プロフィール
重岡大毅さん
1992年8月26日生まれ、兵庫県出身。2014年、WEST.のメンバーとして『ええじゃないか』でCDデビュー。グループ活動と並行して俳優としても活躍し、 主な出演作にドラマ『ごめんね青春!』『#家族募集します』『それってパクリじゃないですか?』『単身花日』、映画『殿、利息でござる!』『溺れるナイフ』『禁じられた遊び』など。26年9月11日には、主演映画『5秒で完全犯罪を生成する方法』が公開予定
NEW! スキル
必死に積み上げてきたスキルが、AIの登場によって一瞬で過去のものへと変貌するーー技術の目覚ましい進化の陰で、多くのエンジニアが「己の存在価値」を揺さぶられるような焦燥感と対峙しているのではないだろうか。
映画『5秒で完全犯罪を生成する方法』で主演を務めた重岡大毅さんもまた、その巨大な波に晒されるエンターテインメント業界で活動している。しかも今作のテーマ自体が「生成AI」だというから、何とも皮肉な因果関係を感じずにはいられない。
「生成AIの勢いは、正直怖い。でも、僕たちが活動してきた時間は絶対に代替できないって信じています」
俳優業に加えて、アイドルとして自身が所属するグループ・WEST.の楽曲の作詞作曲を手掛けるなど、「表現」を強みとする重岡さんは、AI時代における「人間らしさ」の答えをどこに見出しているのだろうか。
生成AIがキーアイテムになる今作。重岡さん自身も、日常的にAIを活用していると明かす。
「トレーニング中の心拍数を計って、AIに教えると褒めてくれるんですよ。『俺って素人レベル超えちゃってるんだ』って思えて気分がいいですよ(笑)
でも、仕事に密接したエンタメに関する情報は、めちゃくちゃ慎重に使っています。個人的な情報は絶対に入れないし、『いつ誰に見られてもいいように』と思うようにしてますね」
重岡さんが身を置くエンターテインメント業界は、AI活用が急速に進む領域の一つだ。アイドル、そして俳優として活動する中で、AIの勢いに不安を感じることはないのだろうか。その質問に、重岡さんは真剣な声色で答えた。
「正直、怖いですよ。映像でも音楽でも、プロじゃなくたって一瞬で作れちゃうじゃないですか。今後、もっといろんな場面で使われるようになっていくだろうし、その流れはもう止められない。AIの力を求めざるを得ない時代ですから」
押し寄せてくるAIの波。その脅威を認めつつも、重岡さんは「自分がすべきこと」を冷静に見極めて取り組んでいる。
「今回の作品に参加させてもらってから、毎日PCに向かうようになったんですよ。これまでなかなか書けなかったブログも、頑張って更新するようになりました。それと同じように、曲作りでもとにかく量をこなしていきたいと思ってるんです」
芸歴約19年、WEST.としてデビューしてからは12年が経つ。着実にキャリアを重ねている中でも、改めて「量」に向き合う背景には、成長に対する並々ならぬ覚悟が伺えた。
「僕はグループの楽曲の作詞作曲もしていて、アルバムのリード曲も任せてもらったことがあるけど、それでも圧倒的な経験不足を痛感しています。
量をこなすのって、本当は20代でやるのが最強だと思うんですよ。若手のうちに量を経験するからこそ、質がついてくるわけだから。『量か質か』じゃなくて、量の先にしか質はないんです。
僕の場合、20代の頃にこなした量の足りなさが、今になって呪いみたいに自分に襲い掛かってきている。だから、今からでも量と向き合おうって覚悟を決めました」
しかし、ここでもAIの存在が目の前に立ちはだかる。人間が努力して得た知識やスキルを、AIは瞬時に越えていく。身に覚えのあるエンジニアも少なくないだろう。
「時間をかけて培ってきた技術の価値も、すぐに失われてしまうんじゃないか、と思うことはあります」そう前置きした上で、重岡さんは、それでも「量」に挑む理由を語った。
「続けていく意味はあるのかな? という問いを突き詰めた結果、僕は『技術』が欲しいわけじゃなくて、自分に『自信』が欲しいんだって気付いたんです。だから、過去の自分ができなかったことにリベンジして、胸を張れるようになりたいんですよね」
努力の先に明確な意味や成果を求めてしまうのが人の性だろう。重岡さんの場合、目の前の結果だけを価値としてとらえているわけではないからこそ、自身の時間を投資することを恐れない。
「一見無駄に思えるようなものが、意味を持った瞬間に輝き出すことってありませんか? それこそが人間らしさの正体だし、エンターテインメントの本質だと思うんです。
例えば、2年前に開催した10周年ツアーは、僕たちにとって一つの目標でした。目標をかなえて大きなステージに立った時、そこに到達するまでの全ての時間が輝いて感じたんです。本当に大切なものは、目標を達成するよりもずっと手前にあったんだな、と気付かせてもらいました。
きっと僕たちの活動を応援してくれているファンの方も、技術そのものを求めているわけじゃなくて、そこに至るまでの過程を見てくれているんだと思います。WEST.として活動してきた時間は絶対にAIには代替できないものですし、これまでメンバーと歩んできた道草みたいな日々を大切にしていきたいですね」
仲間と共に歩む過程を大事にする重岡さんにとって、今作も特別な作品となったようだ。
「今回の映画も、プチョン国際ファンタスティック映画祭の正式招待作品に選んでいただけて、とても光栄に思っています。でも、僕にとっては『誰かと一緒に作り上げてきた作品』だからこそ嬉しいんです」
今作は、犯罪を隠ぺいするために生成AIに助けを求めた兄妹が、予期せぬ事態へと巻き込まれていくクライムサスペンス。「現代」という時代を生々しく描く、センセーショナルなテーマで注目を集めている。
