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生成AI使用率の日米格差がエグい「生成AIに馴染みがある」米国93%に対し、日本9.1%【技術トレンド5選】

ITニュース

米国では、生成AIに馴染みがあると回答した成人の割合が93%。さらに、61%の人は仕事で生成AIを使用している。そんな調査結果が発表された世界最大級のテクノロジー見本市「CES 2025」。

対して、日本はどうだろうか。

総務省の調査によると、「生成AIを使っている」(過去使ったことがあるも含む)と回答した割合は9.1% * だ。

テクノロジー分野で日本の一歩も二歩も先をいっている米国とはいえ、その差は想像以上に大きいことを痛感させられるのではないだろうか。

本記事では、CES 2025に参加したブランドンヒルさんによる「特に注目した五つの技術トピック」をお届けしよう。

*参照元:令和6年版 情報通信白書 第Ⅰ部

プロフィール画像

Founder & CEO
btrax
Brandon K. Hillさん(@BrandonKHill

北海道生まれの日米ハーフ。サンフランシスコと東京のデザイン会社btrax代表。サンフランシスコ州立大学デザイン科卒。 サンフラン市長アドバイザー、経済産業省 始動プログラム公式メンター。ポッドキャストも運営

CESとは?

CES2025_会場エントランスの様子

ブランドンさん撮影

米国ラスベガスで開催された世界最大級のテクノロジー見本市、CES。スタートアップからグローバル企業まで世界各国から約4,500社以上が集い、最新技術や新製品、プロトタイプをお披露目。2025年も1月7日から11日にかけて米国ラスベガスで開催された。

1.PRACTICAL AI

まず一つ目に紹介したい技術トピックが「PRACTICAL AI(実用的なAI)」です。「生成AI」という言葉がバズワードになって久しく、グローバルでみると実用的な利用もどんどん進んでいます。

冒頭でも触れましたが、CESを主催しているCTA(Consumer Technology Association:全米民生技術協会)から配布されたレポートによると、アメリカの成人の93%が「生成AIに馴染みがある」と回答。アメリカで「仕事で生成AIを使っている」と回答した人は61%だったそうです。

米国成人93%が生成AIに馴染みあり_CES2025資料

CTA提供資料

CES 2025でもAIは最大のテーマとなっており、各国・各業界がこぞってアイデアをぶつけあっていました。中でも僕が非常に興味深かったのが、NVIDIAのCEO・ジェンスン・フアン氏のKeynoteに出てきた「AIの進化論」です。

NVIDIAのCEO登壇の様子_CES2025資料

撮影:ブランドンさん

AIが浸透する順番があるらしく、まずは音声認識や深層学習といったPERCEPTION AIに始まり、デジタルマーケティングやコンテンツ制作に活用されるGENERATIVE AIを経て、コード生成やカスタマーサービスなどを行うAGENTIC AI、そして自動運転やロボティクスなどに代表されるPHISICAL AIへ。

こうした流れに該当する会社やプロダクトが今後伸びていくのだろうと思います。

また、個人的に特に印象に残ったのが今後は「AIエージェントを操るのがエンジニアの役割になる時代がくる」という話でした。

要約すると、AIエージェントに仕事(エンジニアリング)をさせる時代になると、ITエンジニアの仕事は開発業務ではなく、AIエージェントのマネジメント業務にシフトするということが話され、非常に示唆的でした。会社によってはかなり早い段階でそうした光景が見られるようになるかもしれません。

そうしてAIがスマホやPCといった個人的デバイスでの利用の域を超え、これまで人間が行っていたことを代替するようになっていく。

今後はそういった技術やサービスを生み出す企業が伸びていくだろうし、投資家たちが注目すべき分野になっていくだろうと期待が膨らむプレゼンでした。

2.THE ROBOTS ARE EVERYWHERE

2022年頃から急拡大しながらも、AIによってさらにその規模を拡大させたのがロボット市場です。それらのロボットを分類するなら、「実用性」と「かわいい系」。印象に残っているものをいくつか紹介します。

Terminator Robot

一つ目はヒューマノイド、いわゆる「人型ロボット」です。二足歩行でサッカーボールを操ったり、倒されても自分で立ち上がったり…。さながらターミネータのような動きをしていました。オーディエンスに向かって手を振る様子はまさに人間のようです。

mirumi/ユカイ工学

CES 2025のなかで「かわいいロボット」の代表格だったのが、抱きつきロボット「mirumi」。周りの人をじっと見つめるだけで特に何をするわけでもないのですが、バッグや腕に抱きついている様子や人の気配を感じてちょこちょこ動く様子が愛らしく、かわいらしいキャラクターを好む人から人気が出そうだと感じる代物でした。

Jennie/TomBot

犬型ロボットといえば日本では『aibo』が有名ですが、Jennieは非常にリアルな表情や動きをすることに驚きました。ペットを飼えない状況にいる認知症患者やお年寄り、自閉症の人やPTSDの人を癒すための治療用ロボットとして開発されたそうです。

