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「技術力」って結局何? カミナシ原トリ・10X石川洋資・ばんくしが考えるエンジニアのスキルの定義【聴くエンジニアtype Vol.24】
エンジニアの評価基準は数あれど、やはり最も重要なのは「技術力」ーーそう考える人は多いかもしれない。
では、その「技術力」とは何を指しているのだろうか。コーディングスキルなのか、扱える言語の数なのか、それとも……?
問われると意外にも即答が難しい質問に、カミナシ・原トリさん、10X石川洋資さん、ばんくしさんが答えてくれた。
【MC】
M3, inc. VPoE
河合俊典(ばんくし)さん(@vaaaaanquish)
【Speaker】
株式会社カミナシ 取締役CTO
原トリさん(@toricls)
【Speaker】
株式会社10X Co-Founder, 取締役CTO
石川洋資さん(@_ishkawa)
【今回の相談】
「技術力を高めるべき」とよく言われますが、人によって「技術力」の定義が違うような気がします。
「言語やフレームワークの仕様を熟知し、何でも知っていること」「コンピュータサイエンスを理解して実装していること」「フロントエンド、サーバーサイドのどちらにも知見があること」など、いくつか思いつきます。
私は「Google検索をしても分からないことができること」なのではないのかなと考えているのですが、皆様のご意見をお聞きしたいです。
「技術力」は文脈によって変化する曖昧なもの
河合:石川さんの考える「技術力」とは、ずばり何ですか?
石川:「技術力」って、何を表現したいかによって意味が変わる曖昧な言葉ですよね。僕も2~3種類の意味で「技術力」という言葉を使っているような気がします。
一つの技術が単独で成り立つことは無いので、特定の技術を1番下の部分まで掘り下げて、その知識をいかに活用できるかというのも「技術力」ですし、ビジネス的・システム的な要求に対して適切な手段を提供できるか、もしくは適切な手段を探索してそれが正しいことを確認する力というのも「技術力」と言えると思います。
エンジニアに求められる能力は多様なので、その一つ一つを総合して「技術力」と呼ぶのかなと思っていて。要するに「エンジニアとしてどれだけニーズに応える力があるか」というところだと思います。
河合:「知識の量」「選択」「探索」ですね。原さんはいかがですか?
原:「技術力」という言葉を「技術を使ってお金を稼ぐ」というコンテキストで説明すると「Getting Things Done」になると思います。つまり、ビジネス上必要なことを、技術を使ってきちんと終わらせられるかどうかです。
ただ終わらせればいいのではなく、トレードオフの関係を理解して適切な時間軸で、適切な複雑度をもって解決できる力のことを指すのかなと思います。
一方でお金が関係ないところで言うと、質問者さんが挙げてくださったようなことも全部技術力だと思うし、AtCoderで良いレーティングを取れることも技術力だと思う。他の人が思いつかないような闇のコードを仕込むことも、当然技術力だと思います。
「技術力」はコンテキストによってグラデーションになる言葉ですね。
河合:知識、探索、そしてそれを妥当な速度で選択できる……ということですね。
ちなみに、この相談者さんが仰っている「Google検索をしても分からないことができる」についてはどう思いますか?
原:技術に関してGoogle検索をしても答えが出てこない時に、自分で何らかの結論まで持っていける……ということですかね? だとしたら、固有の技術についてググっても答えが出てこない時、僕なら「その技術の使い方や捉え方が間違っているのかも」と考えます。検索の仕方が悪いというのも含めて。
ただ、「Google検索では出てこないようなことを、自分が考えたアイデアで解決した」というのは一つの技術力として評価はできるとは思います。
河合:たしかに、Google検索をすれば大体のことは言及されていますもんね。
石川:本や論文にも言えることだと思いますが、同じ知識をインプットしても、その知識をどう活用するのかは人の能力によりますよね。
ググったり本を読んだりして得た知識を「自分たちのプロダクト開発にどう還元できるか」というのは、検索しても出てこない。そこは自分たちで考える必要があるし、チームメンバーやステークホルダーに説明する必要もある。その能力についても「技術力」と呼べるのではないかと思います。
河合:「Google検索をしても分からないことができる」って、定量的に測ることが難しそうですよね。
となると、第21回の時に話した「AIを使いこなして活用すること」も技術力になる気がします。
ところで、お二人ともCTOというポジションですが、エンジニアの技術力をどうやって評価しているのですか?
石川:等級制度を設けていて、その時に期待される成果やインパクトの大きさなどによってエンジニアを評価しています。
ただ、どの技術を活用するかは人によりますよね。技術的な方針を打ち出して成果を出す人もいれば、技術的に深いところまで飛び込んでとにかく実装することで成果を出す人もいますから。
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河合:使う技術の種類や知見の広さなどではなく、成果の部分で評価しているということですね。カミナシさんではいかがですか?
原:10Xさんとそんなに大きな違いはないです。違いを挙げるとすると、より等級が高い人は、何故その技術を使ったのかを言語化するという部分ですね。
加えて、等級が高いほど抽象的な課題を具体的に解決していけるか、という部分も等級要件に入っています。どれくらいの範囲のステークホルダーを巻き込んで大きな成果を出していけたか、という評価ポイントもありますね。
河合:「技術力」を測るのって難しいですよね。最初に原さんが仰っていた「お金を稼ぐ」っていう文脈での技術力と、例えばエンジニアがスタジアムで1対1で技術力を競うみたいになった時に求められる技術力ってまた違う話ですもんね。
相談者さんが仰っている「Google検索しても分からないことができる」というのは抽象度が高いものをできるようにするということなので、あながち間違っていないのではないかと思いました。
文/赤池沙希
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