「脚本を読んだ時は、『生成AIと犯罪』というリアルで不気味なテーマでありながらも、ちゃんとエンタメとして昇華されていることに驚きましたね。これは面白い作品になるぞ、と思って撮影に入ったのですが、一瞬で泥沼にハマってしまいました(笑)」
重岡さんが演じたのは、意図せずに教師を殺めてしまったという妹・幸来(原 菜乃華さん)を守るために奮闘する兄・航。役作りのために改めて脚本を読み込んだ重岡さんは、その役柄の解釈に悩み、文字通り頭を抱えたと苦笑する。
「だって、妹に呼ばれて駆け付けたら、人が亡くなっているんですよ? 普通はすぐに『警察!』って思うじゃないですか。なのに、航は生成AIを使って隠ぺいしようとするんです。その時点で『おっと、どういうことだ?』と思って、これは大変な役だぞ……と気付きました。最初に脚本を読んだ時は、エンタメとして楽しみ過ぎていたな、って(笑)」
暗中模索することになった重岡さんは、ノートと鉛筆を手に、ひたすら自身の思考を書き連ねて脳内を整理していったと振り返る。取材に際して久しぶりに開いたというそのノートは、文章にもなっていないような書きなぐられた文字や、力強く引かれた線で埋め尽くされていたという。
あまりにも地道でひたむきな作業の理由を問うと、重岡さんは事もなげにこう言った。
「これは完全に自己満足ですね。自分が納得できているか、できていないかの違いでしかないです。かなりのエネルギーが必要だけど、納得して現場に立った方が絶対に気持ちがいいですから」
作品に対する真摯な姿勢が見て取れる重岡さん。エンターテインメントの最前線で活動する中で、逃げ出したくなることはないのだろうか。
そんな疑問を他所に、重岡さんはこう話を続けた。
「僕、『やらなかったらよかった』って後悔したことがないんです。どんなことだって『やってよかった』って思う。なぜなら、僕は人と仕事をすることが好きだから。
特に今回は完全オリジナル作品なので、ゼロから企画を形にするために予算を確保して、人を集めて、作品を作り上げてきた過程があります。その熱量の中に入れてもらえることが何よりも嬉しかったので、やっぱり『やってよかったな』と思います」
特に今作は、重岡さんが情熱を注ぎたくなる明確な理由があった。
「今回の配給のギャガさんには、以前『溺れるナイフ』という映画作品でお世話になったのですが、あの作品があったからこそ俳優としての僕があるといっても過言ではありません。
たくさんのスタッフさんや演者さんに『溺れるナイフを観て重岡さんと仕事がしたいと思った』と声をかけていただけた、思い入れの強い作品です。そんなギャガさんとまた一緒に作品作りができると聞いて、お話をいただいた時からわくわくしていました」
加えて、原案・脚本・プロデュースを担当する岡田道尚さんともかねてより関わりがあった重岡さんは、今作の主演を務めることができた喜びを噛みしめる。
人との縁を大切にする重岡さんにとって、「もう一度仕事がしたい」と求められる喜びは何にも代えがたいものなのかもしれない。俳優としての実力が広く知られるところとなった今、自身が歩んできた道のりに確かな自信をにじませた。
「今回のような機会は、仕事を続けてきたからこそいただけたものだと思うんです。どんな仕事でも、続けるということは簡単なことじゃないけど、続けているとこうやって嬉しい経験ができたりもする。だから、もうちょっと頑張ってみようかな、と踏ん張れるんですよね」
そう言って微笑みながらも、「結果には一喜一憂しないようにしてる」と強調した重岡さん。「『どうなるかな』と心配にならないと言ったらうそになるけど、結果はサプライズの方が嬉しいじゃないですか」と語る彼は、これからどんな未来を見せてくれるのだろうか。テクノロジーには代替されない「経験」という自信を武器に、私たちを驚かせ続けてくれるに違いない。
プロフィール
重岡大毅さん
1992年8月26日生まれ、兵庫県出身。2014年、WEST.のメンバーとして『ええじゃないか』でCDデビュー。グループ活動と並行して俳優としても活躍し、 主な出演作にドラマ『ごめんね青春!』『#家族募集します』『それってパクリじゃないですか?』『単身花日』、映画『殿、利息でござる!』『溺れるナイフ』『禁じられた遊び』など。26年9月11日には、主演映画『5秒で完全犯罪を生成する方法』が公開予定
取材/光谷麻里(編集部) 文・編集/秋元 祐香里(編集部)
映画『5秒で完全犯罪を生成する方法』2026年9月11日(金)全国公開
「この事件を迷宮入りにする」―― 兄妹は生成AIに全てを託した。禁断の“完全犯罪サスペンス”誕生!
フリーライターの初海航は、意図せず殺人を犯した妹・幸来を守るため、生成AIを駆使して事件を隠蔽しようと思いつく。AIの指示に従って、指紋を拭き去り、死体に死化粧を施し、更にアリバイを工作。無事警察の事情聴取をクリアしたかに思われた二人だったが、事件は世間を騒がせる連続殺人と同じ手口だと知らされる。思いもよらない展開を見せ始めた事態の真相を探るうち、航はトップ女優の七希にたどり着く。果たして兄妹の完全犯罪の行方は――?
出演:重岡大毅 / 原菜乃華 / 田中みな実 / 伊藤歩 / 黒田大輔 / 森岡龍 / 九十九黄助 / 石丸幹二
原案・脚本・プロデュース:岡田道尚
監督:近藤亮太
製作幹事:ギャガ / ストームレーベルズ
配給:ギャガ
制作プロダクション:アークエンタテインメント
製作:「5秒で完全犯罪を生成する方法」製作委員会
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