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メンバーの「主体性の無さ」に悩むEMが知っておきたい四つのマネジメント術【安斎勇樹『冒険する組織のつくりかた』】

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オンライン会議で意見を求めても、全員ミュートでお通夜状態。1on1で将来のキャリアビジョンを聞いても「特に無いですね」とお茶を濁されてしまう。

そんな状況に頭を悩ませているエンジニアリングマネジャー(EM)は少なくないはずだ。

この問題に対して、「組織のあり方から見直さないと根本原因は解決できない」と語る人物がいる。東京大学大学院で組織論を研究し、企業コンサルティングを手がける株式会社MIMIGURIの代表取締役Co-CEOを務める安斎勇樹さんだ。

安斎さんは、2026年3月4日に開催されたEMConf JP 2026の基調講演にて、次のように語っている。

「これまで良しとされてきたマネジメント手法の多くは、工場管理や軍隊の人材育成をルーツとする『軍事的世界観』で作られたものであり、価値観や働き方が多様化した現代のエンジニア組織には、もはや適合しにくくなっているのです」

では、軍事的世界観から脱却し、働くメンバーの好奇心とポテンシャルを活かすにはどうすればよいのか。EMConf JP 2026にて安斎さんが語った、EMが明日からすぐに見直せる四つの「マネジメントの突破口」を紹介しよう。

プロフィール画像

株式会社MIMIGURI 代表取締役 Co-CEO
東京大学大学院 情報学環 客員研究員
安斎勇樹(@YukiAnzai

1985年生まれ。東京都出身。東京大学工学部卒業、東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(学際情報学)。人の創造性を活かした新しい組織・キャリア論について探究している。主な著書に『冒険する組織のつくりかた:「軍事的世界観」を抜け出す5つの思考法』『新 問いかけの作法』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)『問いのデザイン』(学芸出版社)などがある。Voicy『安斎勇樹の冒険のヒント』放送中

現代マネジメントの根底に潜む「軍事的世界観」

そもそも、なぜ今、マネジメントがこれほどまでに難しく、時に「罰ゲーム」のようにすら感じてしまうのでしょうか。その背景には、私たちが無意識に縛られている「軍事的世界観」という古い価値観があります。

普段、皆さんが何気なく使っているビジネス用語を思い浮かべてみてください。「戦略」「戦術」「ロジスティクス」、あるいは「VUCA」といった言葉も元々は軍事用語です。現場によっては「顧客を刈り取る」「マーケットを制圧する」といった物騒な言葉が飛び交うこともありますよね。

言葉だけではありません。目標設定やフィードバック、人材育成の研修といった、皆さんが良かれと思って使っているマネジメント手法の起源を辿ると、実は「戦争」に行き着きます。

昨日まで普通の生活を送っていた市民を短期間で育成し、見知らぬ者同士を統率して戦地に送り込む。この軍隊で培われた圧倒的に効率的な「人を管理し、動かすノウハウ」がビジネスの世界に直輸入されたものが、現代のマネジメント理論のベースなのです。

この軍事的なマネジメントの極端なゴールは、「1人1人を視野狭窄にし、目の前の割り当てられたタスクだけを淡々とこなす歯車(ボット)にすること」でした。

上層部が決めた計画を末端まで正確にインストールし、効率よくやり切らせる。作れば売れる大量生産の時代や、明確な敵国がいる時代には、この方法がある種の大正解だったわけです。

現代マネジメントの根底に潜む「軍事的世界観」について話す安斎勇樹さん

©EMConf JP 2026 実行委員会

キャリア観の「地動説的」転換

ところが、この数十年の間に社会の前提が根底から覆りました。

先ほどの軍事的なマネジメントのコンセプトを今の若い世代に話すと、「怖い」「キモい」と明確なアレルギー反応が返ってきます。働くことに対する価値観が、以前とは比較にならないほど劇的に変化したからです。

かつては、会社に滅私奉公し、理不尽な異動にも耐えて定年まで勤め上げるのが当たり前でした。しかし人生100年時代を迎え、働き方が多様化した現在、人々の根底には「自分の人生をどうハッピーにするか」「自分はどう時間を使いたいか」という個人の問いがまず存在します。

