生成AIの進化が開発現場をがらりと変えようとしている昨今、今後のキャリアに不安を感じている現役エンジニアは少なくないだろう。
そこで「技術者のキャリアを考える」をコンセプトに掲げる『エンジニアtype』では、就業中のエンジニア350人にアンケートを実施。現役エンジニアが望むリアルなキャリアとは何なのか。その理想や展望を阻むものがあるとしたら、一体何が障壁となっているのか。実態に迫った。
調査結果サマリー
現役エンジニアが描くキャリア展望と、それを阻むハードルとは?
●今後3年以内に達成したいことは「技術スキルの深化」が40%で最多。
●今後もエンジニアとして働き続けたい人は全体の58.6%。「いいえ、分からない」と答えた人は41.4%。分からないと答えた人の理由として「(年齢を重ねても)技術をキャッチアップし続けられるか」という不安感をあげる人が多かった。
●現在最もやりがいを感じていることは技術派が「新しい技術やツールを学ぶこと」で33%が最多、マネジメント派が「ソフトウェアやシステムがユーザーの生活や仕事を良くするのを見ること」で15%が最多だった。
調査概要
調査期間:2023年12月8日~12月10日
回答者数:350人
調査方法:Webアンケート方式
調査主体:株式会社キャリアデザインセンター
実査機関:株式会社クロス・マーケティング
回答者の基本データ
・職種:現職中のエンジニア
・年代:20歳~59歳
・性別:男性201人、女性146人、その他3人
・雇用形態:正社員86%、契約・派遣社員8.9%、フリーランス4.6%、アルバイト0.3%
【Q1】今後3年以内に達成したいことは何ですか?
特定の技術や言語に精通する「技術スキルの深化」を選んだエンジニアが全体の約40%で最多。続いて「リーダーシップやマネジメントのスキル習得」や「新しい技術領域や分野を学びたい」が20%超となった。
さらに、年代別で回答割合の高かった上位5項目に注目すると(下記図1~4)、20代は他の年代と比べて「自らの技術製品やサービスを開発・リリース」を選択している人が多く(18%)、技術スキルの向上だけでなく自分で何かを作ることにも興味があることが分かる。
30代以降は、マネジメントラインに興味がある人と新しい技術習得へ興味を抱く人で分かれる傾向があった。
より的確に傾向を分析するため、ここから先は【Q1】で「技術スキルの深化」を選んだ人(以下「技術派」)と、「技術スキルの深化」を選ばなかった人(以下「マネジメント派」)に分けて紹介していく。
【Q2】現在、最もやりがいを感じていることは何ですか?
技術派は「新しい技術やツールを学ぶこと」が33%と最多で、次いで「ソフトウェアやシステムがユーザーの生活や仕事を良くするのを見ること」(13%)が多かった。
対して、マネジメント派は「ソフトウェアやシステムがユーザーの生活や仕事を良くするのを見ること」を選択した人が15%で最多(その他を除く)だった。
【Q3】今後もエンジニアとして働き続けたいですか?
「今後もエンジニアとして働き続けたいか」という質問に対して、技術派は71%が「はい」と回答。一方、マネジメント派は50%が「いいえ・分からない」と答えた。
技術派・マネジメント派共通して「分からない」を選んだ人の中には「ほかにもやりたいことがあるから」「ほかにいい仕事があればエンジニアにこだわる必要はないと思う」といったポジティブな理由を挙げる人がいる一方、技術のキャッチアップに対する不安を語る意見が多く見られた。
【「わからない」を選んだ人の理由】
・年齢が高くなると、どこまで追いつけるか考えてしまう(50代・システム保守・運用)
・年々、拘束される勤務時間や技術的にもついていけなくなっている(40代・パッケージソフト開発SE)
・年齢的に新たなものを学習していく事が、辛くなってきている(40代・オープンweb系SE)
・知識習得の限界を感じているから(50代・システム保守・運用)
・習得したことがすぐに陳腐化して追い続けるのが厳しい(40代・オープンwebアプリ開発)
【Q4】キャリアパスを描く際に感じる障壁や課題は何ですか?
技術派は半数近くが「技術トレンドをキャッチアップする難しさ」「専門的スキルや経験を獲得する機会の不足」を選択。
一方、マネジメント派の方は「技術トレンドをキャッチアップする難しさ」(20%)、「ワークライフバランスの維持が困難」(19%)の順で多かった。
また、この設問では1人あたり最大3個まで選択できたが、技術派は一人2.1個選択、マネジメント派は1.7個選択。総じて、技術志向の方がキャリアに対する不安を感じていると言えそうだ。
【Q5】キャリアの障壁を乗り越えるために必要だと感じるサポートやリソースは何ですか?
【Q4】「キャリアパスを描く際に感じる障壁や課題は?」で回答した内容に対して、障壁を解消するために必要だと感じるサポートについて、「技術トレーニングや研修の提供」が技術派30%、マネジメント派17%とそれぞれ最多だった。
下記の図は、マネジメント派の回答を年代別で出した結果。20代、30代は40代以上に比べて「ワークライフバランスのサポート」を欲している人の割合が高かった。
【Q6】エンジニアとしての成長の妨げになっている要因は何ですか?
「忙しすぎて学習する時間が取れない」と感じている人は技術派が46%、マネジメント派も23%で最多だった。
年代別で見ると、技術派・マネジメント派ともに、年齢が上がるに従って「忙しすぎて学習する時間が取れない」を選ぶ人が多くなる傾向が見てとれた。
また、マネジメント派は「明確なキャリアパスや昇進のガイドラインがない」を障壁だと感じている人が19%いた(技術派だと9%)。マネジメント志向があり昇進を意識している層だからこそ、評価制度や仕組みに対して何らかの課題や不満を抱えていそうだ。
【Q7】エンジニアとしてのキャリア成長に関して、企業や組織から求めることや期待するサポートは何ですか?
技術派は「技術的トレーニングや研修の提供」を求めている人が41%と最も多く、マネジメント派は「仕事とプライベートのバランスを取りやすい環境」を求めている人が21%と最も多かった。
【Q8】定年までエンジニアとして働き続けていられると思いますか?
技術派、マネジメント派のどちらも40%が「はい」と回答。マネジメント派の方が「いいえ」と回答している割合が高い(30%)ことから、技術派とマネジメント派は明確に違うキャリアを思い描いていると言える。
【「働きたいが不安に思っている」を選んだ人の理由】※一部抜粋
・将来的にはだいたいの仕事が機械になっていそうだから(20代・オープンweb系SE)
・いつまで強みが活かせるのか見通しが立たない(40代・制御組込系SE)
・自分の手持ちの技術で付いていけるのか不安(50代・システムコンサルタント)
・より専門性が問われる中、知見習得には限界があるため(40代・パッケージソフト開発PG)
・老齢になってエンジニアができるイメージがない(40代・オープンwebアプリ開発)
・現状のままだと時間にゆとりがないので体力的に厳しい(50代・汎用機系PM)
・人が育たないから(20代・オープンweb系SE)
など
また、技術派、マネジメント派ともに、年齢が上がるほど「働きたいが不安」と答えた人が増える傾向にあった。特に、技術派の50代で「分からない」と答える人が58%と高いのは、年齢を重ねるほどに技術力向上への意欲低下や不安感が増すことと関係していそうだ。
※調査データ(グラフ)は、小数点第2位以下は四捨五入しているため、合計しても100にならない場合があります。