売り手市場が続くエンジニアだけれど、希望の企業の内定を得られるかどうかは別の話。そこでこの連載では、転職者・採用担当者双方の視点から“理想の転職”を成功させる極意を探る
「キャリアプランを会社任せにしない」キャリアの天井を3カ月で打ち破った30代エンジニアに見る対話の重要性
【PR】 NEW! 転職
エンジニアとしてキャリアを描き続けるために必要なスキルセットが、今大きく変わりつつある。
AIの台頭により、単にコードが書けるだけでは、数年後のキャリアは描けない。技術力に加え、マネジメントや事業貢献への視座がなければ、あっという間に若手に追い抜かれてしまう。「キャリアの天井」を打ち破り、次のステージへ進むための転職を成功させるには、一体何が必要なのだろうか。
車載システムやWebシステム開発を手掛ける株式会社UNCORDでチームリーダーとして活躍する有村さんも、かつてマネジメントへの道を閉ざされ、停滞感に悩んでいた一人だ。彼はUNCORDへの転職を機に、会社が新規プロジェクトを立ち上げるという支援の下、わずか3ヶ月でその目標を実現したと言う。
採用担当を務めた横井さんと有村さん、双方の視点から、エンジニアがキャリアの停滞感を打ち破るための転職戦略を探る。
【中途入社者】株式会社UNCORD
有村さん
大学卒業後、SIer、SES、組込み開発を経て、2024年にUNCORDへ入社。入社3カ月目から、車載システム(エアバッグECU)開発チームのリーダーとして、メンバーのマネジメントなどを担当
【採用担当】株式会社UNCORD
横井さん
2015年名城大学卒業後、エバーグリーン州立大学へ語学留学。16年、愛知県のシステム開発会社へ入社。その後23年に株式会社UNCORDを設立
採用担当者の横井さんに聞いた「内定のポイント三つ」
● 現状を変えたいという強い「挑戦マインド」
● 面接での受け答えから感じた「誠実さ」
● キャリアプランを会社任せにしない「主体性」
技術者としての「キャリアの停滞感」が転職の引き金に
ーー有村さんは大学では生化学を専攻されていたそうですね。そこからエンジニアの道に進まれたのは、どういったきっかけがあったのでしょうか?
有村:大学の研究でソフトウェアを使った分析をする機会が多かったのですが、専門知識がないと分からないことが多くて。その時に、これからの世の中、コンピューターの知識は間違いなく役に立つなと痛感したんです。
幸い、コードを見たり書いたりすることにあまり抵抗がなかったので、これを仕事にしてみようと決意し、新卒でSIerに入社しました。そこでは銀行システムの管理業務を担当したのですが、ソースコードに直接触れる機会はほとんどなかったんです。もっと自分で手を動かして開発を経験したいという思いが強くなり、約1年で転職しました。
次の会社では3年ほど、Javaを使ったカード決済周りのバックエンド開発などを経験し、開発者としての基礎を固めることができました。
ーーシステム開発の経験を積まれた後、次は「組み込み」の世界に進まれています。これはどういった心境の変化だったのでしょうか?
有村:Web上のサービス開発を経験するうちに、今度は「物理的に動くもの」を作ってみたいという欲が出てきたんです。それで、組み込み開発の会社に転職し、工場の生産ラインで使われるシーケンサの開発を担当することになりました。
クライアントの要件分析から設計、実装、評価まで、開発の全工程を担当させてもらえたので、未経験からの挑戦で大変な面はありましたが、それ以上に面白さを感じていました。
ーー新しい環境で面白さも感じていた中で、なぜUNCORDへの転職を?
有村:その会社で学べることは多かったのですが、その先のキャリア、つまり「技術者として自分がどうなっていくのか」という道筋が全く見えなくなってしまったんです。
いずれは開発の管理ができるような、マネジメントの立ち位置にステップアップしたいと考えていたのですが、当時の環境ではそのチャンスが巡ってきそうにありませんでした。会社側からキャリアパスが提示されるわけでもなく、こちらが希望しても難しそうだな……と。
ーーキャリアの停滞感が転職の原動力になったのですね。転職活動を始めるにあたって、何から着手しましたか?
