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「みんなと同じスタンプラリーの人生は歩めない」ハヤカワ五味が“世間の正解”という呪縛を手放すまで

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良くも悪くも、私たちは「世間の常識」の中で生きている。キャリアもそうだ。いい会社に入り、技術力を高めて担当プロダクトのシェアを拡大することに、まるで“スタンプラリー”を追うように翻弄されてはいないだろうか。

大学在学中に起業を実現し、自らの手で道を切り開いてきたように見えるハヤカワ五味さん。彼女もまた、かつては「有名大学への進学」や「会社のM&A」といった分かりやすい正解に縛られ、世間一般の「普通」になろうと苦しんだ時期があったという。

しかし今、ハヤカワさんは「普通でいることを手放した」と朗らかな笑顔で語る。

世間が求める正解や最適解をAIが一瞬で弾き出す時代を生き抜く鍵は、「普通からの脱却」にあるのかもしれない。ハヤカワさんの体験から、そのヒントを探ろう。

※本記事は2026年11月に発売予定の雑誌『type就活』から先行公開をしています。

プロフィール画像

なかよし
代表取締役社長
ハヤカワ五味さん(@hayakawagomi

1995年生まれ。多摩美術大学卒業。大学時代に立ち上げたランジェリーブランド『feast』で一躍有名に。2015年にウツワ(現・なかよし)を起業。24年より生成AI関連の推進担当としてメルカリにジョイン

「普通」になろうとするほど、周りとのズレに苦しんだ

私は大学在学中に起業し、複数のブランド等の運営・事業譲渡を経て、今は生成AIの推進担当としてメルカリで働いています。型にはまらないキャリアを歩んでいるように見えるかもしれませんが、そんな私も、かつては世間の「正解」に縛られていました。

美大への進学を目指していた学生時代は「東京藝術大学に進学すること」が、起業した後は「会社を上場させてM&Aさせること」が、唯一の正解だと思っていたんです。

振り返れば、今よりもずっと視野は狭かった。それに加えて世間一般の「女性の幸せ」も意識していたので、世の中の基準と自分自身とのギャップに悩むこともよくありました。

メルカリに入社するとき「会社員になったら少しは『普通』になれるかも」なんて思っていたのですが、SNSでの発信活動やこれまでの経歴もあって、環境が変わっても自分は「普通」の枠には収まらないのだと気付いたんです。

こんなにも周りと違うなら、自分と他人を比べたって何の意味もない。30歳を迎える頃になってようやく、そんな当たり前のことを理解できるようになりました。

とはいえ、この事実を受け入れるのは簡単ではありませんでした。

「人と違う道を歩む」のは、他の人たちと同じスタンプラリーで人生を歩むわけにはいかないということ。「普通」から外れてしまった分、考えるべきことが増える。

きっと、簡単に幸せになることもできないでしょう。

「世間の普通」を手放した故の葛藤を語るハヤカワ五味さん

世間の「正解」を捨てたら、一番やりたい仕事が見えてきた

それでも私は、普通でいることを手放して良かったと思っています。このマインドチェンジがあったおかげで、今自分が一番関心のある生成AIを仕事に選ぶことができたからです。

世間の常識で考えれば、長く物販領域でキャリアを歩んできた私の「正解」は、同じ領域で経験を積んでいくことだったと思います。

それにもかかわらず、これまでのキャリアとは関係のない生成AIを仕事に選んだのは、日本の女性活躍を進めていく上で、生成AIが欠かせないピースになる可能性が高いと考えているからです。

生成AIによってさらに業務が効率化されれば、社会は稼働時間ではなく、意思決定の質によって人を評価するようになるかもしれません。今はまだ、いわゆる「マミートラック」によってキャリアを諦めてしまう女性がたくさんいますが、生成AIの活用を推進することで、そうした現象を過去のものにできると信じています。

私は20代でランジェリーブランドを運営していた頃から「女性の活躍を支援したい」という気持ちを持ち続けてきました。それは今も変わりません。

一般的なキャリア論からは大きく外れた道を歩むことになりましたが、世の中の「普通」にとらわれるのをやめたからこそ、今一番やりたいことに取り組めているのだと思います。

考えている風の人は、すぐに化けの皮が剥がれる

最近はAIが何でも教えてくれるので、「物事を考えるプロセスが軽視されている」と懸念する声をよく耳にします。

確かに、上司に「どうしてそう思うの?」と聞かれて「AIが言っていたので」としか答えられないのは問題です。でも、誰かの意見を受け売りしているだけの「考えている風の人」は、AIが出てくる前から少なくありませんでした。

本当に問題になっているのは、そうした「考えているように見えるだけ」の振る舞いが、AIによってさらに容易になり、助長されるようになってしまったことです。

AIを適切に使うためには「考える力」が必要です。

「考えて答えを出す」プロセスがどのように行われているのかを理解していなければ、AIをうまくコントロールできません。その部分に対する理解が不十分なままでは、どんなにAIを活用しても、ただの「頭でっかち」になってしまいます。

また、AIを上手に活用するためには「センス」も重要です。ここでいうセンスとは、人間にしか捉えられない情報を見つけ出し、それをAIに適切に伝える力を指します。

AIは与えられた情報をもとに高度な計算や推論を行えますが、現実世界の文脈や身体的な経験を、人間と同じように捉えられるわけではありません。一方で、人間は相手のわずかな表情の変化や、言葉の間、場の空気といった情報を自然に読み取ることができます。

こうした情報をAIにインプットすることで、AIが生み出すアウトプットの質は大きく高まると私は考えています。

AIを上手に活用するためには「センス」が必要なことを強調するハヤカワ五味さん

ズレこそ武器。不必要に自分を弱体化させないで

AIの能力が向上し、計算や分析の一部がAIで代替されやすくなると、このようなインプット&アウトプットができる人の価値は相対的に向上します。

これからの時代は、単に勉強や作業が得意な人ではなく、人間ならではの感覚で価値ある情報を発見し、AIが活用できるかたちに変換できる人が求められるのではないでしょうか。

つまり、AI時代において「人と違うこと」や「自分だけの感覚」は、それ自体が代替不可能な武器になるということです。だからこそ、世間一般の「普通」に自分を無理やり当てはめて、その武器を失ってしまうのはもったいない。

もし、自分が平均と外れている自覚があるなら、わざわざ世間のアベレージに合わせにいかなくていい。自信過剰になる必要はありませんが、かといって不必要に自分を弱体化する必要もないのです。

自分が普段得ている情報は、本当に自分に合った情報なのか、本来耳を傾ける必要のない人たちのアドバイスにとらわれすぎていないか。人生を左右する大事な決断をするときほど、そのことを真剣に考えてください。

世間が言う「正解」なんて、これからはAIが一瞬で出してくれます。

だからこそ、世間の枠に収まらない自分だけの感覚を肯定して、あなたにしかつくれないキャリアを面白がっていってほしいです。


取材・文/一本麻衣 撮影/赤松洋太 編集/今中康達(編集部)

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