エンジニアtypeが運営する音声コンテンツ『聴くエンジニアtype』の内容を書き起こし! エンジニア読者が抱える仕事やキャリアのお悩みに、注目企業のCTOやさまざまな領域の第一線で活躍する技術者が回答します
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希望と異なるポジションを打診されたら「専門性を高める」or「スキルの幅を広げる」どっちを選ぶべき?【戸倉彩・あらたま・ばんくし/聴くエンジニアtype Vol.27】
「エンジニア」と一口に言っても、得意とする技術は十人十色。一人一人が自分なりの専門性を磨きながらキャリアを築いていくことが一つのスタンダードとなって久しい。
だからこそ、会社から自分の希望とは異なる領域へのチャレンジを打診されたとき、その決断は容易ではない。今回は、まさにそんな打診を受けて悩んでいるインフラエンジニアからの相談に、戸倉彩さんとCake.jpの新多真琴(あらたま)さんが回答していく。
【MC】
M3, inc. VPoE
河合俊典(ばんくし)さん(@vaaaaanquish)
【Speaker】
日本アイ・ビー・エム株式会社 カスタマーサクセス部長
戸倉 彩さん(@ayatokura)
【Speaker】
Cake.jp CTO
新多真琴(あらたま)さん(@ar_tama)
【今回の相談】
これまでインフラエンジニアとして経験を積んできたので、今後もその方面の技術を極めていこうと考えていました。ですが先日、上司から「フロントエンドもやってみないか」と打診を受けて迷っています。
専門性を高めていくか、仕事の幅を広げるか、それぞれメリット・デメリットはあると思うのですが、みなさんのアドバイスが聞きたいです。
スキルの幅を広げると、結果的に専門性も高まっていく
河合:相談に回答いただく前に僕からお二人に聞きたいのですが、自分の希望とは違う仕事を打診された経験ってありますか?
あらたま:あります。1社目に入社して早々、「エンジニアリングだけではなくてプロジェクトマネジメントを兼務してみないか?」と打診をされました。「何でですか?」と聞いたら「なんかできそうだから」って(笑)
でも、やってみたら「確かに自分に向いているかも」と思ったんですよね。
人と一緒に仕事をする時にはバトンを渡す作業が発生すると思うのですが、バトンの形が人それぞれで違ったり、バトンを渡したと思ったら落ちてしまっていたり……ということがたくさん発生します。プロジェクトマネジメントの仕事はそこを舗装していく作業だと思うのですが、「自分はこういったことが得意なんだな」と知るきっかけになりました。
今私がCTOとして発揮している力のうち、何割かはその時の気付きが原体験になっている部分もあります。あの時、ノリで打診されて良かったな、と思いますね。
河合:戸倉さんはいかがですか?
戸倉:私の場合、打診というよりも選択の余地がないケースが多いですね。
外資あるあるかもしれないのですが、年度が変わると体制変更によってロール&レスポンシビリティー(役割と責任)や上司が変わることが少なくありません。なので、会社の都合で責任範囲が変わったり、違う部署に異動したり……というアナウンスメントをされるケースが多いです。
前職には営業として入社したのですが、「技術力をつけたらテクニカルエバンジェリストの仕事をやりたい」と思っていました。その後、年度が変わるタイミングで「エバンジェリストをやってみないか」と、希望していた形での打診を受けたケースもあります。
社会のニーズに応じてIT業界のあり方も変わっていくので、会社に勤めていると、希望しない形の打診を受けるケースはあるかもしれませんね。
河合:この方は「インフラだけでなくフロントエンドもやってみないか」と打診されたということですが、この上司が相談者さんの才能を見て言っているのか、人が足りないから打診をしているのか……など、背景に依存した話になりそうですね。
あらたまさんはCTOとしてエンジニアのポジションについて考えることがあると思うのですが、そこで大事にしていることってありますか?
あらたま:インフラもフロントエンドもそれぞれ専門の職種がある深い領域だと理解しているのですが、相談者さんが「インフラの専門性を高めてどういった自分になりたいのか」によってこの打診をポジティブと捉えるかネガティブと捉えるかが変わってきますよね。
個人的なスタンスとしては、メンバーにも「インフラだけ、フロントエンドだけと役割が分かれていて、領域を超えることが難しい会社もある。その中で、領域を広げる選択肢があるのであれば、それはポジティブに捉えてほしい」という話をしています。
実際にどのようなフローでユーザーに価値が届いているのか、ある程度の解像度で知っておくことは、今後インフラの専門性を高めていくとしても仕事の幅を広げていくとしてもマイナスにはなりません。
明確にやりたいことがあるのであれば、その旨を上司に言ったほうが良いとは思いますけどね。
河合:私としては、「一回フロントエンドをやってみたら?」と思ったりします。半年とか1年でもいいので。それによるデメリットってあるのかな? 半年もインフラから離れたら不安……ということなんですかね。
あらたま:相談者さんの場合は「インフラも続けつつフロントエンドもやってみないか?」という打診ですよね。それなら失うモノはなさそうです。
河合:ただ、上司に対しては「もうちょっと丁寧に打診してあげてよ」とは思うところですね。
あらたま:それは間違いない。
戸倉:確かに、もう少し情報がないとこの方も判断しにくいですよね。
あらたま:「君は絶対にフロントエンドが向いていると思うんだよね」ということなんですかね?
