

自信喪失中のエンジニア、再起のヒントを探る四つのメッセージ「一人で成果を出すことにこだわらない」
日進月歩で進歩するAI、SNSやメディアで交わされる優秀なエンジニアたちの議論、世に溢れるビジネス書……。
さまざまな状況変化や情報にさらされるうちに、いつしかエンジニアとしての「自信」を失いつつある。そんな人はいないだろうか。
「技術者のキャリアを考える」をコンセプトに掲げるエンジニアtypeから、「自分に自信が持てない」「周囲と比べてしまう」ときに効く記事を、一部引用しつつ紹介したい。エンジニア読者の皆さんがポジティブに仕事と向き合うきっかけとなれば幸いだ。
目次
「一人で成し遂げる」ことにこだわらない/まつもとゆきひろ
Rubyの生み親・まつもとゆきひろさんの持論は、「200人集まれば、一人では届かないところまでソフトウエア開発を駆動できる」というもの。実際、Rubyの初期コミュニティーは「200人のメーリングリスト」から始まっており、それが言語の発展を大きく加速させた。
最初は個人的な楽しみで作ったわけですが、Rubyが成長する過程で、たくさんの人が関わってくれました。自分が作ったものが、誰かの役に立つ。それが分かることで、開発を続けるモチベーションになりました。
コミュニティーが育ち、相互に学び合い、共に成長する場があったからこそ、Rubyには多くの開発者が関わり続けた。このことからも、一人で成し遂げることには限界があるが、コミュニティーの力を活用することで可能性は大きく広がることがよく分かる。
エンジニアもまた、他者と関わることで視野を広げ、技術を深めることができる。その過程で「自分の知識が誰かの役に立っている」と実感することは、仕事への自信と自己肯定感につながるはずだ。
自分の専門分野外にも視野を広げる勇気を/博報堂DYホールディングス 執行役員 CAIO 森 正弥
「多くの職業がAIに代替される」といわれるようになって久しく、それはもはやエンジニアにとっても対岸の火事ではない。
しかし、2024年4月に設立された、AI先端技術研究所「Human-Centered AI Institute」では、「人間中心」のAI活用をすることで、人のクリエーティビティーを刺激し創造性を引き出す「これからのAIのあるべき姿」を探求しているという。
同研究所のトップを務める博報堂DYホールディングスのCAIO・森 正弥さんは、AI時代のエンジニアたちに向け次のようなメッセージを送る。
得意分野を掘り下げるだけでなく、自分の専門分野外にも視野を広げる勇気を持ちましょう。
状況はいつ変わるかわかりません。居心地のいい環境に安住せず、適切なキャリアを棚卸しし、ここぞというタイミングで自身のコンフォートゾーンを飛び出す勇気を持てれば、きっとほかの誰とも似ていないキャリアが築けるはずです。
AIとの共存が当然のものとなった今、少しの勇気がエンジニアとしての自信を確かなものにするきっかけになるかもしれない。
内発的な動因(ドライブ)で仕事をする/楠木 建
特に若い人はよく「やりたい仕事をさせてもらえない」と不満を抱きます。もしあなたが今その状況にあるとしたら、理由は二つしかありません。
一つは、誰もあなたに仕事を頼みたくないから。つまり能力不足で成果を期待できないからです。もう一つは、あなたに能力はあるものの、仕事を発注する上司や顧客から過小評価されているから。
そんな厳しくも聞こえるコメントを繰り出す、一橋ビジネススクールの特任教授・楠木 建さん。「実績を積んで他の誰かに必要とされる存在になること。それが仕事ができる人になる唯一の道筋」と強調した上で、仕事で成果を出す論理を教えてくれた。
それは、「好きこそものの上手なれ」。外生的な誘因(インセンティブ)ではなく、内発的な動因(ドライブ)で仕事をすることだという。
傍から見れば努力をしているように見えても、それが好きな本人にとっては娯楽に等しい。「好きこそものの上手なれ」の中核にあるメカニズムは努力の娯楽化です。これがいちばん強い。なぜなら、高いレベルで努力が継続するからです。
結果として、余人をもって代えがたいほどうまくなる。そうなると、人から頼りにされる。人の役に立つ。すると、ますます好きになる。この好循環を生み出すことが大切です。エンジニアリングの職業に就いた方であれば、「好きこそものの上手なれ」タイプは多いのではないでしょうか。
行動量を増やして、小さな成功体験を積み重ねて/だむは
最後に紹介するのは、女性エンジニア向けハイスキル転職サービス『WAKE Career』運営企業のCEO 兼 CTOであるだむはさんからのアドバイス。
かつては自身も「技術力がない自分」に不安を感じていた過去を持つだむはさんは、自分に自信が持てない人の背中を優しく押してくれた。
まずは行動量を増やして、小さな成功体験を積み重ねることをおすすめします。
私は「とりあえずやってみる」ことは得意なんです。チャレンジの分だけ失敗も多く経験しているから、失敗することに慣れている。失敗に対する恐怖心が、そこまで大きくないんです。だからこそ、行動できる幅が広がっているし、行動量も人一倍あると思っています。
そして数々の失敗を経験した日々の中で、いくつかの成功体験とも出会えました。
成功体験というとレベルの高いものに聞こえるかも知れませんが、ライトニングトークのようなプレゼンテーションに初めて登壇したといった経験は、登壇するだけで成功体験に数えていいと思います。
私は「行動すれば成功もある」ということを分かっています。たくさんの失敗の中で得られた成功体験の積み重ねが、今の私の自信につながっているんです。
「自分自身の素晴らしさを自分で全肯定してほしい」そうエールを送るだむはさんの言葉からは、きっと一歩前に進む力をもらえるに違いない。
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