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【要点整理】エンジニアのためのフリーランス新法を解説!「法律を味方につけ、武器にする」ためのポイント/連載Vol.7

「開発現場の難所」突破のコツ

『DX時代の最強PMOになる方法』著者・甲州潤が教える

エンジニア時代に知りたかった「開発現場の難所」突破のコツ

「キャリアアップをしたいエンジニアはPMOという選択肢もアリ」と著書『DX時代の最強PMOになる方法』で伝える甲州潤さん。エンジニアからキャリアをスタートし、現在ではPMOとして多くのIT利活用や経営相談をこなす甲州さんが「今だから言える、エンジニア時代こうしていればよかった」と思うスキルや考え方、プロジェクトの進め方を実体験をもとに紹介していきます!

いよいよ2024年11月から、「フリーランス新法」が施行されます。といっても、読者の方の中には、「いまいちイメージがつかない」「いったい何が変わるの?」という方もいるのでは?また、「現在は会社員だが、今後はフリーランスとして活動したい」と考えている方もいるでしょう。

そこで今回は、「フリーランス視点」から、フリーランス新法の意義とフリーランスとして、どう立ち回っていくべきかをお伝えしていきます。

ちなみに私自身は、2008年から15年以上個人事業主として活動してきました。上場企業と直接取引をした実績も持っています。フリーランスを経て現在は法人化していますが、改めてフリーランス時代を振り返ってみると、インボイス制度をはじめとするフリーランスを取り巻く環境は変化していると感じます。

そうした変化に気付き、時代に合わせて自身の立ち位置を変化させていくことが、フリーランスとして何より重要だと身を持って体験しています。本記事がフリーランスを目指す方へのヒントになれば幸いです。

プロフィール画像

株式会社office Root(オフィスルート)
代表取締役社長
甲州 潤(こうしゅうじゅん)

国立高専卒業後、ソフトウェア開発企業でSEとして一連の開発業務を経験し、フリーランスに転身。国内大手SI企業の大規模プロジェクトに多数参画し、優秀な人材がいても開発が失敗することに疑問を抱く。PMOとして活動を開始し、多数プロジェクトを成功へ導く。企業との協業も増加し、2020年に法人化。さまざまな企業課題と向き合う日々。著書『DX時代の最強PMOになる方法』(‎ビジネス教育出版社)

不利益を気にしない!?「沈黙」のフリーランスエンジニア

フリーランス新法の施行によってさまざまなことが変わります。詳しくは政府が発行しているパンフレットなどを読んでいただければと思いますが、主に

1.取引条件を書面で明示すること
2.期日内に報酬を支払うこと
3.1カ月以上の業務委託をした場合の禁止事項(受領拒否、報酬の減額、返品など)

などが、フリーランスと業務委託をする発注事業者に定められています。

「フリーランス・事業者間取引適正化等法について」厚生労働省資料

「フリーランス・事業者間取引適正化等法について」厚生労働省資料

内容としては、極めて”当たり前のこと”です。しかし、実際にフリーランスとして働く方々に法律が施行される旨を聞いてみると、「特に気にしたことがない」「初めて知った」という声が圧倒的なのです。

この背景には、フリーランスがあくまで「仕事をいただく」立場であることが影響していると考えられます。

おそらく、”当たり前のこと”が行われていないグレーな状態で運営しているお客さま(発注事業者)に、「一般的に必要なことなので○○してください」と言って仕事がもらえなくなるよりは、「何も言わずに粛々と仕事をする方がメリットが大きい」と考えている方が多いのでしょう。それによって、不利益を受け、泣き寝入りしてきたフリーランスもいると思います。

しかし、11月からはそんな立場に置かれることも、法律上はなくなります。つまり、しっかりと知識を身に付けておくことで、不当な働き方をする必要がなくなるのです。

フリーランスエンジニアは、ココを押さえておこう

さて、フリーランスといってもさまざまな業種、職種があります。その中で、エンジニアだからこそ押さえておくべき特徴もあります。

例えばエンジニアは、他のフリーランスのように単発でお仕事をお願いされることはありません。「三カ月」「半年」など、まとまった契約期間が決まっているのが一般的です。

そのため、そもそも口約束だけで契約書を作成しなかったり、不当に契約期間を伸ばされたりする場合は「法律に抵触する」と思ってよいと思います。ただし、クラウドソーシングサービスなどを使用してWebアプリの改修や開発をお願いされる場合、その限りではありません。

Webアプリ開発の要件をやり取りするエンジニアたち

また、ベンチャー企業の場合は、「開発業務」で入社したとしても、開発以外の業務に従事させられることがあります。これは「業界の暗黙のルール」とも言えるほどよくあることですが、契約外の業務提供を依頼するのはそもそも契約違反です。

しかしながら「それでもここで勤務したい」と思うなら、契約書の内容や報酬の見直しなどをあらためて行い、双方納得の上で経験を積むのも一案です。納得できない方向に進みそうであれば、他の会社への移行を検討すればよいのです。

いずれにしても、「契約書締結」は基本中の基本。まずは、その部分をきちんと守ってくれるかどうかが、今後もその会社とやっていくべきかどうかの見極めの一つになるでしょう。

自分の今後のスタンスを決める「きっかけ」になる

これまでフリーランスエンジニアとして仕事をしてきた人にとって、もしかしたら今回の新法は「面倒くさいな」「あれこれクライアントに言うくらいなら、今までのやり方でやってた方がマシ」そう思うかもしれません。

しかし、考えてみてください。そうやって言いたいことを言えずに仕事を続けていくことが、本当に高いパフォーマンスを出すことにつながるでしょうか?

