『ツイキャス』を運営するモイの代表取締役で、経験豊富なエンジニア赤松洋介氏が、週替わりで旬なスタートアップのエンジニアや起業家を招いて放談する「モイめし」。『ツイキャス』連動企画として、お昼に30分の生放送&その後のフリートークも含めて記事化したコンテンツをお届けします!
『読書メーター』アプリ開発者の赤星琢哉氏が明かす、ドワンゴへの事業譲渡の内幕とこれから【30分対談Liveモイめし】
『ツイキャス』を運営するモイ株式会社の代表取締役で、経験豊富なエンジニア赤松洋介氏が、週替わりで旬なスタートアップのエンジニアや起業家を招いて放談する「モイめし」。今回のゲストは、読書管理サービス『読書メーター』の開発者で、先ごろドワンゴに事業譲渡したことで世間の注目を集めた渦中の人、赤星琢哉氏だ。
開発から運営までをほぼ一人で手掛け、レビュー数1000万件を超える人気サービスまで育て上げた『読書メーター』をバイアウトした裏側、さらには「その次」に見据える構想まで、赤星氏と旧知の間柄という赤松氏が鋭く迫った。
赤星琢哉氏(@akahoshitakuya)
1982年生まれ。宮城大学事業構想学部在学中よりさまざまなWebサービスを開発。2008年に読書管理サービス『読書メーター』(@bookmeter)を開発し、株式会社トリスタを設立。同サービスはその後、月間訪問者数890万人、投稿された感想・レビュー数1074万件の人気サービスに成長した。09年から11年まで空飛ぶ株式会社代表取締役。2018年6月に旅行好き向けモバイルSNSアプリの開発運用をしている株式会社Xを設立
コピーライターからエンジニアへと転身した異色のキャリア
赤松 赤星さんとは5年くらい前に一度、開発合宿でご一緒して。確か「空飛ぶ株式会社」をやっていらした時期ですよね?
赤星 そうですね。MySpaceやmixiのアプリを作る会社でした。
赤松 MySpaceとか、いまや知っている人が少なくなってきていますよね。
赤星 当時はFacebookの方がマイナーで。MySpaceはOpenSocialというAPIの規格を使っていて、いろんなところで提供できる分、独自のAPIでやっているFacebookよりいいだろうということでやっていました。
赤松 赤星さんはもともとはエンジニアではなく、コピーライターだったとか。
赤星 そうですね。大学生の時に1年休学して東京のコピーライター養成学校に通いました。休学期間が終わって宮城に戻り、もう少し勉強したいなあと思った時に、「ああ、ネットでできるじゃん!」と思ったのがエンジニアリングの始まりです。
その時作ったのが『広告会議室』というWebサイト。お題に合わせてキャッチコピーを投稿してもらい、順位付けするというものなんですが、2年くらい続けて運営が大変になってきたあたりから、本格的にプログラミングを勉強するようになりました。
開発から運用までをほぼ一人で
赤松 そこから作り手の側に回り、どこかのタイミングで『読書メーター』が生まれたんですね。きっかけは何だったんですか?
赤星 僕自身はあまり小説を読んで来なかったんですけど、ある時たまたま読んだものがすごく面白くて。もっと知りたい、そのためにネットで何かできないかと考えたのがきっかけですね。
最初は僕の個人サービスみたいなものだったので、「空飛ぶ」のアプリの方に注力していたこともあり、リリース後しばらくは、週末に必要に応じてちょっとメンテナンスするくらいの感じでした。ユーザー数は、伸びもせず下がりもせず、みたいな感じがずっと続いていました。
赤松 今年で7年目ということですけど、どうしてモチベーションを保って続けてこられたんでしょう?
赤星 今も月に数冊程度しか読めていなくて、読書に関しては決してヘビーなわけではないんです。でも、開発自体が面白かったので。
赤松 なるほど。最初は画面から何から一人で作ったんですもんね?
赤星 そうですね。大きくなるにつれて、途中からはインフラ回りやデザインとかを手伝ってもらうようになりましたが。
赤松 一人でやっていた時から手伝ってもらうようになるまでの間に、転換点のようなものはあったんですか?
赤星 次第に大きくなってくると、サーバとかのアクセスをさばいたりとか、深いところを見たりするのが大変で。でも、ある時人にやってもらったらすぐに解決してもらえたというのがあったので、そこからはちょくちょくお世話になるようになりました。
赤松 事業としてはいつごろから育ち出したんですか?
赤星 6年半振り返ってみても一気に伸びたということはあまりなくて。ずーっと地道に伸び続けて今に至るという感じですね。ほとんど僕一人でやっていたので人件費も掛からないですし、最近になってオフィスを借りるまでは自宅でしたし。コストが掛かるものでもなかったので、うまくやれていました。
6年半続けたことが、ある日突然なくなることへの葛藤
赤松 そこから今日の本題である売却の話に至るわけですけど(笑)、間にどんなことがあったんですか?
