デジタル庁におけるデータ及びAI領域における最高責任者として、各省庁が保有するデータの整備および利活用、AI技術の横断的活用、標準化、AI倫理を含めたルール作りを通じた、データの観点から行政のあり方に関する抜本的な改革についてのリーダーシップを発揮する役割
デジタル庁がCAIO(Chief AI Officer)の公募を開始 | Da-nceCAIO(最高AI責任者)とは? 役割や注目される理由、必要スキルを解説
ChatGPTなどに代表される生成AIサービスが普及し、AI技術はとても身近なものになりました。このトレンドをビジネスへ活かすために、あらゆる企業がAI戦略に乗り出しています。そこで注目を集めているのがCAIO(最高AI責任者)です。
CAIOはおもに海外のAI・テクノロジー分野で活躍する企業を中心に設置されはじめた比較的新しい職種ですが、AIの発展とともにその存在感を高めています。日本ではまだ少ないですが徐々に必要性が増しており、今後さらに需要は高まるでしょう。
この記事ではCAIOの役割や必要なスキル、将来性などについて詳しく解説します。
CAIOとは?
CAIO(Chief AI Officer)とは、「最高AI責任者」を意味します。企業のビジネスにAI(人工知能)を安全かつ効果的に取り入れるための役職です。具体的にはAI戦略の立案や開発、実施をリードする役割を担います。AIの専門的な知識やスキルを活かし、ビジネスの観点からもAIを効果的に活用して企業の競争力向上や新たな価値の創造を目指します。
日本ではまだCAIOを設置する企業は少ないですが、世界全体で見ると徐々に増えはじめています。現在CAIOを設置しているのはAIやテクノロジー分野で事業を展開している企業が中心ですが、例外としてアメリカのアパレルメーカー「リーバイス」でも2019年にCAIOを雇用し注目を集めました(出典)。このように今後は業界を問わずCAIOの採用が増えていくことも予想されます。
日本のデジタル庁創設時にも、非常勤の国家公務員として民間からCAIOの公募が行われました。デジタル庁におけるCAIOの役割は次のように表記されています。
上記のようにCAIOはAI分野の最高責任者として組織をリードし、AI技術を中心としてデータ利活用やルール作り、行政やビジネスの抜本的な改革といった幅広い業務に携わるポジションです。
CTOとの違い
CAIOはAI技術の最高責任者ですが、CTO(Chief Technical Officer=最高技術責任者)とはどう違うのでしょうか。
CTOは企業の技術に関する活動を統括する役割です。そのため、企業によってはCAIOを設置せずにCTOがAI関連の活動を統括する場合もあります。
しかし近年AIの発展によりビジネスにおける影響力は増しています。また、AIの開発・運用には独自のスキルや知見が必要であることから、AIに集中して取り組む人材が重要視されはじめました。そこで、CTOとは別にAIを専門とするCAIOを設置する企業が増えています。
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CAIOが注目される理由
では、改めてCAIOが注目される理由について見ていきましょう。
AI技術の発展
AIの歴史は古く、1950年代から研究が始まっています。この長い歴史のなかで何度かAIブームは生まれましたが、特に近年の機械学習の実用化やディープラーニングの登場といった技術革新により飛躍的な進化を遂げました。第3次AIブームを迎えた現在では、近いうちにAI技術が人間よりも賢い知能を生み出すシンギュラリティ(技術的特異点)が到来するとも言われています。
こうしたAI技術の発展は多くの産業に変革をもたらすことが期待されています。あらゆる企業でAIを効果的かつ安全に導入することが模索されており、この取り組みをリードするCAIOの存在が注目されはじめているのです。
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ビジネスにおけるAI価値の最大化
AI技術はビジネスプロセスの効率化や顧客体験を向上させる潜在能力を秘めています。しかしこの能力を最大化してビジネスにおける競争力を高めたり、新たな価値を創出したりするには、適切なAI・データ戦略の立案、技術の選定、リソースの配置などが必要です。
つまり高度なAI技術を保持しているだけではなく、企業にとって効果的に使いこなす力が求められています。そのため、AIに関するスキルだけでなくビジネスへの知見や実行力をもつCAIOが組織には必要です。
リスク管理の必要性
たくさんの可能性が期待されるAI技術ですが、実際はまだ未成熟です。専門家すらも把握できていない部分が多くあり、そのリスクも懸念されています。
AIの価値をビジネスに活かすためには、自社や顧客にどのような責任が発生するのか、どのような影響があるのかも同時に理解しなければなりません。セキュリティやプライバシー、ガバナンス、倫理問題などにも必ず配慮する必要があります。そこで、AIのリスクを回避するために組織での運用ポリシーやルールを策定する責任者となるCAIOが求められています。
CAIOの役割
次に、具体的なCAIOの役割や仕事内容について解説します。ただし世界的に見てもまだ数の少ないCAIOは、企業によってその任務や責任範囲は異なる場合があります。
AI戦略の策定
すでにあるビジネス戦略にただ当てはめるだけでは、AIの効果は十分に活かしきれません。AIの特性を踏まえたうえで、自社のビジネスモデルに合わせた目標や評価指標、ユースケースなどのAI戦略を策定することがCAIOの重要な役割です。ただ単にAI技術を導入するのではなく、ビジネス的な観点や成果が求められます。
