
株式会社STOP
代表取締役
藤方裕伸さん
大手動画配信サービスや多様なコンテンツビジネスで活躍後、ソフトウェア開発のIT企業を創業。2018年、より大きなインパクトを目指し、当時の東証一部上場企業にバイアウト。同年12月、IT企業を設立し、22年末に総合建設コンサルタント企業へ同社にバイアウト。24年にSTOPの代表取締役に就任
【PR】 働き方
生成AIの劇的な進化により、未来の予測はますます困難になっている。このような時代において、ITエンジニアが必要とするスキルやマインドセットとは何なのだろうか。
複数回のITベンチャー立ち上げを経て、数多くのエンジニアやクライアントをみてきた株式会社STOPの代表取締役・藤方裕伸さんは「AIと共存するには、統合的な視点を持ったフルスタックエンジニアを目指すことが不可欠」だと言い切る。
なぜ大生成AI時代の生存戦略として「フルスタック」が挙がるのか。そう語る背景とともに、現代のエンジニアに求められる役割と、今後必要となるスキル・成長戦略について話を聞いた。
株式会社STOP
代表取締役
藤方裕伸さん
大手動画配信サービスや多様なコンテンツビジネスで活躍後、ソフトウェア開発のIT企業を創業。2018年、より大きなインパクトを目指し、当時の東証一部上場企業にバイアウト。同年12月、IT企業を設立し、22年末に総合建設コンサルタント企業へ同社にバイアウト。24年にSTOPの代表取締役に就任
ーー生成AIの技術革新のスピードが止まりません。貴社でもすでにほぼ全てのプロジェクトがAI関連と伺いました。開発現場にもクライアント事情にも精通する藤方さんからみて、今後エンジニアの役割はどのように変化すると考えていますか?
こうして話している今も生成AIを取り巻く技術革新はものすごいスピードで進んでいるので「来月には状況が変わっている」なんてことがあるかもしれませんが……(笑)、AIの導入が進む現場では、データ収集や学習といった比較的定型的な作業はすでにオペレーターの役割になっており、これから先はその作業自体もAIに委ねることが可能になると思います。
代わりに、人間エンジニアは「AIを理解し、制御する存在」へとシフトしていくのではないでしょうか。
現在はまだまだ「AIの利用者」みたいな活用に留まっているエンジニアも多いと思いますが、AIに学習タスクを割り当て、彼らを操作する役割はエンジニアではなくオペレーターの役割になっていきます。一方で、AIの振る舞いを設計する実装のディティール部分をAIに任せるのはまだまだそう簡単な話ではありません。
ーーというと?
例えば、AIを活用する際は、適切なデータ入力と出力を得るための工夫が不可欠です。生のデータをそのまま送るわけにはいきませんから、専用の入力画面を設計する必要が出てきますよね。どんな画面が最適なのか、データをどう読み込ませていくか、学習データの選定は正しいのか、使用するエンジンは最適か、稼働後もパフォーマンスを評価してアルゴリズムを調整したり、予期せぬ問題が発生すればその対応も……。
当社でいえば、すご腕エンジニアが趣味で作ったといっても過言ではないAIライブラリがすでに200種類もありますから、その中から最適なものを選ばないといけません(笑)
結局、クライアントの要望やプロジェクト状況は生身で、それを適切に判断・コントロールし、AIの能力を最大限に引き出す仕事は人間エンジニアにしかできないんです。
実際、現状のAIが出力するコードって、部分的には良くても全体として見るとかなり質の低いものになりがちですよね。
AIで作った機能を追加して組み込むと、動作はしてもシステム全体で見ると処理が重くなりがちだったり。データを縦方向に読み込めば処理は速いのに、横方向に何度も読み込むと遅くなってしまうことがある。
人間エンジニアは元のソースコードを見て処理の流れを理解して調整まで発想が至りますが、AIはまだその域に達していない。結局、人間のエンジニアが修正と最終調整を行う役割が求められています。
ーー単一の機能だけ稼働すればいいわけじゃなく、システムは複数の機能を統合的に動かさないといけない場面の方が多いですもんね。
はい。こうした問題が発生し、STOPに「うまく動かない」「助けてほしい」と要望をもらう「AI関連の修正ニーズ」も増えている印象です。AIでコードを書いたものの、担当者が退職してしまい内容が把握できなくなってしまうケースとかもよく聞きますね。AIはドキュメントを自動生成してくれないので、そういった問題が起きやすいわけです。
ーー生成AI時代にエンジニアが果たすべき役割の変化が分かりました。その変化に付随して、エンジニアに求められるスキルや能力は、現在と比べてどのように変化すると考えますか?
