新日本コンサルタント
代表取締役社長
市森友明さん
京都大学工学部卒、同大学経営管理大学院博士後期課程修了。大手ゼネコン勤務を経て、2003年に新日本コンサルタント入社。06年7月より現職。社会インフラの計画・設計、都市計画、小水力発電開発、海外現地法人での再生可能エネルギー事業など、幅広い事業を展開中
【PR】 働き方
国の産業や人々の暮らしを支える基盤となる社会インフラ。
道路や橋、上下水道、送電線、ダムなど、いずれもなくてはならない施設や設備だが、近年は日本各地で老朽化が問題となっている。
もしインフラが機能しなくなれば、人命に関わる重大事故の発生やライフラインの寸断といった深刻な事態を招きかねない。
そしてこの社会課題を解決に導く切り札となるのが、DXだ。
総合建設コンサルタントとしてインフラマネジメント事業を手掛ける新日本コンサルタント代表取締役社長の市森友明さんは「インフラの老朽化が進む背景には『人手不足』と『予算不足』がある」と話す。よってデジタルやIT技術を活用し、効率化や省力化を進めることが不可欠となる。
その新日本コンサルタントが技術力強化のパートナーとして選んだのが、AIとDXの社会実装を手掛ける技術者集団のペブルコーポレーションだ。
同社は昨年11月に新日本コンサルタントと資本提携を結び、公共インフラ領域に本格参入を果たした。
「ITエンジニアにとって、インフラ関連のプロジェクトはやりがいや自分の成長につながる仕事」と話すペブルコーポレーション代表の藤方裕伸さん。
インフラの老朽化という課題に対して、DXをどのように活用していくのか。今後の戦略とビジョンをお二方に語ってもらった。
新日本コンサルタント
代表取締役社長
市森友明さん
京都大学工学部卒、同大学経営管理大学院博士後期課程修了。大手ゼネコン勤務を経て、2003年に新日本コンサルタント入社。06年7月より現職。社会インフラの計画・設計、都市計画、小水力発電開発、海外現地法人での再生可能エネルギー事業など、幅広い事業を展開中
ペブルコーポレーション株式会社
代表取締役社長
藤方裕伸さん
大手動画配信サービスや多様なコンテンツビジネスで活躍後、ソフトウエア開発のIT企業を創業。2018年11月、当時の一部上場企業に企業価値約30億円で会社を売却。同年12月、ペブルコーポレーション設立
−−最近は「インフラの老朽化」に関するニュースをよく見聞きするようになりました。国内における公共インフラの現状と課題について教えてください。
市森さん:インフラの老朽化という問題が一般の人たちにも広く認識される契機となったのが、2012年12月に起きた中央自動車道笹子トンネルの天井板崩落事故です。
これは地方の公共インフラが抱える課題を象徴する出来事でしたが、実はそのずっと前から同様の事故が発生する危険性が予見されていました。
日本は高度経済成長期にインフラ整備を加速させ、全国各地で道路や橋などのインフラがどんどん造られました。
それから約半世紀が経ち、経済成長の鈍化と人口減少に伴い、当時造られたインフラの老朽化が深刻化しています。
国内には橋とトンネルだけで約70万カ所あり、そのうち補修が必要と判定された3万3000カ所が手付かずで放置されています。
さらには補修では対応できず、今すぐ造り替えなければ崩落の危険性がある橋は7000カ所以上あると指摘されています。皆さんが知らない間に、実は静かに危機が進行しているのです。
−−なぜ老朽化したインフラが放置されているのですか。
市森さん:日本の税収が伸びず、インフラの補修や維持管理に回す財源が足りないからです。
国土交通省によれば、18年度に公共インフラの維持管理・更新にかかった費用は日本全体で約5.2兆円でした。30年後の48年度には、約1.4倍の7.1兆円まで増えると推計されています。
しかし国の公共事業費は毎年6兆円ほどで推移しており、今後も増える見込みはありません。地方自治体の財政も厳しく、予算の大半が社会保障費などの固定費で消えてしまい、公共事業に使えるお金はほんのわずかです。
加えて、自治体職員の高齢化と人手不足も深刻です。またインフラの補修や更新を手掛ける地方の建設会社も高齢化が進み、会社や職人の数も減り続けています。
予算不足と人手不足のダブルパンチが、インフラの老朽化を加速させていると言えるでしょう。
−−このまま課題が解決されずにいると、どのような未来が待っているのでしょうか。