有村:まず、自分の考えを整理するために、転職の軸を言語化し、「成長の機会を得られる」「挑戦マインドのある」会社選びをしようと考えました。具体的には、「開発の管理を任せてもらえる、もしくは開発工程を管理しきれていて、その手法を学べる環境」です。
そして、その軸に合うかどうかを見極めるために、面談の進め方を工夫しました。いきなり選考に進むのではなく、まずはカジュアル面談を申し込める企業を中心に10数社とお話ししたんです。
そこで重要視したのは、会社の雰囲気を知ることと、対等な立場で話ができるかどうか。こちらから「将来的にマネジメントに挑戦したい」といったキャリアの話をした際に、その話をどう受け止め、どう広げてくれるかを注意深く見ていました。
例えば、こちらの意欲を後押しするような具体的な話に繋げてくれるのか、それとも少しずれた提案をしてくるのか。特に、逆質問の時間はこちらから見極めるチャンスだと捉え、その返答にはかなり集中していましたね。
ーーなるほど。その中でUNCORDを選んだ決め手は、やはりその「対話」の部分が大きかったのでしょうか。
有村:そうですね。UNCORDは、まだ立ち上がって数年の会社なので、挑戦できる余地が大きいだろうという魅力はもちろんありました。
でも最終的な決め手は、代表の横井さんが私のキャリアプランに対して非常に真摯に向き合ってくれたことです。単なる面接官と候補者という関係ではなく、一人のエンジニアとして対等に話をして、「ここでなら自分のやりたいことに本気で挑戦できる」と確信できた。それが一番大きかったですね。
長く働き、成果を出すためにも、「この人と一緒に働きたい」と感じられるかは、僕にとって非常に重要なポイントでした。
面接で重視しているのは「情理」が通っているかどうか
ーーでは、有村さんの採用を担当した横井さんにお伺いします。UNCORDのエンジニア採用では、どのような点を重視されているのでしょうか?
横井:スキルが完全にマッチしているかどうかよりも、マインドセットやフィーリングが合うかどうかのほうが遥かに重要だと考えています。
もちろん、多少の経験は必要ですが、1〜2年程度でも構わない。それさえあれば、本人が「こうなりたい」と本気で思うキャリアを、会社として作っていける自信があるからです。だからこそ、採用では常にその人の「思い」の部分を一番大事にしていますし、これからもそれは変わりません。
ーーなぜ、それほどまで「思い」を重視されるのでしょうか。
横井:これは僕の持論ですが、「こうなりたい」という野望や挑戦したいというマインドを持つことが成長の原点で、成長して目指す姿になることが一番の幸福だと思っています。それがあれば、仕事でも100%以上の力を発揮することができる。
大手SIerでエンジニアとマネジャーを経験していく中で、同業他社とのエンジニアとのつながりも多くありましたが、各会社の都合でキャリアが左右されるエンジニアをたくさん見てきました。本人がやりたいと思っているのに、やれていない。そんな昭和的な文化を壊し、意欲ある人がその機会を掴める場所を作りたい。その一心でUNCORDを立ち上げたんです。
ーーただ、その「思い」が本物かどうかを見極めるのは難しいかと思います。
横井:深く話し込んでいくと、思いが本物でない人はどこかで話にボロが出るものです。「キャリアアップしたい」と熱弁していても、よくよく聞くと「結局、リモートワークがしたいだけだな」とか「給料を上げたいだけだな」という本音が見えてくることが結構多い。でも、有村さんは全く違いました。
有村さんは「給料は上がらなくてもいい。残業もいとわない」とさえ言っていました。一貫して求めていたのは、ただ一つ、「マネジメントに挑戦し、キャリアを築ける環境」です。
他の条件がどうであれ、この最優先事項はブレなかった。その姿を見て、「あ、この人の思いは本物だな」と確信しました。結局、こういう誠実さって小手先のテクニックではごまかせない、その人の核となる部分ですから。
ーーなるほど。とはいえビジネスの世界では、「やってみたい」の気持ちだけでは通用しない部分もあるのでは?
