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急成長GitHubの経営陣が明かす、プログラマーのクリエイティビティを最大限に引き出す方法

ITニュース

    いまやプログラマーの「必須プラットフォーム」となりつつあるGitHub。サービス開始からわずか5年で全世界にユーザーを獲得してきた同社は、独自の経営理念によって「プログラマー天国」を築き上げていると評判だ。その根底にある考え方や、組織運営のこだわりとは何なのか? 来日中のGitHub経営陣に、編集長の伊藤健吾が話を聞いた。

    GitHub COOのPJ Hyett氏(左)と、CIOのScott Chacon氏(右)。多忙なスケジュールの中で取材に応じてくれた

    GitHub COOのPJ Hyett氏(左)と、CIOのScott Chacon氏(右)。多忙なスケジュールの中で取材に応じてくれた

    「これからの時代、プログラマーをやりたい人にとって、GitHubアカウントを持たなくて済むのは小学生までとなるでしょう」

    弊誌対談「小飼弾×増井雄一郎が大激論! 開発者「大増殖時代」の到来で、プログラマーの存在意義はどう変わる?」で小飼氏がこう述べるほど、世界中のプログラマーに利用されるようになった開発プロジェクト共有サービス『GitHub』。

    サービス開始からわずか5年で、利用者は全世界300万人を突破。「ソーシャルコーディング」というオープンソース文化を一般化させるほどに普及した。日本でも、いまや就職の際にGitHubアカウントの提示を求める企業が登場するほどだ。

    そのGitHubの経営陣が、1月30日に東京で開催されたOpen Network Lab主催のイベント「GitHub創設者が語る“立ち上げから利用者300万人までの軌跡”」で講演するために来日。創業者の1人でCOOのPJ Hyett氏(以下、PJ氏)と、CIOのScott Chacon氏(以下、Scott氏)が、GitHub誕生の背景や急成長の秘密を披露した。

    1月30日に行われた、公開トークイベントの模様

    1月30日に行われた、公開トークイベントの模様

    Q&Aのコーナーでは、会場を埋め尽くした参加者からさまざまな質問が飛び交った。質疑応答の中でも興味深かったものを2つ紹介したい。

    1つ目は、「ユーザーが急増したキーファクター」についての回答だ。PJ氏はYouTubeを例に挙げ、「面白い動画がたくさんあるから多くのユーザーがYouTubeに訪れるのと同じで、GitHubにも面白いオープンソースプロジェクトやホスティングサービスが集まったことで、たくさんのプログラマーがフォローし始めた」と話す。

    もう1つは、設立当初の“Git repository hosting”というタグラインが、現在使われている“Social coding”に変更された背景について。「GitHubは日々進化し続けていて、その進化の要因こそが、ユーザー同士のソーシャルなネットワーキングだった。メンバーで話していた時に“Social coding”という言葉が生まれた時は、『これだ』と思ったね」と話すPJ氏に対して、Scott氏は「ロゴの下にもバッチリハマるしね」と冗談交じりに語ってくれた。

    誰も辞めないのは「誰が一番良いアイデアを持つか」で仕事が進むから

    GitHubはサービス内容以外にも、「ユニークな社風を持つ会社」として世界的に知られている

    GitHubはサービス内容以外にも、「ユニークな社風を持つ会社」として世界的に知られている

    さて、GitHubがユニークなのは、そのサービスコンセプトや成長スピードだけではない。組織や経営理念も、一風変わったものとして知られている。

    「創業から今までに辞めた社員が1人もいない」、「従業員約150名のうち、マネジャーは1人もいない」、「勤務時間は完全フリー」、「2/3がリモートで働く」

    などといった話は有名だ。こうした希有な体制を支えているのは、同社内で築かれた優れたチームワークである。

    彼らがいかにしてGitHubの開発メンバーの存在価値を最大化し、それを維持し続けているのか。そんな疑問を通じて、「プログラマーのクリエイティビティを最大限に引き出すために必要な要素」とは何かを、PJ氏とScott氏に聞いた。

    ―― 今日は貴重な時間をいただきありがとうございます。はじめに、GitHubのサービスモットーを教えていただけますか?

    PJ GitHubは、ソーシャルコーディングを提唱していることからも分かるように、よりネットワーキングや開発者個人にフォーカスしたサービスです。僕たちのコアとなる考え方としてあるのが、「技術者にとって楽しい環境を作る」ということ。

    GitHubを通して、楽しくコラボレーションし、楽しく作るのをモットーとしています。だから、エンジニア同士がフォローしたり、プロジェクトをフォローしたり、個人単位で活動が分かる仕組みとなっています。

    ―― PJさんは創業メンバーですが、Scottさんはいつジョインしたのですか?

    PJ もともと3人でGitHubを創業した後、最初に採用したのが彼です。Scottは当時、業務委託としてGitHubにかかわってくれていて、そのころから僕たちよりもGitに詳しかったんです。会う度に違う言語でGitHubを書き換えてきたりしてちょっとクレイジーだったけど(笑)、本当にエキスパートでした。

    だから、僕たちは何の迷いもなくScottを最初のメンバーとして迎え入れることができたんです。

    ―― Scottさんに聞きたいのですが、GitHubにジョインしてみて、今まで所属していた会社との大きな違いはありましたか?
    Rubyエンジニアとして有名だったScott氏との出会いを「クレイジーだった」と語るPJ氏

    Rubyエンジニアとして有名だったScott氏との出会いを「クレイジーだった」と語るPJ氏

    Scott 僕が以前いた会社では、仕事内容や役職によって役割が細分化されていたんだ。そして、給与の高さも在籍年数の長さで決まってしまうようなところがあった。一方、GitHubでは「誰が一番良いアイデアを持っているか?」を基準にプロジェクトが進んでいく。そう、まるでオープンソースプロジェクトのようにね。そこが大きな違いかな。

    ―― そのようなフルフラットな組織の中で、個人やプロジェクトチームのアウトプットを最大化するために心掛けていることは何ですか?

    PJ 働き方やライフスタイルは、人によってさまざまじゃないですか。それなら好きな時に働けるような環境にすればいい、というのが僕たちのスタンスです。

    そこで僕らがやっているのは、常にオンラインでつながっているようにすること。オンラインでつながってさえいれば、チャットで打ち合わせもできるし、GitHubでプロジェクトをシェアすることもできる。だから会議はないし、働く場所も問わない。能力のあるプログラマーが、自分の好きなように働けるんです。

    この考え方は働く環境に限った話ではなく、それぞれが担当するプロジェクトでも同じことが言えます。

    (次ページへ続く)

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