少なくとも私はそうは思いません。

逆に言えば、新法ができたことによって、「企業に対して言いたいこと」を言えるチャンスがめぐってきた、とも捉えることができます。

正しい商取引を身に付け、正しい関係性で仕事をすることができれば不当な働き方にストレスを溜めることもないですし、万一トラブルが起きた際も泣き寝入りすることなく自分の意見を言える、といった安心感が生まれます。そうすればより一層仕事に集中することができるでしょう。

ちなみに……私自身も以前、以下のような契約上のトラブルに巻き込まれたことがありました。

・契約期日に入金されない
・契約書の締結なしに仕事を開始
・支払いサイクルが90日

当時はまだフリーランス新法などない時代ですから、自分の報酬やスタンスを守れるのは自分しかいませんでした。トラブル回避のため、私が行ったのは次の二つのことです。

一つは、大人の対応を心がけ、コミュニケーションをミニマムで終わらせること。例えば、会社が契約書を作成してくれない場合は、短期間で「契約書を作りたい」ことを(しつこくならない程度に)何度もお伝えする。そうすると会社側もさすがに、「そういえば甲州さん、契約書作成の件ですが……」と言ってくれるようになります。間違っても、しつこすぎず、ケンカ口調にもしないこと。そうなればもっとこじれて、契約書どころの話ではなくなってしまう可能性があるからです。

そしてもう一つは、「今後このような対応をしてくる会社とは二度と付き合わない」と決めることです。自分を大切にしてくれないクライアントと、頑張って仕事をしなくてもいい。フリーランスの場合、なかなかそうやって決めきることは難しいかもしれません。しかし、こうした対応をする会社の「体制」は、一人が声を上げたところでそうそう変わるものではないのです。

使い古された言葉ではありますが、変えられるのは「自分」と「未来」だけ。
不当な扱いでストレスを感じるのなら、思い切って「お付き合いしない」という選択をしてみましょう。すると、仕事と向き合う心に「余白」が生まれ、「これから、どんな人たちと仕事をしたいのか」がより鮮明になるはずです。

ルールの外側の人になれ

さて、今回はフリーランス新法を軸にフリーランスとしてのあり方をお話ししてきました。インボイス制度が導入され、フリーランス新法が始まり……今後も、フリーランスを取り巻く環境は変わっていくでしょう。しかし、その中で「変わらないもの」があります。

それは、あなたの「存在価値」です。

どんなに法律が変わったとしても、会社に「この人と契約したい」と思わせることができたら、極端な話、そこに法律も業界ルールも通用しない世界を築くことができます。

例えば、工場で使用する「金型」を作る職人さんがいるとしましょう。繊細で複雑な金型は日本でこの人しか作れないため、この人にしか頼めません。

となれば、企業はどうなると思いますか?

間違いなく、この人に仕事をお願いすることになるでしょう。つまりそこには、誰とも比べられない、自分だけのプライベートブルーオーシャンが広がっていくわけです。

フリーランスの「ランス」とは英語で「槍」を意味しますが、それが転じて「武器」という意味もあります。フリーランスとはすなわち「自分の武器を持って戦う」ことこそが本質的な意味なのです。その武器が魅力的であればあるほど、仕事は途切れません。会社の手間やコストをかけても、「この人と契約したい!」と思わせる価値のある人間になること。フリーランスにとってそれこそが、もっとも重要なことではないかと、私は思っています。

もちろん、例に挙げた「金型職人」のように唯一無二の存在となるには、熟練した技と経験が必要でしょう。しかし、必ずしも「一番」を取る必要はありません。例えばフリーランスエンジニアなら、その中で上位数パーセントに入れば、あなたとあなたの家族くらいは十分に養えるはずです。

存在感あるフリーランスエンジニアになっていくために

この記事を読んでいただいた方の中には、「よし!これからはきちんと法律に則って契約周りを固めていこう!」と志の高い方もいらっしゃるかもしれません。しかし、いざやってみると「実は企業の方が及び腰で、なかなか変わってくれない……」と思うこともあるかもしれません。

もちろん、そこで「この会社とは付き合うのを辞めよう」という決断に至るのもよいですが、法律には公布から施行までに「猶予期間」が設けられていますよね。同じように、「今すぐ会社は変わらないだろうから、猶予期間としてしばらく待ってみよう」「次の契約タイミングまではこのままの契約体制で行こう」など、少し時間を置いて考えるというのも一案です。

矛盾しているようですが、そうした矛盾をはらみながら仕事をしていくこともまた、フリーランスならではのフレキシブルさなのではないでしょうか。ともあれ、ぜひ、フリーランス新法をきっかけに、ご自身のスタンスと今契約している会社の関係性を見直していただけたら幸いです。

書籍紹介

『DX時代の最強PMOになる方法』
著:甲州潤

書影 最強PMOになる方法

▼こんなエンジニアはぜひお読みください。
・今の仕事に不満を持っていて、現状を変えたいと思っている
・給料をアップしたい
・エンジニアとしての将来が不安だ
・キャリアアップをしたいが、何をしたらいいかわからない
・PMOに興味がある
・PMOとして仕事をしたい

【目次】
第1章 一番稼げるIT人材は誰か
第2章 これからはPMOが1プロジェクトに1人必要
第3章 SEとPMOの仕事は何が違うか
第4章 稼ぐPMOになる7つのステップ
第5章 優秀なPMOとダメなPMOの見抜き方
第6章 PMOが最低限押さえておきたいシステム知識とスキル
第7章 システムは言われた通りに作ってはいけない
第8章 どんな時代でも生き残れる実力をつけよう

>>>詳細はこちら

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