AIプロジェクトの統括
CAIOはAIプロジェクトの実施にあたり、プロジェクトのマネジメントを担当する場合もあります。さまざまな部門や社外との調整を行ったり、予算管理や進行管理などを行ったりしながらリードする役割です。
また実際に技術者と連携し、AIプロジェクトにおける設計・開発・テスト・リリースの調整なども行います。AI技術者が不足している場合には、CAIO自ら開発に携わるケースもあります。
AI技術の選定
AI戦略において特定のサービスを導入する場合や、自社で開発を行う場合などに適切な技術や製品を選定することもCAIOの役割です。そのためAIの基礎知識はもちろん、最新のイノベーションや研究論文などの情報を常に収集し、適切な意思決定を行う必要があります。またベンダーから提示された計画や見積もり、結果報告を正しく評価する能力も必要です。
リスク管理・運用ポリシーの策定
先にも述べたとおり、AIの導入には潜在的なリスクも伴うため、リスクの適切な管理が不可欠です。一部ですが、具体的なリスクとしては次のようなものが挙げられます。
・フェイクニュースのようなコンテンツ生成
・入力内容からの情報漏洩
・著作権侵害
・誤った情報の拡散
こうしたリスクは社内外の関係者にも影響を及ぼし、社会的な信用を損なう可能性があります。そのため、CAIOは想定されるリスクを評価したうえで適切な管理体制を構築しなければなりません。また、運用ポリシーを策定することも重要な役割です。
CAIOに必要なスキル
CAIOはAIを効果的に導入・活用してビジネスの成長へつなげる役割を担う重要なポジションです。ここでは、CAIOに必要なスキルについて解説します。
AI技術の知識・スキル
CAIOの業務には必ずAI技術に関する知識・スキルが求められます。基本的な知識はもちろん、機械学習アルゴリズム、ディープラーニング、自然言語処理(NLP)といった専門的な知識も必要です。CAIO自身が開発に携わる場合だけでなく、戦略策定時やプロジェクトの進行において適切な意思決定を行うためにも技術的な知見は欠かせません。
またAI技術のトレンドの移り変わりは激しいため、常に最新情報を収集し組織に適用できる状態にしておくことも求められます。
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データ戦略・マネジメントスキル
AIの基盤となるデータに関する知見やスキルも必要です。データの収集や整備、分析、活用などに関する戦略を立て、マネジメントすることが求められます。データサイエンティストなどの専門家がプロジェクトに参加する場合もありますが、連携して進めるため基本的なデータに関する知識は必要です。
戦略策定スキル
AIを効果的に組織に活用するために、CAIOには技術的なスキルだけでなく、戦略を策定するビジネススキルも必要不可欠です。自社の課題を発見し、AIを活用したビジネス目標に沿った適切な解決策を提案して、予算やリソースなどの計画を立てるといったスキルが求められます。
AIに関連する法律や規制の知識
CAIOはAIによるリスクを適切に管理するために、関連する法律や規制などの知識が必要です。たとえば日本では生成AIによるコンテンツの著作権問題などが話題になっています。またデータの不正取得行為や不正使用行為などの悪質性の高い行為に対する民事措置が規定された不正競争防止法なども影響する可能性は0ではありません。
現在は急速なAIの進化に対して法整備が追いついていない状況ではありますが、今後徐々に改正が進む可能性は高いです。情報は常にチェックしておきましょう。
EUではAIのリスクに対処すること、AIの導入・投資・イノベーションを強化することを目的としたAI規制法案が検討されており、最速で2024年後半に施行される予定です。
CAIOの課題と将来性
ChatGPTなどの普及で一気に存在感が増したAI技術ですが、一見すると単純なものに受け止められやすく、誰でも簡単に使えると考える人も多いです。企業の経営層がこうした考え方の場合、CAIOの重要性はなかなか伝わらないかもしれません。
しかしAIは大きなビジネスチャンスを生む可能性を秘めたものであり、最大限に活用するには専門的な知識やスキルはもちろん、適切な戦略やリスク管理が必要不可欠です。これらをすべてCTOなどの役職が担うのは負担が大きいため、AIに特化したCAIOの需要は今後拡大していくでしょう。
そのためCAIOの将来性は非常に期待できます。CAIOの業務範囲は広く責任は重大ですが、大きな裁量権を持つやりがいのある役職です。現在エンジニアとして活躍している人も、CAIOに少しでも興味があれば必要な技術スキルやビジネススキルを習得しておくと良いでしょう。
進化を続けるAI技術とともにCAIOにも注目しよう
CAIO(最高AI責任者)は、AI技術やビジネススキルを活かして効果的かつ安全にAIを企業へ導入し、ビジネス価値の最大化などを目指す職種です。特に日本ではまだ設置している企業は少ないですが、AIの発展とともに徐々に注目が集まっています。今後AI技術はIT業界だけでなくあらゆる業界で求められることが予想されるため、CAIOの需要も比例して高まっていくでしょう。
CAIOは技術スキルとビジネススキルの両方が求められる難易度の高い職種ですが、今後のイノベーションや企業の成長を支える重要な存在ともいえます。少しでもAI技術やCAIOという役職に興味がある場合は、少しずつ情報を収集しながらスキルアップを目指してみてはいかがでしょうか。
文/江副杏菜
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