市森さん:社会インフラのエコシステムは崩壊します。インフラを造り、定期的に点検とメンテナンスをして、時期が来たら新たに造り替える。このサイクルを回せなくなるのです。
インフラは国の産業や人々の生活を支える土台であり、もし崩壊すれば日本の国力低下に直結します。
一人当たりのGDPで台湾、韓国に抜かれることが予測される中、このままでは日本の国際競争力は低下の一途を辿ることになります。
インフラが維持できなければ、皆さんの生活にも多大な影響が及びます。
近年は東京都内でかなりの数の道路陥没が発生していますが、その多くは下水道管が老朽化して穴が空いたことが原因です。東京でさえこの状況ですから、人口減少が加速する地方の状況はさらに深刻です。
道路や橋にしろ、水道や電気にしろ、当たり前にあるものだと思っている人が多いのですが、現状を放置すれば日々の生活に不可欠なインフラさえ維持できなくなる可能性があるのです。
−−この深刻な社会課題を解決する方法はあるのですか。
市森さん:切り札となるのがDXです。先ほど申し上げたように、インフラの老朽化を招いた最大の要因は人手不足と予算不足です。この二つを解決するには、テクノロジーの活用による効率化や省力化が不可欠となります。
例えばロボットが道路の点検をしたり、AIが補修の必要性を判定することで、少ない人手や限られた予算でインフラの維持管理が可能となります。
新日本コンサルタントがいち早くDX部門を立ち上げ、AIやIot、クラウドなどの技術を活用した次世代型インフラマネジメント事業サービスを推進している理由もそこにあります。
−−昨年11月に新日本コンサルタントとペブルコーポレーションが資本提携した理由も、まさに「DX推進の加速化」にあるのですね。
市森さん:その通りです。元々、当社でもAIやクラウドを活用したソリューションサービスの開発に取り組んでおり、道路維持管理クラウドサービス『みちクラ』やAI水位予測システム『水まもり(みまもり)』などの自社商品を自治体に納入していました。
そこからさらなる事業拡大を目指すためには「開発スピードの迅速化」が必須で、ペブルコーポレーションの高い技術力が必要だったのです。
藤方さん:実は、建設分野のインフラ周辺にはDXに必要なシステムやツールがすでに導入されています。
例えば高速道路には多数のセンサーやカメラが設置され、収集したデータをもとに渋滞や混雑などの交通情報が配信されたり。また全国各地の河川には水位計やライブカメラが設置され、一般の人もインターネット上で水位の変化や増水の状況を確認できたりもします。
つまり現場から情報やデータを取得する仕組みはすでにあるので、あとは連携に必要な中間処理システムさえ構築すればこの業界のDXは一気に進むのではないかと思いました。
以前から公共インフラの案件に関心はあったのですが、公共領域は新規参入が非常に難しく手を出せていませんでした。
インフラ事業におけるNiXグループの豊富な知見と、ペブルコーポレーションの強みであるマーケティング力とITエンジニアリング力を掛け合わせれば、付加価値の高い商材を迅速に開発できる。市場での競争優位を確固たるものにできると確信しています。
−−ペブルコーポレーションにとっては新たな領域への参入となりますが、どのような戦略を描いていますか。
藤方さん:産学連携で進めているデジタルツインの共同研究に力を入れていきます。NiXグループは産学連携の研究開発にも取り組んでいて、神戸大学、北海道大学などのAI研究者と共同で実証研究や社会実装にチャレンジしている。
神戸大学には理化学研究所の拠点があり、スーパーコンピュータ「富岳」に触れるチャンスもあります。
すでに当社からもエンジニアを大学へ送り込み、研究者の先生たちに鍛えてもらっているところです。
市森さん:センサー類を通じて収集したデータをもとに、現実世界をリアルタイムで仮想空間に再現できれば、災害や事故が起こった時も人が現場に行かずにインフラの状況を把握できます。
デジタルツインが概念として語られることはあっても、実際の活用事例はまだ限られます。
研究開発によって得られた技術を社会実装するプロセスに参画できることは、エンジニアにとっても大変面白い経験になるはずです。
藤方さん:面白い経験といえば、デジタルの世界で作るシステムやサービスは形がありませんが、道路や橋などのインフラは実体があり、地図にも載っていますよね。
自分の手掛けた仕事がここまで大きなものとして残ることは、ITエンジニアにとってなかなかできない経験だとよく聞きます。
