【Profile】藤田 晋
1973年、福井県生まれ。サイバーエージェントを1998年に創業し、2000年に史上最年少社長(当時)として東証マザーズに上場。インターネット産業で高い成長を遂げる会社づくりを目指し、「21世紀を代表する会社を創る」をビジョンにABEMA、インターネット広告、スマートフォンゲームなど革新的なビジネスを数多く手がける。『渋谷ではたらく社長の告白』(幻冬舎)『起業家』(幻冬舎)『藤田晋の成長論』(日経BP)など著書多数
【藤田晋】理屈や論理は「ある程度の成功」しか生まない。大ヒットサービスを生むのはむしろ直感
サイバーエージェント創業者で現在も同社代表執行役員社長を務める藤田晋さんと、ロケットエンジンの開発やスマホアプリのプロデュースのほか、予防医療を啓蒙するなど幅広い分野で活動する実業家の堀江貴文さん。
日本のIT業界の成長を黎明期より牽引してきた盟友二人が、初の共著『心を鍛える』(KADOKAWA)を上梓した。
この記事では、ビジネスで勝負したい、サービス・プロダクトづくりに熱狂し、大きな成果をあげたい……そんなエンジニアに向けて、同書から藤田さんの執筆パートを一部抜粋して紹介しよう。
※下記、『心を鍛える』242~245頁を転載して掲載しています
大切なのは“直感”と“熱狂”
頭脳明晰な堀江さんによる「皮膚感覚」についての話は、非常に興味深いものです。「皮膚感覚」は「直感」とも言い換えられるかもしれません。
30代後半、私が常に抱いていた直感について、お話ししておきたいと思います。それは、「アメーバのブログは、絶対にいけるはずだ」という直感です。
2007年8月に掲げた「8ヶ月で月間30億ページビューを達成する」という目標を、私たちは2008年1月に達成します(目標を2ヶ月も前倒しできたのです)。
そして、2009年には月間100億ページビューを達成します。弊社の“お荷物”だったメディア事業部が、会社の稼ぎ頭となったのです。
振り返れば、よく批判されました。なんでも「海外でもブログが儲かったという事例はない」と言うのです。
もっともらしく聞こえる意見ですが、私は実体験としてブログの面白さを認識していたので、その可能性に賭けました。
例えば、ブログにコメントを残してくれたAさんという人がいたとき、すぐにAさんのブログをのぞけるだけではありません。
そこからさらに、AさんがすすめるBさん、Cさん……未知の人たちの面白いブログにワープまでできるのです。
つまりブログを中心として、ネット上を楽しく回遊できるというわけです。手前味噌で恐縮ですが、こんなに面白い世界はなかなかないでしょう。
もし私が、他の人の言うことを素直に聞いていたら、ブログ事業から手を引いていたはずです。でも、私がアメーバ事業から撤退せず、なんとか成功できたのは、直感を大事にしたからでしょう。
理屈や論理で成功するのは、ある程度のところまでが限界です。大ホームランを打つには、心を強く保ち続けることが大事な気がします。
では、どのようにブログが伸びていったのか。少しお話しさせてください。
最初のきっかけは、芸能人ブログでした。インターネットのメディアは本来、技術力を高めてページビューを伸ばすのが王道です。
でも、技術力の体制づくりには時間がかかりそうでした。そのため、芸能人ブログを強化したのです。
私は先頭に立ち、芸能プロダクションとの関係づくりに尽力しました。芸能人のブログが当たると、そのサービスが成長するのは業界の常識でした。だから私はプロダクションの方と会食をするなど、交流に力を注ぎました。
もちろん、誤解を招くこともありました。
たとえば「多額の謝礼や原稿料を支払っているから芸能人が集まるし、その支払いがアメーバの赤字を大きくしているのだ」という誤解です。これらはまったく見当違いの指摘です。
多数の芸能人ブログが開設された理由は、「悪質なコメントには監視体制を敷いてチェックして削除する」というサービスをつけたからです。悪質な書き込みをする人のパワーはすさまじいため、止むを得ません。
誹謗中傷された芸能人は、ブログをやめるどころか、精神的に追い込まれてしまいます。芸能人とて人間なのです。こんな対策を立て、各方面から協力いただいたおかげで、一流の人たちがアメブロに集まってくれました。
思い返せば、芸能人ブログを始める際も、事業部内に反対意見はありました。しかし、私は〝熱狂〟していました。
苦しいときは、メディア企業の大先輩である幻冬舎の見城徹社長の言葉を、よく思い出していたものです。
「すべての創造はたった1人の『熱狂』から始まる」
実際、見城社長には何度救われたかわかりません。今でも感謝しています。
書籍情報
『心を鍛える』(共著 藤田 晋、堀江貴文/KADOKAWA)
大事なのは「頭の良さ」より「ハートの強さ」ーー。IT業界を牽引してきた“盟友”が初めて語り合う「生い立ち」「起業」「キャリア」「未来のこと」。藤田晋、堀江貴文が大事にする「メンタルの流儀」とは。
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