悩みもニュースも、言葉にしてスッキリ
澤円の「モヤモヤ言語化ラボ」元・日本マイクロソフト業務執行役員であり、“プレゼンの神”こと、澤円さんが、エンジニア読者のモヤモヤや気になるニュースを、分かりやすく“言語化”。「どう考えたらいいか分からない」を「そう考えればいいのか」に変える、頭と心の整理の場です。あなたが前に進むためのヒントを一緒に見つけていきましょう。
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澤円の「モヤモヤ言語化ラボ」元・日本マイクロソフト業務執行役員であり、“プレゼンの神”こと、澤円さんが、エンジニア読者のモヤモヤや気になるニュースを、分かりやすく“言語化”。「どう考えたらいいか分からない」を「そう考えればいいのか」に変える、頭と心の整理の場です。あなたが前に進むためのヒントを一緒に見つけていきましょう。
皆さんこんにちは、澤です。
今回の相談者さんは、正しいことを言っているのに受け入れてもらえず、納得がいっていないようですね。
相談内容
入社2年目です。この春から新卒の指導係(バディ)を任されました。
私は「言うべきことは感情的にならず、淡々と伝える」のが良いと思っているので、後輩がミスをしたら「ここ間違ってるから直して。なんでこうなったの?」とストレートに指摘しています。変におだてたり、遠回しに言う方が時間の無駄だし、本人にとっても分かりやすいはずです。なのに、周りの先輩たちから「正論だけど、言い方がちょっとトゲトゲしく聞こえるよ」と言われてしまいました。
怒鳴り散らしているわけでもないし、人格否定もしていません。仕事のミスをミスだと指摘して、何が悪いのか本気で理解できません。むしろ、周りの先輩たちが新卒を甘やかしすぎているように見えて、私ばかりが悪者になっている気がしてモヤモヤします。私はどう新卒と接すればいいんでしょうか。
相談者さんの気持ち、めっちゃ分かる!
正しいことを言っているし、合理的なコミュニケーションなのに、なんで文句言われるんだっけ?って思いますよね。うん、ボクも昔はこんな気持ちで日々イライラしていたなぁ……(遠い目)
さて、感情的になってないし人格否定もしてないし、ミスをしっかり指摘している。まさに指導としては理想的なのでは?と相談者さんは思っているんですよね。「ミスを修正すること=正しく仕事をしている」という価値観がトップに来ているのが伝わってきます。
これを、食事にたとえてみたいと思います。
食事の最大の目的は「栄養をとること」ですよね。栄養をとらないと人は生きていけませんから、栄養価の高い食べ物を口にすることはとても大事です。ただ、「口に入ればどうでもいい」というわけではないのが、食事の特徴でもあります。
栄養が取れればなんでもいい、というのであれば、あらゆる食材を毎回ミキサーにかけて飲むのは、かなり合理的な方法ですよね。調理の手間も省けるし、咀嚼もしないので食事時間も短くて済むし、いいことずくめ! ってなりますかね?