赤星 今年の7月にレビュー数が1000万件を突破したので、リリースを出してニュース記事にしてもらったんです。そこからですね、いろいろとお話をいただくようになったのは。
赤松 いくつかある話の中に、今回の「D社」がいた、と。
赤星 はい(笑)。最初は「一緒に何かできませんか」くらいの感じだったと思うんですけど、今年の夏くらいに向こうの会社に行って話しました。
赤松 そこから具体的な買収になるまでには、どんな話の流れで?
赤星 そんなに何度も会ったわけではないですよ。ウチも小さな会社なのでスピーディーでした。発表が9月末ですから、1カ月ちょっとで決まりましたね。
赤松 じゃあすんなり決断されたんですか? 長年続けてこられたサービスですが。
赤星 今まで楽しんでやってきたことがなくなるというところは、やっぱりありましたね。そこが譲渡するかどうかで一番考えたところでした。
赤松 最終的な決め手は何だったんですか?
赤星 『読書メーター』が手を離れてさびしい、やることがなくなるというのはありつつも、バイアウトのような経験もなかなかできるものではないので。最後は、やってみようかな、という感じでした。
赤松 ちなみに売却額はどうやって決めたんですか? 17億円と、かなり具体的に数字が出ていましたが(笑)。
赤星 ユーザー数なり売り上げなりの数字がベースにはなったと思うんですけど、僕としては単純に売り上げ×何年分とかだけでは算出できなかった。そこから先は僕の『読書メーター』に対する気持ちの部分ですね。
赤松 内情を知らないのでよく分からない部分ではありますけど、最近の感じからすると非常にフェアバリューという印象でしたよね。ドワンゴさんからはもう少し残って一緒に、という話はなかったんですか?
赤星 そこは僕のわがままというか、お渡しして抜けるか、完全に自分で続けるかの2択しかないと思っていましたので。ある程度伸びてきて、もしかしたらステージも少し変わってきているのかもしれないですし、ちゃんと運用する上では別の人がやった方がいいいのかな、と。
今後は投資側に回る可能性も。関心の矛先は「教育」と「旅」
赤松 そうなってくると「次」ですよね。ブログでは投資も考えているとか書いていらっしゃいましたが?
赤星 そうですね。今までそういう方にお世話になってきたというところもあるので。ただ、どういう分野でやるとかいう具体的なことはまだ何もないです。
赤松 じゃあ今はゆっくり本でも読みながら、と(笑)。『読書メーター』のころは結構忙しかったんですか?
赤星 いや、そうでもないですね。サーバ移転の時とかは深夜にやったりもしますけど、ほとんどは朝会社に行って、夕方には帰るという生活でしたね。
赤松 実にうらやましい。僕、どこで人生間違ったかなぁ(笑)。この先の具体的なプランはないんですか?
赤星 広告コピーも含めて今までいろいろなことをやってきましたけど、基本的に狙って作るってことはあまりないんです。『読書メーター』も結果的には伸びましたけど、もともと自分の生活の中で自然と生まれたものですから。
日々を過ごしている中でやりたいなと思うものが見つかったらそれをやる、という方がうまくいくのではないかと思っているんです。だから、それが見つかるまでは無理に始めなくていいかな、と。
『読書メーター』の機能改善についてもそうでした。ある時、本のページに「あらすじ」ボタンを付けたんですよ。Amazonさんに飛ぶだけなんですけど、何の欲もなくとりあえず置いてみたら、ものすごくクリックされて、結果的にユーザーさんがすごく求めているということが分かったんです。
赤松 確かに、機能開発では、さりげないちょっとしたことがうまくいくというのはよくありますね。そういうのは人数が少ないからこそできることでもありますね。
赤星 そうですね。僕が考えて、実装して、ダメだった戻して、と自由にできていたのが良かったのかもしれませんね。
赤松 さっき投資の話もありましたが、最近の若いベンチャーはどうですか? 応援したいところとかありますか?
赤星 「空飛ぶ」をやっていたころは麻布にいたので結構いろんな人に会えたんですけど、それが終わってからは吉祥寺に引きこもっていたので、ネットで見る情報しかほとんど分からないです。
赤松 何か興味があるジャンルとかは?
赤星 個人的に興味があるのは、教育と旅行ですね。
赤松 そうですか。旅系サービスをやっている方はご一報いただければ投資を受けられそうですよ(笑)。ご自身でサービスを作る可能性も?
赤星 まあそうなると、まずはたくさん旅行をしないといけないので(笑)。いずれにしろ、教育も旅も読書よりはリアルな部分が増えていくので、今までやってきたこととはちょっと違うことができるんじゃないかなとは思っています。
取材・文/鈴木陸夫(編集部)
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