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近年ますます注目を集めるAI(人工知能)は、さまざまな技術によって成り立っています。そのうちの一つが機械学習です。
大量のデータをコンピュータに学習させることで複雑な分類や予測が可能になるため、ビジネスに活用する企業が増え始めています。
しかし、機械学習という名前は知っているものの「具体的に何ができるの?」「AIやディープラーニングと機械学習の関係は?」と疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、機械学習の基礎知識からできること、機械学習のスキルを生かせる職種、使われるプログラミング言語、活用事例まで詳しく解説します。
機械学習(ML:Machine Learning)とは、データを分析する方法の一つです。
文字通りコンピュータ(Machine)が大量のデータを学習(Learning)することで、データのルールやパターンを抽出します。得られた結果をもとに分類や予測を行うためのアルゴリズムやモデルを自動で構築することも特徴です。
機械学習は、AI(人工知能)におけるデータ分析技術の中核を担っています。近年AIが流行している背景には、機械学習技術の発達が要因の一つとしてあると言えるでしょう。
データを学習する方法には、大きく分けて「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」の3種類があります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
・教師あり学習
基準となる入力データとその答えの出力データをあらかじめコンピュータに与え、入力を受けると正しい出力ができるよう学習していく方法です。
教師あり学習の代表的なタスクは「回帰」と「識別」です。
「回帰」とは、連続するデータを値として学習することで、今後の予測を行うもの。具体的な数値の予測を行うことが特徴で、売上や株価の予測などを行います。例えば、毎月の売上を学習することで、今後の売上予測が可能です。
一方で「識別」とは、特定のデータを与えられた正解データと比較して「正しいか」「正しくないか」を分類したり認識したりするもの。例えば迷惑メールのパターンを学習することで、受信したメールが迷惑メールであるかどうか判断し、フォルダを振り分ける処理などを行います。
・教師なし学習
正解となるデータを与えて学習させる教師あり学習に対し、正解データを与えずに学習させる方法が教師なし学習です。教師なし学習は基準が不明確なデータの基本的な構造やパターン、分布を明らかにすることが目的とされています。
教師なし学習の代表的なタスクは「クラスタリング」です。
「クラスタリング」とは、似た特徴を持つものを同じグループに分けるアルゴリズム。大量の画像データから動物の種類を判別してグループ化したり、ECサイトの顧客を年齢や性別、地域などで分類したりする処理を行います。
・強化学習
教師なし学習と同様に正解データが与えられず、かつこれまでの出力データを価値付けし、その価値を最大化するために学習する方法です。望ましい出力だった場合にはコンピュータに報酬を与えることで、良い出力を学習させます。
例えば株式売買で利益を最大化するための売買タイミングや、ゲームで高スコアを出すための行動などを判断する処理を行います。
機械学習とAI(人工知能)の関係性や、これらと同様によく耳にするディープラーニング(深層学習)との違いがよくわからないという方も多いのではないでしょうか。
まずAIとは、機械によって人間の知能を再現する技術全般を指します。機械学習は、このAIを実現するための技術の一つです。
ディープラーニングは、機械学習の手法の一つです。人間の脳の仕組みを模したシステムである「ニューラルネットワーク」を用いて学習を行う特徴があります。
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機械学習が注目される理由として、データ活用の重視と労働力不足が考えられます。
「ビッグデータ」という言葉が話題になったように、近年は人間の勘や経験ではなく、大量のデータを分析してビジネスにおける意思決定を行うことが重視されています。しかし人口減少による労働力不足により、大量のデータ分析を人力で行うことは難しくなっているのが現状です。
そのため労働力をカバーしつつ、データを活用して正確な判断を行いビジネスの競争力を向上させるために、あらゆる業界で機械学習が注目され導入され始めています。
ここでは、機械学習でできることについて具体的に解説します。
過去のデータを大量に学習することで、将来的にどのような数字や結果が発生するか予測できます。例えば売上・需要の予測。飲食店などでは過去の顧客の滞在時間のデータをもとに待ち時間の予測なども可能です。機械学習による予測は、企業側・顧客側双方にメリットがあります。
機械学習は膨大なデータを素早く正確に分析できるため、ビジネス戦略や施策の立案に役立ちます。顧客の傾向や商品の売れ行き動向を大量のデータから分析することで、これまでのマーケティング施策の成果を判断できるでしょう。結果をもとにさらなる売上向上施策やブランディング戦略を立てやすくなります。
レコメンドとは、対象者の興味を引きつける・価値を感じると思われる商品や情報を各ユーザーに提示する機能です。過去の購買履歴や閲覧履歴などのデータを学習して分類し、各ユーザーのニーズに合う商品や情報をおすすめします。ECサイトやニュースサイトなどで使われることが多いです。
