Founder & CEO
btrax
Brandon K. Hillさん(@BrandonKHill)
北海道生まれの日米ハーフ。サンフランシスコと東京のデザイン会社btrax代表。サンフランシスコ州立大学デザイン科卒。 サンフランシスコ市長アドバイザー、経済産業省 始動プログラム公式メンター。2025年9月、世界最大級のAIコミュニティ「The AI Collective」の日本代表に就任。ポッドキャストも運営
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テック界隈で、にわかに議論を呼んでいる「タダ飯おじ/おば」。
勉強会やイベントの本編より、無料で振る舞われる食事やお酒、ノベルティーを目当てに会場を訪れる人たちのことだ。
では、テックイベントが日常的に開かれているアメリカではどうなのか。
サンフランシスコを拠点に、自らも数多くのテックイベントを主催しているbtrax CEOのブランドン・K・ヒルさんに聞いてみると、返ってきたのは意外な答えだった。
「いますよ。というか、僕自身が“タダ飯野郎”です(笑)」
しかも話を聞いていくと、アメリカには「イベントでちょっと食事をつまむ」の域を軽々と超える、“ハイエナ”のような参加者までいるという。
さすがアメリカ、タダ飯のスケールまで違う。
……と笑って終わるには、この話、少々もったいない。
食事をきっかけにイベントへ行くのは、本当に悪いことなのか。「食事目当ての参加者」と「迷惑な参加者」の境界線はどこにあるのか。
海の向こうの“タダ飯事情”を聞いてみた。
Founder & CEO
btrax
Brandon K. Hillさん(@BrandonKHill)
北海道生まれの日米ハーフ。サンフランシスコと東京のデザイン会社btrax代表。サンフランシスコ州立大学デザイン科卒。 サンフランシスコ市長アドバイザー、経済産業省 始動プログラム公式メンター。2025年9月、世界最大級のAIコミュニティ「The AI Collective」の日本代表に就任。ポッドキャストも運営
編集部:日本では今、テックイベントに無料の食事目当てで参加する、いわゆる「タダ飯おじ」がXで話題になっています。
ブランドンさんはアメリカでいろいろなテックイベントに参加されていますよね。アメリカにも、そういう人っているんですか?
ブランドン:たくさんいますよ。ていうか、そもそも僕自身が結構な“タダ飯野郎”っていう(笑)
編集部:ブランドンさん自身が(笑)
ブランドン:今朝もAIの会社のイベントで、ピザを食べてきました。
アメリカのイベントって、めちゃくちゃ食事が用意されていて、ほとんど無料で食べられるんですよ。それを食べに来るだけの人がいても、主催者は全然気にしないですね。そういうのも全部織り込み済みで「全然OK」という感じです。
編集部:サンフランシスコでは毎日のようにイベントが開かれていると聞きますが、そんなに普通に食事が出るんですか?
ブランドン:基本、出ますね。出ない方が信じられないくらいです。
僕自身、「今日はこれを食べよう」くらいの気持ちでイベントに行くこともありますよ。
編集部:そこまで違うんですね。
編集部:でも、ブランドンさんは参加者だけでなくイベントを主催する側でもありますよね。主催者としても、「食事が目的の人が来る」のは気にならないんですか?
ブランドン:あまり気にならないですね。
アメリカの感覚だと、広告を出したときに、「クリックしたけど買ってくれなかった人」みたいなものだと思います。
全員が全員、こちらが期待した通りの行動をしてくれるわけじゃない。冷やかしがいるのはしょうがないよね、という感じです。
僕だって、食事を目的にイベントへ行くことはありますし、行ってみて内容が面白くなかったら、食事だけして帰ることもあります。
逆に食事目的で来たとしても、内容がめちゃくちゃ面白ければ引き込まれることもあるし、そこで紹介されているものに興味を持つこともある。それならそれでいいんじゃないか、と。
編集部:なるほど。ただ、日本で今回話題になっているのは、企業のPRやマーケティング目的のイベントだけではなく、エンジニア同士が知識を共有する勉強会のような場も含まれています。そう考えると、アメリカとは少し事情が違う部分もありそうです。
ブランドン:それはあると思います。
日本で「タダ飯」が問題になる背景には、イベントの予算だったり、主催する目的だったり、いろいろな事情があると思うんですよね。
僕は最初、この話を聞いたときに「ちょっと懐が狭いんじゃない?」と思ったんですけど、それはかなり乱暴な言い方で。
日本の場合、そもそもイベントの予算が少なかったり、イベントを開催することで得られるROIを重要視していたりするケースもあると思うんです。営業やマーケティング目的なら、運営側も成果を求めざるを得ないでしょうし。
一方で、アメリカ、特にスタートアップ界隈には、投資を受けていて資金に余裕のある会社も多い。「楽しいからやる」とか、「コミュニティーのためにやる」みたいなイベントもあります。
だから、食事に対する感覚にも違いが出るんでしょうね。
編集部:そうすると、アメリカでは「飯だけ食べに来る人」くらいでは、あまり問題にならない?