横井:もちろんです。いくら意欲があっても、例えば全くの未経験からいきなりプロジェクトリーダーをやりたい、というのは現実的ではありません。
ただここでも大事なのは、キャリアを会社任せにしていないかどうか。有村さんの場合、「マネジメントをやりたい」という野望がありましたが、それを支えるだけの前提スキルを、これまでのキャリアでしっかりと身に付けていました。
具体的には「設計経験」と「顧客折衝経験」です。エンジニアがマネジャーを目指す上で、この二つは絶対に欠かせない。彼にはその土台があった。
だからこそ、彼の「マネジメントに挑戦したい」という言葉には、単なる願望ではない、リアルな目標としての説得力があったんです。
入社3ヶ月でリーダー抜擢、有言実行のキャリア支援
ーー横井さんの採用哲学は、まさに有村さんの入社後の活躍に体現されていると感じます。マネジメントへの挑戦を希望していた有村さんのために、新規で案件を獲得されたそうですね。
横井:「思い」のあるエンジニアのキャリアを会社が全力で後押しするのは、我々にとって当然のことです。有村さんの場合は、明確な目標とそれを支える土台があったので、すぐにでもリーダーを任せられると判断しました。
とはいえ、いきなり一人で、というわけではありません。まず、彼の希望に沿ったエアバッグの新規案件を獲得し、最初の2ヶ月は当社の事業部長と二人体制でプロジェクトに入ってもらいました。
まずは事業部長と共に車載領域の知識をキャッチアップしてもらい、彼が独り立ちできるタイミングで事業部長はプロジェクトから抜ける。そして、今度は有村さんの下に新たなメンバーや協力会社のエンジニアをアサインして、彼を中心としたチームを組成しました。
ただポジションを与えるのではなく、彼がリーダーとして成果を出せる環境をセットで用意する。そこまでが会社の責任だと考えています。
ーーご自身のキャリアプランを実現するために、会社がチームごと用意してくれた、と。有村さんは、その話を聞いた時、率直にどう感じましたか?
有村:「自分のためにここまでしてくれるのか」と、本当に嬉しかったですね。その期待に応えたいという気持ちが、大きなモチベーションになりました。もちろん、リーダー業務は初めての挑戦なので、最初は試行錯誤の連続でした。
実際に仕事を進めていく中で、これまでのように自分一人の成果を追うのではなく、「どうすればチームとして成果を最大化できるか」を常に考えるようになったことが、一番の変化です。
メンバーのスキルや状況に合わせてタスクを割り振ったり、チーム全体の進捗を管理したり。工夫すべき点が無限にあって、難しいですが、その分ものすごく面白い。自分一人で見ていた景色とは、見える幅も奥行きも全く違う。この視座の変化が、一番の成長だと感じています。
ーー横井さんから見て、リーダーとしての有村さんのパフォーマンスはいかがですか?
横井:有村さんはキャリアの軸が全くブレていなかったので、立ち上がりも早いだろうと確信していましたが、まさにその通りでしたね。期待以上のスピードでチームをまとめ上げ、今では完全にプロジェクトの中核を担ってくれています。
個人的に、「こうなりたい」という強い軸を持つエンジニアが集まれば、最強の組織が作れると信じているんです。有村さんのような成功事例を、車載領域だけでなく、Web系など他の領域にも広げていきたいですね。
個人の成長が会社の成長に繋がる。そんなエンジニアチームを、これからも作っていきたいです。
ーー理想のキャリアプランに向かって歩み始めた有村さんですが、最後に今後の目標を教えてください。
有村:まずは担当しているエアバッグという製品について、全ての機能を把握し、全体を見通せるエンジニアになるのが目標です。車載機器の開発は、他の製品開発にも転用できる業務知識を数多く得られるので、将来的には他の機器の開発にもチャレンジしたいですね。
僕自身、転職活動では「マネジメントに挑戦したい」という軸を絶対に曲げませんでした。面接では、その思いを正直にぶつけ、相手がどう応えてくれるのかを真剣に見極めました。小手先のテクニックではなく、本音で対話することで、初めて自分に合う会社が見えてくるのだと思います。
キャリアの主導権は、自分自身の手にある。勇気を持って一歩踏み出せば、必ず道は開けるはずです。
撮影/赤松洋太 取材・文/今中康達(編集部)
RELATED関連記事
JOB BOARD編集部オススメ求人特集
RANKING人気記事ランキング
今のAIは限界? 日本発“第三のAI”の可能性をAI研究者・鹿子木宏明が提唱する理由
AI時代のエンジニアはボスの仕事を奪え。「思い通りにいかない現実」を経験せよ【冨山和彦】
AWS認定資格12種類を一覧で解説! 難易度や費用、おすすめの学習方法も
ジャンプ伝説の編集長・鳥嶋和彦流の“人”の動かし方「人と自分は違う。だから押さえつけたりしない」
ブラックSES、弱小情シス、税金未納のAIベンチャー。会社運ゼロのエンジニア・よんてんごPが「キャリアに後悔はない」と語るワケ
タグ