AIロボットガールフレンド/Realbotix

いわゆる「恋人ロボ」です。口元や手の動きなどにはぎこちなさが残るものの、従来の恋人ロボと比較すると、かなりインタラクティブな会話ができるようになってきたと思います。会話の時に生じるラグも近いうちになくなってきそうな予感。…ただ、多少の不気味さは拭えないというのが本音かな(笑)

3.THE END OF “SUSTAINABILITY”

2023年頃のサステナビリティーブームはすごかったですよね。あちらこちらで環境問題やSDGsというキーワードが飛び交ってて、SDGsのバッジを胸につけたビジネスパーソンも多く見かけました。

それが最近はどうでしょう。ほとんど目にしなくなりました。CES 2025でもサステナ系のプロダクトはあまり見かけませんでした。その理由は、おそらくトランプが大統領になって国の方針が変わったから。政権が変わるとこれほどまでに時代のトレンドが変わるんだと驚きますよね。

ただ、CES 2025でもSDGsのバッジをつけている人がいて、やはり日本の企業でした。アメリカのトレンドが日本に届くまでに数ヶ月から数年くらいのタイムラグがあるので「今サステナが熱い」と仕込んでいた日本企業は、突然時代が変わって肩透かし食らっているところなのではないでしょうか……。

4.THE RISE OF JAPANESE STARTUPS

ただ日本のスタートアップ勢の勢いはすごかったです。CESには毎年各国のスタートアップの展示が集まるEureka Parkというエリアがあるのですが、日本のパビリオンはいつも中心あたりに大きくスペースを設けています。中でも、特に注目を集めていたのは次の三つ。

SHINOBI FLOOR(忍びフロア)/マジックシールズ

日本では「ころやわ」という商品名で発売していますが、海外向けに「SHINOBI FLOOR」とネーミングしているようです。SHINOBIと言いつつ、社長自らが忍者の姿になって派手にパフォーマンスをしていました。

見た目は普通のハードフロアなのに転倒時は衝撃を吸収してくれる代物で、お年寄りや子どもが利用する施設などへの導入が見込まれています。

エレキソルト スプーン/キリン

微弱な電流の力で塩味やうまみを増強する食器型のデバイスです。このスプーンを使うことで塩分を抑えられるので、塩分の過剰摂取が社会問題化しているアメリカにおいては非常に注目度が高い技術なのではないでしょうか。実際に試食エリアには多くの人が集まっていて、僕自身は体感できなかったのが心残りです。

Mixed Reality Makeup 0 min try-on studio/コーセー・東京エレクトロンデバイス

その名の通り、瞬時にメイク体験ができるMRです。顔や表情の動きに対して自然に追従する技術が非常に優秀で、コーセーの商品を気軽に試せるのが魅力的でした。

アフィーラ1/ソニー・ホンダモビリティ

アフィーラ1_ソニー・ホンダモビリティ

撮影:ブランドンさん

優秀なプロダクトが多い中、少し残念だったのがソニー・ホンダモビリティが発表した電気自動車「アフィーラ1」です。僕の記憶だと、たしか2、3年前くらいに初めて企画が発表されたと思うのですが、やっとカリフォルニアで販売の目処が立ったとか。

残念な理由は売るのが遅いことと、「今さら?」感が拭えないこと。中国で先行発売するテスラのモデルYは自動運転レベル3に対してアフィーラ1は2+。でありながら価格はテスラの倍もしちゃう……。

企画発表時は非常に魅力的で僕自身とてもワクワク期待感を持っていましたが、時代が変わる中でこのクオリティーは正直微妙というしかないですね。

というのも、数日前に報じられましたがテスラのモデルY(中国で先行発売)が出てしまったんですね。

テスラのモデルY

中国で先行発売するテスラのモデルY

私が「アフィーラ1」を最初のプロトタイプを見た時は非常に魅力的なデザインだったんですが、そこも量産型になってしまったんだなという印象でした。もちろん、これはアフィーラ1に限った話ではなく、量産過程でよくあることだとは思いますが。

5.KOREAN COMPANIES GOING STRONG

CES 2025を語るうえで外せないのが韓国企業の勢いです。2024年の出展企業数は773社だったのに対し、2025年は1031社と大きく数を増やしました。

韓国勢の特徴は、とにかく魅せ方が上手いこと。

昨年のCESで透明LEDの完成を発表していたLGは、プレゼンテーションを彩る大規模な演出として取り入れていました。視覚的に非常に華やかで、注目を集めるプレゼンテーションの一つになっていました。

同じく透明LEDを手がけるサムスンは「AI for All」をテーマに掲げ、特に自動車体験の再定義に力を入れているようでした。例えば、ドライバーの好みや体調、行動パターンを学習し、車内の温度や座席位置、エンターテインメントの選択肢まで自動で提案してくれる。家の中のような快適な環境をそのまま自動車の中でも体験できる技術です。Smart Thingsがまた一歩進んだと感じる発表でした。

編集/玉城智子(編集部)

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