会社はそのための構成要素の一つに過ぎません。会社中心から個人の人生中心へ、まさに天動説と地動説ぐらい、価値観の中心軸が変わっています。

一昔前の組織論の教科書には、まず間違いなく「組織を変えたいなら、まずは『このままだと船が沈むぞ』と危機感を煽ること」と書かれています。

しかし、今の時代にそれをやるとどうなるか。メンバーは沈む船を一緒に立て直すのではなく、静かに退職していくだけです。

人材の流動性が高まり、服を着替えるように「職場と自分のフィット感」や「着心地の良さ」が重視される時代に、恐怖や危機感で人を統率することはもはや不可能なのです。

「冒険的世界観」へのパラダイムシフト

あらゆるマーケットが飽和し、そもそも「どう勝つか」「何を作れば正解か」が誰にも分からない現代。トップダウンの命令で人を機械のように動かす軍事的な世界観は、すでに限界を迎えています。

これからの組織に求められるのは、不確実な環境の中で、働くメンバーの「好奇心」や「内発的動機」を資源としながら、まだ見ぬ新しい価値を共に探求し続ける組織づくりです。私はこれを「冒険的世界観」へのパラダイムシフトと呼んでいます。

組織文化の四象限。現在は多くの企業が官僚的文化に陥っており、軍事的文化への回帰、家族的文化への変化、そして冒険的文化への進化を目指している

現代では多くの企業が「官僚的文化」からの脱却を探っており、「軍事的文化」への回帰を希求する組織もあれば「家族的文化」への移行を図る組織もいるとのこと。ただし、安斎さん曰く「その二つの選択肢の先に道はない」(出典:安斎勇樹『冒険する組織のつくりかた』)

会社は事業を成長させたいと願い、個人は自分自身のキャリアややりがいを求めている。この両者の異なるベクトルをどうすり合わせ、シナジーに変えていくか。それこそが、現代のEMに求められる新しいマネジメントの役割です。

とはいえ、いきなり会社全体のカルチャーを変えることは現実的ではありません。そこで今回は、明日から皆さんの「半径5メートル」の現場で実践できる、四つの具体的なマネジメントの突破口をご紹介します。

冒険的な組織になるために現場で実践できる四つのアプローチ

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半径5メートルから「冒険」をはじめよう

組織全体のあり方を今日明日で変えることは難しくても、皆さんが管轄しているチーム、「半径5メートル」のマネジメントであれば、今すぐ変えられることはたくさんあります。

現代のEMがマネジメントに苦戦を強いられているのは、決して個人のスキルや能力の問題だけではありません。これまでの「軍事的なマネジメント」の手法が、多様化した現代の価値観と決定的にズレてしまっているからです。

まずは、皆さんの「半径5メートル」のチームからで構いません。メンバーの小さな好奇心に目を向け、問いの投げかけ方を一つ変えてみる。そんな手ざわりのある小さな「冒険」から、次の時代のマネジメントへの一歩を踏み出していただければ幸いです。

安斎さん写真/© 2026 EMConf JP 2026 実行委員会 文・編集/今中康達(編集部)


『冒険する組織のつくりかた』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
▼安斎勇樹氏 書籍『冒険する組織のつくりかた』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

「軍隊」から「冒険」へ。人と組織の〝世界観〟をアップデートする本

マネジャーのしんどさ、経営者の孤独、現場の息苦しさ、人材難……。すべての原因は「世界観のズレ」にある。

これを乗り越えるためのキーワードが「冒険」だ。人を道具化する「軍隊」のようなチーム観を脱却し、個人のワクワクや探究心を包み込む「冒険的世界観」へシフトするには?

気鋭のコンサルティングファーム代表にして、東大の研究者でもある著者の集大成!

>>詳細はこちら

『静かな時間の使い方』(朝日新聞出版)
▼安斎勇樹氏 書籍『静かな時間の使い方』(朝日新聞出版)

うるさすぎる時代に、「静寂」と「最高純度の思考」をとりもどすための本が誕生!

つながりや情報に翻弄されがちな現代において最も重要なのは、独りきりの「静かな時間」を確保し、いかに内面の深くまで潜って思考できるか。

特に「感情」「技術」「興味」のリフレクション(内省)は、「己の思考や人生の軸」を定めるための強力な手段になる。

『問いかけの作法』『冒険する組織のつくりかた』を生み出してきた著者が提案する、主体的な人生を送るための思索の技法。

>>詳細はこちら

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