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川上量生「人間のプライドは捨てて原理を学べ」AI時代、“現代のアリストテレス”を目指すべき理由

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成功するにはどうすればいいか。これから身に付けるべきスキルは何か。変化の激しい時代ほど、私たちはつい“正解”を求めたくなる。

だが、ドワンゴ創業者の川上量生さんは、その思考に待ったを投げかける。

「みんなが信じている常識を捨てることで、競争相手は減らせる」

ニコニコ動画やN高等学校など、川上さんがこれまで手掛けてきた事業も、いわば「みんながやらないこと」に勝機を見出してきた歴史だ。

そして、生成AIによって世の中に蓄積された知識や成功パターンを誰もが引き出せるようになった今、この“他人と同じ場所で戦わない”という発想は、キャリアにおいても重要性を増している。

既存のノウハウをなぞるだけなら、AIにはかなわない。では、人間はこれから何を学び、どこに自らの価値を見いだせばいいのか。川上さんに話を聞いた。

※本記事は2026年11月に発売予定の雑誌『type就活』から先行公開をしています。

プロフィール画像

ドワンゴ 顧問
川上量生さん(@gweoipfsd)

1968年生まれ。京都大学工学部を卒業後、ソフトウエアの専門商社に入社。97年に株式会社ドワンゴ設立。着メロ、動画サービス、教育などの各種事業を立ち上げる。著書に『教育ZEN問答』(中央公論新社刊)など

ビジネスで勝ちたいなら、まず「競争相手の数」を減らせ

僕はこれまでのキャリアで、特定の成功体験に執着したことはありません。

海外周辺機器の代理店業に始まりOEMの自社ブランド、そして起業後はゲーム会社の下請けと、20代から30代にかけて短いスパンで業種を変え続けてきました。やっているビジネスが毎回全く違うので、過去の勝ちパターンはその都度捨てるのが、僕にとってはごく当たり前のことだったのです。

実際のところ、ビジネスにおいて「捨てること」はとても重要だと思います。

例えば、社内で新規事業を立ち上げるとしましょう。儲かるかどうかは別にして、誰もやっていないことをやれば「勝ち」です。自分一人しかいないんですから。

一方で、儲かりそうな場所には得てして競合がいます。相手が2社なら勝率は2分の1、3社なら3分の1になる。多くの人がこのことを軽く考えすぎています。

すぐに他者と同じ土俵で競争したがる。でも、その瞬間に勝てる確率は激減するのです。何かで勝とうと思うなら、まずは競争相手を減らすことから考えた方がいい。

何かで勝とうと思うなら、まずは競争相手を減らすことから考えた方がいいと語る川上さん

常識を疑い、誰もやっていない領域にあえて張る

では、どうやって競争相手を減らすのか。それは「これは絶対にやらなきゃダメだ」とみんなが信じている常識を捨てることです。

業界の常識は、確かに「ちょっと有利」なものが多い。でも、それを捨てることで何割か不利になったとしても、ライバルの数が何十分の一に減るなら、絶対にそっちの方が勝てるに決まっています。

N高等学校などの教育事業に参入した時も、まさにこのプロセスを踏みました。

当時、新しい教育ビジネスをやろうとする企業はこぞって「EdTech」と称し、大人向けの「生涯教育」や「資格」の市場に群がっていました。しかし、日本の教育市場でお金が動いている領域の9割は「大学受験」です。流行りの企業たちは、残された小さなパイを必死に奪い合って競争していたわけです。

かといって、最大の市場である大学受験産業にまともに参入しても、そこには予備校や学習塾といった競合がひしめいています。では、巨大な市場の中で競合がいない場所はどこか。行き着いた答えが、自ら「学校法人」を作ることでした。

これは、認可のハードルが高くて面倒だから誰もやらない。さらに調べてみると「通信制高校」という領域にすっぽりと穴が空いていました。当時の常識では、通信制高校は「ブランドイメージが低いため広がらない」と思われていたため、誰も本気でビジネスにしようと考えていなかったのです。

でも僕には、ニコニコ動画で世間の「オタク」という言葉のネガティブなイメージを変えた経験がありました。世間のイメージを変えるのにどれくらいの労力や広告費がかかるか、大体の想像がついていたのです。だから多額のコストをかけてテレビCMを打ち、イメージ戦略を行いました。

みんなが「それはやっちゃダメだ」「割に合わない」と思い込んでいる常識を疑い、あえてそこに張る。それが、競争相手がいない場所を探し出す上での一番の狙い目です。

川上量生さんがN高等学校の立ち上げの際に行った戦略立案について語っている様子

人間のプライドは捨てて原理を学べ

AIが発達したことで、最近は多くの人が世の中にある「成功法則」を効率よく集めて、手っ取り早く正解を手に入れようと必死です。

この記事からも、転職活動やビジネスで使えそうな「教訓」をワンフレーズだけ要領よく持ち帰ろうとする読者がいるかもしれませんが、それは絶対にやめたほうがいい。なぜなら、過去のデータを学習してパターンの組み合わせから「ノウハウ」を抽出する作業は、AIの方が圧倒的に優秀だからです。

今の時代、人間がAIと同じようにパターン認識で物事を判断し、薄っぺらいノウハウを覚えて競争しようとしても勝てるわけがありません。小手先のノウハウなんてAIがいくらでも教えてくれるのに、人間の分際でAIにパターン認識で勝とうとするなんて傲慢です。

転職活動でも「絶対に潰れない企業はどこか」「起業して成功するにはどうすればいいか」といった問いに悩む方がいます。しかし、そんな現在の人間能力では解が見つけられない問題に悩んで時間を無駄にするより、確実に価値を生むことをやるべきです。

そしてそれは、絶対に「勉強すること」だと思います。もちろん、プロンプトのテクニックのような小手先のノウハウではありません。技術が変わればすぐに使えなくなりますから。

ノウハウを覚えるのではなく、物事の「原理」を学ぶのです。人間のつまらないプライドは捨てて、AIを教師にしてあらゆるジャンルの知識を徹底的にインプットしてください。

人間の分際でAIにパターン認識で勝とうとするなんて傲慢だと力説する川上量生さん

AIと人間のコミュニケーションをつなぐ「ハブ」になれ

将棋の世界では、AIで棋譜を学ぶことで「知の高速道路」が敷かれたと言われました。これと同じことが、今はあらゆる分野で起きています。

そのデータベースを使い倒せば、全ジャンルの知識を網羅した「現代のアリストテレス」のような人間になれる。そのような人物は何世紀も誕生していませんが、これからはAIのアシストによって大量に生まれるはずです。

目先の成功法則や正解らしきものをなぞるだけの人間は、AIの得意分野で勝負しているのと同じであり、あっけなく代替されてしまうでしょう。

そうではなく、自らがあらゆる知識を吸収し、AIと人間のコミュニケーションをつなぐ重要な「ハブ」のような存在になること。それこそが、AI時代に代替不可能な存在になる道だと思います。

誰かが用意した正解で勝負することは、自ら激しい競争に飛び込むことを意味します。だからこそ世の中の常識を疑い、みんなが飛びつく正解を潔く捨てる。

そしてAIを使い倒して原理を学び、泥臭く自分の頭で考えて「自分だけの正解」を作ること。きっとそれが、これからの時代を生き抜くための強力なエンジンになるはずです。

撮影/桑原美樹 取材・文/今中康達(編集部)

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