一部の人は、「栄養さえ取れればなんでもいい」と思っているでしょう。
でも、それが圧倒的なマジョリティかというといささか疑問です。特に、毎回ミキサーでどろどろになってしまったものを食事としてとるのは、視覚的にも満足感が得られにくいのではないでしょうか。そして、咀嚼は、歩行や呼吸と並ぶ「リズム運動」の一種であり、脳内の幸福ホルモンである「セロトニン」の分泌を促す強力なスイッチになっています。
複数の臨床研究において、咀嚼回数が減るとセロトニンの合成が滞り、ストレス耐性の低下、不安感の増大、集中力の低下、睡眠障害を招きやすくなることがレポートされています。
ということで、「栄養さえ取れればいいだろう」というのは、食事においてなかなか通らない理屈のようです。
これを、今回の相談に置き換えてみましょうか。
「ミスを指摘して行動を正すことができればいい」という考えは、「栄養さえ取れれば形は何でもいい」という、ミキサー飯理論と合致します。「怒鳴ったり、人格否定してないからいいのでは」という考え方は、通用しません。コミュニケーションは「相手がどう受け取るか」の方が圧倒的に大事であり、自分側の都合では決まらないからです。
そして、実際周囲から見ても「明らかにとげのあるコミュニケーションをしている」と思われているのであれば、相手の望んでいない言葉のかけ方をしていると言わざるを得ません。
料理は、栄養を取るのも大事ですが、調理法や盛り付けもとても大事です。同じ栄養を取るのであれば、見た目もきれいでおいしいと思える食事の方が、心身にとってプラスに働くでしょう。そして、見た目のよくない食事を無理に摂ろうとすると、吐き気のような拒絶反応を起こしたり消化不良につながったりするかもしれません。
誰かに出す料理を作るときは、「相手はどうすれば喜ぶかな?」って考えるのが醍醐味だと思うんですよね。そうなると、「見た目はどうでもいい」とはなかなか思えないのではないでしょうか。
これらのことをコミュニケーションに置き換えれば
「受け取りやすい言葉はどんなものか」
「相手にストレスを与えない話し方をするにはどうするか」
「言われたことを行動に移しやすい表現は何か」
こういうことに頭を使うことは、エンジニアとしての成長にも直結するものです。
また、食事はタイミングも大事ですよね。
「一日三食」というルールにこだわりすぎて、満腹のまま1時間おきに無理やり3回食べる、なんてのはあまり体によくなさそうです。また、空腹でないときにする食事は、どんなに豪華でも楽しめないですよね。つまり、何かを伝えるときには、「相手が受け取りやすいタイミング」を考えるのも大事です。
このことについては、2月の記事でも説明した「ナッジ行動経済学」が役に立ちます。
タイミングで重要なことは「相手が疲れているときに指摘しない」です。人間、疲れていると情報の処理がしにくくなります。これは、満腹状態で食べ物が入らない状態と似ています。
緊急性の低いミスや、じっくりフィードバックすべき内容であれば、できるだけ疲れていないタイミングを狙ってみましょう。通勤の疲労から回復し、まだランチタイムまで時間のある10~11時あたりや、午後の仕事がひと段落した15~16時くらいは狙い目かもしれませんね。
そして最後に、
食事は「何を食べるか」も大事ですが「誰と食べるか」も相当大事です。
(かみさんはこれを「誰を食べるか」と言い間違えて、ボクはビビりましたが……どうでもいい話ですね)
食事相手が楽しい人なら、安い食事でも楽しめたりします。安心してコミュニケーションが取れる相手であれば、素直に指摘を受けやすくなるものです。
ボクはAI時代に最も大事なことは「他人とうまくやっていくこと」と常々言っています。いろんなタスクをAIはこなしてくれるようになり、人は人との付き合いにもっと集中できるようになります。
まだ入社2年目とのこと、ご自身も伸びしろがたっぷりある状態です。ぜひ、周りの人たちとうまくやっていってくださいね。
AI時代のできる人は、Giver(=与える人)である
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株式会社圓窓 代表取締役
澤 円(@madoka510)
立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、日本マイクロソフトに転職、2020年8月に退職し、現在に至る。プレゼンテーションに関する講演多数。武蔵野大学専任教員。数多くのベンチャー企業の顧問を務める。 著書:『外資系エリートのシンプルな伝え方』(中経出版)/『伝説マネジャーの 世界No.1プレゼン術』(ダイヤモンド社)/『未来を創るプレゼン 最高の「表現力」と「伝え方」』(プレジデント社)/『「疑う」から始める。これからの時代を生き抜く思考・行動の源泉』(アスコム社)/『「やめる」という選択』(日経BP社) Voicyチャンネル:澤円の深夜の福音ラジオ オンラインサロン:自分コンテンツ化 プロジェクトルーム
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