AIが生成したコードの問題点などを検証するために、プログラムの動作を的確に理解してレビューする力が求められるでしょう。
あとはコミュニケーション能力が不可欠になります。プログラマーが一人で開発を完結することはありませんから、何を作るべきか、どのような機能が必要かを対話を通じて決めていく必要があります。
もちろん、コミュニケーション力は過去から現在まで重要なスキルですが、AIには賄いきれない人間ならではの価値という側面がますます色濃くなっていくことは明白。ユーザーのニーズを適切に汲み取る能力は、今後さらにその重要性が増していきます。
ーー優秀なエンジニアの卵が集う、フランス発のプログラマー養成機関「42Tokyo」の動向からもそう感じられると伺いましたが。
そうなんですよ。42Tokyoでは、プログラミング能力だけでなく、コミュニケーションスキルが徹底的に求められています。
実際に見学に行きましたが、合格した生徒たちのスキルレベルは、同年代の子たちと比較しても群を抜いていますね。印象的だったのは、学生が名刺を持参していたことです。私が名刺を交換した学生は会って数時間後、その日のうちに丁寧な挨拶メールを送ってくれました。その文章も簡潔かつ的確で、高いコミュニケーション能力を感じました。
生徒たちに接してみた印象では、実務経験こそないものの、わずか1年ほどで一般企業の4、5年目レベルの実力に達している印象でした。彼らの優れたコミュニケーション能力があれば、実務スキルも3カ月程度で追いつけると思います。今後は、このような人材と一緒に仕事をしたいと考える企業やエンジニアリングマネジャーが増えていくと思います。
前提として、新しい技術に注目が集まりがちですが、私は現在ある技術の約8割は将来的に消えていくと予想しています。例えば、一時期、開発現場でも採用シーンでもよく聞かれたGoプログラミング言語も、現在では見聞きする機会が減少しました。
多くの技術は時とともに淘汰されていきますが、一方でJavaやPHPのように、基盤技術として確固たる地位を築いているものも存在します。これは決して「普遍的な技術を身に付けろ」と言いたいわけではありません。これらの技術の習得は、できて当然のスキルなんです。
進化するAIと共存、つまり彼らを理解し、適切にコントロールしていくためには、AIが組み込まれるシステムの全体像を把握し、さまざまな技術要素を連携させることが問われます。
つまり、特定の言語や技術に固執するのではなく、フロントエンド、バックエンド、インフラ、データベース、セキュリティーなど、幅広い分野への理解を深めることが大事になってくる時代になる。えり好みせず、幅広い知識と統合的な視点を持ったフルスタックエンジニアを目指すことが不可欠なのです。
ーー今後は、どのようなエンジニアが伸びやすいとお考えですか?
幅広い知識を身に付けるには、常に学び続ける必要があるため、技術が好きな人ですね。好奇心からいろんなことに没頭するオタク気質というか、新しいものに興味をもってあれこれ試すタイプです。
先ほどSTOPには「AIライブラリーが200種類もある」と話しましたが、これも現場のエンジニアがAIへの強い興味から始めたことで、仕事だからやっているわけではありません。本人からすれば楽しくて集めちゃったという感覚なんですよね。
本来はあまり望ましくないことかもしれませんが、うちの社員は技術が好きすぎて、受注や契約が決まっていないのにデモ感覚で開発を始めてしまうことがあるんです。「一旦、落ち着け」となだめはしますが、エンジニアの気持ちは理解できます(笑)
そうした人材こそ、尽きない好奇心と、とてつもないエネルギーで自然と知識を吸収して勝手にぐんぐん伸びていく。変化の激しいこれからの時代は大きな強みになると思います。
ーー幅広い知識はどのように習得していけばいいんでしょうか?
当たり前のことですが、分からないことは一旦自分で調べてみる。行き詰まったら知見のあるエンジニアに相談する。その繰り返しで少しずつ知識や経験が積みあがっていくと思います。
若いエンジニアがよく勘違いしがちなのですが、そもそも全知全能のエンジニアなんていません。STOPでも「この問題を解けるエンジニアや知見が社内にない」なんて状況はよくあります。それならみんなで英語のサイトを参照しながら解決策を探せばいいだけ。チーム全体で相談し、ディスカッションを重ねることで、互いに成長していく。そうやってメンバー同士で学習し合い、伸びていくカルチャーは当社の自慢です。
2025年からは新しい取り組みとして、動画生成系AIとデータウェアハウスプラットフォーム分野の強化に注力していきます。これらの分野は高度な専門性が求められますが、STOPには基礎技術を持つ人材が多数在籍しており、彼らを技術力に応じてこれらのプロジェクトに積極的に配置しています。学習意欲、技術的好奇心の強いエンジニアであれば、スキルや経験が足らずとも情報キャッチアップの方法から丁寧に指導してくれる先輩エンジニアも沢山いるので安心してスタートが切れるでしょう。
大生成AI時代はエンジニア自身が変革を問われる時代です。恐れるより、楽しんで伸びていく気概があればきっと生き残っていけるに違いありません。
>>>STOPの中途採用情報はこちら
文/福永太郎 撮影/桑原美樹 編集/玉城智子(編集部)
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