ブランドン:そうですね。そもそも食べ物がめちゃくちゃ置いてありますから。むしろ、そういう人たちが来なかったら余ることもあります。
逆に、早い時間に全部なくなっちゃうこともある。でも、それはそれで「恨みっこなし」です。遅く来た人が「食べられなかった」と言っても、それはしょうがないよね、という考え方です。
編集部:かなりおおらかですね。じゃあブランドンさん自身、イベントで食事をする参加者に「これはちょっと嫌だな」と思うことはないんですか?
ブランドン:ありますよ。
僕が自分でイベントを運営したり、友達のイベントに行ったりしていて気になるのは、食べ物の盛り付けがえげつない人(笑)
編集部:盛り付け?
ブランドン:食べる量です(笑)
お皿の上に、エグいくらい載せるんですよ。もう「イベントでちょっとつまむ」っていうレベルじゃない。なんて言うか「デパ地下の試食を主食にしてる人」みたいな感じ(笑)
日本の感覚なら、ちょっとマナーに反するというか、行儀が悪く見えるでしょうね。
編集部:日本では「無料のご飯を目当てに来る人」が議論になっているのに、アメリカは量のスケールが違いました……。
ブランドン:まあ、アメリカの場合、そもそもみんな行儀悪いんで(笑)
今朝行ってきたAIイベントにもいましたよ、ピザをえげつないくらい盛り付けている人が。思わず本人に、「ハイエナみたいだな」って言っちゃいました。
編集部:本人に言ったんですね(笑)
編集部:とはいえ、冒頭に出た「タダ飯ブラックリスト」の話に戻ると、ブランドンさん自身は、そうやって参加を断ることについてはどう思います? 厳しすぎるとは感じませんか?
ブランドン:いや、ブラックリストはいいと思いますよ。運営側が「この人には来てほしくない」と思うのであれば、そうやって自己防衛する。それは運営側の権利ですから。
僕の友人に、日本でイベントをよく開催している人がいるんですけど、この前話したら「タダ飯ブラックリスト」を持っていると言っていました。そういう人は次から登録させないって。
僕が言っているのは「タダ飯する人を全員受け入れろ」という話ではないんです。イベントごとに目的も違うし、予算も違う。運営側には、自分たちのイベントを守る権利があります。
ただ、何も対策せずにずっと愚痴っているだけなら、「それはしょうがないんじゃない?」とは思いますけどね。
編集部:ここまで話してきて思ったんですけど、そもそも「どこからがタダ飯なのか」問題もありますよね。食事を目的の一つとしてイベントに行ったらタダ飯おじなのか。内容もちゃんと聞いたけど、ご飯をたくさん食べたらタダ飯おじなのか。
ブランドン:イベントに来て飯だけ食べて帰ったように見えたとしても、本当にそれ以外に何も得ていないのかは、外からは分からないですもんね。
何かを見たかもしれないし、知ったかもしれない。だから「飯を食べて帰った」という行動だけを見て、全部を判断するのは難しいと思います。
編集部:そう考えると、「食事目当てで来たかどうか」だけで迷惑客かどうかを線引きするのは難しそうです。一方で、ブランドンさん自身も、皿いっぱいに食事を盛るような振る舞いには「行儀が悪い」と感じる。
そうですね。
編集部:そして運営側が「この人には来てほしくない」と判断するなら、ブラックリストに入れるのも運営の権利。結局、「何を目当てに来たか」だけでは、迷惑な参加者かどうかは決められないのかもしれませんね。
食事を目当てに来ても、歓迎される人はいる。逆に、食事が目的でなくても、場を乱す人はいる。“タダ飯おじ”の境界線は、案外「目的」ではなく「振る舞い」にあるのかもしれません。
編集/エンジニアtype編集部
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