河合:エンジニアってこれまでの価値観やキャリアによって、本当のトップオブトップにいける人といけない人がいると思うんですよ。この上司が、相談者さんが今後キャリアを形成するにあたって「フロントを少し経験して幅を広げたほうが良い」と真剣に考えてくれているのであれば良い打診ですよね。なので、その部分を伝えて欲しいです。
ちなみに、戸倉さんはこれまでトップダウンで立場や領域が変わる経験をしてきたと思うのですが、そういった時はどう受け止めてきたのですか?
戸倉:私は「まずはやってみる」ことをしていました。最初は会社都合かもしれないですが、それはテクノロジーとの出会いだとも思うんですよね。その時にしか触れないもの、出会えないものがあると思うので、「そのテクノロジーとご縁があるのかな」「やっておいて損はないってことなのかな」と考えて、まずはやってみます。
ただ今回の相談者さんのように、インフラエンジニアとしての強みを生かしながらフロントエンドのスキルを積み上げていくとなると、同時並行になるのでなかなか厳しいかもしれない。なので、期間を決めて少しずつ新しいことにチャレンジするか、それとも集中的に新しいことにチャレンジした上で自分の能力を発揮できる場に行くのか、考えてみると良いかもしれません。
会社のため、あるいは自分の成長のためにはどちらが良いのか、上司からアドバイスをもらって判断するのも大事ですね。どういう条件・期間で打診されているのかを上司に確認したり、先輩エンジニアに話を聞いてみるのも良いと思います。回答までに時間が限られているかもしれないので、スピーディーに情報を集めるのが大事です。
私が所属している会社では、キャリアに関して自分で責任を持つという文化なんです。先ほどは選択の余地がないという話をしましたが、本当に嫌であれば断るという選択もあると思うんですよね。やはりメリット・デメリットを踏まえて、その選択が自分のエンジニア人生の一部になっていくことを考えながら判断するのが良いのではないかと思います。
私は元々セキュリティーエンジニアだったのですが、その後フロントも経験したことでフロントエンジニアとの会話ができるようになりました。フロントエンジニアを理解しているインフラエンジニアって、すごく貴重なんですよね。業務を通じてちょっと違う分野を学ぶと、インフラエンジニアとしての深みが増す。専門性を高めていく上で大いに役立つのではないかと思います。
河合:テクノロジーとの出会いって、人との出会いでもありますよね。相談者さんもインフラエンジニアとして目指したい人がいるのであれば、その人に話を聞いてみると「実はフロントもできる」なんてことが分かったりするかも。
あらたま:意外と寄り道している人はいますよね。
河合:専門性を深めるにあたって、寄り道は必要ですよね。
あらたま:先ほど戸倉さんが「自分で自分のキャリアに責任を持てるか」という話をされていましたが、もし相談者さんが「上司に言われたからやる」というマインドでフロントエンジニアのキャリアを選んだ場合、いろいろなものを見落としてしまう危険性があると思いました。
「自分で選択したキャリアだ」と腹を括って、それを下地にして「どういうスキルが身に付けられるかな」「どういうキャリアが積めるかな」と考えるのが大切なのかも。
河合:私もプロダクトマネジメントをやっていた頃は、エンジニアリングとプロダクトマネジメントのどちらに進むか悩みました。でもその悩んだ時間とかも今の私の糧になっています。
「自分で責任を持つ」ということは自分で悩むということなので大変ですが、ぜひ頑張っていただきたいですね。
次回は「メンバーのモチベーションが低い」と悩む新人マネージャーからの相談に回答していきます。お楽しみに!
6月25日(日)『聴くエンジニアtype』公開収録を赤坂で開催!
ポッドキャストチャンネル『聴くエンジニアtype』初の公開収録を東京赤坂の会場で開催します。MCのばんくしさんをはじめ、澤 円さん、池澤あやかさん、小城 久美子さん、増井 雄一郎さんが、エンジニアから寄せられた仕事・転職・キャリアの悩みに回答。収録後には懇親会や、書籍サイン会も開催予定です!
※公開収録はエンジニアtype主催のテックキャリアカンファレンス『ECDW2023』の中のコンテンツとして開催いたします
【開催場所】
〒107-0052 東京都港区赤坂2-5-1 S-GATE赤坂山王ビル 5階
株式会社キャリアデザインセンター 赤坂山王オフィス
【参加費】
無料
※懇親会は15:30~30分程度の予定です
※懇親会への参加は自由です
【定員】
60名(先着)
【エントリー方法】
以下より詳細をご確認の上、エントリーフォームより必要事項をご記入の上エントリーください。
文/赤池沙希
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