研修です。半年のうちに複数回に分けて、サイボウズで働く上での環境面や組織文化理解のカリキュラムを中心にインプットを行います。また、カルチャーについてのディスカッションも行うことで、組織文化の理解を深めてもらっています。
その次は、開発本部に馴染んでもらう期間として、1〜2カ月かけて、業務紹介や技術に関する動画コンテンツを見てもらったり、各業務に関わる人たちと雑談も含めてコミュニケーションを深めてもらったりします。
そして最後に、各チームでの個別のオンボーディングを実施します。
Sansan 大西:Sansanのオンボーディングは、全社研修と事業部での受け入れと、二つのパートに分かれています。全社研修は5日間で、プロダクトの説明や各種制度の説明を行っていますが、一番時間を割いているのがMission、Vision、Valuesの理解についてですね。一方的なレクチャーにならないように、グループワークを含めながら、会社の基礎となる考え方をしっかり理解してもらってから現場配属になります。
私自身に関して言うと、今はクラウド請求書受領サービス「Bill One」の開発部長とプロダクトマネジャーを務めていて、新メンバーに対して今度はBill One UnitとしてのMissionやVision、開発組織として大切にしたい考え方などを伝えています。
――各社、人事部などによる全体研修→配属先での研修→OJT、という流れは同じですね。では転職者にとって「入社後1カ月」はどんな期間だととらえていますか? 他社から来たエンジニアを迎えるにあたって、その期間で最も重視していることは何でしょうか。
サイボウズ 北地:新しく開発本部に入ってきたメンバーが、「働くことが楽しくなってきた」と思える状態になることですね。
過去に、入ったばかりの人から「周りの人となかなか打ち解けられず、、うまくコミュニケーションがとれない」、「仕事をする上で分からないことが多い」といった戸惑いの声が上がったことがありました。
入社後、1〜2カ月程度、開発本部の研修を設けたのもそのためです。
実際にはチームでの活動も並行して行っているのですが、最初の1〜2カ月については、チームで技術を磨きながら、他のメンバーとの関係性を構築して、サイボウズで働くことに馴染んでもらう期間だと考えています。
ヤフー 中尾:私たちも同様に、新メンバーが不安を感じることなく主体的に行動できるような環境づくりを心掛けています。
そのために、スキルや知識の習得と学び直し、人的ネットワークの構築や社内ルールの理解といったことを重視しています。
配属後のOJTについては、会社から基本的なポイントは示されていますが、サービスや本部により事情も異なるので、細かいところは現場主導で進めています。
会社としてOJTは中途入社者に合わせて担当者をアサインすることを社として推奨していて、並走してしていく中で徐々に独り立ちしていってもらいます。
Sansan 大西:人それぞれ経験も異なるので一概に言えませんが、私の部署では入社3カ月経った時に前職と同じパフォーマンスが出せるかどうかを一つの指標にしています。
その中で最初の1カ月の位置付けを考えると、やはりコミュニケーションに力を入れる時期ですね。
私たちも受け入れ担当としてメンターをつけていますが、チーム内外の人ともコミュニケーションの場を設けて、部署全体で溶け込みやすい体制をつくるようにしています。
――各社ともまずはコミュニケーションの場を設けることを重視していますが、技術面ではどんなところに気を付けるといいでしょうか?
Sansan 大西:採用段階で、技術面のスキルマッチは確認しているものの、開発するプロダクトが変われば使う技術も違ってきますし、開発の進め方などの考え方も変わってくるはずです。なので、どうしてもチューニングは必要になります。
分からないことは分からないと表明して、どんどんキャッチアップしていく方が、立ち上がりのスピードは速いですね。
ヤフー 中尾:そうですね。ガイドラインなど細かいところが違ってくると思うので、これまでのやり方にこだわらず、新しい環境で素直に受け入れてもらうことは大切だと思います。
基本的なことは最初の技術研修で伝えますし、社内には技術基盤の体系的なリファレンスも整備されているので、こまめに確認するといいですね。
サイボウズ 北地:私も同感で、ある程度のアンラーニングは必ず求められますよね。また、サイボウズの開発チームはモブプロの文化があり、複数人で作業することが多いので、そこで技術スキルや製品知識をキャッチアップしてもらえればと思います。
――まずは助走期間として、環境に慣れたりプロダクトを把握したりすることから、ということですね。
Sansan大西:もちろん即戦力として活躍できるのであれば、それに越したことはありません。でも誰しも、異なる文化の中に入ってくるわけですから、最初は戸惑うことも多いでしょう。
実際、最初につまづいてしまうと、なかなか持ち直せないことも少なくありません。そういう時に誰にも頼らず、一人で頑張ろうとするのはやめた方がいい。
最初はじっくりと会社に馴染んで、半年後や1年後に大きな成果を出してもらう方が、本人も会社もハッピーだと思います。焦っても良いことはありませんからね。
サイボウズ 北地:その通りだと思います。一番大切なのは、あまり気負いすぎないこと。
サイボウズには、自分がやっていることをどんどん情報発信していくようなオープンな風土があります。その中に新しく入ってくると、「自分も早く成果を出さなくては」という気持ちになりがちですが、受け入れ側としては焦らずに目の前のことを着実にやっていってもらいたいと考えています。
ヤフー 中尾:まだ仕事のやり方にも慣れていないという新しい環境で、これまでと同等のパフォーマンスを出していくのは大変なことですし、そこで無理をしてほしくはないですね。
逆に、即戦力になることを意識し過ぎて、聞くべきことを聞けなかったりする方が心配です。受け入れる側も、転職者がどんなタイプの人なのか手探りで接していくので、得意なこと、苦手なことを含めて自分からどんどん発信してもらえるとお互いに助かるはずですよ。
――では、新しい職場に入社したばかりのエンジニアに「これだけはぜひ意識してほしい」と思うことを教えてください。
Sansan 大西:圧倒的な会話量ですね。人に頼ることを恥だと思わず、周囲の人にどんどん質問や相談をしてほしいです。
ここまでにお話しした通り、転職者を受け入れる側は最大限のコミュニケーションが取れるようにさまざまな工夫をしているはずなので、あまり気負わずにガンガン話し掛けててもらえたらと思います。
サイボウズ 北地:働く人は「100人いれば100通り」ですから、それぞれ得意、不得意があるのは当たり前。はやく成果を出そうと焦らず、自分には何ができるか、何ができないか、どんどん自己開示していってほしいですね。
その方が周囲にも、その人がどこでつまづいているのか分かるので、サポートもしやすくなります。
ヤフー 中尾:やはりコミュニケーションを積極的に取ってもらうということに尽きますね。チーム内で意見を言ったり、Slackでつぶやいたり、ちょっとしたことで構わないので、アウトプットをたくさん出してほしいです。そうしてフィードバックをもらっていくことが学びにつながると思います。
取材・文/瀬戸友子
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