自然言語処理とは、人間が日常的に使う言語を機械で処理し、内容を抽出する技術です。音声認識や画像認識、チャットボット、AIスピーカー、検索エンジンなどで自然言語処理は使われています。これからさらに発展が期待される分野です。
機械学習は今後も導入する企業が増加すると予想されるため、知識やスキルを持つ人材は需要が高いです技術です。では、具体的にどのような職種で機械学習のスキルが生かせるのでしょうか? 一例を紹介します。
機械学習エンジニアは、AI開発に携わるエンジニアの中でも特に機械学習に特化した業務を行うエンジニアです。機械学習・AIアルゴリズムを組み込んだサービス開発やデータ分析、機械学習モデルの開発などの業務を行います。データや目的に応じて取り入れるアルゴリズムは変化するため、機械学習の深い知識と判断力が必要です。
機械学習のスキルに加えて、プログラミング・データベース・クラウド・環境構築などのスキルが求められます。
データサイエンティストは、ビッグデータから必要なデータを収集・抽出し、分析した上でビジネス戦略の立案などを行う職種です。ただデータを分析するのではなく、どこからどのようなデータを取得するかの判断も必要です。企業の課題を解決するために、データ分析の結果をもとにコンサルティングまで担当します。
機械学習のスキルに加えて、情報処理や統計学などの知識・ビジネススキル・コンサルティングスキルなどが求められます。
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機械学習を行うには、人間がプログラミングする必要があります。機械学習のスキルを身に付けるためには、適切なプログラミング言語を選んで学習することが大切です。ここでは、機械学習に使われる代表的なプログラミング言語について紹介します。
Pythonは機械学習においてもっとも使用されているプログラミング言語です。Pythonが選ばれる理由としては以下のようなものが挙げられます。
・文法がシンプルで習得しやすい
・機械学習に利用できるフレームワークが豊富
・コミュニティが活発で疑問を解決しやすい
PythonはYoutubeやInstagramの開発にも使用されており、多くの企業で採用されています。コードも読みやすいため、初心者でも気軽に学習を始められるでしょう。ただしPythonはスクリプト言語のため、コンパイラ言語と比べると速度は遅いです。
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R言語は統計やデータ解析に特化したプログラミング言語です。Pythonと同じく機械学習やAIの分野でよく使用される代表的な言語とされます。統計解析の分野においてはPythonよりも短いコードで処理を実行できることや、ライブラリが充実していることが特徴です。機械学習エンジニアやデータサイエンティストは必ず習得したい言語と言えるでしょう。
しかし専門的な知識が必要で、初心者にとっては習得しにくい点には注意しなければなりません。また統計解析に特化しており、汎用性はPythonに劣ります。
ここからは、実際に機械学習を活用している企業の事例を見てみましょう。
・ヤマト運輸
ヤマト運輸は需要に応じた経営資源の最適配置とコストの適正化を図るため、2019年末から機械学習による荷物量の予測システムを導入しています。過去数年分のデータを学習させ、宅急便センターごとの荷物量を予測して人員や車両の配置を行うシステムです。
20年以降新型コロナウイルスの影響で増加した荷物量に対しても、予測精度が高まったことによりリソース適正配置が可能となり、収益の増加にもつながりました。
また2021年には手動で実行していた機械学習モデルの作成プロセスを自動化するためにMLOps(Machine Learning Operations:機械学習運用)環境を構築し、運用を高速化しました。機械学習の価値をビジネスに生かし、収益アップや業務効率化を実現しています。
出典:Ledge.ai「ヤマトHD、AIなどテクノロジー活用で収益増加」、DIGITAL X「https://dcross.impress.co.jp/docs/usecase/002972.html」
・キューピー
『キューピーマヨネーズ』などで広く知られるキューピーは、「良い商品は良い原料からしか生まれない」という考え方のもと、原料に対して強いこだわりを持つ企業です。従来は原料の選別を人力で行っていましたが、安全性と生産性を高めるため機械学習を用いたシステムを開発しました。
ベビーフードの原料となるダイスポテトの原料検査装置に機械学習を活用し、コンピュータに100万個以上の原料を学習させることにより、システムが良品を自動で判別できるように。カメラで撮影した原料の映像から、不良品を見つけ出す仕組みになっています。
これにより生産性の向上を実現するとともに、従業員の労働時間削減による労働環境の改善も期待されています。
出典:Business Insider Japan「食品企業キユーピーが始めた“AIによる原料選別”がすごい理由 —— グーグルが支援、食品メーカーの未来」
ビッグデータが注目されるように、近年は人間の勘や経験に頼った判断だけでなく、膨大なデータに基づく意思決定が重視される傾向にあります。そのため機械学習によるデータ分析の需要は非常に高く、導入する企業が増えているのです。
同時に、機械学習スキルを持つ人材の需要も高まっています。今後もさらなる発展が期待される分野なので、少しでも機械学習に興味がわいた方は学習や情報のキャッチアップを始めてみてはいかがでしょうか。
文/江副杏菜
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