市森さん:私たちも「われわれの仕事は『地図に残す仕事』だ」と社内でよく言っています。老朽化したインフラが維持できなくなれば、地図からも消えてしまう。そんな事態を回避するのが自分たちの仕事なのだと。
自分が社会に貢献しているという手応えを実感できるのも、インフラ領域ならではです。例えば先日も、ある自治体に納入したAI水位予測システム『水まもり』が急激な水位の上昇を予測し、その後実際に洪水が発生した事例がありました。
『水まもり』を簡単に説明しますと、雨量計や水位計から取得したデータをAIが解析し、30分先の水位予測をリアルタイムで配信するシステムでして、この自治体では住民にタブレットを配布して情報を共有し、アラートメールなどを通じていち早く避難を呼び掛けたため、人的被害を出さずに済みました。
自然災害が頻発する日本において、防災や減災に貢献できる仕事は非常に大きな意義があります。
−−社会貢献意欲の高い人なら、ぜひ挑戦してみたいと思える仕事ですね。
藤方さん:専門性を高めたいエンジニアにとっても、インフラ案件に関われるのは魅力です。日本の土木建築技術は世界トップクラスで、耐震技術やトンネル施工技術などは他国が真似できないほどハイレベル。
ジャパン・アズ・ナンバーワンの分野に技術者として携わり、「DX×土木建設」の領域で専門スキルや知見を身につければ、世界で勝負できるエンジニアになれます。
−−インフラ領域のプロジェクトで活躍できるのは、どのようなスキルや資質を持ったエンジニアなのでしょうか。
藤方さん:常に最新の技術をキャッチアップしなければいけないので、新しいことを学ぶのが苦にならない人ですね。
当社の若手エンジニアたちは、JavaもPHPもPythonも触るし、AWSもAzureも扱うといった具合で、誰かに言われなくても自分でどんどん覚えていくので私のほうがびっくりしています。
エンジニアとして自分を鍛えたいと思っている人なら、AIなどの先端技術も楽しみながら学んでいけるのではないでしょうか。
また、コミュニケーション力も大事です。SESの場合は基本的にエンジニア同士で仕事をしますが、事業系の案件に入ればエンジニア以外の人と一緒に働く機会も多くなります。
インフラ関連のシステムやサービスを作る場合なら、現場の人たちと「このセンサーはどの角度で設置するのが最適か」といったことを相談しながら進める必要も出てくるでしょう。
ですからデジタルやITの専門知識がない相手にも分かりやすく説明し、円滑に意思疎通する力が求められます。
−−新日本コンサルタントとペブルコーポレーションが力を合わせることで、どのような未来を実現したいとお考えですか。今後の目標やビジョンをお聞かせください。
市森さん:私たちは社会インフラのエコシステムを支え続ける存在でありたい。そのためにはDXの力が不可欠であり、ペブルコーポレーションと共に技術開発に邁進したいと考えています。
DXの高い技術力を強みに、公共・社会インフラの事業領域で持続的に競争優位を保つことができれば、この市場は競合のいないブルーオーシャンと化します。
私たちが開発したインフラ管理の商材が国の機関や自治体に一度導入されれば、膨大なデータを取得し続けることになる。
「設計したら終わり」「点検したら終わり」のフロー型ビジネスではなく、エコシステムを回しながらインフラ関連のビッグデータを握るストック型ビジネスを確立できるのです。
そうなれば私たちは公共機関からずっと頼りにされる。公共インフラを支えるために不可欠な存在になれるのです。
藤方さん:その目標を最新の技術によって実現するのがペブルコーポレーションの役目です。「AIが進化すると人間の仕事を奪われる」という意見をよく聞きますが、エンジニアにしかできない仕事がまだまだたくさんある。
なかでもインフラ領域は、とても楽しくて生産性の高い仕事です。自分が関わったものが地図に残るワクワク感や、人々の生活を支えているのだという手応えを得られるのですから。
インフラを守ることは、未来を作ることです。この重要なミッションを担うエンジニアを育て、最新テクノロジーを駆使する集団を形成していきたいと思います。
>>>ペブルコーポレーションの中途採用情報はこちら
取材・文/塚田有香 撮影/大島哲二 編集/玉城智子(編集部)
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